5-36
昼はまだまだ暑いですが
過ごしやすい気温になってきましたね。
こんにちは森山実留です。
最近は迷宮や人里離れた場所なんかに行ってないので
高品質の食材や素材をGET出来ていませんので
食べたくなったり必要な場合は仕方が無く手持ちの素材を放出しています。
え?外回りに出てるじゃん?
基本的にアンデット系ですよ?
好き好んで食べたい訳ないじゃないですか。
多少は狩りもしますけど素材レベルがなぁ。
クソ騎士Aにから受けた仕事は簡単に言えば
"ロイラの旅に同行すること"だったが
詳細を聞いてみると実際には
"視察に行って欲しいがロイラも連れて行け"
が正しいだろう。
もっとも俺を視察に出そうとしたのを何処からか
嗅ぎつけてきたロイラが駄々をこねたってのが理由らしいがね。
ロイラの旅に同行云々と言うのは
単純に向こうが特級で俺が中級だからとの事。
一応は特級騎士は独自階位だから俺の下についてもシステム上は
問題がないのだが体面上でそうなったらしい。
ただ気になったのが
「ロイラ君については何も気にしなくて良い
宿や交通の手配等も不要だ
君は君の事だけを考えて行動して良い
但し彼女が望めばその限りでは無いが・・・」
「どうしてですか?」
「ロイラ君は自由に行動させて良い
それ以前に誰にも行動を制限は出来ないだろう
それでも目的日にはちゃんと辿り着くので心配は要らない」
と言われた事だ。
この言葉からも本部でもロイラが制御不能なんだなぁと
実感し今後の事を考えると憂鬱になる。
正式に任務を受けるまでに準備をしておくように伝えられた。
その間は武具の整備等をするので通常業務からは外れて良いと。
出発前の休暇も兼ねているんだろうけどね。
装備品や道具類については日々メンテをしているので問題なく
支給された物についても同様だ。
旅をする為の道具類は全てアイテムボックスに突っ込んであるので
今更用意する物も無い。
食材や素材も余分にあるのでロイラの分も必要と在れば賄える。
つまりは準備する事が無いって事だ。
そこで俺は本庁の内部を調べてみる事にした。
以前にアリスが言っていた気になる存在感ってのに
興味があったから丁度良い。
まぁ触らぬ神に祟りなしって言うから
無駄な事に頭を突っ込まない方が良いんだろうけど
どうにもアリスが気になるようで頻りに訴えてくる。
結局、俺も興味が湧いちゃうしさ。
昼間の内にアリスの指示された方向に向かう。
本庁には身分によって立ち入れるエリアが決まっているが
中級騎士の立場なのである程度は動き回れる。
途中で内部見回りをしている知合いの中級騎士に合った。
訓練や見回りで何回か一緒になった事がある本庁付の騎士だ。
「おう、どうしたこんな所で?」
「今度、派遣される事になってね
それまでの準備期間として休みを貰ったから暇でさ
ちゃんと本庁内部を知らなかったから見て回ってるんだ」
「おお、ついにか!
と言っても早かったが正しいか」
「そんなもんなのかな?
あんまり自覚は無いけどさ・・・
良かったら内部の事とか教えてくれない?」
「あぁ、良いぜ
って言っても俺も中級エリアまでしか教えれないけどな」
そう言って荷物から地図を出して教えてもらう。
中級エリアと下級エリアを合わせると全体の7割を占めるらしい。
それ以上のエリア、つまり立ち入り禁止区域が3割もある事になる。
多分だけど地下なんかもあるだろうから
実際には3割以上はあると見るべきだな。
そもそも地図に全て載っているとも思えないし。
彼の持ってる地図には上級以上のエリアは
大枠しか記載されていなかったので内部がどうなっているかは不明だ。
地図と照らし合わせるとアリスが気になる方向は大神殿に近い場所だった。
「こっちの方向には何があるんだ?」
「ん?こっちか?
ここは大神殿に続く区間で資材や儀式道具等を
入れておく倉庫や儀式の為の部屋とかだな」
「ほー、儀式部屋なんてのもあるんだね」
「神聖な場所だから儀式以外での立ち入りは厳禁だ
注意してくれよ
もっとも厳重に封印されているから高位の神官様でも
なければ扉すら開けれないけどな」
「へぇ、他には何かあるかい?
ここは見とけ的なやつとかさ」
「そうだなぁ・・・・
神殿に近い方に宝物庫があるな
手前は一般人でも入れるが奥は上級以上じゃないと駄目だな
最奥は厳重な封印で空間毎、隔離されてて
枢機卿の許可が無いと扉に触れる事すら出来ない
噂では光りの神の聖遺物が奉納されてるって話だ
まぁ手前の場所だけでも教会の歴史なんかを学べるから
一度は見ておいた方が良いさ」
「折角だし行ってみるか
教えてくれてありがとうな」
「おう、派遣先から無事に帰ってこいよ」
「あはは
色々と回らされるみたいだから
帰らしてくれるかは上役次第だけどね」
「ちげーねー
中間処の辛いとこだな」
2人で苦笑をし挨拶をして別れる。
宝物庫かぁ・・・・どうにもそこが怪しいな。
本当に神の遺物があるならアリスが感じたのはそれか?
マッピングを兼ねてウロウロと適当に歩きながら
宝物庫に向かった。
宝物庫の前半部分は展示を兼ねていて本神殿に来た方々が
寄って行くような場所だった。
時間帯が微妙なのか生憎の雨の所為なのか
人が殆ど居なく閑散としている。
そこは教会の歴史や時代の変化と共に変わった教会分布図や
各時代の光皇や枢機卿等が紹介されている。
聖女も歴代で幾人か存在したようだ。
『実留さん、この奥です
はっきりと感じます』
『そうか・・・・どんな感じなんだ?』
『なんでしょうか・・・?
暖かいような懐かしいような
自分の一部のような
そんな感じがします
武器や魔道具・・・・では無いと思うのですが』
『なんだろな?
どうするか・・・俺じゃこの先は入れないぞ
結界の類は無さそうだから進めない訳じゃ無いけど
警備も居るだろうしな』
入口の方からチラっと見るとエリア境界には
警備の騎士が立っている。
奥は大きめの通路のようになっており扉等がある訳じゃ無い。
そっちに入ろうとして一般人が入ろうとしているのを
やんわりと止めていた。
『仕方が無い隠れて侵入するか』
『大丈夫ですか?』
『まぁ試していた魔法が上手く機能すればな』
『あぁ、アレですか』
『バレたら問題になりそうだけどな・・・・』
一端、外に出て神殿に向かい知ってる顔を見つける。
気軽に話しかけてから外に向かう。
俺は外に出た。
その印象を付ける為に知り合いを見つけて話しかけて
アリバイを作っておくのも忘れない。
物陰に入り準備をする。
物音をなるべく出さない様に不必要な物は全て仕舞う。
ルーブには俺にピッタリと張り付くように言う。
一声も鳴かずに大人しく言う事を聞くので
何だかんだと言いながら意志の疎通は出来ているのだろう。
「"不可視"」
「"隠密"」
「"遮断"」
連続で新しい魔法を使う。
それぞれが名前のまんまだが説明すると
・不可視
他人から不可視、つまり透明になる。
極薄で高密度の空気の層を結界で作り光を屈折させる。
こちらの動きが遅ければ遅いほど透過率は高くなる。
早く動いたりすると追従出来なくなりアッサリと解除される。
明るい所も苦手で日光全開の屋外だと現状では使用不可と思った方が良い。
・隠密
気配や魔力の波動を限りなく低下させる。
但し強く魔力を練ったり気持ちが昂ると解除される。
・遮断
臭いや振動等の自分から発せられる類を
外に漏らさない様に遮断し
行動に伴う動作音を限りなく低下させる。
余りにも強く発する場合は解除される。
全てを1つの魔法に組み込みたかったが
膨大な魔力消費量になってしまったので諦めて個別にした。
それでも結構な魔力を持って行かれるが
ある程度の時間は維持可能だ。
個別で使う事もあるさ、うんうん。
精神を集中し心を落ち着かせジックリゆっくりと行動する。
それだけでも打ち消す内容が減るので消費魔力は改善される。
なので今の俺はゆっくりと摺り足で動くと言う間抜けな状況だ。
展示スペースに人が少ないのが有りがたかった。
今の状況だと歩いて来た人を避けるだけで精一杯だし
ぶつかろうモノなら突然出現する事になるからな。
なるべく物陰に隠れるようにして消費魔力を抑えつつ進んだ。
結果として警備は何事も無くスルーする事が出来た。
通路は広く奥まで続いていて幾つかの分岐と部屋があった。
何個かの扉を確かめてみたが全て開かなかったので
アリスが指す方向に向けて真っ直ぐ向かった。
周囲を警戒しているが不穏な気配は無い。
というよりも近くに生物の気配が無い。
どうやらここらは用事がある時以外は立ち入りが少ない区画なんだろうな。
そういや資材や儀式用の道具が仕舞ってあるんだったか。
ソロソロと移動していくと俺にも何かを感じた。
アリスの指す方向と同じなので関係があると思われる。
だが感じるのは異質な空間だという違和感だ。
決して懐かしいような暖かく感じれるようなタイプじゃない。
なんだろうか?
何ヶ所か警備が居たがソロソロとスルーし辿り着いたのは
小さ目のホールで周囲に幾つも扉が並んでいるような場所だ。
それぞれの扉が重圧を感じる程に厳格に封印されている。
試しに一つの扉に手を伸ばしてみたんだが
ある一定の場所から先に手が進まない。
結界や透明の壁があるような感じじゃなく"手が進まない"んだ。
そこには何も無いし何も触れないのにだ。
その距離まで来ると更に追加で進めないと強烈に意識させられる。
物理的にも"進めない"。
精神的にも"進めると思えない"
魔法は感知される恐れがあるのでスキルを使ってみたが
弾かれたと言うか効果が霧散した。
これが空間を隔離していると言う封印なんだろうか。
アリスを扉の向こうに直接送ろうと思っても駄目だった。
アリスが指し示す扉は一番左手で他の扉とは少し感じ方が違った。
何となくだけど親近感があると言うか何処かで感じた事がある気がする。
『ここまで来たけどどうするよ・・・
今の俺達で出来そうな事なんか無さそうだぞ』
『う~ん、でもこの扉の向こうに感じるんですよね』
『駄目元で試してみるか・・・・
取っ手も無いから引き戸かね?』
先程と同様に手を伸ばす。
そろそろ拒否られる距離だなぁと思いつつビクビクしていると
ピタっと扉に手がついてしまう。
緊張していた体にヒンヤリとした感じが気持ちいい。
『あれ?触れたけど・・・・』
『あれ?触れましたね・・・・』
そう2人が呟いた瞬間に景色が変わった。
どうやら部屋の中のようだ。
広いが薄暗く空気が重く感じる。
『今のは何だ?
魔力を感じたが・・・・転移したのか?』
『実留さんっ!アレっ!』
俺が動揺してキョロキョロしていると
アリスが一点を凝視していた。
「え?・・・・・・まじか・・・・・」
そこには俺が居た。
正確には2代目のミックスの俺が居た。
俺は前転生時の体と再会したのだ。
実留君、相当なレア物に遭遇しました。




