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今日は頑張ってかくぞー
妹と死に別れた森山実留です。
こちらは4足歩行でむこうは2足歩行でした。
これが格差社会と言うものなんでしょうか?
ある方は言いました。
生まれた時に人生は決まる。
成程、確かにそうですね。
どうやってもこの格差は埋まりそうもありません。
宿に戻るとブタ子が心配していた。
「ミノルさん急に居なくなってど・・・・
その顔・・・・・何か・・・・ありましたか?」
俺の顔はそんなに変だろうか
犬の表情なんて見分けもつかないだろうに。
「あぁ・・・・探してた妹を見つけたんだ
多分・・・いや、間違いなく妹だ」
「見つかったんですか!
やったじゃないですか!!」
「そうだな・・・嬉しい事だな・・・」
「どうしたんですか?
嬉しくなさそうですよ」
「いや、嬉しいは嬉しいんだ
ついに見つけたんだからな」
「なら、どうしてそんなに辛そうなんですか?」
俺は確かに妹を追ってこの世界に来たはずだ。
犬に転生しつつもそれを忘れたことはない。
今の生活がこの世界が楽しくなってきたのも事実だ。
ゲームのような力を貰い。
ゲームのような世界で。
俺の心には重い物が圧し掛かる。
俺は妹を追ってきたはずだ。
俺は妹に出会えて嬉しいはずだ。
それでも・・・俺は・・・・俺はっ!
「なんで彼奴は人族で俺が犬族なんだ!
しかも向こうは凄い美人だし!
そもそも俺は生まれて1年も経ってないのに
なんで向こうは結構な年齢まで成長してんだよ!」
「そっ、そうですか」
そこかよ!みたいな顔をしているブタ子をみつつも
俺の心の叫びは止まらなかった。
まるで転生後の不満を全てさらけ出すように。
「俺だって手が使えればちゃんと料理できるのに!」
「毛繕いってなんだよ!風呂入りてーよ!」
「下の時だってケツなめなきゃいけねーしよ!」
「そもそも何で虫喰ったら引かれるんだよ!」
俺の叫びはしばらく続いた。
アリスとブタ子の冷やかな目線に気が付くまで。
その後、冷静になった俺は
謝罪しつつ先程の件を説明し
今後については食事をとりながらでも話す事にした。
この宿は亜人種族も良く使うという事で
俺も普通に食堂を使えるし
部屋で寝て言いそうだ。
但しブタ子と同室になったが。
ドーバードックを使役する人も偶に居るらしく
宿として対応はなれているとの事。
あまりにも汚れている場合は
馬小屋等になるみたいだけどね。
俺は魔法を使って行水をするから
そこまで汚くないしな。
食堂でメニューを見て悩んでると
仕事上がりのリンドが来た。
「おう、宿はここにしたんだな
ここは飯が美味くて良いぞ~」
「どうも、リンドさん
丁度、食事にしようと思ってたんです」
「成程な、よっしゃお勧めメニュー教えてやるよ」
そういって合流し同じテーブルに着く。
「おかみさーん、注文よろしく」
「はいよー、ってリンドかい
アンタの紹介なんだってね
ありがとうね」
「はは、良いって良いって
俺はここの飯は美味いって事を教えただけしな」
「そりゃ、随分なプレッシャーだね
腕によりをかけて作らないといけないじゃない
注文はどうするんだい?」
「やっぱりここに来たら煮込みと香草焼きは外せないだろ
そうだなぁ、後は・・・サラダとスープかな」
「俺はエールを飲むけどアンタらは?」
「私はジュースを」
「実留さん、エール飲んでみたいです!」
「あぁ、飲め飲め
俺は水で良い」
「むぅ、ミノル殿が喋れるってのは知ってても
驚くものがあるよなぁ」
街への入場時に身分を証明する必要があったから
話したんだが凄い驚かれた。
ドーバードックで話す個体も居なくはないが
そこまで流暢に話すのは初めてだそうな。
「そんなに珍しいかね?」
「いや、話すのは珍しい事じゃない
そこまで普通に話すのが珍しいだけさ
っと、とりあえずジュースと水と後はエール2つだ
パンも2人分持ってきてくれ」
「あいよ~」
まず飲み物が運ばれてくる。
「最初の一杯はサービスさ
食事は少し待っておくれよ」
もちろん乾杯だ。
「「「「かんぱーい」」」」
「ぶっはぁ~、仕事上がりはうめぇなぁ」
「くは~、これ美味しいですね」
「おお、アリス殿もいける口だな
よっしゃ飲め飲め」
「ミノルさんジュースも美味しいです」
「それはなナナの実っていう果実のやつだ」
「スッキリとした甘さと酸味が美味しいです」
「はいよ~、お待たせ
量はたっぷりサービスしておいたから沢山食べておくれよ」
そう言って運ばれてきた料理は確かに凄い量だった。
煮込みが大きな深皿で2枚。
香草焼きが大きな皿で2枚。
パスタが大きな皿で1枚。
スープとサラダがが各自。
大きなパンはアルコールを飲まない2人にだ。
「おかみさんパスタ頼んでねーぞ」
「それは主人からの差し入れさ
今日はマグリ魚の油漬けが手に入ったからね
それも美味しいよ」
「だんなーありがとなー」
リンドが厨房に向かって声を上げると
中から主人が手を振ってくれた。
うん、良い宿屋だ。
早速、皆で頂く。
「実留さん!煮込み!煮込みが!!
香草焼きもあれです!あれなんです!
パスタの塩っ気が!
サラダのシャキシャキとスープがぁ!
モシャモシャ!ゴキュゴキュ!
ぶはぁぁぁぁぁ」
豪快にアリスが食べだす。
煮込みを食べてはエールを飲み。
香草焼きを食べてはエールを飲み。
サラダで口直し。
俺のパンを強奪しスープに浸して食べる。
そしてエールを飲む。
もう見てて気持ちが良い位の食べっぷり。
煮込みはジャイアントラットと言う
大きなネズミ型の動物の肉をワインと共にじっくりと煮で
濃厚な味わいとトロトロの肉が美味しい。
主人の拘りオリジナルスパイスがポイントだ。
香草焼きは近くの湖で取れる
ロッシュ魚という大き目の白身魚を
ネギに似た野菜等共に香辛料をまぶし
ナーリー草という大きな葉っぱで
包んで蒸し焼きにしたものだ。
白身魚の淡白な味にピリっとした
アクセントと野菜の甘みが絶品だ。
パスタはシンプルだが
マグリ魚の油漬けが絶妙な塩加減で
味わい深くしてくれていて
食べ飽きなくて良い。
サラダもとれたての野菜が沢山入っていて
シャキシャキで美味しいし
スープは余った材料や野菜クズを無駄にしないように
作られてるが寧ろ大量に入ってる具のせいで
これは余った材料なんだろうか?と思わせる物だ。
何を食べても美味しい。
この宿を選んだのは正解だと言わざるえまい。
リンドさんグッドだ。
食事を楽しみつつリンドに国の情報を聞いていく。
そこまで詳しい情報はもってないようだ。
それでも色々な情報は手に入った。
国の情勢やら成人の儀について。
王族の特徴等も聞けた。
街中で見かけたので気になったという事に
しておき黒づくめと対峙していた兵士の
特徴を聞いてみると
聖神教の神官騎士ではないかという事だ。
その後、いつのまにかリンドとアリスの
飲み比べに発展した。
机の上に積み重なるグラス。
周りから飛ぶかう掛け声。
いつのまにか賭けも行われているようだ。
最終的にはアリスが勝った。
リンドは机の上にうつ伏したまま動かなくなり
宿の主人に運ばれていった。
夜に部屋で情報を整理すると
どうも実里は噂されている王女ではないかと考えられる。
外見が王族特に王妃と似ているんだ。
綺麗な金髪で透き通るような肌。
そして神秘さを感じる美貌。
現場に居合わせた神官騎士。
それから数日間は聖神教の本部周辺を
ウロウロと歩き回って情報を仕入れてみたが
実里に関する情報は何も入ってこなかった。
城には入れないし手詰まりを感じる。
やっぱり成人の儀で会うしかないか。
2週間後に迫る成人の儀には
式典としてノイードでパレードが開催される。
もちろん厳重な警備の元で行われるので
接近は難しいがチャンスはそこしかない。
待ってろよ実里。
絶対に会いに行くからな。
アリスのキャラがどんどん壊れていきます。
むぅ、どうしてこうなった!




