表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/254

6-17

急に暖かくなりましたねー。


こんにちわ!森山実留です。

最近は色々と変化がありますが他人の目的の為に

本格的に動くってのは初めてのような気がします。

面倒な事になりそうなのは明らかではあるんですが・・・。





「では後は頼んだぞ

 ミノルも頑張れよ

 どちらかと言えば心配なのは相手側だけどな」


笑いながらミガとララは養成所に俺を引き渡して何処かに行った。

俺だけゴトゴトと養成所から馬車に揺られて闘技場に向かっている。

向こうは向こうでやる事が色々とあるらしい。

試合開始までには来るようだけどね。

出場申請は養成所で行っているから別に良いんだけどさ。


「しっかしまぁ・・・・

 なんかゴツくなってねえか?」


「そうですかね?

 ここの所はずっと戦闘訓練してたからですかね」


「教官こそ随分と体が引き締まりましたね

 見違えるようですよ」


「おう、俺の復帰戦に向けて調整中だからな

 もう少しで何とかなると思うぞ」


久々に会ったディズは以前から引き締まった体をしていたが

今は実戦的な身体つきになっていて一切の無駄が無くなっていた。


因みに古傷が治ったのは旧知に以前から頼んでおいた

迷宮産の魔法薬がやっと手に入ったからだで押し通したらしい。

その代わりに莫大な借金が出来たと言って闘士に復帰する事にしたんだそうだ。

実際には借金も無いし養成所には俺の担当窓口と言う形で在籍してるそうだ。


「しかしお前も非常識だがお前の主人もなかなかだな

 新人の闘士によくそんな武具を持たせるもんだ

 俺が渡した短槍なんてボロくて恥ずかしいぜ」


「は?何言ってるんです?

 この短槍は元々は教官から譲り受けた奴ですよ

 ちょっとばかし外見は変わっちゃいましたが・・・」


「はぁ?どこがちょっとだ!

 全然形が違うじゃねーか」


「結構弄っちゃいましたからねー

 でも元は教官のですよ

 ちゃんと想いは引き継いでますので」


「お・・お前な・・・・

 そう言うのはいきなり言うんじゃねーよ」


久々のディズとのやり取りに笑いが起こる。

やっぱりこの人は良いな。

闘士として復帰しても俺の担当官としての依頼は引き続きやって貰えるし

今後とも付き合って行きたいと思う。

ミガとララに武具を融通してあげたいと提案してみるかな。



連れて行かれたのは周囲が賑やかな立地にある闘技場だ。

娯楽街と言うか飲み屋街と言うか闘技場を中心に広がったエリアなんだろう。


警備兵に引き渡され控室に通されるのは同じだが

魔法組が暴走しない為の安全措置として

新たに束縛の魔道具を装着されたのが違いかな。

これは行動範囲を限られた範囲内に制限する効果がある魔道具だ。

規定範囲外に出ると苦痛や麻痺が即時発動され警報が鳴る。

場合によってはハンディキャップマッチとして

能力が制限されたりする事にも使えるんだそうだ。


今回は1対1のマッチメイクの為、控室には俺しか居ない。

装備品については制限無しなので持ち込んだ武具のチェックをする。

武器は短槍をメインに予備にナイフ等を用意し

魔銃もオリジナルのケースに入れて目立たない様に腰に付けている。

防具は新しく作った鎧で下に着ているのも耐熱耐刃に優れた物だ。


それにしてもなぁ対戦相手もわからんのに・・・と、ふと思い出す。


「初回は大きく儲けるチャンス」


そう言って笑うディズとミガを。


初戦がチャンスと意気投合し盛り上がったらしい。

あの2人は意外と気が合うようだ。


ミガは「出来るだけ目立って来い」って言ってたけどやり過ぎちゃうのも何だしなぁ。

ディズもニヤニヤするだけで相手は教えてくれなかった上に

「立場の事なんて考えなくて良いから全力でブチノメして来い」だけだったし。

「倒す前に猛烈に煽ってみな面白い事になるからさ」とは言ってたけど・・・。

何つうか凄く嫌な予感がするのは気の所為なんだろうか。


呼び出され通路を進むと遠くから歓声のようなモノも聞こえてくる、

闘技場もデカかったし通路自体も広くしっかりとした作りだ。

多分、大型の魔獣なんかの使用も考慮した作りなんだろう。

こんな場所を使うんだから相当な実力者が相手なんだろうな。

しかもこの歓声から人気もあるような実力派だろう。

困るなよなぁ・・・・主に手加減的に・・・・。


「ウオォォォォォォ」

「ワァアアァアアアアア」


重く大きい扉が開かれ物凄い歓声の中に俺は出て行い中央付近で停まる。


どうも俺は無謀にも挑戦してきた挑戦者で

観客達はボロ負けにされるのを見に来ったて感じのようだ。

何故知ってるかって?そんな感じのアナウンスが流れているからだよ!


「挑戦者は"勝利者の栄光"所属のミノルだぁ!

 なんと今日が闘士としての初戦なんだ

 新人が何処まで戦えるかなー!楽しませてくれよーぉう!」


と妙にテンションの高い実況が聞こえてるんだ。

闘士って国営ちゃうのか?こんな軽い感じでもいいのか?

確かに娯楽って面もあるんだろうけどさ。


「さーて、そろそろ皆さんもお待ちかねの

 あの人の登場だぁ!」


一際、歓声が高く大きくなると俺が出てきた反対側の門が開く。

そこから現れたのは煌びやかな武具に身を包んだ金の短髪の長身の男だった。


「そう!我らが貴公子!

 トイラッツオの登場だぁ!」


大歓声の中、観客に答えるよう優雅に一礼して入場し歩いてくる。

爽やかな顔には自信が満ち溢れている。


「君が今日の挑戦者かい?

 お手柔らかに頼むよ」


俺の前まで来た貴公子とか呼ばれているトイラッツオは

手を差し出してくる。


「今から命を賭けて戦おうって奴と握手?」


「まぁ普通ならそう思うだろうね

 だが今回は君と僕との一騎打ちだけだ

 それだけの為に来てくれた観客を楽しませてあげるのも

 闘士として大切な事だよ」


さぁと催促してくる手を仕方なしに握ると必然的に近寄る事になる。

貴公子さんは俺以外からは見えない嫌らしい笑顔をしながらスッと顔を近づけてきた。


「ふふ、君も苦労するね」


「なんの事だ?」


「いやいや、何でもないよ

 こっちの話でね

 それにしてもあんな条件を飲んでまで寄越したのが新人君とはね」


「何の話をしてる?」


コイツは何を言っているんだ?意味が分からんぞ。

何も答えずに先程の爽やかな顔に戻ると離れていく。

そして両手を上げて周囲に大声でアピールする。


「さぁ僕の胸を貸してあげよう

 思う存分若き力を出したまえ

 まずは魔法なしで相手をしてあげようじゃないか」


観客からの声援は凄い。

貴公子さんの人気は高いようだな。

見た目も煌びやかだし爽やかイケメンだし実力も認められてる。

それに引き替え俺は若すぎるしデビュー戦だし装備も地味だ。

まぁ地味とは言ってもシンプルなのは外見だけで中身は相当にエグイけどな。



ゆるりと片手剣を構える貴公子さんは見た目とは違い隙がない。

既に開始の合図は出ているのに俺の出方を見ているようだ。

何だかんだと言って俺みたいな若造にも油断はしないのが現役闘士と言ったところか。

余裕をもって接するが油断はしない。

なんともやり難い感じだぜ。

こういう時はテンプレ通りに強引に来いって話だよな。


仕方がない、こちらの動きを見てるならまずは試してみるかなっと。

素早く大きく踏み込みながら短槍を正面からシンプルに速い突きを繰り出す。


「うおっ」


焦った声を出す貴公子さんを見るに俺の攻撃は予想以上の

モノだったみたいだがギリギリで躱される。

お返しとばかりに剣で切りかかってくる。

俺はそれを躱し攻撃し貴公子さんも躱して攻撃してくる。

お互いに全力ではなく相手を確かめるような動きだ。


動きながらも貴公子さんの動きを冷静に見るがまだ余裕がある。

使用武器は細身の片手剣で盾は持っていない。

全身の防具が煌びやかで派手だが見た目の重量よりも動きが軽いので

何かしらの補助効果がある防具なのだろうか。

勿論、防御力自体も高いと思ってた方が良いだろうな。


ちょいとレベルを上げていってみるか。

突いて払って躱して弾く。

徐々に速度と精度を上げていく攻撃に観客のボルテージは急上昇だ。


「そんなものなのかな?」


数分間の攻防が続いた後にニヤリと笑うと共に

一気に速度を速め鋭い突きを繰り出してくる貴公子さん。


「うおっと」


唐突のリズムチェンジに軽く驚くも籠手でパーリング気味に弾き距離を取る。


「はは、上手く避けたじゃないか

 まぁここで終わったら僕を見に来てくれた

 観客の方々にも申し訳ないからね」


あれだけ動いたのにも関わらず息も切れずに平然と爽やかな貴公子さん。

こいつが上位陣と言われる者達の中でどの程度のランクに居るかは不明だが間違いなく実力者だろう。


「最初にこっちの攻撃に驚いたから御相子じゃない?」


俺の言葉にピキリと笑顔が歪む。


「なんだって?

 僕が驚いたと言うのかい?

 君なんかの攻撃に?

 好い加減な事は言わないで貰いたいなッ!」


そう言い放つと貴公子さんから切り掛ってくる。

先程よりも鋭い攻撃だ。

新人闘士の言葉にここまで反応するなんてプライドの塊のような奴だな。

もっとも最初の攻撃にビビったってのが図星だったってのもあるだろうけど。


派手に勝ってアピールしろって言われてるから好都合ではあるけどね。

ふむ、もうちょい煽ってみるか。


「そう?なら試してみる?」


攻撃を捌きつつタイミングを計り突きを繰り出す。

今迄の攻防の感じから貴公子さんがギリギリで避けれる程度にし

更に避けやすいように角度なんかも考えてあげての攻撃だ。


「くっ」


「あれ?こっちの攻撃なんて余裕なんじゃないの?

 随分とギリギリっぽいけど」


「舐めるなよ!新人がぁ!

 そう言う事は1発でもまともに入れてから言うんだな!」


貴公子さんの動きが速くなり無駄が減ってくる。

プライドを刺激された上に俺が予想以上に動くので余裕が無くなって来たんだろう。

頭に血が上りつつあるのに攻撃にムラが生じる事なく確かな技術を持っているんだろう。

貴公子さんの剣を捌きつつ当てる気のない攻撃をしながら誘い込む。


「はは、見たまえ

 僕が少しでも本気を出せば君の攻撃が当たる訳ないだろう」


「くっ」


「ほら!ほら!どうした?

 避けるのは上手いが攻撃がそんなんじゃ先が無いぞ」


他から見れば貴公子さんが断然有利に見えるだろう。

やはり本気を出せば新人なんて歯牙にも掛けないと。

本人も多分、そう感じていたんだろう動きに優雅さが戻ってくる。


だがそれは全て俺の誘導によるものだ。

少しづつ体勢や攻撃のタイミングを誘導し場が温まるのを待つ。


「いい加減に避けるのも限界だろッ!」


鋭い気迫と共に踏み込んで来る貴公子さん。


「うおっ!」


ワザとらしい声をあげつつ斬撃を何とか短槍で弾く。

だがその際に槍を手放してしまう。

ニヤリと笑う貴公子さんが斬撃の勢いを利用し回転からの突きを放ってくる。

歓声が大きくなり誰もが貴公子さんの勝利を確信する。


パキーン。


そんな高い音が響きわたり何かがクルクルと飛んでいく。


「ハァ?」


貴公子さんが自分の折れた片手剣を見て呆然とする。


コンコン。


そして俺はその頭をノックしてあげる。


「どう?勝ったと思った?」


俺はおもいっきりの笑顔で問い掛けた。


人気と実力がある奴が相手ならオッズもあがる!

とそんなゲス顔をしてた方々がいるようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ