5-31
エアコンの効きが悪くて寝汗が凄いです。
温度設定を下げ過ぎると寒いし・・・・どうすれば良いんだっ!
聖騎士試験に合格した森山実留です。
これで俺も神の使徒として魔と戦う一員となります。
聖戦です!ジハードです!
燃えますね!
魔王となんかは戦いたくないので参加したくないですが。
聖騎士試験の合格発表後は解放された。
試験結果を元に入団や拝命式の準備があるので数日の内に
使者が来るまでは自由だそうだ。
それからは厳しくなるぞとクソ騎士Aがジョークだか何だか
わからない笑いを飛ばしていた。
説明を受けてたりしたら何だかんだと時間が掛ってしまい
受けてレラ達と合流したのは夕方前だ。
巡礼者の列を見ながらルーブとアリスを頭にのせて帰り道を歩く。
レラからは退屈ではあったが特段何も無かったと説明があったが
アリスからの報告でルーブと満面の笑みで遊んで居たらしく
暇そうではなかったんじゃないかという事だ。
寧ろもっと遊んでいたかったような顔をしていたと。
エバーザイト家の別邸に戻りレラとカリュイに報告すると
2人共、クソ騎士Aが何かを企んでいるのは間違いないとの意見だ。
相手の懐に飛び込む事になるので何をしてくるか予想できないが
気にしても仕方が無いってのもある。
注意はするが気負い過ぎないようするってのが落とし所かな。
翌日は朝から行動した。
まずは不要な素材や武具の整理だ。
何時か使おうと思っていたが今後は自由に動けなくなりそうなので
薬の材料や食材や冒険に必要な道具を最低限残しつつ
余りまくっている素材や使わない武具等を売り捌く事にする。
本来であれば専門店や幾つかの店で値段を出してもらうのだが
量も量だし小金を稼ぐのも面倒だったので
大手を幾つか選んで適当にバラけて売った。
まぁ買取後の金額を見たら小規模な店じゃ無理な位にはなったので
あながち間違いじゃ無かったかな。
査定を待ってる間に店内を色々とみて目ぼしい物があれば買いこんだ。
それらを引いても結構な額が手元に来た。
残っていた迷宮産の素材なんかが割と高額になったようだ。
次に武具の整備だ。
聖騎士になれば基本装備は支給されるのだが自前を持つ者は多いので
俺も今使っているのをそのまま持ち込むつもりだ。
日々の簡単なメンテナンスは自分でも行っているが
本格的に手を入れるとなると手が届かない部分もある。
預けるのは試作品シリーズも含めているので下手な所には任せられない。
他言無用で信用出来る店をレラに紹介して貰った。
整備は数日欲しいと言われたのでエバーザイト家に届けてもらう事にした。
俺が取りに行けない場合はカリュイが受け取ってくれる手筈になっている。
預ける際に色々と説明をしたら店主とレラが
興味をもってしまいそれぞれに1品づつ提供した。
これを分析しライセンス販売をする事になってしまうのはもう少し後の事だ。
時間が掛る事を先に終わらせて残りの自由時間は全て首都の散策に回した。
以前の記憶と照らし合わせて街並みを歩き地図を頭に入れる。
≪オートマッピング≫があるので隈なく埋めるように歩く。
このスキルで表示された地図にはアリスが得た情報も地図に表示出来る。
簡易的な表示になってしまうが地図に重ねて情報を追加できる感じだ。
しかしそれには幾つか条件があるようで
地図が出来ている事と欲しい情報を指定している事だ。
これは俺が地図を見ながら先に何があるかをアリスに聞いたところ
遠くから見ただけの漠然とした地図にぼんやりとハッキリしない建物が
表示された事から得られた情報だ。
詳細な地図があれば詳細に表示され漠然とした地図にはそれなりに。
地図が無い部分には表示されない。
何かの場合で首都が戦場になった場合等は強烈な武器になるだろう。
情報は何よりも大事だしな。
上空からの内容が地図上に写し出されるのは非常に有益だ。
なので俺は首都を練り歩いて詳細な地図を作るって訳だ。
1日目の後半と2日目、3日目を丸々と使い一般人が
踏み入れるエリアの大半は網羅する事が出来た。
細かい路地や店舗等の詳細は全くだが主要な建物と通りは掴めた。
首都は広い為、ずっと早足や駆け足だったが何とかなるものだ。
飛んで空からみればもっと楽だったんだろうけど
今の状況で下手な事はしない方が良いだろう。
地図を作って行くと気になったのが幾つかの空白地帯がある事だ。
其処まで辿り着く為の道が無かったり建物の大きさや使用目的の割には
裏に結構な敷地があったりする場所が幾つかある。
他にも地下に色々と生命反応があるのは地下道や下水なんかもあるのだろう。
ノイードは首都らしく全体的に治安も良いがスラム的な部分が無い訳でもないし
悪い奴らってのは何処にでも居るしな。
興味はある此方から踏み入って変な事に巻き込まれるのも御免だ。
地図作りはそっち方面の危険回避って意味もある。
普通の転生物なら突っ込む所だが俺は違うんですよっと。
4日目の朝に使者は来た。
正式に発行された任命書を受け取る。
明後日に聖騎士としての拝命式を受けるとある。
ついては明日の朝から本庁に来る旨も指令も受けた。
さて、ついに来たか。
俺はどんな扱いになるのかね。
本庁に入るとある程度まで上に行かないと
基本的には宿舎住まいとなるので
エバーザイト家の客人としての立場は終了だ。
聖騎士になれるチャンスを貰えた事と世話になった事を
カリュイにお礼を言って最後の夜を迎えた。
翌朝にカリュイとレラに改めて礼を言って出発する。
さぁ聖騎士への道がはっじまるよーってか。
本庁に赴き受付にて任命書を提出すると
まずは荷物を置いてくるようにと宿舎に案内されたのだが
なんと個室を用意して貰えた。
部屋は机と本棚にベットと荷物入れがあるだけで
大きくは無いが掃除も行き届いていて清潔感がある。
ルーブとアリス用のソファと言うかクッションが用意されていたのは有り難い。
荷物を置くと宿舎内の地図を渡されて簡単に説明を受けた。
どうも俺が居る場所は中級騎士が入る宿舎だ。
宿舎は各階位にて立ち入りが制限されていて
上級は勿論だが下級の場所にも基本的には立ち入り禁止だ。
例外として許可が下りた場合のみ制限はあるが立ち入れる場所もある。
この辺りは徹底されているらしい。
個室は中級から支給されると聞いたので
少なくとも俺は下級騎士からのスタートって事はないようだ。
余りにも待遇が良すぎる気がするな。
ふむ・・・・・嫌な予感がする・・・・。
宿舎の施設を色々と見て回ったので遅い昼食を食堂で食べた。
飲食は無料で味も良くて量もあった。
食堂のおばちゃんに聞いたら使い魔や従魔は専用の場所があるが
ルーブとアリスのような小型で影響が無い場合は一緒でも良いらしい。
俺の他にも使い魔を連れているのを数人見かけたので
割と普通の事なのかもしれない。
流石に子竜と妖精の組合せは珍しいのか興味を持ったようだったけど。
食堂のおばちゃんはルーブとアリスの食いっぷりに惚れたようで
モリモリと食べさせていた。
どうもこの時間帯は暇らしく話し相手になってくれた。
「そういえば使い魔って珍しくはないの?
子竜と妖精を連れてると目立つと思うんだけど
あんまり誰も話しかけてこないんだよね
話しかけてくる人も随分とアッサリだし」
「そうだねぇ・・・確かに珍しい組合せではあるけど
ここの上の人達なんて成竜を連れてる人もいるしね
使い魔自体は魔道具を使えば割と簡単に手に入るから
従えてる人は結構居るよ
まぁ普通のモンには高くて手が出ないけどね」
まじか?
使い魔って魔道具で手に入るのかよ?
俺のは所有権を明確にする物だけど他にもあるのか?
「まぁアンタの使い魔は貴族様の刻印が
入ってるし品質も良いんだろ?
高かったんだろうねぇ・・・・」
「あはは
でもまぁ俺は客人として世話になっただけで
これは頂き物なんだ
元々自分で契約してるから揉め事防止みたいなもんさ」
「あら?そうなのかい?
自分で契約できるなんて凄いじゃないのさ」
「そうなのかな?
他の人と比べた事が無くてね」
「弱い魔物や魔獣なら適性さえあれば契約出来る者は多いだろうけど
それなら魔道具を使った方が早いさね
魔道具なら所有権なんかも主張できるしね
強い奴になるとそもそも契約出来る者が殆ど居ないのさ
逆に言えばある程度なら魔道具で契約出来るけど
それ以上となると自分で契約出来ないと従えないさ」
「となると成竜なんてのを従わせてるのって・・・」
「本人も化物みたいなもんさ
成竜を従えさせる力が無いと駄目って事だからね」
思いがけない所で情報を聞けてホクホクだ。
やっぱり食堂と言えばおばちゃん。
おばちゃんと言えば情報通だよな!
お腹もイッパイ、情報もイッパイだ。
その後も時間と資格が許す限りの場所を見て回った。
夜も食堂で食べたが非番時は外に出ても良いそうだ。
折を見て周辺の調査をしておいた方が良いだろうな。
店とかは全然調べてないし。
明けて早朝。
ついに俺が聖騎士を拝命する時が来た。
まずはクソ騎士Aの事務室に向かう。
「やぁ、おはようミノル殿・・・いやもうミノルだな
今日から君は聖騎士となる
拝命式は君だけなので簡略となるが正式なモノだ
心してのぞんで貰いたい」
「心遣いありがとうございます」
クソ騎士Aは俺の態度に満更でもない態度だ。
引き出しから資料を取出してパラパラとめくる。
「さて・・・では君の待遇について話をしておこうか
こういった試験を経て聖騎士になるのは
例が無い訳じゃないが型が出来る程には多くは無いし
毎回事情も違うので多少は慌ただしいのは理解して貰いたい」
「はい、問題ありません
こちらの都合でお願いした事ですし」
「そうか・・・では君の待遇だが中級騎士で六位となる
これは"聖戦闘衣"を使えない者としては最高位になる
・・・・が、君が"聖戦闘衣"を見に付ければ五位を約束しよう」
おお!なんと!そんな高待遇を!
とは全く思わない。
聖騎士に憧れも無ければ想いも無い。
ただ単純に実里の近くに行くのに利用したいだけだ。
下から始める事になるかと思ったけど
良く考えれば中途採用みたいなもんだもんな。
それなりのポジションからスタートは出来るか。
「そんな・・・・高待遇を・・・ありがとうございます」
そんな想いを外には出さずに≪ゴマすり≫を連発する。
ふふふ利用できる奴はトコトン利用してやるぜ。
「それでだな君は私と同じ"鳳凰の瞳"に就く事になる
その中でも私の直属の部隊として動いて貰おう」
説明を受けると上級騎士は自分の采配で動かせる
独立部隊だか組織を作る事が可能なんだそうだ。
そこに俺を入れると。
だがクソ騎士Aが所属する"鳳凰の瞳"は管理や兵站がメインのハズだ。
独立部隊を作って行動する理由はなんだろうか?
「まぁ不思議そうに思うのは理解出来る
なんで"瞳"に独立部隊が必要なのか?だろう?」
「えぇ・・・確か"鳳凰の瞳"は兵站と管理が主と聞きました
聖騎士団の基礎部分を支えるのが役割だと思うのですが・・・」
「そう基礎を支える・・・つまりは聖騎士団が万全に動けるのは
我々の日々の努力が大切なのだ
準備や計画等もそうだし各所への交渉や資材の管理まで多岐に渡る
・・・・・が・・・君に頼みたいのはそれらでは無い」
「と言いますと?」
「私の仕事の1つに聖騎士団内を清らかに保つというのがあってね
それを手伝って貰いたいんだよ」
内部監査か?
そんな事をコイツがやってるって言うのか?
「ふむ?あまり理解できないかね?
簡単に言えば内部の情報や動きを判断し不正や過ちを犯した者を
洗い出して排除する事だ」
「内部を疑うのですか?」
「残念ながら不届き者とは何処にでもいるのでね
悲しい事だが聖騎士と言えどもそれは同じ事だ
神を崇め平和な世にする為に活動している我々が
自らを正し清らかな組織を作って行かねばな」
「自分にその役割を?」
「勿論、他にも動いている者は居る
だがしかし人手が足りて無いのが実情でね
情報を探り調べるには行動力と教養が必要だ
役割から言って秘密裏に行動するので満足な支援は
受けれるとも限らないし単独行動が多いので強さも必要だ
そんな人物がそうそう居なくてね」
「それは自分を買いかぶり過ぎでは?」
「読み書きと計算まで出来て現役の聖騎士をも手玉に取る
迷宮も踏破した実勢を見ると過酷な環境での行動も可能
色々な商売にも携わっているとの情報も入ってきている
それで実力不足だと言う奴は居ないだろう」
お前の事は全てわかっているんだと言わんばかりに
微笑を浮かべたまま圧力を掛けてくる。
なるほどね・・・・こういうやり方で来たか。
俺を監視下に置きつつ使える者は使うって事ね。
「自分に出来るでしょうか?」
「最初は簡単な調査からして貰うさ
それに内部を探るばかりが役割でもない
敵対する勢力に潜入捜査等も我々の役目だしな
調査と一言で言っても色々とあり
それは複雑に絡み合っている
判断する為の情報を君に持ち帰って貰いたいと言うだけさ」
単独行動で内外の調査が出来るなら寧ろ有り難い。
調べる事も行動する事も出来るんだからな。
俺もお前を踏み台にして妹に会いに行くだけさ。
それにしても何でコイツがそんな情報を集める立場に居るのかね?
寧ろコイツ自身が監査対象になりそうなものなのになぁ。
実留君は中級騎士からのスタートです。
さてどうなることやら。




