6-6
雨が続きますね・・・・。
モグモグ・・・・皆さん・・・モグモグ・・・
こんばんわ・・ぷはぁ・・・ゴキュゴキュ・・・
モヒヤマミノフです・・・・ゴックン・・・・
ふぅ、満足だ・・・・。
さて、見つけた食料や飲み物を片っ端から食ったり
アイテムボックスに放り込みつつ俺にはやる事があった。
今回はまだアリスを呼び出して無かった。
初回は実体を伴った派手な演出が行われるので
独りになれる時間が必要だったのでチャンスを伺っていた。
ナビは神システム経由の起動だから魔道具は問題無いハズ!
カモン!アリスさん!
> ナビゲーションアプリを起動します
> 転生後の初回起動の為、調整を行います・・・・。
何処からか光の粒子がフワフワと出現し集まって行く。
この演出が無ければ直ぐにでも呼び出すのになぁ。
次回以降は何も無いのにさ・・・・。
なんにせよ何時みても幻想的な光景だな。
中身はまぁアレだけど。
そして一際強く発光し
「ふぉーーーーーーー!
ながーい!今回もながーい!
なんでもっと早く呼び出してく「ぶぎゃぁ!」」
俺に打たれた。
「痛い!痛いじゃないですか!
何をするんですか!」
「静かに!静かにしろ!」
「え?なんでですか!
折角久しぶりに会えたと言うのに!
私があの何もない空間・・・・「イたい痛イデフ」」
なおも声高らかに感動の再開を喜ぼうとするアリスの顔面を
ギリギリと万力の様に締め付けて静かにさせた。
「静かにできるか?」
「ファイ」
ちょっぴり涙目になり落ち着いたアリスに食い物を勧めながら状況を教える。
「そうですか・・・今回は奴隷ですか
折角、人族になったのに残念ですね」
「まぁ・・・境遇は悪くないんだがな
どうにも外に出る手段が無いんだ」
「実留さんなら魔法でババーンとは出来ないんですか?」
「この魔道具がなぁ
こいつの所為で上手い事に管理されちゃうんだよ」
「管理する魔道具ですか
集団を効率良く管理するなんて嫌な感じですね」
「奴隷に命を掛けて貰うのが商売なんだ仕方ないと思うのは
多分、俺が他人事だからだろうな」
「正直な所、他の方がどうなっても良いと言うなら
実留さんなら大丈夫そうですしね」
「まあな
一気に高魔力をぶち込めば簡単に壊せると思うけど
どうも魔力量と苦痛が比例するみたいでさ
そうすると確実に旅立つのが出ちゃいそうだし」
「それは・・・まぁ・・・なんとも・・・・
解除される時は無いんですか?」
「基本的には取外しは身分を買い戻すまでは駄目そうだ
集団リンクが解除される場合もあったけど監視はキッチリしてたな
直にこの魔道具での苦痛は与えられなくても
後からの連帯責任とかありそうだしさ」
「こんな魔道具で管理する位ですしね」
「そんな訳で少しの間はアリスには情報収集して欲しいんだ
この養成所は結構広いみたいなんだけど移動出来る範囲が狭くてさ」
「わかりました!頑張りますね
次回以降の実体化は目立たないですからね」
「だよなー
初回のアレどうにかして欲しいよな
凄く綺麗なんだけどな」
「え?そんな・・・・私が綺麗だなんて・・・」
「初回のアレどうにかして欲しいよな
光りの粒子がフワフワしてるのは凄く綺麗なんだけどな」
「・・・・・なんで言い直したんですか?」
「そう言えば体の調子はどうだ?
俺の魔力が増えてるから影響があると思うんだけど」
「そうですね・・・・
そう言えば体に力が漲ってますね
奥底から湧いて来るような感じです」
「あと、アリス用の武器を実体化出来るようになったハズなんだけど
どうだ?」
「えーっと・・・ちょっと待ってくださいね・・・・エイッ」
一瞬でアリスの手には小さな剣が握られていた。
大きさは以前と変わらないしデザインも少しシンプルになったようだ。
刀身は透明感のある白銀に光っていて美しい。
「アリス、服も変わってるぞ」
「あれ?本当ですね」
体にフィットしつつ少しの飾りつけがされている服は変わらないが
ティアラ、プレストアーマー、籠手、ブーツを身に着けていた。
刀身と同じく透明感のある白銀だ。
剣を出し入れすると防具も実体化されるようで
意識すれば個別でも可能だった。
「あまり時間もないから詳しい事は後にしよう
アリスも折を見て確認しといてくれよ」
「わかりましたー!」
嬉しそうに剣を振ったり突いたりしていた。
その他にも色々と取り決めてアリスは俺の中に戻って行った。
さて・・・・アリスも呼ぶ事が出来た。
そして食い物や飲み物に見落としが無いかをチェックし
ある程度の量が減ったのをわからなくするように
隠蔽し終わった頃にディズが帰ってきた。
「おい・・・・・ここまでかよ・・・・・
なんも・・・・なんもねえじゃねえか・・・」
ちゃんと容器やゴミなんかを残しつつ中身をゴッソリと
胃とアイテムボックスに移し終わった部屋を見て
ディズが項垂れていたけど仕方がないよね。
これで節約すれば数日間分の飲食物は手に入れた。
まぁ酒の肴と言うかツマミ系が多いのは難点だが
食べ物が入手出来たのは色々とありがたい。
酒も何本かあったので少し舐めて良さそうなのをピックアップした。
「これで元気が出ました!
明日からもバリバリやれそうです!」
「ハハ・・・・それは・・・・ありがたいな」
そう言うディズは何かが抜け落ちた様な顔をしながら
俺を大部屋まで送ってくれた。
内部試合で実力が認められたので俺の再試験が決まった。
個人的には初試験なんだけどね。
闘士登録試験には幾つかのランクがある。
上のランクに合格すればスタートの給金も上がり
人気があったり賞金が高い試合に出場できたりと選択の幅が広がる。
つまりはスタートダッシュが出来るって訳だな。
その為、出来るだけ上の試験に挑戦したい思いはあるが
勿論、相手となる闘士のランクも上がるのが問題だ。
試験に合格しないと旨味は無いし出来れば上でスタートしたい。
でも比例して合格する為の実力は必要になる。
それが悩ましい所だな。
試験は他にも海戦や集団戦等の専門的な部門もあったりするので
様々な形で闘士と言うのはこの国を支えているのだろう。
流石は武力で中立国も守っている国だな。
この養成所は個人戦を主に取り扱ってるから現状では関係がないけど。
何時かは方向転換するかもしれないし身売りもあるかもしれない。
有名になれば要請により出場依頼なんかもあったりするそうだけどね。
そしてもう一つ大きな出来事があった。
試合の2日後にサエリアがこの養成所を出て行った。
正確に言えば他の養成所に買われていった。
その養成所は"褒め称えよ繁栄の園"って名前だ。
ディズに聞くと国が直営している養成所の1つで
騎士団、兵士団の下部組織と言った意味合いが強く
青田刈りとばかりに優秀な者を集めているとの事。
「いやー、あそこで優勝してたら
お前がそこに買われてたかもな」
「そっかー、サエリアも目的があったみたいだし
此処に居るよりかは良かったのかな」
俺の意見にディズは渋い表情だ。
「いや・・・・そうとも言えねぇんだよなぁ」
「どうして?国直営なんでしょ?
ここよりかは上でしょ?」
「そりゃ、格や待遇は此処よりもずっと上だ
ある程度の実績を積めば身分も解放されて正式な国籍を与えられるだろうさ」
「何が駄目なの?」
「騎士団の下の兵士団の更に下の組織だぞ?
国籍を与えられたと言っても扱いは奴隷みたいなもんさ
身分は一般国民で自由を与えられてはいるが
訓練漬けの毎日でここと対して変わりはしねぇ」
「それでも奴隷よりは・・・・」
「そりゃな
実力を付けて闘士として実績を上げて行けば
兵士団にも呼ばれるだろうし更に上がれば騎士団もありうる
国を代表とする闘士として栄誉を手に入れるかもしれねぇ
今の状況じゃ全ては夢のまた夢だ
険しい道とは言え掴める立場にはなれるんだからな」
「ならどうして・・・」
「生存率が余り高くねぇんだ・・・・」
「え?どういう事ですか?」
「扱いは良くなるが環境が過酷って事だ
怪我も手当されるし装備だって良いだろう
だがな訓練と言っても実地訓練が殆どなんだ
地方の治安維持なんかに派遣させられて実戦の日々さ
闘士の試合に出ても上のランクが多いしな」
「でも折角高い金を出して養成所から引き上げても
そんな使い捨てるようにしますかね」
「それがまぁ
この国の求めるとこって言うかな
素質のある者を叩いて伸ばすってな
多少の出費よりも本当の強者を手に入れるんだろ」
「じゃぁ・・・サエ・・・2番も・・・」
「まぁ戦いの日々だろうな
生き残れるかは本人の実力と運次第だろう
それでも生き残れさえすれば
進む先はお前よりも相当に明るいけどな」
「割り切った考えですね・・・」
「まぁこの国はそれだけ強い者を欲しているって事だな
広大な領土には危険な場所も多い
幸い、この国は他国からの影響は少ないが
代わりに魔獣や魔物の被害は多いし迷宮や秘境も多い
実戦は幾らでも出来るしそこから得られる物は国益にも繋がるからな」
「ですか・・・・でも・・・・」
「お前が言いたい事もわからんでもないが悪い話でもないさ
この国では実力が認められるのは名誉でもあり誇りだ
危険の反面、見返りも大きい
"冨と名誉が欲しいならば強くあれ"だからな
腕さえあれば確実に登っていける階段があるんだ
本人だって理解して進んでいるだろうさ」
「そうだと良いんですが」
「一応は移る前に本人確認があったハズだぜ
俺も以前に奪われた事があるからな」
「なんか嫌そうな良い方ですね」
「そりゃ・・・・まぁ・・・な
前にも言ったが俺達は教えたモンが戦って稼ぐ事で見返りがあるんだ
養成所からすれば優秀な者を国に輩出するって事は実績の1つになるし
奴隷の代金もキッチリ支払われるから損は無い
・・・・が、俺達には多少の見返りがあるだけだ
それは面白くもなんともねぇ」
「でも逆に優秀な者を多く輩出すれば
教官自体も評価されるのでは?」
「そらそうだろ
認められればお抱えの指導教官って道もある
知り合いになった奴が居たが羽振りは良かったぜ
俺なんかじゃ入るのにビビっちまうような高級店に連れてかれたしな」
「なら良いじゃないですか
妙に毛嫌いしてる感がありますよ」
「確かに国に抱えられれば教官にしろ闘士にしろ名誉な事だ
そこらの一般市民よりも立場は上だし収入も比べ物にならないだろう
だがな、その分ノルマや実績を上げる事が求められるんだ
俺はそんなの嫌だね
のんびりと自由に好きに生きたいのさ
そこらの酒場でワイワイと馬鹿話して飲んだくれてぇのさ」
「それ・・・自由の無い者の前で言っちゃいます」
「おぉ、わりいわりぃ
でもまぁ前にも言ったがよ
お前は俺と同じ感じがしたんだよな
国に抱えられるよりは自由になりたいだろ?」
「そりゃまぁ・・・そうですけど・・・」
「だからこの前の試合は大人しくさせたって訳だ
感謝して欲しいもんだぜ」
「なら事前に言っておいてくれればいいじゃないですか」
「そういう可能性があるかもって位だったしな
天幕の中に国の関係者が来てるって保障も無かったしよ」
そう言ってカラカラと笑うディズは
話す内容と軽い口調とは裏腹にとても底が深く感じた。
サエリアも居なくなって更に大部屋がガランとし
部屋は更に薄ら寒くなった気がする。
残っている者もそれぞれが試験が決まったのか
何処かソワソワした感じもするが相変わらず最低限の会話しかない。
俺は転生後の数日で大部屋ではする事が無いと判断し
早々に寝たフリをしつつ体内魔力の操作を訓練する事にしていた。
≪魔力量増加≫で増えた魔力量を把握し少しだけ取出して操作する。
≪魔力純化≫≪魔力圧縮≫≪高度魔力操作≫にも馴れておいた方が良いしな。
残念ながら魔道具の所為で発動は出来ないし体内で扱える魔力も少ないが
概要の把握と多少の操作は出来るし訓練にもなる。
昼は戦闘訓練をし夜は魔力操作訓練。
アリスには夜な夜な養成所の中を探って貰った。
そしてサエリアが去った3日後、俺の試験日がやってきた。
グッバイ!サエリア!
(死んでないけどね)




