5-27
遅くなりました。
もう少しで定期更新に戻れそうな気も・・・・・。
こんにちは空駆ける男、森山実留です。
各種制限が有るとは言え遂に空を飛べるまでになりました。
魔法的な感じじゃ無くて翼が生えるのがアレですが・・・・。
そういや俺って元人間だよなぁ。
何も違和感なく受け入れているのが恐ろしいぜ。
無事にポーラスを出た俺は街道から少し離れた場所を進む。
理由としては色々とあるが飛行訓練をしておきたかったからだ。
翼の浮力を利用した短距離移動や低空飛行
そしてそれらを使った戦闘方法はある程度行ってきたが
高度をあげての本格的な飛行は経験が少ない。
街中で大っぴらに飛ぶわけにも行かなかったしな。
もっと早めに飛んでれば飛行禁止って事も
教えて貰えてたんだろうか・・・・。
墜落はちょっと怖かったぞ。
まぁそんな理由で軽いトラウマを感じつつ
街道から逸れた場所で飛行訓練を兼ねて移動する。
アリスとルーブも気持ちよさそうに一緒に飛んでいる。
実際にはアリスは浮遊しているんであって飛んでいる訳じゃないんだそうだ。
そういや魔力や風なんかも感じないしな。
ルーブの飛行原理は俺と同じように浮力を生み出しているようだが
発動効率が段違いに良いのか殆ど何も感じないのは
種族特性って事なのかね?
遠くに見える飛行型の魔物だって明らかに大きく質量もありそうだ。
そんなのが自由に飛んでるんだしね。
基本的に鳥等は外見や大きさに比べて軽い。
それは自重が重ければ飛べないからだ。
だがこの世界ではある程度の大きさで空を飛ぶ者達は強い事が多い。
力は強く質量も重い。
空を飛べるってだけで相当に有利になるからな。
まぁファンタジー世界に深く突っ込んでも仕方がない事だろう。
何が良いたいかと言うとだ。
遠くに見えていた飛行型の魔物がこっちに高速接近してるって事だ。
折角の空の度も台無しだよなぁ。
飛行速度も旋回性能も相手が上だろうなぁ。
魔弾を展開し迎撃態勢に入った。
ノイードの手前には中に入れない者や旅人や商人を相手にする為に
発展した村とまでは行かない大きさの宿場が幾つかある。
こういった場所は大きな街や都市なら街道沿いにはあるのが普通だ。
俺は首都ノイードまで後少しの所まで来ていた。
身なりを整える為とエライトの手引きの者と合流するのが目的だ。
指定されていたのがポーラス~ノイード間から離れた宿場だった。
宿の主人に名前を言って宿泊していれば数日で使いの者が来る手筈になっている。
なんなこうゲームのような物語の様な非合法的な雰囲気かと思いきや
単純にエバーザイト家に近い出入り口でノイードへ入る所から
サポートしてくれるからなんだそうだ。
更に言えばこの宿舎自体がエバーザイト家の管理と言うか筋の者がやっているそうだ
ちょっとスネーク的な感じかとワクワクしたのに。
宿では一番良い部屋に案内された上に飲食も全て無料と言われた。
これは有り難いと思って良いのかな?
何か事情があってここまでしてくれてるんだろうか・・・・?
推薦が駄目になったとかかな。
とりあえずは使者を待つしかない。
食事と寝床をありがたく利用し次の行動に備えよう。
使者は2日後の昼前に来た。
早目に昼を食べようと食事処の隅で食事をしていると
入口に質素で使用感を重視した軽装備の女性が入ってきた。
見た目は普通の冒険者の感じを受けるが身に着けてる装備は質が良さそうだし
体の動かし方にも隙が無い。
女性は部屋をキョロキョロと見渡すと
俺に向かって一直線に歩いて来た。
「お前がミノルか?」
「おたくは?」
「私はエバーザイト家に仕える者だ
貴方のエスコート役として来た」
「そっか、宜しく頼むよ
所で何で俺が実留だと?」
「頭に子竜を乗せて大食いの妖精が一緒の男を探せと言われただけだ
此処に該当する者が他に居るのか?」
さいですか・・・・・。
もうちょっと別の特徴は無い物かね?
明日の早朝に出発という事を告げると女性は何処かに行った。
準備も全部してくれるようだ。
なんかぶっきら棒だなぁ。
つうかエバーザイト家の人達って余り喋らんよな。
実質剛健と言うか行動で示すってのが多い気がする。
エライトは違うけどさ。
早朝にも関わらず人の動きは多い。
主に商いをする者達だが首都に向かう流れは活発だ。
迎えに来た女性、名をレラと言ったが
俺が出た時には宿の前で待機していた。
馬車を用意してくれていて有りがたく乗る事にする。
レラも一緒に乗込み御者に何か小声で話して馬車を発進させた。
レラは最低限の事以外は一切口を開かなかった。
堪えず瞑想のように目を瞑り沈黙をしてる。
寝てるのでは無く気配で周囲を探っているのが分かるので
サボってるとは思わないが重い空気なのは間違いない。
アリスはルーズと床で遊んでいて重さなんて何のそのだ。
偶にレラの足にぶつかりチラっと目を開けて見るが
また直ぐに目を閉じてしまう。
うん、会話が欲しいぞ。
馬車は順調に進みノイードに到着した。
入場口は長い行列が出来ていたが馬車は脇を進み門の手前で止まる。
警備が走って寄ってきて御者と話をし
レラが懐から何かを取り出して見せると馬車は直ぐに動き出した。
・・・・・・え?今のでチェック終了?
俺は顔すら確認されていないんだけど。
不思議そうな顔をしていたのだろうレラが片目を開けて説明してくれた。
「エバーザイト家の馬車と紋章でここは入場可能だ
それだけお前を評価してるという事になるな
まぁ私には関係がない事だ
あとコレをその子竜に付けておけ
余計な面倒が減る」
そう言って首輪の様な物を渡すとまた目を閉じた。
渡された首輪のような物は何かの魔法具だ。
外見はとても丁寧で精密な加工が施されていて
一目で高級品と言うのが分かる。
紋章のようなモノが描かれているがコレがエバーザイト家なんだろうか?
そういや馬車にも同じのが入ってたよな。
=========================
≪所有者認識票(首輪)エバーザイト家認証≫
所有者を証明する首輪。
基本的に所有権を有する者以外の取外しは不可。
エバーザイト家が認証し保障する。
種類:道具
等級:魔聖級
品質:良品質
作成者:エバーザイト家
=========================
なるほど・・・ルーブの所有権を保障してくれるって奴か。
まぁこれはありがたいな。
作成者が家になってるのは何故だろうか。
まぁお抱えの誰かがって事なんだろうな。
面倒事が避けられるなら有り難い事だ、うんうん。
ゴトゴトと馬車は街中を進む。
レラからは簡単な情報しか貰えないが
今日はこのまま宿に向かい明日の朝に聖神教会まで出向くとの事。
連れて行かれた宿は普通の一軒家というか豪邸だった。
今日の朝まで居た宿屋よりも大きいんだが・・・・個人の家なのか?
街中にあるにはデカすぎないか?と思ったが
周囲の家も大きく煌びやかなので区画がそうなんだろう。
その中でも目の前の家は一回り大きく豪華だった。
レラに引きつられて中に入ると見覚えのある人物が居た。
「ようこそいらっしゃいました
ミノル様」
深く頭を下げるカリュイが出迎えてくれた。
「いや・・・様付けは止めようよ」
「何を言っているのですか?
ミノル様は現時点ではエバーザイト家の客人で御座います」
予想以上に丁寧に持て成され少々気まずい。
「・・・・そ・・・そうか・・・
とりあえず現状を教えてもらえないかな?」
「畏まりました
それでは食事をしながら説明致しましょう」
食堂はこれまた広く俺一人で食べるには寂しさしか
感じないのでレラも一緒に食べて貰った。
アリスとルーブはモリモリと容赦なく食べている。
驚いた事にレラはカリュイの娘だった。
冒険者としても一流の腕前で色々と単独行動で働いてるとの事だ。
ちなみに今回は俺の護衛と案内だそうだ。
「エライトは無事に入る事が出来たんだね
良かった良かった」
「えぇ、ミノル様のお陰でございます」
「今はどうしてるの?」
「遠征隊に組み込まれて行進中ですが
行方は秘密の為に教えて頂いておりません
私が付いていく訳には行きませんからね」
そりゃそうか。
無事に入団出来たなら実務が発生するしカリュイが
それに付随して行動する訳にはいなかいか。
少しだけカリュイの顔が寂しそうなのはそれが理由か。
それにしてもエライトは1人で集団の中に混じって大丈夫なのかな。
根は真面目で勤勉だから実務に問題無いとは思うけど
あんな性格だからなぁ。
「無事に護衛団に入る事も出来た事だし
順調そうなら良かった」
「えぇ、ミノル様のお陰で御座います
もっとも大変なのはこれからでしょうけどね」
「エライトなら笑って乗り越えられるさ」
もっとも笑ってるのは声だけで
体も表情もボロボロになったりするけど。
カリュイも笑いながら応じる。
食事も落ち着いてきた頃にカリュイが本題に入る。
「でわ、ミノル様とのお約束についての
ご説明をしましょう」
エバーザイト家の発言力をフルに使い俺の推薦は上手く行った。
迷宮での活躍も随分と評価されたのも効いたようだ。
しかし護衛団への編入までは無理があり一般兵としての待遇となる。
それも試験を経た上での話で相当に厳しくなるだろうとの説明だ。
「厳しくても可能性があるなら有り難いです
そもそもが聖神教会の聖騎士団に何の伝手も無い俺が
試験を受けさせて貰えるだけでも凄い事だ
相当に無理したのでは?」
「いえ、私は特には・・・・
エライト様が頑張っておられましたので
何かあれば一言お伝えください」
そう話すカリュイの顔は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
エライトの成長が嬉しいんだろうな。
聖騎士団についての詳細を教えて貰った。
聖騎士団とは聖神教直属の騎士団で様々な行動と共に布教を行う集団だ。
国等の騎士団と違う点は聖神教を保護し発展させる事を目的としている点だ。
その目的に沿っているのであれば国や組織からの要請も受け協力もする。
過去には過激な時代もあったようで他宗教や国間の戦争にも
関わった事もあるようだが現在では慈愛と平和を尊重し
私利や営利目的は受け付けていないそうだ。
まぁ各国に支部や教会があるのでそれぞれに協力していたら
大変な事になるってのもあるんだろうな。
だが俺は2回目の転生時に聖騎士と魔族の争いに巻き込まれた経験から
それらが全てでは無い事を知っている。
「まぁ今の説明は教団としての基本方針でして
全てが一枚岩とはいかないのが組織でしょう」
そんな説明を入れてくるのでカリュイも分かっている事なんだろう。
裏付けるように資料を一枚出してくる。
そこには聖騎士団の組織表のようなモノが書かれていた。
聖神教の作りとしてはまず"光皇"と呼ばれる聖神教会のTOPが居て
その下に"枢機卿"が3名居る。
実質、4名による運営がされていると思って良いだろう。
実里は"聖女"と呼ばれているが教会内のポジションは"枢機卿"よりも下だ。
まず"光皇"である"アレク・ミジューラ・ドラルセン"を守護する
エリート中のエリートである"光輝導騎士団"。
10名と少数だが噂では"勇者"や"魔王"クラスの実力があると言われている。
10名全員が名前を含めて素性は全て公開されていない。
これは内部の者も同様らしく顔すらも見た事もないとの事だ。
各"枢機卿"の直属の騎士団がありそれぞれの色を模した
"緑導騎士団"、"赤導騎士団"、"青導騎士団"がある。
これも勿論エリートの集団だ。
それぞれが100人程度だが僅か10名で
この戦力を上回る"光輝導騎士団"の凄さという事か。
実里を守る護衛団は"白護騎士団"だ。
人数は"枢機卿"の直属よりも少ない50名程度だがこちらも実力は折り紙つきだ。
そんな所にエライトは所属してる。
逆に言えばエバーザイト家の力を持ってしてもここが限界という事になる。
有数貴族の家名と迷宮攻略者の実力でもここが最低限。
これより上はそれ以上の猛者が集まる魑魅魍魎の世界と言った所か。
ここまでが直属の護衛団で次からが世間では聖騎士団と認識されている部隊だ。
それぞれが"鳳凰"の体の一部を模した名前を付けられている。
以前に関わりのあった"鳳凰の翼"も1つだ。
細かい部隊は他にもあるが大きく部隊は以下の3種類に分別される。
"鳳凰の翼"は各地の駐屯地や教会、支部を守り管理する任務を受け持つ。
"鳳凰の爪"は新天地の開拓等の新しい発展をする任務を受け持つ。
"鳳凰の瞳"は各部隊への補給全般と全体の管理を。
簡単に言えば爪は攻めで翼は守る事を得意とし瞳は兵站だ。
更にそれぞれの部隊は細かく分けられ運営されている。
俺が入団の暁には"鳳凰"の何処かに配属となる。
ちなみに"鳳凰"は聖神教会のシンボルだ。
"光の神が様々な色を従えて世界を作った
その際の従僕として永遠の命を運ぶ鳳凰を使徒とした"
そんな言い伝えがあるからだ。
様々な色と言うのは従属神を指すのだと思うのだが何の神だろう?
緑は植物で青は水か?となると赤は火とか?
でも何で光の神だけは神として言い伝えられているのか?
色々と突っ込み所は満載だが気にしても仕方が無いしどうでも良い。
本当に光の神とやらが居るかも不明だし
教会の起源云々に興味は無い。
後は下位組織として通常の兵士団があり
そこで実力を付けて実績を出した者が上の聖騎士になれる。
訓練や雑用等の細々した事をやらされるので実際に見掛ける事が多いのは兵士団の者らしい。
正式には兵士団は聖騎士では無いのだが世間では聖騎士と呼ばれるとの事。
他には非公式の部隊や秘密裏に動いているような者達もいるだろうな。
綺麗事だけではやっていけないのは世の中の常だと思う。
大きな組織には大抵そういったモノが居るし有る。
愛と平和を掲げたとしてもそう思わない者や
それ以上に自分が可愛い者等は少なからず含まれる。
それに神を信じる事は良い事だとは思うが狂信の類まで行くと
面倒事や争いを生み出す要因にすらなる。
話しを聞くと過去にはそれで戦争が起きたりもしてるしなぁ。
カリュイはある程度まで踏み込んだ資料にもそれらが
存在するであろうと記載されている。
ノイードでも有数な権力を持ち名前を出す事で
護衛団に入れるほどの便宜を図って貰える貴族が
内容を掴めない程の裏組織かぁ。
何か嫌な予感がする・・・・・かな・・・。
まぁでも関係ないか。
一般人がそんな暗部に関わる事も無いだろうさ。
実留君は立場的には一般人ですが
一般人と言っても良いのかなぁ・・・・・まぁ一般人ですよね。




