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5-21

お待たせしました。

竜を使役する男、森山実留です。

子竜ですが竜は竜ですね。

頭の上でキョロキョロしながらピィーピィー鳴いているのは

非常にホッコリします。

それにね尻尾がヒンヤリして気持ちいいんですよ!

何時までも暖かくならないのでずっと気持ちいいんです。


ん?強さ?

馬鹿だなぁ、竜にそんなモノを求めたら駄目ですよ。

可愛さに勝る強さなんて無いんですっ!







母牛の証明により息子だと認識してくれたジミー。

その後に"あぁなんて可愛い顔"なんだと言って

ガチムキボディで抱きしめられた。


おい?

牛顔LOVEは何処に行った?

"転生者の聖母"の父親版スキルとかは無いのだろうか?

・・・・確認したが無いな。

母牛にはちゃんとあるのに・・・・母は強しって事なのかね。


両親には転生とアリスに関する部分は≪誤魔化し≫したが

その他はなるべく嘘はつきたくなかったので素直に話した。


逸れてからの事。

ゼノとの出会い。

リノンとの出会い。

神と出会った事も。

子竜の事も。


まぁ、一部は少しだけ説明しやすいように≪誤魔化し≫たけどね。

両親への説明後はジミーに連れられてギルド長に再度説明をした。

罪に問われるような事はしてないハズだが緊張したが

逆にギルド側の不手際を謝罪される形となった。


両親と同じことを説明したがアリスは何とかなったが子竜は物凄く驚かれた。

竜種の子が他種族に懐き大人しくしている事にビックリする。

そもそも子竜なんて存在は竜種の住処から出て来ないのが普通なので

非常に珍しいらしい。

召喚契約を結んでいる事から危険は無いと判断されたが

色々と注意しなさいとアドバイスを貰った。

別れ際に"この迷宮に妖精種と迷宮ボス以外の竜種が居たのか・・・?"と

呟いていたが俺には関係がない事だ。

うん、その迷宮ボスの子供だなんて全く関係がない事だ。


その後も母牛とジミーがフォローしてくれて手続きをしカードを発行して貰った。

他にもマッディ&タオ&ジラから預かったいた

素材やら何やらをギルドに預けたりもした。


夜は両親と今迄の空白期間を埋めるように沢山話をした。

もちろん母牛は何を言っているかが不明だが何とかなるものだ。

アリスと子竜も輪に加わって賑やかで楽しい場だった。

もちろん野菜しか出て来なかったが迷宮食材が大量にあったので

俺が料理を作ったりもした。

アリスとジミーが酒を飲みだし子竜と母牛が謎の意志疎通をしていて

楽しそうだったのが印象的だ。



翌日も迷宮ギルドで色々と手続きと説明をして解放された後に

ゼノとリノンとの待ち合わせ場所に向かった。

リノンは先に来ていてゼノは少し遅れてきた。


2人揃って第一声が「「その子竜は何だ?」」という事だった。

そりゃ頭に竜が乗ってれば気になりはするか。

食事と飲み物を頼み、待ち時間に経緯を説明する。


「なんだよ!そんな面白そうな事を1人でやるなんてズルいぞ!」


「みっ!ミノルさん!

 そ・・・その子は・・・・とても・・・・可愛いのでは・・・?」


食事が運ばれてくるとゼノはガツガツと食べ始め

リノンは自分の分を与えたりした。

心なしかリノンの目が薄っすらと開いている気がしなくもないが

ヒャッハーになる雰囲気でもなさそうなので突っ込まないであげよう。


ピィピィと鳴きながら貰った肉をアムアム食べるのはとても可愛い。

子竜は雑食のようで何でも食べるし飲む。

ゼノがアルコールを少し分けてたが普通に美味しそうに飲んでた。

2人の反応は全然違ったがが気に入ってくれたのは嬉しいな。


ファーバンから教えて貰った知識だが

竜種にアルコール類は効果が無い。

大きくなれば任意で酔う事も可能みたいだが

子供の内は強制的に分解されてしまうんだそうで

大抵の毒なんかも効かない。

好き好んで毒に掛る大人の竜も居ないんじゃないかと思ったが

毒竜ポイズンドラゴンと呼ばれ好んで毒を摂取するのも

居るってんだから世の中は分らない事だらけだ。


子竜は呼べば近寄って来たりするが2人の体に止まったりはしていない。

むぅ?何故に俺の頭だけなんだろうか。

リノンが羨ましそうな顔をしているが俺を見られてもなぁ。

そもそも目を閉じてるからあんまり効果的でもないし。

あ、やっぱりちょと薄目な気もする。

そんなに子竜が可愛いのだろうか。


ゼノは面白がって度数の高い酒を飲ませているが

それは濃い味を楽しんでいるだけでアルコールは全く効いていないぞ。

明らかに無駄金だが両者共に楽しそうだから別に良いか。


「そういやこの竜の名前はなんて言うんだ?」


「そうですよミノルさん

 何て呼んでるんですか?」


「へ?・・・・そういや・・・名前・・・・知らない・・・・・」


「「はぁ?」」


そういや名前知らないなぁ。

ドタバタしてて気にもならなかったぜ。

こーいう事は本人に聞くのが一番だ。


「お前はヴァルモーブって言うのか?」


「ピィ~、ピィ~」


「おぉ、そかそかヴァルモーブって言うのか」


「ミノルさん、それは種族名で個体を表す名称では

 ないのではないでしょうか」


「む?そ・・・そうか

 それじゃぁお前の名前はヴァルモーブって言うのか?」


「ギャーギャー」


どうやら違うようだ。

不機嫌そうな声を出してくる。

そりゃ三毛猫に"おい!三毛猫"って呼ぶようなもんだしな。


「今までは何て呼ばれていたんだ?」


「・・・・ピィ?」


「お前自身の名前ってないのか?」


「・・・・ピィ」


心なしか寂しそうな顔をする。

名前って概念はあるけど特に呼ばれてる個体名は無いって事なのかな?

そういやこいつの管理ってあの神だもんな。

管理って言葉を聞くに親とも離れてそうだしな。

彼奴じゃ愛情を注ぐとか無さそうだしなぁ。

竜とか神に愛情があるのかもわからないけど。


「じゃぁ、俺で良ければ名前つけようか?」


そう言うと子竜はガバっと顔を上げて

ピィピィと鳴き出す。

何となく嬉しそうな気もする。


さて何が良いかなぁ。

分かり易くて呼びやすい名前か。


「ヴァルモーブ・・・ヴァーブ・・・・ヴァル・・・・

 モーブ・・・ヴァーモ・・・・

 ルモ・・・・ルブ・・・・ルーブ・・・・うん・・・


 よし、ルーブでどうだ?」


子竜はピィピィと嬉しそうにパタパタと飛び回った。

ゼノは酔いが回っているのか"名づけ祝いだ!"とか言いながら

更に強烈なアルコールをルーブと飲みだした。

リノンも嬉しそうにルーブをワシャワシャしてる。

皆が喜んでくれるなら良かったな。

そんなホッコリするイベント後は今後の話となった。


「じゃぁ、ゼノはリノンの教団に行くの?」


「あぁ、やっぱりあの武器が欲しいんだ

 強さを手に入れるチャンスがあるなら

 急ぐ旅でも無いし掴みに行くさ」


「となると入団する事になるのかな?」


「いえ、私が身分を保証し

 試作品の運用試験として貸し出して貰う予定です

 勿論、色々な契約は発生するとは思いますけど」


「なるほどね

 確かにゼノの戦闘で色々と試せるなら試験には有効かもね」


「ちゃんと俺専用に調整したのを用意してくれるっぽいしな

 行動自体を阻害されるんじゃなければ多少の無理は仕方が無いさ」


「私達は明後日には出立しますがミノルさんはどうするんですか?

 御両親も居ますし街に残るんですか?」


「ミノルも一緒に行こうぜ!」


銃は俺も欲しい!

あれば戦術の幅が広がるしな。

だが・・・俺はこの街でやりたい事があった。

それを2人に説明する。




「迷宮攻略のサポート専門の仕事ですか?」


「そうなんだ

 今回の俺達の事でもっと管理体制をしっかりすれば

 これは商売になるんじゃないかと思うんだ」


「なるほどな・・・・具体的に言えば戦闘支援や護衛等か」


「うんうん

 それに荷物持ちや戦闘訓練も良いね」


「でも、それだと迷宮ギルドや冒険者ギルドと業務が重複しませんか?

 メリットが無いと活用されないのでは?

 別途お金を出してまで頼む理由にはならないと思うのですが・・」


そうそこだ!

そこは俺も悩んだ。

その問題点を解決出来る方法を見つけたんだ。


「あぁ、なるほどな

 それであのアイテムか・・・・"帰還の宝珠"だな

 迷宮の何処からでも帰れるってアドバンテージがあるんだな」


考えてる事を全部言われてしまったが

その通りだった。


「あ・・・・うん・・・まぁそう言う事だね

 基本業務を迷宮の護衛等にして

 安定してきたらオプションとして色々と付加を付けて行こうと思うんだ

 上手く行けば色々と展開出来るかもしれないしね」


「なるほど!それは大きな利点ですね

 帰りの事を気にしないのであれば限界まで探索出来るって事ですね」


「それに危険があったら緊急帰還も出来るしな

 うん!良いな!

 俺達の様な迷宮を行く者には有り難い話だ」


「だからこの仕事が上手く行ったら街を出ようと思うんだ

 それまでは頑張ってみるよ」


「一緒に行きたかったが・・・・・まぁ仕方が無い

 街を出たら何処に行くつもりなんだ?」


「首都ノイードに向かう予定かな」


「あらそうなんですか?

 私達も首都に向かう予定ですのよ」


「そうなの?」


「えぇ、ポーラスには路銀稼ぎを兼ねて寄っただけですので

 ゼノーヴァさんには付き合って頂く事になるので申し訳ないのですが・・・」


「いや、俺も当面は宛の無い旅だし気にしないで良いさ

 ブラブラと色々な場所に行こうと思ってたしな」


「ノイードにはどれ位滞在するの?」


「正確には言えませんが首都周辺に数ヶ月は滞在するかと・・・」


リノンが申し訳なさそうにしているが

ゼノはルーブと気にせずに遊んでいる。

あれは本当に気にしてないんだろうな。


苦難を共にしたからか迷宮での話は盛り上がった。

ゼノとリノンにはあんなに快適な迷宮探査は初めてだと言われた。

俺が担当したのは警戒と食事だけだ。

まぁ寝具や日々使う道具とかも作ったりはしたけどさ。

俺的には快適と言うなら結界を張れるリノンの方が上だと思うけどなぁ。

反論すると食事が如何に大切かと力説された。


話しが盛り上がり過ぎて夕食まで共にする事になり

別れたのは日も落ちて大分経ってからだった。




翌日は日中に話を整理し夜に両親に相談した。

母牛が既に似た様な事を迷宮ギルドからの依頼で行っているので

理解は早かったがリノンと同様の指摘をされた。

それでも"帰還の宝珠"を見せ説明すると

メリットについては理解してくれた。


良い話だとは思うが急に動く訳にはいかないとの事。

母牛はフリーで行動しているから問題ないが

ジミーがギルド職員だしな。

業務も重複する為、冒険者ギルドにも話を通す必要があると。


「そうだなぁ・・・・後はだなちょいと話を通さないといけない所が

 ギルド以外にもあるな」


「そうなんですか?

 何か非合法なグループだったりするんですか?

 売り上げを収めろ的な」


「なんでそんな怖いトコと繋がんなきゃいけねーんだよ!

 ちゃんと正式登録すれば税金は払わないといけないけどよ」


「商売は登録制でしたか」


「そりゃまぁそうだろうさ

 まぁ・・・今回のはちゃんとしたトコだ

 寧ろミノルが考えている事を既にやっている先達方だな」


「既に支援を仕事としてる方が居るのですか?」


「まぁ冒険者全般の支援ってトコだけどな

 多かれ少なかれ大きい街なら大抵はあるもんだ

 もっとも初心者向けが多いから中級者以上だと

 世話になる事も余り多くはないけどな」


「初心者相手がメインなんですか?」


「まぁそうだな

 武具やアイテムを割引きで販売したり

 戦闘訓練やクエストでの実地訓練や

 冒険のイロハを教えたりだな

 この街は迷宮もあるし首都方面以外は魔物も多い

 世話になった者も多いし各ギルドとも友好的だ

 筋は通しておいた方が良いだろう」


支援団体やそれを生業としている者が居ないハズもないしな。

そう言われると当たり前の事だな。


翌日、俺は両親に連れられて件の支援団体に向かった。

そういや子竜の名前を聞いていませんでしたね。

うっかり者の実留君です。

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