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最近、少しづつお気に入りを登録してくれる方が増えています。
ありがとうございます。
ついに神の作りし秘宝に再会した森山実留です。
それは鍋、黒い鍋です。
この秘宝の素晴らしさが理解出来ない者には鉄拳制裁も辞さないです。
今後の人生を使って布教活動に励みたいと思います。
まぁその人生が何時まで続くかは不明ですけどね。
ところで鍋は持ち出せるんですよね?
魔族と戦争になるかもしれない。
そうなった場合、聖神教だけの問題では済まない。
亜人族や獣人族等はそれぞれ信仰している神もいるし
聖神教以外の宗教も多く存在しているが
聖神教は人族の世界に広く布教している為に
戦争となった場合は魔族と人族の争いになるだろう。
聖騎士団は布教範囲の治安を維持する為の武力ではあるが
他にも魔を滅ぼす為に行動する独立した部隊もある。
流石に大規模部隊ではないが数人から十数人程度までの
パーティーを組んで討伐に動いている。
シンプルに言えば聖騎士って立場の冒険者だな。
目標が魔族重視ってのはあるが。
戦闘のみを目的とした彼らは非常に強い。
強すぎる為に魔族の反感も強くなり魔王の制御すら
出来ないレベルで魔族側の一部が動き出したという事らしい。
まぁ元々その一部ってのは人族や獣族等の他種族に
害を与えているような奴らで
それを排除した事が最初の切っ掛けかもしれないが
そこまで関係が悪化してしまえ原因はば関係が無い。
少しだけだが魔族に属した事のある俺だが
魔族と言うだけで迫害されて当たり前のような奴らは少ない。
同じ事も人族だってやっているハズだしな。
やはり外見と圧倒的な能力差が恐怖心や迫害する的になるのだろう。
良い奴や気さくな種族だって多いのになぁ。
もっとも俺が居たのは首都近辺で
中の方や辺境はどうなっているかも知らないし
有った事も知らない種族の方が圧倒的に多い。
邪神やダークサイドの神を信仰してるって訳でも無いと思うんだけどね。
実際にそんな神が居るかは不明だけどな・・・・多分居そうだけど。
確か魔王領自体で掲げる神は居なかったハズだけどなぁ。
それに魔王領にも聖神教の協会はあるんだぜ。
大きくは展開出来てないようだけどね。
様々な要因が絡みつくだろう内容に俺は何が出来るのだろうか。
「ソレでわ以上の品でよろしいデスか?」
「頼むよ
出してくれさえすればアイテムボックスがあるから
持って行くのは問題ないし」
「ナルほど収納空間系のアイテムをお持ちなのデスね
用意するので少々お待ちくださいデス」
カタカタと歩いて物を集めに行くワーキュイ。
「実留さんあれだけで良かったんですか?」
「あぁ、色々と持って行っても使わないかもしれないし
無駄になっちゃうからな
残ったのは好きにして良いってワーキュイに伝言を残すよ」
選んだのは黒鍋、ラバリオの服とマント等一式、釘バットと≪霧蠍短槍≫を数本。
後は細々した物だ。
ウイスキーの初期ロットがあったのでそれも半分程回収する。
服とマント自体には俺の魔力で作られている訳ではないので
組込まれておらず持ち出す事が出来た。
ちなみに服は穴が空いたはずなのだが綺麗に塞がっていた。
そういやちゃんと≪鑑定≫してなかったな。
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≪ラバリオの服≫
迷宮神ラバリオによって作られた服
素材の問題により神の威光は得られなかったが
非常に品質は高い。
ある程度の対物性能、対魔性能がある丈夫な服。
サイズ調整、自動修復機能(軽)付で
森山実留以外の着用が禁止されている。
種類:防具
等級:魔聖級
品質:高品質
作成者:迷宮神ラバリオ
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見た目はただの服なのにすげーな。
性能的には丈夫な服だけどさ。
これ着ていると汗とかの匂いも抑えられるんだよな。
寒暖もある程度は調整してくれて快適だしな。
マントと合わせればソコソコの革鎧程度の防御力になるしね。
靴もそこらのブーツよりも頑丈で軽いし。
旅をするには有り難いな。
そういや魔族領にはゴーレム体とかも残っているのかなぁ。
流石に最初の犬とコボルドの体は無いと思うけど・・・・。
「デワ、残りは聖女様が自由に扱って良いという事デスね」
「あぁ、此処に来る事があれば伝えてくれ
俺も出先で会う事が出来たら伝えとくよ
あー・・・・体と武具は解放出来たら俺に取っといて欲しい
それ以外は好きにして良いから」
「ワカりました
僕が此処に存在する限りお伝えはするデス
ソレとこれをどうぞデス」
ワーキュイが差し出してきたのは小さな銀色の箱で
細かな細工がしてあり中央には薄く青紫に輝く宝石が埋まっている。
「これは?」
「ソノ箱はマスターが作りし作品の1つである
転送箱と呼ばれる物デス
指定された場所を行き来き出来るデス」
「具体的には?」
「コノ宝物庫に座標が指定されているので
外から自由に入れるデス
出る時も周囲に人が居ない場所に自動転送されるデス
転送の有効範囲が広くないので注意が必要デス」
「それは便利そうだな
有りがたく貰っておくよ」
「ハイ、後はこの場所で空いてる棚等は好きに使って良い
と言われましたので何かあればご利用くださいデス
格納場所によっては時間停止や腐敗防止の効果があるので
薬でも生物でも大丈夫デス」
お言葉に甘えて不要・・・もとい色々と使えそうな素材や
重複してある物を伝言を踏まえて置いていく。
更には俺が調べた資料や入手した本等も有効活用してくれるだろう。
ここぞとばかりにアイテムボックス内を整理したなんて事はないぞ。
決してそんな事はないぞ。
無いんだっては。
ワーキュイに礼を言って転送箱で外に出る。
転移された先は本庁と大神殿の中間辺りの屋根と屋根の間だった。
「自動転送で人気が無い所に送られるのはこういう事か・・」
「行きは自分で選べますけど帰りは時間を選んだ方が良いですね
昼間だといつもこんなですよ・・・・多分」
「だなぁ」
それから数時間は屋根の上で人気が無くなるまで
アリスとじっとしている事を余儀なくされた。
宝物庫にはその後、何回か行ってみた。
夜の間に転送箱の有効範囲を確認したが約30mで
転移するのに良さげなポイントを見つける事が出来た。
クソ騎士Aより業務は免除されていたので
戻って来た武器を使っての訓練や各スキルの熟練度UPをし戦闘力を上げたり
魔法の効率化や構築と言った魔法技術の研究にも勤しんだ。
他に特筆すべきは・・・・そう黒鍋だ。
あの神器が戻って来たのだ。
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≪迷宮神の黒鍋≫
迷宮神ラバリオによって作られた中華鍋モドキ。
調理人の意志に呼応して様々な調整が可能。
作った本人ですら虜にする程に料理が昇華される。
調理行程において破損は不可能だが防具として使うと
脆いので用途には注意する必要がある。
種類:道具
等級:遺物級
品質:高品質
作成者:迷宮神ラバリオ
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野外で料理する事も考えたが街の外まで行くのも面倒だ。
そう思い食堂のおばちゃんに場所を借りる事にした。
おばゃん達が仕事を終え
人が疎らになった時間を選び調理場を借りる。
基本的な材料は持込で足りない物や調味料等を拝借する。
おばちゃんと他に親しくなった2人に御馳走する事でOKを貰った。
ここは初心に帰ってメインは香草の煮込みだな。
使うのはポーラスの迷宮産の肉と野菜モドキだ。
ワックジャミーと言う熊と狼の中間のような姿に
頭に電撃を発生する角を持つ魔物の肉をチョイス。
全身に様々な草花を咲かせて擬態しているグリッパグルブは
色々な香草や野菜が取れる。
生息場所によって生えているのが違うのが面白い魔物だ。
他にも店舗で買った物や見回り途中で狩った獲物。
食堂で使って良いと言われた物を使いドンドン作る。
メイン料理の他に数品と余った材料で簡単なスープを作った。
1人で作るには量も品数も多かったが流石は黒鍋だ。
明らかに物理法則を無視した速度で料理が進んで行く。
それでいてある程度は臨機応変に意志を持つかのように
対応してくれるのは謎の神ぱわぁとしか言いようが無い。
まぁ料理器具を神が作ってくれたって時点で何かがオカシイけどさ。
「コレ!コレ!これですよぉぉぉぉぉ!!!」
「ピー!ピー!ピー!ピー!ピー!」
「あらあらあらあら」
「美味過ぎる・・・え??
これって・・・・?ここにあった食材だよな?」
「なんだねこれは・・・・・こんな料理が・・・・世の中に・・・」
etc。
アリス&ルーブ&おばちゃん&厨房の方々から絶賛された。
うんうんコレだよね。
この感じだよね。
凄い速さで胃袋に消えていく料理を眺めつつ
黒鍋の素晴らしさを改めて認識する。
全員が満腹になる量を作ったにも関わらず
お代わりを要求されので厨房に戻ると・・・ロイラが居て
取り置きしておいた俺の分を食べてた。
だけど何時ものようにモリモリと手当たり次第に口に入れるんじゃなくて
一生懸命食べると言うか黙々と食べてるのが変かな。
食べきった後も足りない様で周囲をキョロキョロしてるので
後ろから声を掛ける。
「まだ足りない?
もっと食べる?」
懸命に食べてるのを見たら子供を見てるみたいで
思わず優しい話し方になったのが恥ずかしい。
クルッと振り向いてコクコクと頷くロイラ。
「じゃぁ作って持って行くから
向こうで大人しく皆と待っててね」
そう言うとロイラは普段とは違う柔らかい笑顔を浮かべると
テテテっと歩いて皆の所に行ってチョコンと座ってた。
「あれ?今・・・・言葉が通じた?
ってか意志の疎通が出来てた?
・・・・・・ん?!
まぁいいか」
その後も追加でドンドン作り続けたのに
何故か他の方々も参戦してきて宴会状態になった。
手持ちの食材を大量に消化する事も出来たし
色々と伝手も出来たから良かった・・・・かな。
あれれ?何か毎回こんな気がするぞ?
これが黒鍋の力かっ!
何時の間にかトレブルも端の方に座って料理を摘まみに飲んでた。
呼んだ覚えも無いし上級騎士は別の建物なのに・・・・。
料理の合間に近寄って迷宮でドロップした迷宮酒が数本残ってたので
出してあげると表情が少しだけ変化したので
喜んでくれたのだと思う。
ちょっと驚かせてみたくなり
宝物庫から回収しておいたウイスキー(黒鍋熟成の初期物)を
別容器に移してこっそりと出したら一口飲んで目を見開き
俺を見て口をパクパクしてた。
指を口に当てて内緒にしとくようにとゼスチャーし
一瓶を差し出すとコソコソと懐に仕舞っていた。
心なしかトレブルが俺を見る目がちょっと変わったかなと思う。
これが恋愛ゲームなら好感度が大幅UPだな。
おっさんにモテたくは無いけど。
結構な量を食べて飲んでを繰り返して皆が満足して戻って居った。
アリスとルーブもテーブルの上で気持ち良さそうに眠ってる。
おばちゃん達も明日片付けるからそのままで良いと言ってはくれたが
少しは片付けておこうと思ったので先に帰って貰った。
食堂に静けさが戻ると疲れが出たのかちょっとフラっとした。
だってさ、俺はまだ何も食べて無いんだ。
少しは摘まんだり味見はしたけどね。
ここで俺の分を作ったらまた過熱しそうだしさ。
一応、食堂を戸締りして他に誰も居ない事を確認してから
食器類を集めて流しに置き漬けして
ゴミを一纏めにして簡単に出せるようにした。
「まぁこんなんで良いだろう
さて何か食って俺も寝るか
残った料理が少しあるから
1品位は簡単に何か作ろうかなぁ・・・・」
残った材料を考えて簡単な炒め物で良いかなーと
考えてると何かの気配を感じる。
ふと食堂を見ると何人かがいるようだ。
あれ?戸締りしたのにな・・・・。
「すいませーん
扉空いてました?
もう終わっちゃいましたけど」
声を掛けながら厨房から出ると
どうやら残りった料理を摘まんで飲んでいるようだ。
1つのテーブルに3人が腰かけている。
こんな人達居たかな?
「あれ?酒残ってましたっけ?」
「あぁ・・・・実留君
これは自前の酒だから気にしないで良いよ
悪いんだけどもう少し何か食べ物を頂けないかな
出来れば酒が進みそうな物が良いかな・・・だろ?」
清潔感のある明るい青年と言った者が返事をし
更に一緒に飲んでいる壮年のおじさんに意見を求める。
「あぁ・・・そうだな・・・・
そんなに量は要らないが何かピリッとした物が良い
この酒に合うようなな」
スッと差し出してきた杯を受け取って舐めると
旨味がガツンと襲ってくるのにスッキリとした味わいが喉を通る。
その後に鼻に抜ける清涼感を伴った香ばしさ。
「ウマっ!何にこの酒?!」
余りの美味しさに驚いていると最後の1人で
可愛いと言うよりは美人でテキパキと仕事をこなしそうな
OLっぽいお姉さんが笑う。
「ふふ、流石に貴方の酒だと実留君も驚くわよ
私は何かヘルシーだけど味が濃いのが食べたいわ
あー油は少な目にね・・・・今ちょと腹周りが・・・」
ん?この人達って誰だ?
会った事あったか?
聖騎士っぽくは無いし・・・・・でも俺の事を知ってるようだぞ。
「あの・・・・・何処かでお会いしました?
申し訳ないんですがちょっと覚えが無くて・・・・」
俺の言葉で3人が顔を合わせて苦笑する。
「あぁ、すまないね
僕達は君の事を知ってるからついね
会うのは初めてだよ
では自己紹介をしようか
僕は料理を司る神でターウェイ
しがない下級神だよ
宜しくね」
「え?神・・・・様?」
何で神が食堂で飯食ってんのさっ!
黒鍋様は偉大なり。




