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6-19

遅くなりました。

まだ咳は止まらずです・・・・。

何故か闘士のランカーと戦っている森山実留です。

しかしながらこの方って本当に強いのでしょうか・・・・?






相殺魔法の構築自体は成功したものの

猛烈な魔力消費によりフラつくし視界も少しボヤける。

短槍を握る握力も落ちてるし踏ん張りも利かない。

体全体が粘度の高い水に浸かっている感じだ。


魔力を消費し過ぎたから各スキルが停止や出力低下したのは理解出来るが

素の身体能力より低くなってるぞ。

相殺魔法の構築で魔力量がギリギリになった事による状況なのか魔力を使い過ぎた反動なのか。


直接の原因がどうであれ今の状態はヤバい。

急にフラフラしだした俺を見てチャンスだと思った貴公子さんがニヤリと笑う。


「どうやら魔力が切れたようだな

 新人にしては良い動きをしていたようだが

 身体能力の強化に比重を置き過ぎたんだろう

 魔力消費を考えない馬鹿がやりがちだな」


そう言うと距離を詰め炎の剣を振りかぶる。

スキルが稼働してない状態で直撃を受けきる自信は全くないぞ!

何とか動くが防具の重量軽減効果も出力が下がっていて上手く動けない。


「どうしたさっきまでとは雲泥の差だな

 魔法組は魔力配分も上手くないとなっ!」


厭らしい笑顔のまま連続で切りかかってくる。

体が思うように動かないのでカスる事が多くなってきた。

直撃はないもののピンチだ。

魔力も少しづつ回復はしているが体の重さは治らず

回復した分をスキルに回し身体能力は向上しているのに思うように動けない。

重量軽減は発動しているのでさっきよりは楽ではあるが・・・。


「ホラどうした?

 最初の勢いはもうないのか?」


「クッ」


襲いかかる炎の剣を転がりながら無様に躱す。

俺が追い込まれるとそれだけで歓声が一際高くなり貴公子さんの顔に優越が走り

更に調子にのると言う悪循環だ。

気分が乗れば調子は良くなるものだし魔法の威力だって向上する。

相変わらず治らない体にコチラは防戦一方だってのに。


「ん~?どうした?

 まだ魔力が回復しないのか?

 それとも欠乏症によるリバウンドか?」


ニタニタ笑いながら明らかに手を抜いた攻撃を繰り出す貴公子さんと

無様に転げまわり何とか致命傷を回避する俺。


「心配して貰わなくても大丈夫さ

 回復したらキツイ一発をお見舞いしてやるよ」


「良い様だな

 最初は焦りもしたが豊富な魔力量での短期型とはね

 そんな調子で俺に復讐が果たせるのか?」


圧倒的優位に立った貴公子さんは嫌らしい笑みで語りかけてくる。


「それだ!それ!アンタ何を言ってるんだ?

 復讐も何も俺はアンタに会った事もないし

 俺は養成所上がりで名前すら知らなかったんだぞ」


「ハハ・・・・ハハハ・・・・・アハハハハ

 面白い!面白いな!

 どの口が言うんだ?お前が居た養成所とアイツの事を

 俺が知らないと思ったか?

 そもそもお前らから持掛けてきた話だろう

 あんなに必死になってまでな」


「アイツ?」


「君の身近に私に恨みを持つ者なんて1人しか居ないだろう

 あの片足を悪くした獣人野郎の事だよ」


「ディズ・・・・ディズの事か・・・・?

 復讐・・・?・・・・・ってそうか!

 お前がディズの足を使えなくしたって奴か!」


「ハハ、何をい今更

 それを知ってて試合を組んだんだろ?

 お前も人族の癖に獣人に使われるなんざ可哀想な奴だ」


「なぜ・・・・ディズの足を?」


「獣人族のクズが調子に乗るからさ」


「おいおい

 この国でその発言は不味いんじゃねーの」


「クク・・・確かにな

 それに正確にはクズなのは男だけだな

 女は手籠めにするには丁度いい

 あぁ、男も貢いでくる奴らや俺の養分になる奴は

 利用してやっても良いけどな」


俺の指摘に貴公子さんは心底面白そうに笑う。

あぁコイツは本当にクズなんだな。

なら俺も遠慮する事はないよね。

一応、コイツの見せ場も作ったし観客も良い感じ盛り上がってるし。

それにそろそろ惨めに避け続けるのも嫌になってきた。


俺はもう一つの切り札を取り出し貴公子さんに向ける。


「ハハ、腰に付けてた魔銃かい?

 珍しい物を持っているがそんなモノで僕の「ズガンッ!!」」


容赦なく魔力弾をぶち込んだ。

どうせ体の不調は治らないんだからと回復した魔力を

≪魔力純化≫≪魔力圧縮≫に全てぶち込んでチャージした奴をな。


魔銃が入ってるケース自体が魔道具となっていて

手に持たなくてもチャージ出来るようにした事で単発の遅さを補ったのが役に立った。

手を抜いてペラペラと喋るから時間が稼げて助かったぜ。


結構な量を充填した魔銃の発射速度は凄まじく直撃した貴公子さんは

空中をグルグルと廻りながら闘技場の障壁に勢いよくぶつかり地面に落ちた。

一応、≪不傷不倒≫はオンにしてあるからダメージはないのだがうつ伏せのままだ。

上手く動かない体を無理矢理動かして慎重に貴公子さんの所に行く。


「おいおい随分と凄い恰好だな」


「クッ・・・・お前がやったんだろうが・・・・」


貴公子さんはマッパだった。

それはもう見事に真裸だ。

装備品は一切身に着けていない。


「あぁ、そう言えば吹き飛んだ時に何か色々とボロボロと崩れてたな」


貴公子さんの武具は神器の単発式魔力銃による強烈な1発で跡形もなく吹き飛び消滅した。

しかし≪不傷不倒≫により生身にダメージは無いのがポイントだ。


「と言うか・・・・お前の髪って・・・・ズラだったのかよ・・・」


「う・・・うるさい!

 黙れ!」


うつ伏せのまま動こうとしない貴公子さんの頭はツルツルしていた。


「どうする?アンタの負けで良いかな?」


「ふざけるな!

 俺はこんな所でお前なんかに負ける訳にはいかない!」


ガバッっと立ち上がった貴公子さんはもうブラブラだ。

そして意外と立派なエレファントをお持ちでいらっしゃる。


「「「キャー」」」


複数の黄色い声援が飛ぶも吹き飛ばされてから

立ち上がった事に対するモノだと思っているのか優雅に手を振ったりしている。


「うん・・・あのさ・・・・

 まぁ一応言っといてあげるけどさ

 アンタの"常に笑顔を見せる"って魔法は効果ないからね」


「はぁ?ななな何を言っている?」


「使ってた魔法の種類も数も分かってるぞ?

 それに鎧が無いんだから反動で今は魔法も使えないだろ?」


「魔法や鎧の事をどうして知っている!!」


「そんな手を明かす訳ないだろ

 もう一度聞くけど良いのか?そのままで?」


「鎧が無くてもあれは自前の魔力で発動できる!

 現に今も魔法発動は・・・あれ?」


ハッと何かに気が付いた様な貴公子さん


「魔法が発動直前に攪乱されている?

 なんだ・・・?」


「あぁ、俺が相殺してるからな

 おかげで魔力をゴッソリ持ってかれるし体調も変だけどな

 因みに魔銃をぶっ放す辺りからやってるぞ」


「相殺?何を言っている?

 あれ?じゃぁ・・・今は?」


顔が青白くなりガタガタ震える。

そしてブツブツ言いだしたと思うと。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ」


涙と鼻水と涎を垂らしながら奇声をあげて突撃してきた。

だがその速度は遅く技術も何もない。


「最後はパニックになっておしまいかよ」


無駄に突っ込んでくる貴公子さんを横に避けつつ

脇腹に下から突き上げるように拳を叩き込んだ。


ゴキバキと鈍い音と共に全身の穴から赤や茶色の物を撒き散らしながら吹き飛んでいく貴公子さん。

脇腹がベッコリ凹んでいるけど直ぐに治療すれば死なないだろう。

この状態でも貴公子さんの隠蔽魔法が効果があったのかは気になる所ではあるが

確認しようがないので諦めるしかあるまい。


こうして俺のデビュー戦は終了した。

あ、観客は物凄く静かになったよ。




「あっはっはっはっ!

 良くやった!良くやったぞ!」


帰りの馬車の中でゲラゲラと楽しそうに笑うディズ。

笑い過ぎて涙が出てる位だ。


「対戦者に因縁があるらな事前に言っといてくださいよ」


「あっはっは

 そっちの方が面白いかと思ってよ

 それにしても最後は笑えたな

 これでアイツも少しは大人しくなるだろう」


「向こうは最初っから俺の事を復讐しに来たと思ってましたよ」


「そりゃそうだろう

 試合を組みたくても条件が厳しくてよ

 だから足は直って無いしお前を恨んでるぞって演技までしたんだぜ

 アイツの性格を考えればそんな姿を見せられたら乗ってくると思ったんだ

 まぁ結構な大金を積まされたけどな」


「そこまでしたんですか?

 やっぱり恨んでたんですね」


「ん?いや恨んじゃいねぇぞ

 ミノルに治して貰ってからは全く興味は無かったな

 いや、そりゃ少しは思う所もあったがそこまでじゃなかったな」


「ならどうして?」


「アイツが人気も実力もあるからさ

 そこに新人闘士をぶつけりゃオッズは上がるだろ

 勝てば名前が売れて賭けで儲けて一石二鳥だろ

 まぁ多少は俺の意趣返しもあったから三鳥だな」


その後、養成所でミガと合流し手続き後に近場の酒場に出かけた。

ミガも試合を見てたらしく上機嫌だ。

酒と食い物を高い物からジャンジャン頼みガツガツと食べ浴びるように飲む2人

うっしっしと笑うディズとミガを見て幾ら儲けたのかが気になる所ではある。


ララは幾つかの肴で淡々とお酒を飲んでいるので試合中の症状を聞いてみる。


「確かに魔力欠乏症に近い症状ね」


「魔力が回復してもしばらく治らなかったけど」


「憶測になるけどミノルさんの体の許容量を超えた魔力を

 使った事により反動って所ね

 普通はそんな事は無いのだけど例のスキルの影響かしらね」


どうも魔力の総量と使える、扱える魔力の量と言うのは別らしい。

魔力が100あっても一度に使えるのは10までとかってイメージなんだそうだ。


「また同じ事になるかな?」


「体が馴れれば大丈夫じゃないかしら

 魔力は総量が多ければ一度に扱える量も多いモノだしね

 その為には限界まで魔力を使うのが手っ取り早いわよ」


「あの気持ち悪さとダルさはなぁ」


「ふふ、どうせ魔力を使うなら私が無駄にはしないわよ

 貴重な実験データにもなるしね」


「う・・・・あぁ、これ美味しいな

 すいませーん!おかわりくださーい」


ララの目が怪しく光り出したので何とか逸らしておく。


「おい!ミノル!呑んでるか!」


酔っぱらったディズが絡んでくる。

今の体は正確な年齢は不明だが10歳は越えているが15歳にはなってないだろう。


「おいおい、子供に酒を飲ませんなや」


「はぁ?闘士でデビューしてランカーに勝てる奴が子供な訳ねーだろ

 お前は大人だ大丈夫だ成人だ!だから飲め!」


「だからって勧めて良い訳ねーだろ!」


「うるせぇ!じゃぁ今は何を飲んでんだ?」


「酒だ」


「既に飲んでんじゃねーか!!」


「だって誰も止めないし店員も普通に対応してたからな」


ゲラゲラ笑うディズと俺、ララは隣でクスクスと笑ってる。


「あれ?ミガは?」


「んぁ?何か養成所に伝え忘れた事があるからって出てったぞ

 フラフラしてたけど直ぐに帰ってくるってさ」


おおう。

そんなフラグ立ててどうするんだよ!


「ふぃ~戻ったぞ~」


とミガが戻ってくるが何事も無かったかようだ。

安心したぜ。


と思ったら変な奴らに絡まれたらしい。

だが酔ってはいてもミガの戦闘力は一級品だ。

普通に殴る蹴るで追い返したそうだ。


翌朝、顔を隠したハゲた男が獣人を襲って返り討ちにされたって噂が流れていたとか何とか・・・。

≪不傷不倒≫は便利ですなぁ。

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