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連休に出かけてしまうので次話の更新は少し遅れるかもしれません。
皆さん、こんにちわ!アリスです。
久しぶりにブタ子さんに会いました。
ふと思ったんですが実留さんはオーク語のスキルを持っているので
ブタ子さんの本名を理解出来るハズなんですけど
ずっとブタ子さんって呼んでますよね。
と言いますか本人も本名を使っていませんね。
何故なんでしょうか?
実留さんに付けて貰った名前が大切なんでしょうか。
・・・ハッ・・・まさかの恋心?
夕食後にブタ子に事情を説明する事にした。
シュラベントが聞けば良い顔はしないのは予想できるので
少し時間を置いてから再集合した。
場所は俺の部屋だ・・・と言っても隣部屋なんだけども。
満腹まで食べて眠そうなルーブを膝に抱くブタ子に
順をおって話をしていく。
ここまで来たら何も隠さずに洗いざらい全てをぶちまけた。
ただ、聖騎士になった事は隠した。
何かあった場合、実里やブタ子にまで影響が出る可能性があるからな。
逆にマイナスになるような事は一切報告するつもりもないけど。
俺は聖騎士の前に実里の兄でブタ子の友人だ。
身内贔屓万歳。
「前回の転生で相当な高位の神からの加護だと思いましたが
まさか・・・・世界神グラバス様だとは・・・・」
「黙っててごめんな」
「いえ良いんです
世界神様の加護となるとそれだだけで大問題ですしね
現にこの世界で認知されている3名は全て国が関わっていますし」
強さを追い求め魔族の頂点まで登りつめた魔王ロージス。
その強さを持って魔族を纏め建国し魔王領サイラスを作り上た。
そして世界に戦いを挑んだ者。
何者をも圧倒する程の魔力量を誇り
操る魔法は都市を1発で灰塵と化す威力を誇る。
刃向う者、逆らう者は全てを滅ぼす絶対的な強者。
その魔王に対抗するかのように現れた勇者アミス・ロデア。
国の垣根を越えた連合軍の旗艦として祭り上げられ
魔王軍との戦った。
魔王を倒す事は出来なかったが拮抗状態を作る事に成功し
一応の平和を作り出した英雄。
その後、魔王領を牽制するかのようにグリンバーグを建国し
魔王領サイラスに睨みを利かせている。
最後にフィラルドの王女として生まれ
高い素質を見出され聖神教の聖女として祭りあげられた実里。
教会の最高権力は与えられなかったが次点の権力を与えられた。
その為、教会としての式典には出る事は少ないが
各地を周り祝福を授ける事により世界のバランスを取る役目を担う。
癒しと守りに関しては他の2名よりも秀でていると噂される。
世界神の加護を受けた3名共に世界に影響を及ぼす程の
能力と立場を手に入れている。
3人が全力で暴走した場合、世界はその半分以上の戦力を失うだろうとも言われている。
それだけの力を有していると認識されているんだ。
そこに加わるのは俺。
殺されて転生しひょっこり生き返る俺。
今は素晴らしい体を手に入れて驚異的な身体能力を得たが
魔王や勇者と正面からやりあった場合は
総合能力ではまだまだ勝てそうもない。
それだけあの2名の能力は圧倒的だ。
それに比類されると言われている実里もだけどな。
そんな俺でも世界神の加護を受けている事が公に出れば
世界は絶対に手を伸ばしてくるだろう。
それこそ国家間の戦争を仕掛けてでも入手を試みるハズだ。
世界神の加護を持つ者と言うのはそれだけの価値があると。
サイラスとグリーンバーグは牽制しあっているので
大がかりには動けないしフィラルドは聖神教の本拠地でもあるので
自ら他国に仕掛ける事はしない。
つまり俺を手に入れた国が一気に国力を上げるチャンスなんだそうだ。
ブタ子はそう語った。
「そんなに大げさなモノかな?
俺自身は確かに強くなったけど魔王や勇者のような
手が届くかもわからないような圧倒的な強さは無いぞ」
「何を言っているんですかっ!
死してなお意識を保ったまま次の生が与えられるなんて
強さ云々以前の問題です!
そんな話しは今迄聞いた事もありません!」
ブタ子は驚きを通り越して怒っているようにすら感じさせる勢いだ。
うん、部屋を魔法で囲っておいて正解だな。
こんな話しを外に漏らしたら酷い事になるし。
「まぁまぁ落ち着けよ
ほらルーブもどうした?って顔で見てるぞ」
「ブタ子さん水でも飲んで落ち着いてください」
俺が水を渡すとコクコクっと飲んで一息つく。
ルーブに大声だしちゃってごめんねと言って
頭を撫でるとまた嬉しそうに眼を閉じた。
「すみません
ちょっと取り乱しました」
「いや、良いんだ
俺も秘密にしていて済まなかった」
「最初に会った時からミノルさんの中身は
人族だったって事なんですね」
「あぁ、そうなるな
正確に言えば人間だな
俺の居た世界は人間以外の亜人種等は居なかったんだ」
「じゃぁ今迄の料理やお酒なんかも元の世界の知識なんですか?」
「大半はね
それでも詳細までは知らなかったから
魔法や道具で誤魔化した事は多いけどね」
異世界について色々と話すとブタ子はとても喜んだ。
内容としては他愛も無い事なんだけどな。
ブタ子が商人として何かを掴もうとしているんだろうな。
「それでブタ子の方はどうなんだ?
聖女付で色々と動いてるって聞いたけど」
「あら?流石はミノルさんですね
そんな情報を掴んでいるんですか?
そうですね・・・・今は聖女様の手助けをしていますね」
「詳細に聞いても?」
「流石に他者に話して良い内容ではないですが
ミノルさんの事情もわかりましたが・・・・・
流石に話せない事もありますよ?」
「大丈夫・・・俺もブタ子や実里の不利になる事はしないよ
寧ろ2人の手助けをしたいと思ってる」
「ふふ、信用していますよ」
それからブタ子は俺が死んだ後の事から説明してくれた。
時系列で簡単にまとめてみた。
俺がヴァースに殺される。
↓
目の前で兄を殺されて荒れ狂うも実里は聖騎士達に保護されたまま本庁に連行される。
ついでにブタ子、リース、キリル、エレアスも一緒に連れて行かれる。
↓
聖女誘拐事件を本庁は重く判断し枢機卿に続き
直属の護衛部隊の設立を検討する。
↓
実里がその話を聞きつけキリル、リースに協力を打診。
ブタ子、エレアスには各ギルドを通して正式に協力依頼を出す。
↓
キリル、リースは即答で入団を決意。
実里が直々に指名し特別扱いで護衛部隊に入る事になったが
扱いとしては親衛隊で聖騎士として取り立てる事は認められなかった。
よって実里の私兵兼付人として属する事に。
↓
商人ギルド自体は中立の立場として接するしかなく
ブタ子は専属とはいかないが商人の立場を利用して
個人的に聖女に協力する事にした。
エレアスは戦闘指導員として部隊の設立と強化に協力する事が正式決定された。
それからは実里は聖女として各地を周り
聖神教を広め、深く理解して貰う為の行動も兼ねて
祝福を授けたり穢れを浄化していく。
それにキリルとリースは一緒に行動しエレアスも偶に付いて行くらしい。
ブタ子は情報収集を兼ねて行く先々で補給物質の確保なんかをしているとの事。
「となると実里が近くに居るって事か?」
「そうですね
今はサイラスからは外れて
少し奥地に入り込んでいると思います」
魔王領の地図を見せて此処らですと教えてくれる。
「なんでそんな所に?
周囲に大きな集まりも開発も進んでなさそうな場所だろ?」
「どうも大きい瘴気溜まりが発生したようで浄化が目的です
魔王直々に頼まれて断りきれなかったようです
周囲に影響も出始めていたので立場的にも断るのは難しいかと」
「でも魔族と聖神教って敵対してるんだろ?
魔族は打ち倒す存在じゃなかったか?」
「それは以前の聖神教ですね
今は魔王配下の魔族は一種族として認められているんです
聖神教が敵視しているのは魔王に従わない魔族の方々ですね
もっとも昔はそうだったので単純に魔族と言っただけで
敵対心を持つ者は多いですが・・・」
「なるほどね
魔族と言えども魔王に従って魔王領の国民として
生活している分には1種族として認めざるえないって事か」
「その認識で良いと思います
現に魔王領にも聖神教の施設は幾つかあります
首都や大き目な都市や町に限りますけどね
やはり魔族にも聖神教に対して良い感情を抱いてない者はいますから」
「奥が深い問題だな・・・・・
それで断りきれずに実里は浄化に向かったって事か」
「魔王直々に依頼ですしね
開発が進んでない場所とは言え辺境とは言いませんしね
大きくはありませんが周囲には集落が幾つもあります
それに影響範囲も大きくなっているようです
なので浄化に必要な物を集めるのに私が動いていたんですよ」
なるほどね・・・・そう言った事情か。
となるとクソ騎士Aが俺に魔王領の現状を調べさせるのも
聖女絡みに違いない。
実際に現地では結構な話題になってるそうだし。
「俺が実里に合流する事は可能かな?」
「一般人だと厳しいでしょう
施しの時に上手く向こうがわかってくれればあるいは・・・」
「そりゃ聖女だしなぁ
むぅ厳しいか」
俺があーだこーだ悩んでいるとブタ子がフッと微笑む。
「ミノルさん
時間はまだ掛りますが私は聖女様と合流する予定です
私が必要な物を集めて合流するまでは浄化作業も終了しませんから」
「そうなの?」
「はい、吹き溜まりと言いましたが規模が大きくて
浄化範囲も広いんです
私が広域浄化をする為に必要な素材を集めてくる間に
聖女様御一行が要所を先行で浄化し被害を抑える手筈になっています」
「となると・・・・時間は掛るけどブタ子と一緒に行動すれば
実里に会えると?」
「そうなりますね
丁度、我が商隊も護衛を増やそうと思っていましたので
誰か良い人材が居ないかと探していたんです」
「・・・・世話になるな」
「ふふ、ミノルさんと私の仲じゃないですか
未だに命を助けられた恩は返せていませんよ」
「そうか?
あの対価は魔法を教えてくれるって話だろ?」
「あんな初期の手解き程度で恩を返せる訳ないじゃないですか」
「そうかー?
今でも俺の師匠はブタ子だぞ」
ブタ子は俺が初めて出会った異世界人。
見た目は豚だが気さくで優しくて良いオークだ。
最初に出会えたのがブタ子で俺は本当に幸運だったな。
急ぐ行程ではあるが仕入れや各種手続きも必要なので
明日と明後日は休息日も兼ねて各員自由時間だ。
その為か懐かしい思い出話で盛り上がり夜更かしをしてしまった。
日中は暖かな気候だが山からの風が吹くと夜や朝方は一気に冷え込む。
部屋の中は魔法で温めているのでじんわりと暖かいが
今日は夕方から風が吹き始めたので外は結構な寒さだ。
「ごめんなさい
結構遅くなっちゃいましたね」
「こちらこそ御免な
一応、部屋から音は漏れないようにしといたから
他の部屋には迷惑掛けてはないと思うんだけど」
「魔法に関してはもうミノルさんの方が全然上ですね
私じゃそんな魔法は使えませんよ」
「そうかなー?
皆、難しく考えすぎなんじゃない?
理解と魔力さえあれば大丈夫だと思うんだけど」
「それじゃ、今度はミノルさんが私に教えてください」
「あぁ、良いぜ
と言っても俺もちゃんと理解してないから
教えれるかはわかんないけどね」
「ふふ、楽しみにしてます
それじゃ私は寝ますね」
「おう、また明日な」
「えぇ、お昼は御一緒しましょう
・・・・あれ?ドアが開かないですね」
ガチャガチャとドアノブを回すも扉は開かない。
俺がやっても同じで何か向こう側に重い物がある感じだ。
「何か向こうに重い物がある感じだね
ブタ子、扉を壊さない程度にちょっと押してみてよ」
「わかりました・・・・・・フンッ!」
ブタ子のむき出しの腕がムキっと筋肉質になると
扉は何の抵抗も無く開いた。
廊下からの冷えた空気が部屋に雪崩れ込み身を震わすと共に
何かがゴロゴロと転がる音がする。
音の正体はシュラベントだ。
歯をガチガチと鳴らしながら鼻水をズルズルと垂らしている。
「こんな所で何をしているんだ?」
「おおおおおおおれおれ俺はボボボボボボスボスボスのあああんんん安全を」
寒さで真面に話せないようだ。
着ている服は先程と同じだが寝静まった時間の宿は外程では無いが寒い。
動かないで居ればこうなるのも仕方無い位には。
「ブタ子の安全を守る為に扉に張り付いていたと?」
ガタガタ震えながらも首を振るシュラベント。
だが俺の直感は何かを掴んでいた。
「と言うよりもシュラベントさんは
ブタ子さんの事が好きなんですよね
それで心配になっちゃったんですよね」
おい!アリス君!
それは気が付いたとしても口に出しちゃいけない類だ!
「なななんなななななななななにににににににに」
何を言っているんだと言いたいのだろうが
口が動かずに壊れた人形のようにガクガクするシュラベント。
心なしか顔に赤みが差してきたような気もする。
「そうなんですか?シュラベントさん」
ブタ子が真顔で問い掛けると
シュラベントさんは腰を浮かして逃げかけたが
凍えている体は上手く動かない。
その行動は更に悲劇を招く。
「もう!アリスさん!
出鱈目言わないで下さいよ!
シュラベントさんも嫌がって逃げようとしてるじゃないですか!
こんな真面目で凄い方が私なんかに好意を持つわけないじゃないですか
・・・・・もう・・・・・こっちが恥ずかしいです」
そう言ってブタ子は恥ずかしそうに顔を押えて
自分の部屋に入って行ってしまった。
そこに残されたのは猛烈に悲しそうな顔をしている
シュラベントと物凄く気まずい俺とアリスだ。
「ま・・・・まぁ・・・なんだ・・・
元気出せよ!なっ!」
シュラベントの肩を元気よく叩いて俺も部屋に逃げる。
うん・・・・・まぁ・・・・きっと大丈夫だよね!
とりあえずベットで横になって寝る事にする。
少し遠い場所から何かが泣くような声がしたがきっと大丈夫だ。
うん、大丈夫だ。
シュラベントさん可哀想・・・・・なのかな?




