5-59
桜だー!花見だー!
目が覚めると何も無い白い空間に置かれた布団で寝ていた。
ご丁寧に畳の上に敷かれている。
新しい畳の様で久しぶりに嗅いだ香りは随分と懐かしく感じるな。
【やぁ、おはよう
気分はどうかな?】
「・・・・・・あぁ・・・・いや・・・
悪く・・・はないな」
【それは重畳
今回は凄かったね
まさかの連続で良かったよ】
「お・・・・おう・・・・・」
【あれ?どうしたの?
今回は普通に死んだだけだから魂に影響は無いハズなんだけど
どこか調子が悪かったりする?】
「いや・・・そんな事はないんだが・・・・
結局、最後はどうなったんだ?」
最後のバタバタで何というかあっという間の出来事だったからな。
あんまし良く覚えてないし・・・。
【まぁ慌ただしかったから
覚えてないのは仕方がないよね】
「だから考えを読むなって」
【あはは
まぁ最後は君の考えた通りかな
ゴミが集めた力の塊が暴走しちゃったんだね
長年に溜めた力が神気で強化されてたから凄かったよ】
「そうだろうなぁ・・・・
こっちの障壁なんてお構いなしに抜いてきやがったもんな
でも老人神は送り帰したハズだろ?」
【うんうん、あの迷宮神君はね
本体だけ指定して送還しちゃったんだよね
だから集めた力は置いてきちゃったわけ
それがあの爆発の正体だね
もう笑っちゃうよ】
「いや・・・・・・笑えないから・・・・
最後の違和感はそう言う事だったのね
神気で強化された力ね・・そりゃあんな状態じゃ無理だわな」
【最後の起爆材も残った神気のカスだったしね】
「折角、実里と会えたのに・・・」
【今回は良い所まで行ったもんね
あれで送還が綺麗に終わってたらね
もう少し世界が動いたと思うのに】
「他の皆はどうなった?
キリルとリースは魔王は?実里は?」
【まぁまぁ落ち着きなよ】
そう言ってお茶を出してきてくれた。
遠慮せずにズズっとのむと・・・・美味い!
緑茶とも紅茶とも言えないけど何とも美味い。
そういえばこのお茶も神界のアレと同じなんだろうか?
【ここは神界じゃなくて狭間だから違うよ
魂と言うよりは擬似的に精神と肉体を
実体化させてるようなものなんだ
だから今の姿は生前・・・転生前の体でしょ】
「あぁ・・・なるほどな・・・
違和感が全然ないから気が付かなった
って、だから勝手に読むなって」
【あはは
えっと、それでだけどね
現地に居た友人達は多少の怪我はあるものの全員無事だよ
迷宮も吹き飛んでないしね】
「そうなのか?」
【最後の暴走と言うか暴発は大本は現世の力だからね
迷宮自体を吹き飛ばす程じゃ無かったよ
本体の神気が暴走してたら周囲一体は根こそぎだっただろうね
それでもまぁ一つ上の床は抜ける程の威力はあったみたいだけど
君の友人君達も怪我しちゃったけど無事と言って良いだろうね】
「怪我は酷いのか?」
【一階層分が崩落した程度の被害だからね
大怪我ではあるけど命に影響はないよ】
「寧ろそんな状況で怪我で済んだのが幸いか」
【うんうんそうだね
ちなみに魔王君が一番酷い怪我をしてるよ】
「そうなのか?」
【うんうん
最後の力を振り絞って友人君達を守ってたからね
そこに大きな落石が直撃しちゃったみたい】
「魔王が?嘘だろ?」
【魔王君は君の事が気に入ったみたいだよ
しかも相当にね】
「えー、だって前に殺されてんだぜ」
【以前に君を殺した事で魔王君も成長してるし
色々と思う所があったんじゃないかな】
「そんなもんなの?」
【幾ら能力値が低いとは言え僕の加護を受けてるんだよ?
君を倒したらどれだけの経験値が入ると思ってるの?
もうちょっと自信を持って貰いたいな】
「そんなメタル的なモンスターのような扱いは御免だぞ」
【あはは
まぁその種類の中でも4人しか居ない内の1人なんだから
キング的よりもはぐれ的よりもレア度は高いね】
「たとえ話がわかんのかよ?!」
【まぁ僕も色々と勉強してるんだよ
君が居た元の世界には色々と娯楽が多いから網羅するのは大変だよ】
「ま・・・・まぁ・・・良いけどさ
迷宮が無事なら地上の聖騎士やブタ子も無事って事だな」
【うんうん
結構な地震は発生したし押し出される様に瘴気が噴き出たけどね
それだけって言えばそれだけだし】
「それ大丈夫なのか?」
【発生源が居なくなったんだから一時的なモノだよ
経過と共に落ち着くだろうね
被害としては体調不良者は出たみたいだけど全員無事だね
精神汚染も発生してないし
流石は聖騎士君達だね】
「そっか・・・・んじゃ事態は収束したって事か
実里はどうなった?」
【妹君は現地に向かっている所だったね
その後は到着して怪我人の手当にあたってたね
魔王君も助けて貰ったんだよ】
「そか・・・・まぁ魔王には感謝しておくか
またいつ殺されるかわかんないから仲良くしたくはないけどな」
【そう言わないであげてよ
あぁ見えて良い子なんだよ・・・多分】
「多分てなんだよ
そりゃ勇者よりかは話が通じそうだけどさ」
【勇者君も色々とあるからね
それにあの姿だと制限もデメリットもあるから
勘違いしやすくはあるんだけどさ】
「そんな事を魔王も言ってたな」
【そりゃもう
でも多分だけど本人に直接会っても
戦いにはならないと思うよ】
「理由は?
・・・・・・どうせ教えてくれないんだろうけど」
【うんうん
何事も自分で経験して貰いたいからね】
「魔王の分身のように勇者の憑代にも色々とあるって事だな」
【都合の良い事ばかりの訳ないよね
何事にも対価は必要だよ】
「そりゃそうだな
そういや魔王が老人神を抑え込むのに
俺の力を借りてたけどアレもデメリットあったりするの?」
【うんうん
そりゃもちろんあるさ】
「でもどうせ教えてくれないんだろ?」
【うーん】
「どうした?
ひょっとして教えてくれるの?」
【・・・・・まぁこれはサービスと言うか
君へも影響があるから良いかな】
「影響?」
【魔王君のあの技ってね
相手との接続が必要になるんだ】
「そういえばそんな事もやってたな」
【その時にさ何か大きなモノに繋がった気がしなかった?】
「うーん、そういえば感じた様な気もする」
【アレね魂を繋げてるんだよ】
「はぁ?そんな事出来る?」
【正確に言えば魂間の連絡路を作ったんだよ
現世では呪法と言うかと禁忌とされている類だろうね
もっとも普通なら出来ないだろうけど】
「そうなの?」
【相手の力を借りる為に魂を繋げるといっても
一方通行の訳じゃ無くてお互いに認識出来る状態なんだ
君も魔王を感じれたでしょ?
魔王が君に干渉出来るって事は君から魔王にも干渉出来るって事だよ】
「なるほどなぁ・・・・
つまり俺が魔王の力を借りる事も出来たって事か」
【それだけじゃないよ
魂が繋がると言う事は世界の隔たりが無くなると言う事に他ならないんだ】
「どういうこと?」
【全ての事に対して抵抗が無くなるって事だね
呪いでも睡眠でも何でも100%通るよ
自分で自分に掛けるって感じだね
厳密に言えば違うけどそんな認識で良いと思う
もちろん物理的な事も含めてね】
「つまりあの段階で俺が魔法なりなんなりで
魔王を眠らせたりしたら確実に寝ちゃうって事?」
【そうなるね
それを考えるとあの方法は魔王君にとっても
諸刃の剣のようなものなんじゃないかな
勇者君には絶対に持掛けない類の話だよ
他にも色々と制限はあるしね】
「そっかー
そりゃ確かに俺には関係ある話だな
うん、次は断ろう
そんな状況になるのは嫌だけどな」
【えっとね影響があるのは今だよ】
「え?どういう事?」
【君と魔王君さ、疲れてボロボロでさ接続解いて無かったでしょ?
そのまま君は死んじゃったけど転生でしょ?
それで魔王君との繋がりが僅かだけど出来ちゃったままみたいなんだよね】
「まずいの?」
【うーん・・・・何とも言えないんだよね
繋がりがあると言えばあるんだけどど
ここは世界の壁の外と言っても良い場所だから
距離も時間も何もかもが違うんだ
どの程度影響が出るかは僕でも予測できないんだよね】
「予想出来る最高と最悪では?」
【力のバイパスだけ繋がって力を使えるようになるのが最高で
最低は何処かの漫画の双子のように以心伝心みたいな?】
「・・・・・・おいおい・・・・本当に最悪だな」
【でもまぁ・・・・多分大丈夫だと思うよ
繋がってると言ってもあくまでも仮設のバイパスが残ってるってだけで
術式はそんなに長く持たないからそのうちに消滅するよ
数日か数年かはハッキリと言えないけどね
もしかしたら転生の流れに押されて切れるかもしれないし】
「うーん、なんかモヤモヤするな
影響が無きゃいいけど・・・・
気にしても仕方がないか・・・・」
【うんうん
前向きに行こうよ】
「死んだのに前向きってどんだけだよ」
【そこはまぁ死の概念から抜け出せた者の特権と言う事で】
「なんか随分と軽い感じで言うなよなぁ
・・・・・そうかそう考えると俺って不老じゃ無いけど
不死って事ではあるのか」
【うんうん、そうだね】
「・・・・・・・あのさ・・・・・もし・・・もしだよ
俺がこの転生のループから抜け出したいって言ったらどうなるんだ?」
俺は不老でも無いし死なない訳でもない。
でも死んだら次の生に進む事が出来る。
少しづつ強くなってる事も実感できるし俺を待ってくれる人達も
ちょっとだけど増えた。
今はまだ良い。
だけど・・・・今後・・・・もし・・・・もしも・・・
老衰で死ぬ事があったりしたら・・・俺はちゃんと死ねるんだろうか。
今迄に会った事があって既に死んだ者も居るだろう。
この時代は情報が伝わるのが遅いし伝わる範囲も狭い。
誰が死んで誰が生きてるかを俺が知る術は少ない。
何時かは俺の知らない所で母犬や母牛。
犬兄妹達やジミーなんかも死んでいくのだろう。
それに俺は・・・・俺は耐えられるんだろうか・・・・。
いつもは特徴の無い顔でヘラヘラと軽い感じを受ける神の雰囲気がサッと変わる。
【うん・・・・・そうだね・・・・
君がそれを望むなら流れから外す事は可能だよ】
「出来るのか?」
【うん、出来るよ
君の魂は記憶を消されて普通の流れにのって
世界の何処かで何かしらの生命体に生まれ変わるだろうね】
「前に言ってた流ってやつか」
【だけどこの場所に来ちゃったら転生してもわないと駄目なんだよね
あくまでも此処は世界の狭間だからね
このままずっと悠久の時を此処で過ごすって言うならそれでも良いけどね】
「ここの何もない空間で?」
【そうだねぇ・・・・・せめてこの場所でなら
好きな物を出せるし好きな事を出来るようにしてあげなくもないけどね】
「え?まじで?」
【でも誰にも会えないし誰も連れて来れないよ
永久に終わらない時を独りで過ごす事になるけど大丈夫?
擬似的に生命を作る事も出来るけど・・・・まぁそんな感じだよ】
「あ、うん
やっぱり良いや」
【うんうん、それが良いね
だから転生を終わらせたいなら
次の転生を最後と決めてから行くのを勧めしたいな
そうすれば僕も受け入れ準備しておくしね】
「そうするよ
まぁまだ当分先だけどな
実里にちゃんと会えてないしな」
【それがいいね
僕も君が活躍するのをもっと観ていたいしね】
「結局は自分の暇潰しじゃないか」
【あはは、そう言わないでも
こうみえて僕も忙しいんだよ】
「どうだかな」
【僕達の時間の感覚や世界の認識の仕方は
現世とは違うからね
君がそう思うのは仕方ないけどさ】
「神ねぇ・・・そういや老人神はどうなったの?
上手く処理出来たの?」
【ゴミは大本の神に問合せ中だよ
必要ないからと切り捨てた力だから返却不要って返事がくると思うけどね
別の世界に送りこむ事になるからお互いに大変だしね
まぁ何か下級神か誰かの属神を作るのに使うってのが有力かな】
「そんなもんなのかね・・・随分と適当っぽいけど」
【神力と言っても君達で言う魔力とか生命力とかになるんだけど
割と小さい目だから送る労力の割には使い道も微妙だから相手も困ると思うよ】
「あれで小さいのかよ」
【まぁ僕達にしたらだけどね】
「そかー、あとは・・・ファーバンは?
巻込まれて強制転生しちゃったっぽいんだけど」
【上司に物凄く叱られてるみたいだね】
「やっぱりマズイ事になってるの?」
【上司の権限を使ってるのもバレちゃったからね
他にも色々とやらかしてるしなぁ
巻込まれてなかったら全部はバレなかったと思うけど
流石に僕もそこまでは口を出せないからね】
「そりゃまぁ下っ端のミスに
トップが出てく訳にはいかんよね」
【うんうん、そういう事
でも・・・彼にも何かしてあげないとね
一応は君を助けてくれたんだし
現世に落ちたゴミを回収もしてくれたしね】
ニヤっと笑いながら神は何かを考え出したようだ。
まぁロズの事もあるから変な事は無いと思うんだけどなぁ・・・。
思うんだけどなぁ・・・・どうなのかなぁ・・・。
俺嫌だよ!また※※※※君さんに怒られるの!
ついに来ましたね。
この場所に。




