5-57
昼は冬の上着だと暑さを感じる事が増えてきました。
もう春も近いですね。
老人神だけでも大変なのに色々とグチャクチャな状況です。
どうすれば良いんですか!
あ、森山実留です。
神と神っぽいのと魔王と加護者達と俺と・・・・・あぁ!もうっ!
「おい・・・・あそこの酷い外見の女も知り合いか?」
ロイラの変わり様に驚いていた俺が魔王を見ると
真剣な顔をして見つめていた。
「一応は俺の同行者・・・になるのかな?
途中ではぐれたんだけど」
「そうか・・・・同行者ね」
「何か引っかかるのか?
確かにちょっと変だなとは感じるけど・・・」
「まぁ隠しても仕方がないだろうな
以前からそうだったかもしれないが
アレな・・・・・もう壊れてるぞ」
「え・・・・?」
「神の力が溢れ過ぎている
多分だが元の人格等は残ってないだろう
あれはもう人の形をした神の人形に過ぎんよ」
まじか?
ロイラが?
俺と行動をしてた時は少しだが回復の兆しを見せてたじゃないか。
魔王の言う事が本当の事かはわからないが
この場面で嘘を付くとは思えないし。
「ふむ・・・・だが・・・・何かひっかかるな
世界神の力?・・・いや・・・ミノル君の力・・・・か?」
「俺の力?」
「魂の残骸と呼ぶかはわからんが
小さな力の残骸に纏わり付いている微かな力が見えるな
ミノル君に感じるモノに近い何かに思えるが・・・」
「どういう事だ?」
「わからんね
私も明確に分る訳じゃ無い
何となくそう感じるような気がするといっただけだ
それよりも良いのかい?
非常にマズそうな状況になっている感じを受けるんだが」
ロイラにびっくりしていたので一瞬飛んでいたが
状況は急速に動き出していた。
悪い方に。
「ああああああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ!」
携帯をポチポチと弄りながらもファーバンがイライラしたような声をだす。
それに伴い何処かから聞こえてくるピーピーと言う警告音が。
「駄目だ・・・・駄目だ・・・・駄目だ・・・・」
ファーバンがポチポチと携帯を弄るも警告音は止まらない。
それどころか間隔は短くなり音も大きくなってきた。
何が起きてるかは分らないが状況は良くない事は理解出来る。
「お・・・おい、大丈夫なのか?」
「うおっ」という声と共に振り返ったので
そこで俺達が戻って来た事に気が付いたようだ。
「随分、早かったな!
だが・・・うん・・・良かった・・・よし!
これで何とかなるかもしれないな・・・・聖女とやらはどこだ?」
「おいおい、落ち着け
良いから落ち着け
まずは状況を説明してくれ」
「もうそんなに時間が無いんだっ!
抑え込まないと周辺が吹き飛ぶぞ」
慌てまくるファーバンの飛び交う唾をモノともせずに
魔王がズイっと前に出てくる。
「初めまして神よ
私はこの世で魔王と呼ばれている
そしてこの迷宮がある国を治めている者でもある
さて、状況を説明して頂けないかな」
「は?魔王?
聖女とやらはどうした
早くしないと不味いと言っただろう!」
ファーバンはちっとも落ち着かないので
"命令"して状況を簡単に説明させた。
それを見た魔王がニヤっとしたが今は時間が惜しい。
状況としては見たままで
システムで範囲指定で固定し抑え込み時間を稼いでいた
そこに突然、ロイラが現れて現場を荒しだした。
それを管理システムがエラーと感知し固定が外れかかってる。
ファーバン自身も現場を触れないのでロイラの強制排除も出来ない。
こんな感じらしい。
なぜ外部からの影響を受けるんだ?って疑問については
「完全に固定してしまえば外部からの影響は受けない
それは聖女とやらの抑えつけも受け付けないって事だぞ」
との事なので固定と言うよりは一時的に
抑え込んでいたってのが正しいようだ。
なんにせよこのまま抑えつけが外れた場合は
間違いなく大きく被害が出る事は間違いないらしく
何時、強制解除されてもおかしくないという状況だ。
「どうすればいい?」
「も・・・もう・・・こうなったら
今の内に無理矢理にでも強制送還させるしかない
多少は影響が出てしまうかもしれないが
このまま解除されるよりは影響は少ないハズだ」
「それで良いのか?
封印とかじゃなくて良いのか?」
「何も無ければそれも可能だったがもしれんが
もうこの不安定さじゃ無理だ
お前でも魔王とやらでも良い
システムの補助が無い状態で抑えつける事が出来れば
全リソースを使って存在を補足出来るだろうから
強制送還は可能だろう」
「無理矢理そんな事したら神界への影響も出るんじゃないのか?」
「強制送還さえ出来れば向こうで対策は取れるだろうし
この迷宮も私が新規開拓した事になれば査定も稼げる
多少の影響はどうとでもなる!」
現地にスピード派遣は出来ないが本社まで来れば対応してくれるってか。
まぁわからんでもないけど相変わらず自分中心だなコイツは。
神界側が本当に大丈夫なのかは気にしないでおこう。
「最初から強制送還って選択肢が無かったって事は
難しい事じゃないのか?」
「管理システムでの抑え付けが一切使えないからな
それに確実な方法では無いし暴走の可能性はある
本来ならは封印してから送還する所をそのまま送還させるんだからな」
なるほどね・・・・。
それはもう博打に近いモノがあんな。
そりゃなるべく選びたくないか。
「神よ
抑え込め切れなかった場合はどうなる?」
「管理システムの保護が一切無くなるんだ
それには迷宮の基本保護も含まれている
多分だが盛大に吹き飛ぶだろうな」
「現状で暴走したり強制送還が失敗した場合は?」
「順序が違うだけで結果は同じだろうな」
「フフ・・・
どちらにせよやるしか無いって事だな
流石はミノル君だ
随分と面白い事に巻き込んでくれる」
「いや、楽しそうにしてるけど
巻き込まれたのは俺だからな」
「そうだね
まぁどちらでも良いじゃないか」
魔王は心底楽しそうだ。
今って結構ギリギリの状況だぞ。
「神よ
抑えつける役目は私がやろうじゃないか
流石に神界に送り帰す術は私にはないからな
そちらは任せても良いんだろうな」
「も、勿論だ!」
老人神の正体や状況を説明し
今後の方針を話し合い手順としては以下の様になった。
ファーバンが管理システムを切る。
間髪入れずに魔王が老人神を抑え込む。
俺は魔王のアシストをしつつ前進しキリルとリースを保護する。
ファーバンが強制送還を行う。
ロイラについては
「ふむ、私の部下に神の加護について研究している者が居てね
そちらに任せて貰えるなら私が保護しよう」
そう魔王が提案してきた。
部下って・・・・あいつだよな。
そういやゴーレムの時には絡んでないから魔王は知らないか。
だが・・・ここで魔王と繋がりが出来た事によって
神代に俺の存在がバレるのも避けたい所だ。
流石に部下に情報を流すような事を魔王がするとは思えないが・・・。
ロイラも聖騎士だから魔王サイドに渡して良いのか悩むが
本庁から行動が管理されてる訳じゃないし
長期間、行方不明になった事もあったって話だ。
ぶっちゃけ俺もロイラも聖騎士だって分る物は
何一つ身に着けてないから分るとは思えないしな。
それにこのまま見捨てるのも気分が悪い。
老人神の対応に巻き込まれたら流石に無事じゃすまないだろうしな。
手厚く保護する事だけは魔王の名で保障すると言ってくれたのを信用するしかない。
他に選択肢がある訳でもないので魔王に一任する事にした。
迷宮管理システムを完全オフにする前にロイラはサイラスの地下迷宮に放り込んだ。
現場に手は出せないとは言っていたが
ここまで来たら多少の影響なんてどうでも良いだろうとの事。
どうせ進むしか残されていないんだしな。
魔王によって深い眠りに落とされたので悪さはしないとは思う。
万が一起きてもロイラなら無事だろう・・・多分。
なんか深階層に向かっちゃいそうな気もするけど
ここで直接巻き込まれるよりはマシだろう。
「始めるぞ
管理システムが切れるとアイツを覆ってる黒い網状の物が消える
タイミングを合わせて一気に抑えつけろ」
「了解した
神よ全力を出して構わんのだな?」
「そんな余裕は無いと思うがね
精々頑張って抑えてくれ
暴走した所で私は問題ないが」
「え?そうなの?」
「お前は私を何だと思ってる!
私は神だぞ!これ位でどうこうなる訳ないだろうが
それに現世がどうなろうと私には関係が無い
だがまぁ私のポイントの為に何とかしてやろうと言うのだ」
「チッ、査定は気になるのかよ・・・」
「何か言ったか?」
「ミノル君、そこらへんにしておこうじゃないか
私達には選択肢は他に無いのだしね
それに神よ
あまり下々の者に反応すると余裕が無く見えるぞ」
ズバリ言われたファーバンは顔を真っ赤にしつつも作業に戻った。
「さて、私も姿を変えるかな
全力を出すのも久々だ」
気合の声と共に魔王の姿が変化する。
成熟した大人の色気を醸し出す妙齢の美女に。
「フフ、この姿が一番魔力が高いのでね
その分扱いにくいので手加減は出来ないのが難点だけども
ミノル君がフォローしてくれると信じてるよ」
そう微笑む魔王は長剣を両手で構え集中し
猛烈な色気をばら撒きつつ異常なまでに魔力を高めていく。
今迄感じた事が無い程の圧力だ。
ブリンジを指先で倒せるってのも嘘じゃないぞ・・・コレ。
以前に神が言っていた事を改めて実感する。
ゴーレム体の時に感じた魔力も相当だったし
先程までの姿は更に凄かったが
だが・・・今の姿はそれを軽く凌駕し上昇を続けている。
魔王は能力値重視で更には高位神の複数加護持ち。
それを長い年月を掛けて磨き上げ成長させてきた。
分ってはいる・・・いるんだが・・・。
同じ世界神の加護でここまで・・・・・・差があるのか?
背中を冷たいモノが流れる。
神様よ・・・俺にどうやって立ち回れってのよ!
「システム切るぞ」
ファーバンの合図で黒い網が外されたと同時に
"捕縛(チェイン"と魔王の声が響く。
何も無い空間から黒い鎖が幾重にも飛び出して老人神を覆って行く。
俺はスキルを重複発動し≪竜血脈≫を少しの時間維持出来る限界まで高め
キリルとリースを結界で守りつつ障壁を展開しながら前進する。
空間が軋むような激しい音と共に紫炎が巻き起こり
周囲に撒き散らされる神気と魔力が物理的な圧力となって襲いかかってくる。
結界と障壁の維持だけでも魔力がみるみる減って行く。
そんな神気を真面にあびつつ抑えつける魔王は
同時展開してる魔法障壁によって涼しい顔だ。
ますますもって実力差を思い知らされる。
束縛から解放されたキリルとリースを何とか確保し
魔王の後ろまで下がりキリルの目を覚まさせる。
「こ・・・これは・・・?
何がどうなっているんですか?」
「今、あそこの神を強制送還中だ
詳しい事は後で説明するが
正直、俺には現状の維持だけでも相当にキツイ
この力の嵐の中で耐えれるか?」
「え・・・ええっと・・・はい・・・いや・・・
多分、耐えるだけであれば何とか大丈夫です」
「わかった
俺も魔力がヤバい
壁際まで一緒に下がろう」
アイテムボックスから聖騎士の盾を取出して渡す。
魔王からは見えてないしキリルも協力者だから持っていても不思議はないだろう。
それに魔法防御力も高いから丁度良いしな。
リースをキリルに任せて先に行かせ守りながら壁際まで下がる。
キリルも防御体勢に入った事により加護が効きだしたのだろう。
俺の負担がグッと軽くなるが魔力は減少する一方だ。
ファーバンは必死に両手を出して何かを呟いている。
かざした手の先には幾重にも魔法陣が展開されている事から
あれで強制送還をするのだろう。
この荒れ狂う力場の近くで行動出来るのは流石は神なんだな。
魔王は不敵な笑みを浮かべながら魔力をどんどん放出している。
どんだけの魔力量なんだよ。
「よし、式の構築は終了した
今から強制送還を実行するぞ!」
さぁここからが本番だ。
主人公が強くなったところで魔王に勝てる気がしない・・・・。
何処かでスーパーな人に覚醒するしかないか!




