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5-32

台風の日に出かけるもんじゃない・・・・・よねぇ。

こんばんわ森山実留です。

夜の王都は静まり返っています。

まぁ飲み屋のような一部の店や兵士やギルド員以外は

基本的には深夜は動く者はそう多く無いからね。

寝つきが悪い時なんて現代社会に生きてきた

俺にとって暇で仕方が無い。

DVDもネットも無いんだぜ・・・・。

どないせいっちゅうんじゃー。

出歩くのも不審者扱いになりそうだしなぁ。






拝命式は大神殿の一角で行われた。

ルーブは何故か食堂のおばちゃんに懐いたので預かって貰った。

アリスは戻したフリをして離れた場所に再召喚して周囲の偵察を頼んだ。


式自体は簡単な内容だった。

聖騎士としての証として一振りの剣を貰い任命されるだけだ。

本来ならもっと厳かにやるらしいんだけどね。

驚いた事に・・・と言うべきなのかは分からないが

枢機卿の1人である"イリュイス枢機卿"が来ていた。

と言うよりもイリュイス枢機卿から任命されたんだけどさ。

最低でも1人の枢機卿の立ち合いが必要なんだそうだ。

なんだよ少し驚いたのに損したぜ。


イリュイス枢機卿は優しそうな柔らかい笑顔が印象的で

歳は中年を越えてはいるが老人とも言い難い外見だ。

背は真っ直ぐに伸び体の動きを見ても現役だと分かり

耳に馴染む声が心地よいナイスミドルだ。


枢機卿の左右と後ろに守る様に固めて聖騎士達が立っているが

あれが"緑導騎士団"の方々なんだろう。

なるほど・・・・流石にエリート集団の集まりだ。

平穏時で且つ抑えているだろうに感じる強さは相当なモノだ。

フルボッコにした隊長なんかとは明らかに格が違う。

それも数段上だ。

そういやあの隊長の名前は・・・・聞いてなかったな。

隊長と呼ばれていたけど普通の教官とは違うのだろうか?

まぁどうでも良いけど。


貰った剣は式典なんかで使う奴らしい。

実際に帯刀しなければいけない規則は無いが

聖騎士は行動の際に帯刀しておく事が殆どなんだそうだ。


=========================

≪聖騎士の礼剣≫


聖騎士としての身分と証明する礼剣。

作りは小ぶりで片手で使う事を前提としている。

刻印と魔道回路により所有者以外の使用を禁じている。

聖属性との相性が高いが剣自体は属性を持たない。


種類:武器

等級:上等級

品質:高品質

所有者:森山実留

=========================


なるほど。

身分証代わりになるって事なのね。

だから外に出る時は基本的には持ち歩く感じになるんかな。


武器としては式典用の意味合いが強いから

一級戦で使い続けれる程の物でも無いが弱くもないってトコだ。

短剣よりは長いが長剣程ではない大きさがサブ武器としては

丁度良くもあるから便利と言えば便利だしね。


シリアルナンバー入り且つ所有者制限ありのダブルチェック。

でも使用を禁じているだけで所有は禁じてないから盗難防止の

効果はあっても機能は無いか。

盗んだのが見つかったら厳罰らしいけどね。

勿論、盗まれた方もだ。


剣と祝詞を受けとり正式に聖騎士になった。

拝命式の後は他の装備類や備品も支給された。

鎧は幾つかの種類を選べるので軽鎧タイプの

動き安さを重視したのをチョイスしておいた。

この鎧も外見には装飾がされているが派手さは無く実質的な作りで

身を守るのと同時に周囲を威圧しないように考慮されている。


あ、拝命式は先に支給されていた服を着てたよ。

これは完全に式典用の奴だね。

シンプルな作りだが綺麗で品のあるデザインだ。


他には書類を書いたりと必要な事が全て終わったら

夕方近くになっていた。



昼も食べれなかったので食堂で遅めの昼と

早目の夕食を兼ねて食うかと部屋に荷物を置いて出ると

トットットッと廊下を走ってくる音がする。

廊下の先から宿舎を管理していると紹介を受けた人走ってくる。

確か名前を"ロッガー"さんとか言ったっけな。


「どうしました

 ロッガーさん」


「あぁ、まだ部屋に居ましたか

 伝令がありまして渡しにきました」


そう言って手紙を1通渡してくる。


「ロッガーさんが渡してくるという事は

 上級か下級の方からの方ですか?」


「そうですね

 渡しに来られた方は事務官でしたが

 上級騎士の方からです」


「ありがとうございます

 でも大変ですね

 こうやって毎回渡しに来たりするのも」


「いえいえ、これも仕事ですよ

 寮内の安全や風紀を守る事は大切ですしね

 ついでにこの先に直さなきゃいけない扉があったので

 丁度良かったってのもありますから」


そう言うとロッガーさんは片手に下げていた工具箱を

見せると笑顔で去って行った。

フットワーク軽いなぁ。



手紙の内容はクソ騎士Aからの夕食の誘いだった。

場所は本庁の奥にある上級騎士専用エリアに

隣接されている個室の中の1つだ。

許可があれば俺でも入れる場所なんだけど

気が進まないが行くしかないんだろうなぁ・・・・ハァ。





呼び出された個室は最低限の飾りつけだが質素にならずに

品の良い装飾で好感が持てる部屋だった。

主に会食やもてなし等に使われる部屋だと思うのだが

豪華過ぎず質素過ぎず相手に威圧感を与えずに

安心できるような部屋に仕立て上げているのは凄いなと思う。


ひょつとしたら聖騎士と言うのは意外とまともな組織なのかもしれない。

前回も今回も糞ったれな奴らしか見てないけど

中にはモリスさんのような良い人も居るんだしな。

俺の周囲には変な奴らが集まる傾向でもあるんだろうか?


それもきっと世界神様の思召しに違いない。

何とも迷惑な事だけどな、オィ。



個室の中はクソ騎士Aの他に4人が居た。

1人は事務官のニャムとか言うBBAだが他の3人は初めてだな。

誘われた礼を言って空いてる席に座る。


先に言っておくと食事は量と味も満足する内容だった。

流石は上級騎士用エリアだけはある。

中級の食堂とは違うようだ。


肝心の用件は俺の祝賀会だったようだ。

騎士Aが相変わらずもっともらしい事を言って盛り上げた。

曰く上級騎士になればこんな場所が使える。

曰く俺を信じて付いて来い。

等々ね。

飴と鞭なんだろうかね。

何とも分かり易い事で。


他にも俺と既存メンバーの顔合わせも兼ねていたようで

クソ騎士Aの配下で行動している聖騎士が残る3人を紹介された。


明るい赤毛でニコニコと笑いながらクソ騎士Aを

盛り上げてる優しげな青年。

名前はダミアン、中級四位との事。

神官の資格も所有しているらしく各地を回る巡礼騎士なんだそうだ。

役割や神官の資格等を踏まえると

ナカナカに思う所がある名前だがきっと関係が無い話しだ。

そしてこの場でクソ騎士Aを敬って話している唯一の1人。

寧ろダミアンとしか話をしてないんじゃないだろうか。

それでも場が盛り上がっているように感じるのは

ダミアンの技術が凄いと言う事だ。

なのでクソ騎士Aが饒舌になり楽しそうに笑っているのを

見るとちょっと恐ろしく感じるな。

だってクソ騎士Aが一方的に話してダミアンが受け答えしてるだけなのに

場が盛り上がってるように感じるんだぜ?

そりゃまぁ事務官とか俺とか他の2人もダミアンが巻き込んではいるけど

会話にそこまで乗っていないのに盛り上がってる風なんだ。

何か信用出来ないと言うか不安を感じるので

余り近寄らないでおきたい人物だと思った。


次は無口で殆ど喋らなかったトレブルという上級三位だ。

確か上級と言えば自分で部隊を率いるランクだったハズなのだが

他の下に付く者も居るんだろう。

クソ騎士Aの返答にも「あぁ・・・」「そうだな・・・」等の

短い返事しかしていなかった。

クソ騎士Aと同階位だから許されているのだろうか?

それだけじゃない気もするが会話も無く情報は得られなかった。

食事は殆ど取らずに淡々と酒を飲んでいたのが印象的だった。


最後はロイラと言う女性騎士で・・・・なんと特級だ。

もう見た感じから地雷臭がプンプンする女性騎士だ。


年齢は若くとても可愛い顔をしている。

本来であればサラサラの金髪なんだろうが手入れはされておらず

ボサボサで所々に何かが引っかかっているように見える・・・ゴミか?


服装も本来は綺麗な制服だったと思わしき布きれだ。

ギリギリに見えちゃいけない部分が出てないだけで

本当は水着なんじゃないか?

ボロ布を巻いてるだけじゃないのか?

と言わんばかりの面積しか残っていない。

ケラケラと笑って会話をしているが実は大きな独り言だ。

もちろん会話に絡んでくる事もあるが一方的に入ってきて一方的に絡んでいくので

会話のキャッチーボールをしてるのではない。

壁打ちですら無い。

ただ投げて自己完結して終わっている。

楽しそうに虚空の誰かと話したまに現実に戻ってくる。

そして合間に食事を凄い勢いで食べて酒は飲まないようだ。


感想を言えばただ只管に怖い。

なるべくも何も近寄りたくない。

明るい雰囲気で見た目も良いがあれは何かの理の外に居る方だ。

危険だと分っているのに飛び込む事もあるまいさ。


紹介と言われたがトレブルは俺に興味が無いのか酒を飲むだけで

ダミアンは話しを振って来るがどうにも嘘くさいと言うか心が拒否してしまう。

ロイラは・・・・何故か俺には絡んでこなかった。

ただ時折、じっと見つめてくるのが怖かったな。


会食自体は特に何もなく終了した。

食事が終わるとロイラはスクッと立って部屋を出て行き

クソ騎士Aはダミアンと事務官を連れて出て行った。


「トレブルさんは・・・まだ帰らないのですか?」


「あぁ・・・・もう少し飲んで行く」


「そうですか

 それでは先に失礼させて頂きます」


「あぁ・・・・」


最後まで無口だったトレブルを置いて部屋に戻る。

食事も酒も美味しかったんだが何か緊張したな。

よし、帰りに食堂でおばちゃんに何か出して貰おう。

上品ぶった食事で終われないのが庶民の悲しい所だね。





翌日から通常業務に携わる事となった。

本来であれば中級騎士だしクソ騎士Aの指示で単独行動をするはずなのだが

何も分らないのに情報収集なんて出来ねーだろという事で

まずは本庁務めをする事で基本的な事を覚える運びとなった。


起きたらまずは清掃業務。

部屋を掃除し担当場所を清掃する。

担当場所は定期的に変わるそうだ。

今の俺は入ったばかりなので身近な所で宿舎を担当してる。

他の聖騎士達もキビキビと清掃しているのは清掃後に食事なので

早く終わらせなければ食事の時間が無くなるからだ。


ちゃんと清掃員も居るが立ち入り出来ない場所も多い為に

清掃業務は基本的に一部の者を除いて全員が行う。

神に仕えし聖騎士が己を律する為にも身の回りは自分で清めるとね。

ここらへんは神官達と同じような考え方だな。

上級よりも中級、中級よりも下級の方が

清掃範囲も広くて厳しい場所も多い。

その分、人数も多いけどね。


その後は情報の流れを覚える為にデスクワークだ。

覚える内容は書類の種類・書き方・内容は勿論のこと

本庁内での様々な規律やルールまでと幅が広い。


午後は戦闘訓練となる。

他の騎士達に交じって基礎訓練から始まり剣術、体術、魔法等の訓練を行う。


俺の体はスペックだけでも同じ訓練をしてる中でも頭一つどころか

ダントツに差を付けて上なので内容には物足りなさを感じる。

それでも正式な剣術や体術、そして魔法理論等を教われるのは楽しかった。

訓練はかなりハードでバタバタと倒れていく下級騎士達と

倒れはしないがキツそうな中級騎士達を横目に教官達にグイグイと迫った。


戦闘訓練が終わった後は"聖戦闘衣"を身に付ける訓練だ。

これは希望者が受けれるが誰でも受けれる訳でもない。

聖属性適性とある程度の実力が必要だ。


何故、通常訓練後にやるかと言うと肉体を酷使して

ある程度の脱力状態や限界状態の方が良いんだそうだ。

それに実力を確かめるのにも過酷な訓練は丁度良いのだろう。

俺と一緒に受けてた奴は"聖戦闘衣"を習得してない者達だから

午後の訓練を生き残ったほぼ全員が参加する事となる。


内容自体は静かな場所での瞑想だ。

聖気とかい言われる物を感じ取り身に纏うと言った所か。

室内訓練場の1つに専用の修練場がある。

内部は飾りっ毛は全く無いが堅牢な作りで広く個室が沢山用意されている。

整理されたカラオケボックスのような作りだと言えば分かり易いだろうか。

又は石造りの狭い牢屋と言った方が良いような作りになっている。


1人づつ個室に入り扉は閉める。

中は狭く石造りで家具も無いが何かの力を感じる。

どうしたモノかと考えていると何処からか声が聞こえてくる。


「いいか、まずは精神を集中し研ぎ澄ます必要がある

 その為に各々で好きな格好をしていい」


スピーカー的な物があるのかな?

色々とポーズをとってみて立ったり座ったりだが

俺は仰向けで寝る事にした。

好きにして良いと言うからには問題ないだろう。


「次に聖属性を得た時の感覚を思い出せ」


ふむ・・・・・感覚とな・・・・・・?

・・・。

・・・。

・・・。

え?全然わかんないんですけど・・・。

得た時の感覚って・・・・味覚って事ですか?

そんなもん思い出したところで何も起こらないんですけど。


「思い出したか?

 ならばその感覚を維持したまま意識の手を伸ばし引き寄せるんだ

 それを少しづつ集め自らも引出し調和させる」


味覚を維持したままに集めて引き出す?

なんだ?唾液位しかでねーぞ。


「ある程度の量を確保を出来たらば

 それを身に纏うイメージを強く持つんだ

 外部から守る鎧のように敵を穿つ剣のように」


唾液を鎧と剣にするのか?

俺は俺なりにやってみるしかないな。

目を閉ざし当時の感覚を思い出しながら強くイメージする。


何か間違ってるような気がしなくもないぞ。

これで良いのかね?

色々と香ばしい方が出てきましたが

活躍するかは不明です。

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