6-20
ランカーを撃破した森山実留です。
これで自分もトップランカーの一員ですね。
ってランキングとかあるんでしょうか・・・?
見た事ないんですけど・・・・。
デビュー戦で上位陣の1人を倒し勝利した事で
俺の名前はある程度売れ次戦以降は組みやすくもなった。
と言うよりも相手からの申し込みが一気に増えた。
どうも貴公子さんは結構な恨みを買っていたようで
アイツに勝った奴に勝てれば貴公子さんを上回れると思われたらしい。
他にも闘士は相性の影響も大きいので試合を見て勝てると判断されたのかもしれない。
後は此方側が出してる条件が"相手側の条件は全て飲む"を表明してると言うのもあるだろう。
魔法の有無、武器・魔法の縛り、魔道具の使用有無、回復薬の使用有無等の条件設定を
全て相手側が指定して良い事としている。
勿論、魔道具や魔法で俺を縛り一方的な勝負になるような設定も可能だが
その為には相当にレアで高価な魔道具等が必要になるだろうし魔法の腕だって必要だ。
そこまでして俺に勝つ旨みは無いから今の所は大きな問題は起きていない。
相手側の条件を飲むに辺りファイトマネーは高く設定しているのに
自分側に有利で試合を組めるのだから申し込みは殺到した。
尋常ではないペースで試合を組まされたのはどうかと思うけどな。
旨味がある試合を優先で組んだとは言っていたけどさ。
試合が組めない時は迷宮や辺境に連れてかれたので只管に戦った。
魔力も使いまくる事によって例の症状は起きなくなった。
戦いの経験も武具にフィードバックさせたので更に洗練された。
約3ヶ月の間、戦って戦って戦いまくった。
そんな訳で俺は闘士としては異例の速さで上位陣の闘士として認められる事になった。
ちなみに闘士自体にランク分けもランキングも無い。
正確に言えば各団体や闘技場単位、大会単位ではあるのだが闘士全体のでは無いって事だ。
闘技場や各団体では戦い方が違ったりそもそも戦いにならないって場合すらあるし
特定条件下では異様に強いとかも当たり前だしな。
魔法の有無だってあるんだし闘士と言っても多種多様だ。
んで上位陣とかランカーとか言われているのはある程度の大きさの闘技場やステージ等で
実力を認められた者を指す言葉となっている。
だから一言で上位陣と言ってもその差はピンキリだったりする。
勿論、数多の闘士で勝ち上がってきた者達なので決して弱くはない。
俺も複数の闘技場と小さな定例大会に名前を連なる事で認められたと言う訳だ。
なので公式なランキングは無いのだが人気、実力、得意フィールド、戦法等で
ある程度分類されているのも確かではあるし棲み分けもされている。
実績を考慮して試合も組まれるし相手も判断するしな。
余りにも実力差があると大会等でも受付すら出来ない事だってある。
ランキングされていないからこそ"アイツが強い、コイツが強い"と話しのネタになるのも
この国ならではの楽しみの一つと言えるだろう。
予想屋やファン達によるランキングなんかは色々とあるけどね。
しばらくすると実力者として認知されはしたのだが試合が組めなくなった。
まだまだ上には上が居るが試合を組んで貰えない。
実力が認められた分、相手側も迂闊な試合は組めないし旨みがないからだ。
条件を飲むと言ってもそれで尽く勝利してきた俺を警戒するのも当たり前だろう。
なので次のステップに移り大会に出る事となった。
小規模の大会ではなく実力が認められたことにより出れる大会が目標だ。
大会にも幾つかの種類があるが一際大きいのが国が主催する大会だろう。
国主催と言っても小規模から中規模は割と出やすいが大規模となると予選があるし
そもそも実力が認められていないと登録すら出来ない大会もある。
更には招待されないと出られない大会まであるがコレはまぁ・・・一般的じゃないし
国を挙げてのイベントになるので出たいと言って出れる類じゃない。
俺達が狙いを付けたのは中規模でも大き目かつ参加しやすいものだ。
予選あり招待選手ありだが国内の幾つかの大きい養成所にシード権があるタイプ。
国が主催で養成所が協賛で出費してるから完全に国主体でもないって大会だ。
実績があるので参加申し込みは出来るが予選からの開始となった。
"勝利者の栄光"は今回は出資していないのでシード権はGETならずで残念だ。
大会の予選開催までの約1ヶ月は試合を組まずに迷宮に潜る事にした。
首都から少し離れた都市にある"バラグディア迷宮"と言われるスタンダードなタイプだ。
目標はそれまでに深層階の攻略。
なんでも幾つかの中階層ボス素材と最下層の迷宮ボス素材を取ってくる仕事なんだとか。
残された時間を考えると相当に無理をしないといけないが
ララが文句を言わないのを見るとミガの目的の為に必要な事なんだろう。
「転送陣で一気に下りれれば良いんだが
ミノルはここが初めてだし途中で幾つか狩らなきゃいけない魔物も居る
なので攻略はスピード重視で行く
必要な魔物はそのままミノルが集めてくれ
勿体ないとは思うが目的の物と目ぼしい素材以外は余裕が無ければ捨て置いて構わん」
「わかったわ
私は何時ものように中間からサポートすればいいのね?」
「そうだな
ミノルは後方警戒と魔法での援護を頼む
心配はしていないが適宜動いてくれ」
「敵を見つけたら先に攻撃を叩きこんでも?」
「あぁ、目的の素材が無事なら構わないぞ
最下層まで行かなければいけないからな
寧ろ先制攻撃が可能なら助かる位だ
アリスは周囲の警戒と戦闘では牽制を頼む」
「はーい、お任せ下さい」
この迷宮は手頃な稼ぎ場所で結構な人気がある。
魔物の強さと素材の兼ね合い等から中間層までが人気らしい。
手続きし意気こんで迷宮に入ったものの手応えはまるでない。
時間も無いので目的の魔物に辿り着くまでは素早く移動していく。
アリスの索敵を頼りにミガは接敵即斬で切り倒していくしララの魔銃は的確に魔物を打ち抜く。
俺は狩った獲物を只管アイテムボックスに入れていくだけ。
一番役に立ってないですやん・・・。
俺の気持ちはさておき目的の物を回収しつつガンガン下層に進む。
ミガとララのコンビは相性が良く30階層までは手こずる事も無く俺は時折支援するだけだった。
中階層からは遠距離攻撃や魔法を使う物が多くなってきたので
速度を優先するために援護射撃を始めた。
"魔弾"を打ち込んで行くだけなんだけどね。
ララと色々と試行錯誤して"魔弾"自体も飛躍的に改良が進んだ。
"爆裂"、"属性付"、"貫通特化"、"衝撃特化"等々だ。
魔力が増えて制御力も上がったので連射やある程度の誘導も可能だ。
弾は素材があった方がスキルのお陰で質が高いのを作れるが
魔法でゼロから作る事も出来るので玉切れの心配もない。
「ミノルのその魔法は便利だな
威力も汎用性良い
私も覚えてみるかな」
「そうね魔銃と同様の事が魔法だけで出来るのは利点ね
ただ主力としての運用を考えると弾の持ち運びに大容量の収納鞄が必要になるわ
予備やフェイントのように使うならそうでもないかしら」
「弾をどうするか?って事をクリアすれば便利だぞ
他の攻撃魔法と違って撃つだけだからレスポンスも良いし制御だけに割り振れるし
ミガも収納鞄があるなら事前に作っておけば良いしな」
と言う訳で教える事に。
ミガは獣人の常で細かい魔力操作は苦手だが保有量は多い。
単純に撃つだけなら魔力量を増やせば良いだけなんだから相性は良いかもしれない。
ここまでは順調にハイペースで進んでこれたので多少ペースダウンしても問題ないし
中階層の今なら魔物対処にも余裕があるしな。
因みにララには料理を教える事となった。
食事はエネルギー補充の意味合いしかなく拘りはないが味覚はあるらしい。
それに俺の作った料理は変換効率が良いとか何とか。
まぁどうせ作るんだから良いんだけどな。
え?普通に料理番してますが何か?
アリスは勿論食ってるだけですよ。
最下層である50階層に辿り着いたのは迷宮に入ってから3週間。
そこからボス部屋まで行くのに2日程掛り遂に到着した。
予選開始が3日後からで1日は移動と手続きで使うし休息も取りたいので
そこまで余裕はないが迷宮ボスを倒し目的の素材をGETすれば任務完了だ。
全力で戦う為にボス部屋の前の安全エリアで睡眠と食事を取る事にした。
幸いな事にボス部屋の前は広めの広場になっていて俗に言う安全地帯らしい。
一応、ララが魔道具で結界を張ったが生物は人も獣人も魔物すら何も来なかった。
十分な睡眠をとった後に最後だからと容赦なく食材を使う。
≪基本調味料セット≫もバッチリの効果を発揮し幸先は良い感じだ。
ガッツリと食べた後に腹ごなしに武具のチェック。
ミガの魔弾も形になってきたが魔力制御が苦手で感知が鋭い相手にはバレバレだが
近接戦闘中に真横から唐突に撃たれて対応できる奴はそうはいないハズだ。
シンプルな軌道だが十分実用レベルだろう。
まぁ中距離以上だとまだまだで牽制に使える程度だけどな。
弾作成についてはララが引き継ぐらしいので魔法は使えないが技術力で何とか再現してくれるだろう。
2人で色々と研究したので構造や考え方も分かってるしな。
銃弾が作れないとなると単純に"ストーンパレット"とか"岩弾"とか呼ばれる魔法の方が使い勝手は良いしな。
時間と材料があるうちは在庫を作って渡しておくし再使用もある程度は可能だ。
「ララ、ミノル
準備は良いな?
アリスは上方の警戒を頼む」
「ええ」
「大丈夫だ」
「お任せください」
ミガが両開きの大きな扉に手を掛ける。
確かここの迷宮ボスは竜人を元にした巨大な石像ゴーレムだ。
竜石人と言われる古代に作られた代物で圧倒的な物理耐久性と魔法耐久性。
5メートルはある長身と極太の腕や足や胴から繰り出す重質量の攻撃に加え
竜人を元にしてるだけあってブレスや魔法も使ってくる。
更には石像の癖に動きも遅い訳じゃないってのが厭らしい所だ。
流石は50階層からなる迷宮ボスと言えるだろう。
だが攻略法も無くは無い。
基本的には物理よりの攻撃がメインの相手なので距離をとって魔法戦に持ち込む。
毒は効かないが酸や粘着系は有効との情報もある。
俺は≪溶解唾液≫があるし≪霧作成≫で広範囲に展開出来るので有利だろう。
更に≪毒液生成≫、≪粘液生成≫、≪粘液変質≫で粘着力が高い物も作れるし
魔法で泥や粘着物で機動力を奪うのも良いかもしれない。
ララも幾つかの対策を練ってきているしミガも新しい武具は竜石人をも切り裂くだろう。
さぁ、ボス戦だ!気合入れていくぞ!
ガチャガチャ。
「あ、あれ?開かないぞ
変だな・・・」
「おかしいわね?
ボス部屋に鍵なんてないハズよ?
ギルドで調べた情報にもそんな事は記載されてないわ」
どうやら扉が開かないようだ。
「・・・・・これはアレかもしれないわね
ミノルさん、申し訳ないけど通路を少し戻って様子を見てきてくれる?
具体的にはこの広場の外に通じる扉が開くかをね」
テテテっと戻り扉をガチャガチャやると開く気配はない。
それを戻って伝える。
「これは"変環"が始まっているのかもしれないわね」
「そうなのか?
だがまだ時期じゃないだろう?」
「そうなのだけどね・・・・
ある程度は絞れるけど"変環"も時期が決まっている訳でもないし」
「1ヶ月ほど前に攻略されたと話を聞いたが
その影響か?」
「それもあるかもしれないわね」
どうやら迷宮は"変環"と呼ばれる状態にあって内部構造が変化している最中らしい。
迷宮では時折みられる事象でここ"バラグディア迷宮"では深階層で起こる事が確認されている。
数年から数十年のスパンがあるが今のタイミングはギルドの予測時期としてはズレているそうだ。
しかも通常時であれは"変環"が始まると迷宮外に強制転移させられるんだそうだが
俺達はこうして迷宮内に留まっているのもオカシイと。
「でどうするんですか?」
「それなんだがなぁ・・・・打つ手が何もない」
「そうね、前後の扉は開かないし"変環"も通常期であれば数日は掛るハズよ
私達がここに入ったタイミングで始まったとしても少なくとも後丸一日以上は
足止めされる事になるわね」
「となると試合は」
「間に合わないだろうな
依頼物の納品もとなると少し不味い事になりそうだ」
その後もあーだこーだと色々と調べてみるも手詰まりだ。
となるともうアレしかない!そう!強行突破さ!
「と言う訳で強引に中に侵入したいと思います
経験上、扉よりも壁の方が楽なのでブチ破ります」
「ミノル?何を言い出すんだ?」
「いや前にもやったけど壁をどうにかして中に入ります」
「え?壁?迷宮の?前にも?」
ミガとララが変な顔をしているが物は試しだと言いくるめ距離を取り魔道具で多重に結界を張って貰う。
俺は"単発式魔力銃"を構え魔力を練り込んでチャージを開始する。
≪魔力量増加≫で増えた魔力をベースに≪魔力吸収≫と≪魔力混合≫で更に高め
更に≪魔力純化≫と≪魔力圧縮≫でエネルギーととしての強度を強くする。
膨大な魔力をチャージされた事により銃身が仄かに発光し高い鈴なり音がしだす。
神器だから大丈夫だとは思うが・・・・・。
トリガーを引くと反動は一切ないのに鼓膜が破れるんじゃないかと
言わんばかりの音と目を開けてられない程の光が広がった。
そして・・・・扉の横に人が何とか通れそうな程の穴が空いていた。
「やりましたね!実留さん!」
「おお!貫通しやがった!
やったぜ!」
ミガとララを振り返ると引き攣った顔をしていた。
「いや・・・いやいや・・・・いやいやいや・・・・」
「神器・・・そう・・・まさしく神器ね・・・・」
変な事したかなぁ。
1発で貫通出来るとは思わなかったけど壁自体は壊せるんだよ?
「と、とりあえず入ってみるか」
ミガが入ろうとしたので
「ちょっと待ったー!
どうせ正攻法じゃないなら思い切ってやりやろう!」
俺は穴に手をいれて強酸性の濃霧をズンドコ送り出した。
回復してきた魔力を使って酸性をドンドン上げていく。
逆流が怖いので穴周辺には結界を張ってある。
「ミノルよ、本当に大丈夫なのか?」
「わかんないけど
やって無駄って事は無いんじゃない?
多少は内装がボロボロになるかもしれないけど・・・
あ、素材的に問題あり?」
「いや必要な素材はコア部分等の中身だから外側がどうなろうと問題はないハズだが・・・」
「でもこれって正式な攻略と言えるの・・・・?
でもボスは中にいるハズだから攻撃は通じる?・・ブツブツ・・・」
全てがそうだとは言えないが徘徊型以外のボスは部屋から出てこない。
扉を開けて中に入ると感知され敵と認識され戦闘が始まる。
壁に穴を開けて攻撃した場合は正式に攻略として認められるか?
ボスを倒した後の転送陣は無事に起動するのか?と色々と疑問は出るが多分大丈夫だろう。
それにまぁ、酸濃霧だけで倒し切れるとは思えないしな。
ドパーーーーーーーーンッ!!
と唐突に扉が内側から開かれた。
ビグゥっとビックリする俺達を余所に場違いな軽い声が聞こえてくる。
「誰っすかーーーーー!こんな事するのはーーーー!!」
なんかちょっとボロボロの金髪の兄ちゃんが出てきた。




