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5-43

週末になると雨が降るのはやめて欲しいなぁ。


複数の加護を受け古代から受け継がれた血が流れる森山実留です。

その私が亜人の商人にサバ折りを食らいました。

人生とは何があるかわからないものです。

そう特にファンタジーな世界ではね!






目が覚めた俺にブタ子は説明は後で良いので

とっとと移動したいと告げた。

どうやら本当に危険な場所なんだそうだ。


少しでも足を止めていると危険だと言うので

気絶してる護衛達を起こすのも時間が掛るので

そのまま馬車に積込んで慌てて出発する事に。


相変わらずで安心したと言うか何と言うか

ブタ子は今回も馬車を牽いている。

いや、ブタ子だから豚車か。

以前よりも大きく豪華になっていた。


それを見た俺の顔をみて護衛達とブタ子の部下と思われる数人が

微妙な顔をしていたので

やはり一般的じゃないんだろうな。

そりゃ商隊のボスがそんな事やらんよな。

・・・・・・そもそもそんな奴が他に居るとは思えないが。


俺が普通に歩き出すとブタ子がこっちを見てくる。


「どうした?」


「まさか・・・・ミノルさん歩いて行く気ですか?」


「そりゃそうだろ

 馬も数匹居なくなっちゃたし俺が

 世話になる訳にもいかないだろ」


「違いますよ!

 ミノルさんは私に乗らないんですか?」


「のらねーよ! 

 当たり前みたいな顔で何言ってんだよ」


「えっ?ミノルさん乗ってくれないんですか?

 なんでですか?

 私の事が嫌いなんですか?

 以前は2人の時は私に乗ってくれたじゃないですか!」


「あー、うん

 何か凄く微妙な事を大声で言わないでね

 ほら、皆が誤解しちゃうだろ


 ほ・・・ほら、あれだよあれ!

 外で護衛の代りになろうかとね

 俺が何人も気絶させちゃったし」


「うーん、残念です

 でも後でちゃんと乗ってくださいねっ!


 コールさん

 護衛の割り振りをお願いします

 とりあえずミノルさんはコールさんの

 指示に従ってください」


ブタ子は残念そうな顔をしていたが商隊を率いる者として

思考を切り替えて各員に指示を飛ばす。

そして護衛人数が減ってしまったので俺が先頭に立つ。


コールは明らかに俺を信用してなかったが

自分の雇い主が言うのだから仕方なしに従ってるのが見え見えだ。

コールと共に先頭に立ったが

俺を監視出来る位置に部下を配置していたしね。



付近の状況は良くわかってないので

情報を絞るよりは広範囲に注意しておいた方が良いだろうと

判断し感知エリアを薄く広く広げた。

この状態だと対象の詳細は掴めないが

こんな場所で向かってくるような奴は敵だと思って良いとの事だ。


まぁ俺もそんな対応されたしね。

逆に言えば俺みたいな存在は居なかったのだろうか?

もし居たとしても問答無用に殺されてきたのかもしれない。


警戒しつつ近くを歩く見張り兼護衛と話しをする。

今は魔王領の内部を色々と巡業していて

特に郊外から地方を周って色々と商売をしているらしい。

ここらは辺境に近く開発も進んでいなくて危険な場所なんだそうだ。

まさか街道を避けて逃げまくったら結構なトコまで来てたようだ。


多分だけど魔王領は広範囲的に神域に近い特性があるんだと思う。

または何かの力場のような状態になってるとかね。

空気中を漂う魔力が他の場所よりも濃い。

その所為かどうにも空気が重く感じるんだ。

空気中の魔力が濃い為に影響を受けて

力や魔力が強く強靭な個体が多くなるのだろう。

代りに出生率が低いらしいので

バランスが取れているのかもしれない。


他から移り住んだ種族でも代を重ねる毎に

元種族よりもそういった傾向が強くなる事からも当たってるとは思う。

反面、作物は育ちにくく野生の動物も俊敏で強いので

狩猟自体も難しくなるループで正に弱肉強食の出来上がりだ。


荒地とか荒野って感じではなく単純に動物も植物も

強く強靭になるので食物となり得るものが育ちにくいって事なんだけどね。

だから生物や緑は多いので見た目は未開拓なエリアってだけだ。


ここは首都とは遠い上に開発が進んでない辺境なので

野生の魔獣が蔓延る危険地帯って訳だ。

勿論、そんなのを相手にする訳だから生活圏にしている奴らも

それなりの強さを持っている。

更に言えばそんな場所を行動するだけあって護衛の方々は

相当に強いのだろう。


だからか・・・・隣の人が物凄い緊張&警戒心で俺に接するのは。

そりゃまぁそうなるよな。

一切手を出さずに無力化しちゃったんだもんなぁ。

あのスキルは個人の力量に影響されるから効果があったが

真面に戦えば数の差で苦戦はしただろう。

個の能力で勝って群の連携に負けるなんてのは良くある話だ。



次の目的地まではあと数時間の距離で

日暮れギリギリになるかもしれないとの事。

本当であれば昼を食べて休憩もしたい所だが日没前には

辿り着かないと危険だ。


俺はずっと野宿で平気だったけどなぁ・・・・。

それなりに襲われもしたけど追っ手の方が厄介だった。


味気ない携帯食を齧りつつ黙々と行動する姿を見てると心が痛む。

商隊のボスなのに俺の近くに居たいという理由で

荷台を牽きながら先頭を牽くブタ子に話しかける。


「なぁ、ブタ子

 次の目的地までは休憩は無しか?」


「えぇそうですね

 この辺りで野宿するのは危険ですし

 大変でしょうけど頑張ってください」


「いや・・・俺は問題無いんだが・・・・

 皆に申し訳無くてな

 せめて食事だけでもと思うんだけど良いかな?」


「構いませんけど・・・・寧ろ嬉しいとは思うんですが

 足は止められませんよ

 本当に今でギリギリなんです」


「大丈夫

 こんな時の為・・・・って訳でも無いけど

 歩きながらでも食べれる軽食があるから

 それを皆に分けたいんだけど良いか?」


「本当ですか?!

 それは嬉しいですっ!」


俺が取り出したサンドイッチをブタ子に渡すと

護衛が止めるのも聞かずに齧り付く。


「うっ・・・・」


「大丈夫ですかっ!!

 貴様!何を食べさせたっ!」


慌てる護衛を手で制するブタ子。


「大丈夫です!

 ちょっと驚いただけですから

 ミノルさん・・・・コレ・・・


 すっごく美味しいんですけど!!」


それから商隊の全員が目を輝かせながら

モリモリと食べだすのは僅かな時間だった。

うん、大量に作っておいて良かったよ。


移動中に気絶してた者達も目が覚めたので

食べ物と飲み物を提供しておいた。

これで少しは俺への疑いは解けただろうか?




食事のお陰かどうかは不明だが

陽が暮れる前に目的地には到着する事が出来た。

途中で何回か襲撃があったが俺が遠距離から"魔弾"で

倒しておいたので問題は無かった。

問答無用で撃ち殺したので友好的かどうかも不明だし

素材も回収出来ていないが仕方が無い。


到着した場所は街道沿いにある少し大きめの宿場だ。

宿場自体は産業等は無く付近の村や集落が必要品を購入したり

余った物や特産物を持ち寄って売ったり交換したりしている。

他にも行商や冒険者が立ち寄るような場所で

国が安全を保障している訳では無いが中立地帯として認識されている。


あえて襲うとなると近隣から追われる事となるし

魔獣や魔物に備えての自衛も行っているので

周囲に比べて格段に安全な場所と言えるだろう。

その所為か人通りは割と多く賑わっている。

人族も少なからず居るが如何にもって風貌が多い。


幾つかある宿の1つに入り部屋を取る。

商人御用達らしく馬車(豚車含む)を屋内に入れ

すぐ脇に護衛達用の部屋も用意されているので荷も安全だ。

多少は値が張るが荷を護衛達が直に守れるので

商人としても安心料といった認識で人気がある。

こんな感じの設備があるのもここの特徴かもしれない。


こんな感じの宿って日本にもあったよなぁ。

バスとかお抱え運転手等の為の別室があるようなホテルとかが。

某所の温泉街の高級宿は駐車場から直に繋がってたなぁ。


そういや昔に居た会社の社長に運転手を命じられてやったっけ。

社用車で迎えに行ったら明らかに若いお姉ちゃんと一緒で

午前中なのに宿に行って次の日の朝まで待機させられたなぁ。

いやまぁ、結構な額の手当てを貰ったし

運転手用の部屋はそんなに広く無かったけど1人じゃ十分だし

ちゃんと手入れされてて清潔だったし

飯は豪華で宿の設備は使いたい放題だったけどさ・・・・・。

あれって明らかに・・・・愛・・・まぁ良いか。


俺の部屋もブタ子が用意してくれたので

夕食を一緒に食べる事にした。

事前にブタ子には軽く説明はしておいたが

隊長も同席したので改めて挨拶し状況を説明する事にした。


「ではミノルさん

 お願いします」


「最初に言ったと思うんだけど

 あそこで迷子になってたから道を聞きたかっただけなんだ」


「だから言っているだろっ!

 あんな所に何故居るんだと?

 単独で迷子になってるなんて普通じゃ有りえないし

 こちらが疑っても当然だと思うがね?

 現に今だって疑ってない訳じゃない」


その言葉は本当らしく本格的とは言わないが

食事の場にそぐわない程度には軽装備を身に着けている。

槍は持っていないが剣は腰に下げたままだ。

こちとらラバリオの服意外は何も身に着けてないのに。


「その割には俺が作った食事を食べてたけどな」


「俺は食べてないっ!

 食べてたのは俺以外の奴らだ!」


「あれ?食べなかったんだ

 皆には好評だったのになぁ」


「油断出来ない相手からの物なんて

 食べるハズないだろうが!

 俺の意識が無い内に周りを丸め込みやがって」


「丸め込んだつもりはないんだがなぁ・・・・」


どうにも直接威圧したのが効いたようで

隊長は最後に目を覚ました。

その時には周囲では既に食事が始まってた事に

憤慨しているようだね。


「どうだかな

 ボスも騙されちゃいけませんぜ

 知合いなのかは本当かもしれませんが

 それが信用できるかは別だ

 俺達はボス達と荷を守らなきゃいけないですからね」


ブタ子がヤレヤレと言った顔を向けてくる。

責任感が強いのも良いけど雇い主が許可してるから

良いんじゃねーの?とは思う。

多分、俺に何も出来ずに敗北したのが気に入らないってのもあるだろう。


「疑うのは理解出来るが敵対の意志が無いのは分ってほしい

 こちらから手も出して無いし怪我だってさせてないだろ?

 回復だって行ったし食事だって特段問題は無かっただろ」


「む・・・・む・・・う・・・

 それ・・・はそうなんだが・・・」


「そうですよシュラベントさん

 貴方だってわかってるでしょ

 ミノルさんに敵意があったら

 今頃私達は全滅してますよ」


ブタ子がつぶらな瞳でジッと見つめると

しかめっ面の体調が両手をあげる。


「わかった!わかりましたよ!

 ボスがそう言うならこっちは従うしかありません

 

 それに・・・・まぁ・・・・

 コイツが襲ってきた魔物を遠くから撃退してたのは

 知ってましたからね」


「じゃぁ認めて貰えるんですの?」


「仕方が無くですよ・・・・

 それにまだ心の奥底から信用してる訳じゃないです

 何か不審な行動を取ったら俺達はボスを守る為に

 動きますからね」


「それで良い

 後は俺の行動を見て判断してくれ」


「わかったわかった

 そいじゃ色々と聞かせて貰う事にするからな

 まずは・・・・あの撃退した魔法はなんだ?」


「あぁ、それは俺のオリジナルの・・・」


元々は気さくで馴染み易い性格なんだろう。

それが隊長と言う責任感であんな言動になったと。

一方的に制圧された悔しさってのも少しはあると思うけどね。

少しづつでも俺の誤解を解けて行ければ良いなと。


割り切ったシュラベントは色々と聞いて来た。

俺も食事と酒を楽しみつつそれに答える。


「ふふふ

 ミノルさんは相変わらずですね」


ブタ子がそれを見て微笑む。





「すいませーん

 メニューのここからここまでお願いしまーす」


「ピィー」


隣のテーブルでは食いしん坊共がパーリーを開催していたのは

何時もの事なので関係がない事だ。


実留君、ブタ子に乗るのかなぁ

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