5-48
元々、5-47として公開していた話です。
内容に変化はないです。
5-47、5-48、5-49を更新しています。
中ボスハンターの森山実留です。
定置型、徘徊型、召喚型なんでもござれです。
僕のお勧めする倒し方は先手必勝ですね。
まずは相手の感知エリア外から発見します。
え?それが出来ない?気合で何とかしてください。
次に遠距離から圧倒的なパワーで魔法を叩き込みます。
魔法が効かない場合は物理的な物を叩きこんでください。
え?それが出来ない?気合で何とかしてください。
大抵はそれで終わりです。
え?終わらなければどうするか?
んなもん気合でブチ殺してください。
迷宮探索は予定よりも遅れた。
当初の予定では中階層をメインに10階層から15階層を
中ボスを撃破しながら1日で回る予定だった。
3日間で3週もすれば十分な量が回収できるハズだったのだが
10階層のミンチ事件から既に5日が経過したのだが予定数までは達していない。
目標の8割まで来ているので残りは少しではあるのだけども。
それと言うのも予想通り10階層以下も魔物の巣窟と化していたので
下手に広間や見通しの良い通路なんぞにのんびりと居たら
そりゃもうひっきりなし襲撃があるからだ。
その為に位置取りと移動に注意する必要があり
結果として進むのが大幅に遅れる事となった。
必然的に身を隠せるように進んでいる為、中ボスの索敵が
思うように行かないってのも問題だけどね。
俺からすると期限の事は別にすると
良い戦闘訓練になるので丁度良くはある。
各スキルの熟練度も上がっているのが実感できるしな。
だがコールからすればスパルタを通りこして地獄の一言だろう。
移動すれば襲ってくる魔物達。
しかも中には徘徊型の中ボスクラスが含まれる。
時にはそれが2体だったりする。
たとえ1体でも取巻きと言うには数が多く
寧ろリンクモンスターを引き連れて襲ってきてる感じだ。
俺が全力で戦っても全方位から襲われたら
迎撃が手薄な部分が出来てしまうので
コールは自分の身を守るだけで必死だ。
休息時は周囲に敵影が薄い小部屋で結界を張って休むしかない。
リノンに教わっておいて本当に良かったと思う。
それでも俺の腕前じゃ中ボスクラスは防ぎきれないので
心から安心して休めるって環境では無い。
あいつらの中には扉をブチ破って襲ってくるのも居るしな。
他にもここの迷宮は転送陣が存在しないので
確実に休息できる場所が無いってのも問題だろう。
その分、各階を移動する階段は余り距離が離れてないんだけどね。
10階より上はまだしも今の状況でコールが1人で帰れる訳も無く
"魔核水晶"が予定数に達していないので俺も帰れない。
コールにとってはそんな悪循環が可愛そうでもある。
「おい、大丈夫か?」
「あ・・・・あぁ・・・・大丈夫です
まだ・・・生きてます」
「ちょっと飯を作るから少し寝てろ
アリス、ルーブ、警戒を頼む」
「あ、はい
そうですね
ミノルさんの言う通り少し休んだ方が良いですね」
コールは何時の間にか俺に対してデスマス調に変わり
可哀想になる位にやつれている。
≪紋術≫で"体力回復&向上"を防具に施してあげたのだが
回復が追い付いてないのか横になった瞬間に気絶するように寝た。
余りにも激しい戦闘が続くので短剣以外の武器も防具もボロボロだ。
俺の手持ちから武器と防具を貸しておいた。
もちろん釘バットと蜥蜴短槍だけどね。
迷宮産だし耐久性と攻撃力は折り紙つきだ。
食事は体が温まる様に煮込みにした。
ついでに肉と野菜の串焼きも作る。
コールを少しでも寝かせておきたいので作りながら先に食べる。
量は作ってあるので問題はないだろう。
『んで、どーよ
アリスから見てコールは』
『いやぁ、物凄く頑張ってますよ
幾らここの魔物がそんなにレベルが高くないとしても
あの物量と頻度で来られたら普通なら死んでますよ』
『だよなぁ
ちょいちょいフォロー入れてるけど
放っておいたら危ないシーンが何回もあったよな』
『ですねぇ
本人は必至過ぎて気付いてない事も多いですけど』
『それでも俺が助けてくれてるってのは理解してるみたいだけどな
ここ数日で妙に大人しくなったと言うか
俺の言う事を素直に受け入れてるしな』
『どちらかと言うと極度の緊張と恐怖で
実留さんを刷り込まれたって感じですけどね』
『あぁ、なるほどな
良いのか悪いのか・・・』
『でも本人の実力はメキメキと急上昇中ですよ
心の底から必死になれば上達は速いですね』
『あんまり勧められる方法じゃないけどな』
静かに神シス経由で会話をしながら食事を終わらせ
コールを起こす事にした。
「おい、コール起きろ
食事だ」
俺が声を掛けると意識は一瞬で覚醒し
武器を片手に戦闘態勢に移行した。
「敵!敵はどこだ!
俺は死なねー!死なねーぞ!」
「コール、落ち着け
敵襲じゃない・・・・食事だ」
俺がそう言うとフッと憑き物が落ちたように笑顔になった。
「ミノルさんの作ってくれたご飯ですね!
嬉しいなぁ、食べると元気になるんですよね!」
「あぁ・・・沢山食べてくれ
量はたっぷりあるからな」
鍋から大量によそいガツガツと食べだす。
美味しい美味しいと涙を流しながら食べるコールを見て
あぁ、もう限界かなと迷宮を後にする事に決めた。
誰だ?こんなに情緒不安定になるまで追い詰めたのは!
・・・・・俺じゃないからね。
俺は着いてこられただけだからね。
予定していた日数をオーバーした上に
必要数まで回収出来なかったが俺達は地上に戻った。
ブタ子に確認した後に再度潜る予定だ。
次はコールは置いていこう。
上階に戻る毎に周囲からの脅威が減るから
少しづつコールの緊張も解れていったのが分った。
宿に辿り着くと夕方も近く報告もソコソコに
コールは倒れるように眠った。
うんうん、コール君。
君は良く頑張ったよ。
数日は休暇として当ててくれるよう頼んでおいた。
翌朝に改めて報告するとブタ子の方でも"魔核水晶"をある程度確保出来たらしい。
どうも浅階層での回収量が増えたので出回る様になったんだとか。
流石に質はそれ程でもないが個数でカバー出来るとの事。
俺達が集めてきた分と合わせて十分な量になったと。
質悪くても良いのかよ・・・・結構使っちゃったぜ。
状況を聞いてみると俺達が中階層で暴れ回ったので
均等に割り振られていた迷宮のリソースが中階層に集中した事により
他の階のリポップが減った感じだ。
それに伴い浅階層の攻略が楽になり初心者でも攻略が進んだのが理由だな。
確かに帰りも楽だったような気がする。
まぁ深層階は手付かずなので酷い事になってるとは思うが
浄化作業が済めば人も帰ってくるから迷宮全体も正常化するだろう。
俺達の休息と武具の手入れ。
ギルドへの通達と連絡。
目的地までの移動準備。
やる事は沢山あるので出発は2日後となった。
それまでコールは休息で俺は自由行動だ。
シュラベントは俺の自由行動に対して怪しんだが
コールの援護射撃によって渋々とだが了解してくれた。
「ミノルさんは信用出来る人です!
隊長はそれがわからんのですよ!
あの地獄のような環境で頼れる人はミノルさんだけだった!
邪魔者でしかなかった俺を!俺をミノルさんはぁ!」
唾を飛ばしながら顔を真っ赤にして怒声をシュラベントに浴びせてる
コールを見てブタ子がドン引きしながら俺を見てた。
「ミノルさん・・・・あの・・・
ちょっと・・・・やり過ぎたのでは?」
「いや・・・俺だってこんなになるとは思わなかったんだ・・・・」
「話しを聞くだけでも酷い環境だったのはわかりますけど
まぁコールさんが無事に帰って来たので良しとしますか」
一応は迷宮に入る理由が経験を積む事だったから
目的は達成できたはずだしな。
ただ、1を経験する所を10の経験をしてしまった所が誤算ではあるが
そもそも迷宮内部の状況なんて誰も分らないんだから
俺が責められる筋合いはない。
寧ろ無事に帰る事が出来た事を褒めて貰いたい位だね。
この街は大きく要所でもあるので
魔王領でも数少ない聖神教の協会がある場所の1つとなる。
色々とあって本来の任務を忘れているんじゃね?
と思われるのもアレだが。
そもそも辺境に教会なんて無いから調べようがないってが実情だ。
情報は色々と収集しているが
"魔族と聖神教が戦争になるのでは?"といった内容が目立つ。
基本的に魔王領での聖神教の立場は弱い。
それどころか攻撃対象に成り得る存在だ。
魔王領が建国され魔族と言えども一国民としての権利を獲得した事で
近年では魔族も他種族となんら変わりは無いと教義を定めているが
昔からの魔族排他は内部でも根強く残っている。
それは魔族側でも同じ事だ。
なので魔王領政府の目が届かない場所には危なくて建てれない。
そんな理由で魔王領には聖神教会は少ないって事だね。
教会は冒険者が多く居るエリアの大通りに面した所にあった。
様々な人種が居る場所の方が狙われにくいとの判断なのだろう。
それに回復や祈祷等を主に必要としているのも彼らなので丁度いい。
中に入ると何人かが祈りを捧げたりしている。
時折、冒険者らしき人等が隣の部屋に入って行くので
あちらが祈祷や治療を行う場所なのかな。
『さて・・・・来たものの・・・・どうすりゃ良いんだ?
身分は明かせないしなぁ』
『とりあえず話しでも聞けばいいのでは?
聖神教に興味があるとでも言えば大丈夫ですよ』
『ふむ・・・・それもそうか・・・・
まぁ一般人が話を聞くだけなら平気だよな』
近くにいた神父さんに話を聞いた。
聖神教の教義や活動内容等の当たり障りのない内容だ。
一通り聞いたうえで心配そうな顔を作り質問をする。
「最近は魔族と不穏な空気が流れているようですが大丈夫なのでしょうか?
街では噂話ですが色々と言われていて不安なんです」
「我が聖神教の為に不安にさせてしまい申し訳ありません
ですが・・・・・えぇ・・・・その・・・」
「やはり何か問題で?」
「・・・・ふぅ
神に仕える我らが嘘を付く訳にはいきますんね
それに直ぐに分る事ですし・・・・
聖神教に興味を持たれているのに申し訳ありませんが・・・」
話してくれた内容としてはこの魔王領の聖神教の各教会は
撤収 or 縮小傾向で動いていて
ここも縮小するか撤収するかで検討中らしい。
やはり魔族(と言っても一部ではあるのだが)と
不穏な空気になりつつあるのは確かな事らしい。
「魔王領としては一旦、サイラスに集約する予定ですので
そちらまで来ていただければ今後の対応も出来ると思います
もちろん問題が解決すればここも再開するつもりですよ」
そう締めくくって神父さんは去って行った。
ふーむ、魔王領内部ではなかなかに厳しい情勢になってきているんだろうか。
一応、警備や聖騎士は配属されていはいるが
集団で襲われたらヤバいもんな。
状況は悪化していってるっぽいな。
魔王領自体からの完全撤収は無いようだが聖神教全体としても
これは嬉しくない状況だろう。
ひょっとしたら全面戦争になりかねないな。
影響力で聖神教、規模で言えば魔族が有利か。
次の日は移動の準備と買い出しをしつつ
街で情報を集める。
やはり同様の話しが多い。
割合で言えば聖神教の事を悪く言う意見が少し多いか。
冒険者等は直接に世話になる事も多いので
擁護的な意見が多かったりもしたのだが
土着の者達にはやはり良い印象はないようだ。
魔王領が建国されるまでは聖神教は魔族排他を掲げていたしね。
長寿の種族だとすると生き残りもいるだろう。
更に翌日、俺達は出発した。
次の目的地は実里が待つ場所だ。
実里が浄化をしている場所は未開発地域で危険も多いが
この護衛団でも大丈夫な程度だって話だ。
俺もいるしスパルタで鍛えたコールも居る。
直接、行く街道が存在しないので多少の遠回りにはなるが
後少しで実里に会える。
しかも聖女として公務中という事もあり
邪魔をしてくるような上役は居ない。
最悪の場合は身分を明かしても良いだろう。
俺も聖騎士には違いないから邪険には扱われないと思うって打算もある。
リースやキリルも居るだろう。
エレアスさんは同行しているだろうか。
モリスさんも元気にしてるかな。
状況的には良くない方向に向かっているが
皆に会えるのが楽しみだ。
コール君頑張るんだ!
その経験は君を大きくするぞ!




