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6-7

秋ですね。

オクトーバーですね。

ビール飲みたい。

皆さんこんにちは。

闘士の森山実留です。

え?まだ違うだろ?

ハハハ何を言ってるんですか。

試験で落ちる訳ないじゃないですか・・・ハハハ。





試験は市街地から少し離れた場所にある闘技場で行われる。

馬車での移動になるので俺は初めて養成所から出る事になった。


馬車の後ろに乗せられたのは俺以外には5人。

同じ闘技場での試験はこの人数だけらしいが全員が同じ試験を受ける訳でも無い。

試験はある程度の人数が集まらないと行わないが

かと言って反乱の危険も避けて大人数での移動も行わないとはディズ談だ。

今回も幾つかの闘技場で試験を行うので時間も馬車も分散して移動するらしい。


馬車の中は窓も何も無く薄暗い。

板張りの天井近くに換気用の穴が空いてるだけだ。

その為に少し蒸すが暑いって程じゃない。

全員が無言のままゴトゴトと馬車は発進した。


換気孔に手を掛けて体を持ち上げると少しだけ外が見れた。

郊外と聞いていたので森なんかを想像していたんだが

街並みに生活感はあるし人通りもそこそこあった。


アリスに調査して貰って養成所には幾つかのエリアが併設されているのが分った。

俺達が居る新人エリア以外も闘士の訓練所もあるし職員の住居エリアもある。

どんんだけ大規模なんだって話だ。

チラッと見えた養成所の壁はずっと続いていたけどな。

通りには職員に対応した店なんかも多いんだろうし

養成所で使用する様々な物を取り扱う問屋みたいのもあるんだろうな。


暇なのでウツラウツラしていると

スッと馬車の中が暗くなったと思うと外か出ろと声が掛った。

どうやら馬車のまま目的地に入ったようだ。


「"勝利者の栄光"所属、A17番

 そっちの控室に行け

 試験を開始する前に備運動を怠るなよ

 事前申請した装備品は後から用意される」


養成所と番号を確認し個別の指示を出された。

控室に入ると先客は2人だ。

同じ試験に挑むのはこの3人って事かな。


そういえばディズは一番上の試験とは言わないが上の方だとは言ってたな。

となるとこの2人も実力を認められて来たんだろう。

俺よりも体は大きく年も上のようだ。


2人共に会話も何もなく準備運動をして体を温めている。

挨拶をしようと思ったが時間が無いので俺も準備を始める。

じっくりと柔軟を行い関節をほぐしつつ観察した。

試験は3人同時で相手は現役の闘士のハズだ。

連携取れるなら仲間にもなりうるし出し抜こうと言うならライバルだしな。


2人と仮にAとBとしよう。

Aは身長は高く細身だ。

だがガリガリという印象はなく引き絞られた弦のような印象を受ける。

顔つきや目つきは鋭く落ち着いている。

年齢は少年と言うには無理があり青年と言った方が良いだろう。


=========================

名前:アイ

性別:男

職業:闘士訓練生

種族:クォーターエルフ

=========================


ほうほう、男でアイとはこれいかに。

エルフの血を引いている・・・・の割には雰囲気はきつめだな。

クォーターって事は25%だよな。

ミックスや混在種として判定されないのは血が強く出てるって事か。

相変わらず判定基準がわからん。


Bはズングリとした体系で背は余り高くない。

ツルリとした頭が特徴的で筋骨隆々の逞しい体だ。

ホッホッと軽やかな掛け声と共に運動をしている姿は何処かコミカルだ。

外見から年齢は掴みきれないが3人の中だと一番上だと思う。


=========================

名前:バッボア

性別:男

職業:闘士訓練生

種族:ドワーフ亜種

=========================


こっちもBのままで良さそうだ。

ドワーフ亜種・・・亜種ねぇ。

彼奴らは毛むくじゃら髭もじゃだった気がするけどなぁ。

亜種だとそうでもないのかな?

つうかこの世界って種族が多すぎて良くわからんな。

このステータス情報だって俺が色々と知って行けば変わってくようだし。



観察しつつ十分に体も温まった所で声が掛り

完全武装の兵士が数人入ってきて装備品が用意された。

間違いが無い事を確認し受け取る。


Aは短剣に小盾という変わった組合せで革の軽鎧だ。

至る所にナイフ等を装着しており速さを生かした戦い方の様だ。


Bは大きめの戦斧に要所のみを覆った金属製の部分鎧に分厚くゴツイ籠手。

双方共に明らかに支給品とは言えない装備品だ。

使い込まれているし雰囲気も馴染んでいる。

比べて俺の装備は支給品のボロイ革の軽鎧に何の変哲もない短剣を腰に差している。

手にはディズから譲られた短槍を握りナイフを何本か貰ったので各所に仕込んである。


明らかに武器だけ浮いてるよね。

自分でもハッキリと分る。


「おい、小僧

 随分と武器だけは立派だな」


ガハハと笑いながら隣から話しかけてきたのはバッボアだ。


「えぇ、教官に頂いた物です

 防具はサイズが合わなすぎて・・・・」


「ふむ、教官が実費で武具を譲るとは相当に気に入られてるな

 このランクに挑戦するんだから実力もあると言う事か」


「貴方のは違うんですか?」


「ガハハ、俺のこれは持込よ

 相棒と離れる訳にはいかんからな」


豪快に笑うバッボア。

持込って事は装備品込みで売られたって事なのかな。

それとも個人参加なのか?


「そこの若いのも同じじだろ?

 随分と質の良い短剣を持っておるわい」


「戦いの前は静かにして貰えないか?

 饒舌な奴ほど腕は悪いってのは良く聞く話しだろ?」


「ウハハ、随分と自信がある言い草だな」


「戦いになればわかる

 そっちの小僧も足を引っ張るなよ」


どちらからも小僧呼ばわりされたが仕方がないだろう。

明らかに俺は10代前半、しかも割と童顔だし

この闘士登録試験は上のランクらしいしな。


「ガハハ、随分と大きく言うもんじゃ

 それでこそこのランクに挑もうと言うモノだな」


「フッ、そう言うお前もな

 そっちの小僧は良くも挑戦許可が下りたものだ

 まぁ戦闘になれば嫌でも差と言うのが分るだろう

 大人しく邪魔をしないで貰いたいがね」


そう言うとアイは装備品の具合を点検し調整に集中しだした。

強きな発言だが緊張はしてるようだ。


「まぁこのランクに挑戦するんじゃ

 お互いに腕に自信はあるんじゃろうて」


・・・・・なんか妙に引っかかるな。

試験と言っても若手や下っ端の闘士相手に戦うんだろ?

しかも良い結果さえ出せば倒したり勝たなくても良いって。


「ところで・・・このランクって言ってますけど

 上とは聞いてますけど最高って事じゃないんですよね?

 まだ上には上があるって感じで・・・・」


妙に不安になったのでBに話を振ってみる。

何故かバッボアの顔が凍る・・・更に言えばアイも同じだ。


「お・・・・おい小僧・・・・

 お主は・・・・何も聞いとらんのか?」


「いや、普通の試験よりは上のランクの闘士が相手になると聞きましたが

 それでも若手や下っ端の中堅クラス手前位だと・・・・」


「・・・・そりゃ・・・お前・・・・・騙されとるぞ」


「え?なんで?どうして?」


非常に残念そうな顔をしているバッボアに代わってアイが口を開いた。


「小僧・・・良いか?一度しか言わないからな

 この試験は"手が空いてて試験官をやっても良いという闘士が選ばれる"んだ」


「そ、それって」


「しかもだ"選定は上位者から順に下に降りてくる"」


「え?」


説明は終わりだと言わんばかりに調整に戻るアイ。


「そういう事じゃ

 だがまぁ精々が中堅クラスじゃろうて

 それでも普通の試験とは違い実力者が出てくるハズ・・・・腕がなるのう」


マジかよ・・・またもディズに騙された・・・・。

確かに「養成所の評価が低いのにデビュー戦ではなるべく上の方に出る」

これが最初にドカンと賭けで儲けれる方法だ!

とは言っていたけどさ・・・・・この扱いは無いんじゃね?


どうやら2人共に中堅クラスなんて目じゃないって感じのようだ。

俺はどうなんだろうなぁ。

現在も訓練中は能力向上系のスキルはオフにしているし

≪手加減≫も発動して大体を5割程度に設定している。

この状態でもディズの攻撃を捌くのは出来るし

寧ろこの状態で訓練すればするほどに

素の能力値が高まってるような気がするので

少しづつだが動けるようになってきている。

足枷をする事によって鍛えられて基礎能力値が伸びてるようだ。


「あれ?お前ってこんなに動けなかったか?

 いやでも手を抜いてる感じもしねぇしなぁ・・・」


がディズの意見だったが少しづつ動きも良くなって来てるし

それ以前にその状態でもディズに対処出来てるから文句は言えない。

前よりも攻撃を受ける事が多くなってしまったけど

耐久力等の防御面が鍛えられるので逆に良かった。



準備後に最終チェックを受けて部屋を出る。

通路を進んで行くと頑丈そうな大きな扉があった。


「あの先が闘技場で今回の試験会場だ

 通常リングなので思う存分戦うが良い」


兵士の1人がそう言うと壁にあったレバーを操作する。

何処からかガラガラジャラジャラと重い音がし扉が開き

踏み固められた土の闘技場が目の前に広がる。


「試験官は後から来る

 お前達は先に中央で待っていろ」


アイとバッボアは堂々と入って行く。

まだ闘士登録前とは思えない程の足取りだ。


俺達が入ってきた扉を同じようなのが幾つもあり

周囲をよく観察してみたものの監視が付いているだけで普通のようだ。

中に進み出ると後ろで扉の閉まる重い音がする。


中央部分で待ってると反対側の扉が開く。

そこから出てきたのは随分と大柄の男だ。

肌の色は浅黒く短く切りそろえられた金の短髪。

金属で要所を補強した革の軽鎧に

長剣と盾のオーソドックスなスタイル。

予備武装として短剣が見えるがそれだけだ。

それにしてもデカい。

外見は人族に見えるが頭1個どころか2個は超えてるぞ。


「オイオイ

 こんな事があるのかのう

 こりゃまた随分な奴がきよったわい」


「の・・・・ようですね・・・・

 まさか魔法組が来るとは・・・・」


アイとバッボアが先程までの自信に満ちた顔から一転し真面目な顔し

纏う空気から緊張しているのがわかる。


=========================

名前:リュードラル

性別:男

職業:闘士

種族:アインラード


≪アインラード≫


亜人族(巨人族)の中でも小さい個体が

人族との混血をしたのが祖とされる種族

人族よりも相当に大柄な体ではあるが巨人族程ではなく

浅黒い肌が特徴でサイズ以外の外見は人族と似ている

身体能力は高く魔力も多いが適性は少ない

平均身長は2m程度と言われているが

個体によってはバラつきが大きい種族でもある

=========================


アインラードって種族なのか。

コイツもデカいけど巨人族ってこれよりデケーのかよ。

流石はファンタジー。


此方に向かってくるリュードラルは

細く見える腕も足も胴も十全に鍛えられているのだろう。

筋肉がはち切れそうな程のハリだ。

それに身長と比較すると細く見えたが俺から見ると丸太の如しだ。

手に持つ長剣も大剣とは行かないまでも大物だし。


「ひょっとしてさっき言ってたような上の人?」


とりあえずアイは教えてくれそうもないのでバッボアに聞いてみる。


「そうじゃな

 お前さんは純養成所上がりの様だから知らんのも無理はないが

 あ奴はリュードラルという元冒険者上がりの魔法組よ

 まさか無魔法にまで出張って来るとは思わなんだ」


「強いの?」


「強い・・・なんてもんじゃねえな・・・・

 俺はなぁ・・・多少は腕に自信もあるし

 闘士でも半ばまでなら十分に通じると思ってる

 だがな上に行けば行くほどに化物みたいなのが多い

 奴はその中の1人じゃ」


「なんでそんな人が・・・・」


「暇だったんだろ・・・・

 無類の戦闘好きだって聞いてるからな

 戦いを重視し過ぎて勝敗に興味が無く成績は余り高くないけどな」


と俺の呟きにアイが乗ってくる。


「何にせよリュードラルと良い戦いをしないと

 試験合格は無いって事じゃな」


「あぁ、2人共足を引っ張るなよ」


「フフ、お主もな・・・小僧も頑張れよ」


どうやら俺の質問で気が抜けたようだ。

無知も時には役に立つか。


「おう、ヒヨっ子共よ

 相談は終わったか?

 俺としては早速やりたいんだがどうする?

 1人づつやるか?全員で来るか?

 好きに選んで良いぜ

 今日は俺も魔法は使え無いから安心して良いぞ」


中央まで歩いて来たリュードラルが

手首と首についた魔道具を見せる。

安心して掛ってこいとばかりに。

だがそれを見て安心出来る程に感じる圧力は軽くない。


「まぁ初対面のお前達に決めろってのも無理な話か

 こっちから行くから後は好きに対処しろ」


早く戦いたいとばかりにリュードラルは楽しそうに笑った。


ついに試験開始です。

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