5-28
更新遅くなりました。
台風が来ていますが皆様大丈夫ですか?
こんにちは聖騎士見習いの森山実留です。
あ、ちょっと言い過ぎましたね。
まだ入団前ですが試験なんて楽勝ですよ。
どうせ実力試験だ何だと言って模擬戦とかでしょ?
もうテンプレも良いとこですよね。
速攻でボコって終了!ハイ!合格!
そんな感じですよ。
事前に資料を読み漁りカリュイに話を聞いて準備する。
レラも職業柄なのか情報には通じているらしく様々な事を教えてくれた。
必要最低限しか話さないので理解するのは大変だったが。
事前情報によると試験官は"鳳凰の瞳"で管理を担当している
"イリエム"と言う名の上級騎士になりそうだ。
有数貴族の出身で加護持ちの上に過去に対魔族戦で実績を上げたエリート様だ。
そして試験は実力を測る形式になるだろうと予想。
普通に対戦形式なら楽なんだけどなぁ。
こちらの情報もある程度は渡してはいるが詳細は伏せてあるとの事。
宗教絡みの問題に俺の種族は問題がありそうだしな。
まぁそもそもがデミゴットって事は殆どの人には教えてないし
登録も人族と亜人(種族不明)のハーフって事にしてある。
その辺りが厳格じゃないのは世界にはそう言ったハーフが多いからだ。
俺の見た目もパッと見は人族だしな。
翌朝の朝靄が街を覆ってる時間からレラに連れられて聖神教の本庁まで向かう。
レラは馬車で行こうとしたが俺は歩いて行く事をお願いしたので早目に出た訳だ
理由としては街中を少し見たかったからだ。
犬の時に来た時以来だし聖神教の方には行かなかったからな。
あの時はブタ子が薬を買いに行ったんだよなぁ。
話しに聞くと大きな商売を手掛けてるって言うんだから
随分とまぁ成長したもんだ。
俺も良く分らん種族になってるし・・・・。
そういえば犬の時に住んでた場所はどうなっているんだろうか?
あの居心地の良かった住処には誰かが住んでいるんだろうか?
必死に生きてた頃が懐かしいな。
転生初回で何も知らなかったし弱かったしね。
本庁に辿り着く頃には日も登り街が動き出していた。
途中で早朝から開いている店で時間調整を兼ねて朝食を取る。
レラのお勧めする店に入ったが値段の割に美味くて量も満足出来た。
この近くにはこういった店が多いらしい。
本庁では隣接される大聖堂への巡礼者が多く詰めかけていたのを横目に
入口の警備の者に要件を伝える。
レラが渡した手紙を持って走って行った。
こーゆうのって待たされるのがオチだよなぁ・・・。
大聖堂への巡礼者を見て時間を潰す事にする。
服装は様々だが皆、神妙な顔をしてる。
ボロを身に纏った者から豪奢な服装で従者を引き連れた者までと幅広い。
元の世界に比べて神の威光が強い世界なんだろうな。
まぁ実際に神が存在する世界なんだけどさ。
チラチラとこちらを見られている気がしなくもないがどうしてだろう?
頭に子竜と妖精を乗せているからだろうか?
ふむ?おかしな点等何も無いと言うのに。
使い魔だって少ないが大きい街なら見かけない程じゃないしなぁ。
そんな意味も無い思考の世界に浸っていると後ろから声が掛る。
「お待たせしました
どうぞこちらへ」
あれ?早くない。
そう思いつつもレラが先に歩き出したので付いていく。
本庁内部はシンプルだが品があり落ち着いた雰囲気だった。
装飾は少なく無駄が徹底的に省かれているが
漂う空気は荘厳で何か神聖な気を感じる。
レラに聞いてみると「神域だからな」との事だ。
神域が何かは教えてくれなかったが・・・。
これは後でカリュイに聞いたが
"神域"とは神の加護が下りた土地と言われているそうだ。
他にも"魔力"が濃い場所や"何かが起こり易い"場所等と同様の
所謂、"特異点"とされる土地の一種との事。
聖神教本庁のある場所は神域としてされていて
神の声を聞きやすい場所とされる。
まぁ確かに何か清んだ神聖な感じは受けたけど
それ以上は俺には何が違うかは分らなかった。
通された部屋は入口から結構進んだ場所だった。
途中に数ヶ所の警備場所のような物も設置されていたし
一般人が入れるような区画ではないんだろう。
ノックしてから入ると1人の騎士が資料を読んでいた。
この人が"イリアム"と言う事だろうか?
事務仕事だからだろうか簡易的な軽装で細身の剣だけを腰に付けている。
良く見れば部屋の脇に途中で見た警備の人や
以前に見た聖騎士達とは違い少しだけ煌びやかで明らかに質の高い装備が飾ってある。
なるほど、ここはイリアムと言う方の施政室って事なのか。
流石は上級騎士だな。
それがどんだけなのかは知らないけれども。
「失礼する
我がエバーザイト家が推薦をした
ミノル殿を連れてきた」
レラがそう告げるとイリアムが顔をあげる。
「家の名を使い無理矢理に押し込んできたが正しいだろ?」
そう言った上級騎士は何処かで見た事ある奴だ。
そう・・・・具体的には俺が魔族に・・・ヴァースに殺される前に。
俺が以前、クソ騎士Aと呼んでいたクソがそこに居た。
「役所仕事の本庁が今日は随分と早かったな」
いつになくレラが話すがかなり棘があるように聞こえる
と言うか実際に口調も皮肉がたっぷりと混ざっている。
「はは、御冗談を
エバーザイト家の者を待たす事が出来る者なんてノイードに少数でしょう」
「貴様も・・・その1人だろうが・・・イリアム・・・イリアム・ズィース」
ギリっと歯を食いしばるかのように苛立ちを露わにする。
「ここではただの上級騎士のイリアムだ
神に仕える身の唯の聖騎士の1人に過ぎない」
言ってる事は謙虚に聞こえるが小馬鹿にしたような笑みを絶えず浮かべ
以前に受けた印象から全く変わらぬクズさを感じ取れる。
どうやらレラ個人も何かあると思われるが
家同士の関係も色々とありそうだな。
「それではこれから試験内容を通達する
合格すれば入団し配属となるが現時点では全て未定だ
エバーザイト家の推薦があるからと言え公正に審査は行われる」
「無論だ
我がエバーザイトの名において不正は許さない
例え身内の事と言えどもな」
「ならば・・・そちらのミノルと言ったか
君の事もエバーザイト家とは関係が無い唯の入団希望者として扱う
問題ないな?」
「あぁそれで問題無い
入団のチャンスがあるだけで有り難い」
「聖騎士団に入るためのチャンス自体が公正では無いのだがね
兵士団ならまだしも聖騎士に採りたてるなんてな
まぁそこは私が何か言える立場ではないからな
そうだろうレラ殿」
嫌みたっぷりの口調と遠回しにエバーザイト家の非難をするクソ騎士A。
実際に俺の入団試験はもっと上層部からの指示なんだろう。
逆らえない指示が確執のある相手と来れば皮肉の1つでも言いたくなるだろう。
レラも何も言い返せずに苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「それでは早速取り掛かろう
私も暇では無いんでな
使い魔の子竜と妖精は試験に参加出来ないので
こちらの者に預けてくれ」
ここまで言って何かを思い出すかのようにしているが
結局は何も言われなかった。
多分、アリスの事だとは思うが妖精の顔なんざ詳細に判断出来る奴なんて
そんなに居ないだろうしね。
ルーブとアリスを預けて部屋を出る。
アリスにはルーブの事と情報収集をお願いしておいた。
最初に実力試験となった。
聖騎士との模擬戦だそうだ。
クソ騎士Aに連れられて裏手にある修練場に移動する。
良く整備され広い場所では結構な人数が修練していた。
ここは聖騎士団の修練場で兵士団とは別との事。
魔法戦闘訓練をしてる者もいたが壁に当たる直前に薄く光る膜のようなモノに
当たって消滅していたので周囲に被害が出ないようになっているのだろう。
そう言えば近寄るまで音もしなかったな。
遮音効果の結界も張っているんだろうか。
後でこっそりと≪構造解析≫しておこう。
仕組みさえ知っておけば効率よく組み立てられるしな。
戦闘訓練は幾つかの部隊で行われているようで装備品に少しづつ違いがある。
クソ騎士Aはその中の一つの集団に近寄って行く。
部屋に飾ってあった装備品を簡易化したような装飾なので
多分、同じ部隊なんだろう。
クソ騎士Aが近づくと隊長と思わしき人物が気付き訓練を止めさせる。
「イリアム様
修練場にいらしゃるとはどうされたのですか?」
「なに・・・少しばかり用件が出来てな
それで頼みがあるんだが・・・」
そう言って俺とレラの方を、まぁ主にレラだとを思うが
チラチラと見ながら小声で説明してる。
クソ騎士Aの少しニヤケタ顔も気に食わないが
隊長も話を聞くと顔が歪んでくるのも気に入らない。
きっと色々と吹き込まれているんだろうけどさ。
君達は品性ある公正な聖騎士じゃないのかね?
以前の事もあるので聖騎士達に良いイメージを持ってない所為もあり
ちょっとイライラしてきちゃったぞ。
クソ騎士Aの指示で隊長が選出したのは4人。
前衛タイプが2人、後衛タイプが1人に遊撃が1人の4対1。
「4対1で行うのか?
こちらが明らかに不利だろう!」
「聖騎士とは言えこの4人はまだ半人前の未熟者ですぞ
エバーザイト家がわざわざ推薦してくるような方が
そんな者達と1対1では実力を出し切れないのでは?
それとも自信がないので?」
レラさんが苦情を言うがクソ騎士Aは何が可笑しいのか
小馬鹿にした笑顔を向けながら明らかに挑発してくる。
「馬鹿にす・・・」
と途中まで言いかけてレラさんは俺を見る。
聖騎士となるには実力が認められた者しか入団を許されない。
騎士団内部では半人前と言えども通常以上の強さを持つ者しか居ないって事だ。
危うく挑発に乗る所だったんだろう。
それに見た所、4人は訓練してた中でもやり手だろう。
だが俺は面倒になってきたので一歩前に進み出る。
「問題ありませんそれで良いです
こちらは試験を受けさせて頂く身ですので」
そう言うとニヤっとクソ騎士Aが笑う。
だが俺も腹がたってきてる。
「半人前の方が4人程度では相手になるとは思えませんが?
イリアムさんでしたか?
貴方は参加しなくても良いのですか?」
クソ騎士Aの顔が変わったのが面白い。
ギリっと歯を噛みしめた顔をする。
更に言ってしまえば隊長と選出された4人にも火を付けてしまったようだ。
模擬戦をアピールの良いチャンスだと思ったのか
隊長は訓練を止めて周囲に展開させある程度の広さを確保した。
見学も訓練の内って事らしい。
別の意図があるようにしか思えない位にクソ騎士Aと隊長はニヤニヤしてやがるけどな。
その中心で俺は4人と対峙する。
防具は簡易的な物に変えて動きやすさを重視した。
武器は短槍を用意したが品質は低くボロいのをチョイスした。
ただ頑丈で重さはある。
≪知力向上≫≪思考高速化≫≪感覚強化≫≪視力≫≪聴力≫等を
多重起動し時間を間延びさせて観察し対策を考える。
前衛で大きめの剣を両手で持っているのをAで片手剣&盾をBとしようか。
その2人が開始の合図と共にジリジリと距離を詰めてくる。
遊撃は弓で狙いをつけつつタイミングを見計らい後衛が魔法準備に入っている。
さて?どうするのが一番だろうか?
穏便に済ませギリギリで勝った事にするか?
それとも偶然を装うか?
はたまた相手の方が1歩上手に思わせるようにするか?
だが俺はクソ騎士Aが小声で
「手加減するなヤリ過ぎても大丈夫だ
エバーザイト家についても何も言わせない
私の望む結果になれば色々と考慮しようじゃないか」
そんな事を隊長と4人に言っていたのを聞き逃さなかった。
やっぱりクズの下はクズになるんだろうか?
隊長も4人もニヤけた顔をしている。
うん、多少は痛い思いをしても良いだろうさ。
ズバンと炸裂音と共に俺は地面を蹴りつけて
距離を詰めてくる前衛Bに対して自ら飛び込んで行く。
唐突に動き出した俺に驚くが流石は聖騎士と言った所か。
前衛Bは動きを止め盾を掲げ迎撃の姿勢を取り前衛Aは俺の視界外からの攻撃を狙い
遊撃が矢を連続で放ち牽制する。
俺は短槍を前衛Bに≪投擲≫する。
いきなり武器を投げつけてきた事に驚くが前衛Bは落ち着いて盾で受け止める。
想像していたよりも勢いが強かったみたいだが姿勢を崩すには至らない。
だが僅かな隙は出来たのでそのまま走りよって行く。
≪闘気錬纏≫≪竜血脈≫を一瞬だけ発動させ飛んでくる矢を弾き返しながら
心がざわめくのをそのままに前衛Bに蹴りを叩きこむ。
盾の上から蹴ったのだが足の形に凹んで上に何か柔らかくて硬い何かが
グチャっと潰れるような音と共に叫び声をあげながら飛んでいく前衛B。
他の訓練中の部隊の上も通りこし奥の方まで飛んで行った。
盾を持つ腕が変な方向に曲がっていたが気にする事は無いだろうし
意識はあるだろうから死にはしないだろう・・・・多分。
そのままの勢いを利用して遊撃との距離を詰める。
慌てて弓をつがえるが既に弓の距離では無い。
遊撃も弓を手放し腰の短剣に手を伸ばす。
俺は先手を取るべく更に踏込み加速する。
遊撃に手を伸ばし排除しようとした瞬間に後衛の爆炎魔法が俺に向かって放たれる。
炎弾が爆発し火柱立ち上がり周囲に煙と砂埃が立ちこめる。
遊撃を巻き込んだかのように見えるが後衛も魔法攻撃はお手のモノだ。
範囲を絞りつつギリギリの効果範囲を構築している。
後で遊撃に文句は言われるだろうが、まぁその程度だ。
そんな勝利を確信した後衛にブワっと音と共に
炎の残滓と煙を掻き分けて何かが飛んでくる。
それは人の形に見えた・・・・いや人そのものだ。
ボロボロになった遊撃が後衛に向かって勢いよく飛んで行き激突する。
装備を身に纏った1人分の重量が直撃すればどうなるか?
後衛と遊撃はぶつかった勢いのままで地面をもつれて転がっていった。
ピクピクと動かない遊撃と後衛。
口から何かが出ているが死んではいないだろう。
そして驚愕の顔をする前衛Aの脇には無傷の俺が立っている。
肩をトントンと叩いて教えてあげる。
「きっ!貴様っ!」
何が起こっているか理解出来ないのだろう。
焦りながらも剣を振ってくるが近距離では大剣は使い難い。
すでに内側に入ってる俺は前衛Aの肩に拳をお見舞いし動きを止める。
更に連打を胸、腹、左肩とバランスを崩すように叩き込み
動きを封じながら追加していく。
威力調整をしているので吹き飛ぶ程ではないが1発は重い。
格闘ゲームのハメ技のように俺の打撃で倒れる事も行動する事も出来ない前衛A。
鎧がボコボコに凹んできたが仕方が無い。
きっと訓練用のだから良いよね?そうだよね?
30発位殴った所で前衛Aの意識が飛んだようなので
最後にアッパーを決めて空を舞って貰う事にした。
綺麗な放物線を描いて飛んだ先は隊長とクソ騎士Aの目の前。
俺は≪挑発≫を全力発動させながら隊長を煽る。
「いやぁ・・・・聖騎士って言っても半人前ならこんあものなのかな?
それともこの方々って兵士団の方だったんですかね?
隊長とかだともっと強いんですか?
でも半人前4人分だと一人前が2人分になるから
隊長より強くなっちゃうか・・・・・」
露骨な挑発に乗せられた隊長はクソ騎士Aの制止も聞かずに
剣を抜いて走り掛って来る。
流石に隊長だけあって動きは速く動作に無駄が無い。
俺は無手のまま最低限の動きで回避し捌いていく。
全力を出されていないのが理解出来る程度の実力はあるんだろう。
激昂し苛烈さを増してくる。
俺も俺で更に煽る。
只管に煽る。
赤い顔を通り越してドス黒くなってきたし叫んでる内容も理解出来ない。
少々やり過ぎたかなぁと思っていると隊長の雰囲気が変わる。
「おいおい・・・・いいのかよ?」
隊長は"聖戦闘衣"を纏いだした。
今の実留君は聖騎士成りたてレベルの者なら手玉に取れます。
強くなりましたねー。
まぁ聖騎士も上の方だと人外レベルになるので強烈ですが・・・。




