5-18
クルミが店頭から無くなりました。
パン用に欲しいのに・・・・テレビって恐ろしい。
どうもどうも、竜と神の血を引くエリート種族の森山実留です。
もうこれはエリートも良い所ですよ。
そこらの下々の者とは違うのですよ!
ふはははは!さぁひれ伏すが良い!
エリートと言っても何も持っていませんがね。
こういうのは血筋が大事なんですよ!血筋がね!
おっさん神 VS ゼノ&リノンが一方的な感じになっていた。
どうも仕様の裏を突いた攻略に怒っているようだ。
損失がどうとか冒険者の風上にも置けないとか罵詈雑言の嵐だ。
顔を真っ赤にして大声を上げている姿はみっともない。
時折、ラバリオの事等も出るが今回は関係ないんじゃないだろうか。
そもそも2人共にラバリオの事は知らないしさ。
おっさんは無駄に光り輝き神々しさがあり
ゼノとリノンを圧倒しているようだ。
そりゃ神の御威光ですからなぁ・・・一応は。
どうもスイリーヤの話を聞いちゃった今だと
物凄くショボく見えるな。
ふむ・・・・そろそろ助け舟を出そう。
パーテーションをそろっと抜け出し近寄る。
おっさんはは怒鳴り散らすのに夢中だし
ゼノとリノンは下を向いているので気が付いてくれない。
ちょっぴり切ないぜ。
仕方なしにそのまま聞いていると
既にクレームに近い事まで言い出している。
「勝手に倒したのはお前達だ
補填をする義務がある」
とかね。
何で迷宮で戦って敵を倒しただけなのに
こんなに怒られないといけないのだろうか?
段々と腹が立ってくる。
直ぐ近くまで近寄ってるのに誰も気が付いてくれないとか
そんな事が理由じゃない。
決して違うぞ。
進化後で高揚していたのもあって俺は相当強く出た。
「おい、おっさん!
さっきからグタグタと言いたい放題だなぁ!おい!
神だか何だかしらねーがな
お前達の仕様に穴があっただけじゃねーのか?」
ギョッとして振り返るおっさんの顔は
とてもとても酷い物だった。
興奮しすぎて赤黒くなった顔に汗だくの顔。
それが唐突に怒鳴られた事で・・・もう・・・ね。
こちらの気分も萎えそうだったが何とか頑張る。
逆に今ので冷静になれたのは良かったのかもしれない。
「は?あれ?ミノル・・・・か?」
ゼノ不思議そうな顔をして俺を見つめてくる。
「あら?ミノルさん
随分と変わられましたね」
リノンは驚きを隠せないって顔だ。
「無事に進化完了したみたい
迷惑かけちゃったみたいだな
とりあえず神を何とかするから任せてよ」
流れの展開に着いていけない2人を置いて
俺は神に近寄る。
「へ?あれ?」
呆けた顔をした神に俺は言葉で戦いを挑む。
向こうも勢いで話してるだけなのは分かっている。
内容は支離滅裂だしな。
「いや、そうは言うけどね
弊社の管理している迷宮で通常とは違う手段で・・・」
「それを禁止しなかったのは何故ですか?
どもども通常とは何を指すのですか?
何処かに明記してもないし事前説明も無かったですよ
その通常の手段とやら意外に想定すらしてなかったんじゃないですか?」
まず戦い方、倒し方について言ってきたので
そんな事を言われる筋合いではないのでキッパリと否定する。
「この迷宮全体の喪失はかなり大きいモノで・・・」
「それは俺達に関係があるんですか?
では一切の影響も無く無音で魔物を狩り続ける
アサシンや忍者の方々等も同じだと思いますが?」
次に迷宮の損失についても言ってくるが
無論、そんな事を言われる筋合いはないのでキッパリと否定する。
アサシンや忍者の方々が居るかは知らんがな。
皆の反応を見る限りでは居るのかもしれないが。
「でも・・・でも・・・私にも立場が・・・」
「貴方の立場を何故私達が考慮しなければ
ならないのですか?
神と呼ばれる貴方が下々の私達に何の責任を背負わせるので?」
なんか同情を誘われるぐらいに顔が歪んできたが
そんな顔をされた所で助ける義理は無いのでキッパリと否定する。
「その・・・せめて・・今迄の取得品だけでも・・・返して・・・」
「でわ、私達の今迄の時間と労力に見合うだけの
対価をお渡し頂けると?
それならば喜んでお返し致しますが」
最終的には哀願してきたが"俺の物は俺の物お前の物も俺の物"だ。
キッパリと否定した。
1時間程度の舌戦の結果として
疲れ果てて悲しそうで青白い顔をしたおっさんと
軽く引いてるゼノとリノンの微妙な表情を手に入れた。
落とす所まで落とした後は軽く持ち上げるのも忘れない。
「ファーバンさん、余り落ち込まないでください
今までの事は無かった事に出来ませんが
問題点の改善を手伝う事は出来ます」
「え?」
「現場を経験した俺達が出した意見は有効なハズです
これから巻き返してやりましょう!」
「・・・・良いんですか?」
おっさんの顔に喜びが滲み出てくる。
こいつ本当に神なのだろうか?
「もちろんですよ!
勿論、協力報酬は別ですよ」
「は?・・・・・え?・・・・・」
嬉しさから一転し何を言われてるかを
理解出来てないおっさん神。
俺は笑顔で目を逸らさずに無言で見つめる。
「・・・・はい・・・・お願い・・・します・・・・」
こうして俺達は迷宮の改善に手を貸す事となった。
軽く所じゃ無くドン引きのゼノとリノンを放っておいて内容を決めた。
スイリーヤからの圧力も後押ししたはずだが
ちょっと追い込み過ぎたかもしれない。
全く気にはしないけどね
俺達は改善点を上げて迷宮全体の質を上げる手伝いをし
報酬としてヴァルモーブから入手出来るアイテムで
3人が欲しい物を1品づつ提供する事にした。
まぁおっさんが居る以上は倒し続けるのは無理だから
良い落とし所だろう。
報酬は前払いとしたのでヴァルモーブから討伐特典として
得られるアイテム一覧を見せて貰った。
アイテムによってレア度も格差があり出現率が違うようだ。
今迄倒した中では手に入れられなかった物を含めた
様々なアイテムが並んでいる。
あーだこーだと悩んだ末に
ゼノは感覚と魔力操作を向上させる首輪を選び
リノンは身体能力の向上と簡単な防御膜を展開出来る腕輪を選んだ。
両者共に装備品は自前で良いのを揃えているからアクセサリー系にしたようだ。
勿論、レア度が高く効果は折り紙つきだ。
俺が欲しい物を伝えた時には一悶着起きた。
最初に黒鍋みたいなのが欲しかったのでお願いしたのだが作れないとの事。
ラバリオに作って貰った時の材料を考えると
ヴァルモーブのアイテムよりも安そうってかお手軽っぽいんだけどな。
だけど何を言っても"作れない"の1点張り。
手持ちの材料で良ければ何でも出すまで譲歩しても駄目。
「ラバリオはサクッと作ってくれたけどなぁ」と
ボソッと漏らしてしまうのも仕方が無いだろう。
そうしたらまた切れやがった・・・。
普通に会話が続いていたのでゼノとリノンは
気を抜いていたらしく対応出来なかったが
一緒に話しを聞いていたアリスが反応した。
「その手を放しなさい!
"滅神光波っ!"」
アリスの手からホワーンとした優しい光が溢れだした。
「がぁ!熱い!」
おっさんが俺を掴んでいた手を放した。
良く見ると手がシュワシュワと煙を上げている。
「なんで?痛みが?
この体にたかが妖精の攻撃が・・・」
そういや天照で攻撃しても"うっとおしい"程度だったのに
何でアリスの攻撃が通じたんだ?
おっさんも動揺しているようだ。
どうもアリスの攻撃は神にも通じるようになったらしい。
俺の進化の影響だろうか?
威力も上がっているようだ。
まぁそうは言っても所詮はアリスの威力だから
驚かせるか嫌がらせ程度の効果しかないと思うが
何気にアリスの成長が凄いんじゃないかなと。
とりあえずラバリオの事は話に出すと進まなくなるので
アイテムを貰ってサクッと終わらせる事にした。
俺が選んだのは"帰還の宝珠"。
ポーラス迷宮のみで効果を発揮するアイテムだ。
効果は簡単で迷宮内であれば何処からでも入口に転送出来るようになる。
武器や防具、他にも便利そうなアイテムもあったが
考えがあってコレにした。
良い武具は欲しいけど転生時には持って行けないし
今だって相当に良い武器だしな。
迷宮の改善案は多岐に渡った。
ずっと潜り続けた中での不満箇所を上げたと言っても良いだろう。
だが俺達は攻略者側の立場だ。
改善案を全て取込んでしまうと攻略が簡単なるだけだし
そこらのバランスが難しいだろう。
時間が掛りそうなのでゼノとリノンとファーバンが
話し合いを続けてもらい食事を作った。
話しながらも簡単に食べれる物をチョイスし
串焼きと味付け肉の野菜巻きだ。
アリスの役割は味見と言う名のつまみ食いだ。
俺の作った料理はファーバンにも好評だった。
美味しい美味しいと良いモソモソと食べてる姿をみていると
こいつはこいつで苦労して来たんだろうなと思った。
それで対応が変わる訳じゃ無いがな。
食事位は満足するまで食べさせてあげよう。
ゼノとリノンには食事の間に色々と聞かれたが適当に答えておいた。
進化については珍しいので驚かれるも冒険者なら知識として
普通に持っているので不思議には思われなかった。
数日かけて練り上げた案は満足行くものだった。
細かい修正やバランス取りの調整が残ってるものの
迷宮の改善は大筋決まった。
初心者も取り込みやすく中級者が腕を磨けるように。
そして上級者には手強さと見合う報酬を。
詳細が詰め切れてないのにも関わらず
ファーバンの上司にも認められたそうだ。
やはり現場の意見があるのは違うんだな。
中でも俺が強く推したのは迷宮の特性についてだ。
ポーラスの迷宮はランダム性を持たせているのが特徴らしい。
俺やリノンが巻き込まれた奴だね。
その振り幅を迷宮内で上下3階程度に抑える事。
一気に10階以上の変更は無理があるからな。
ロッドロドリスも35階層クラス程度だったら
転送陣に侵入される事も無かっただろうしな。
前払いで報酬も貰い迷宮の改善計画も出来た。
後は神達が如何にかするだろう。
ファーバンは作った計画書を持ってとっとと帰還したので
後は地上に戻るだけだ。
ちなみに出る時に扉は最初に施錠されたので
後から冒険者が入ってくる事も無かったが
俺達も帰還の魔法陣で帰るしかない状態だ。
転送陣は1人づつ転送される仕組みだ。
攻略者のみの特典の為、参加していない者は使えないので
チェックが入る仕様だからだとファーバンは言っていた。
さぁ帰るかって時に思いついた事があったので
ゼノとリノンに伝える。
「・・・・つうか、俺の全力を試すのって
地上よりここの方が良くないか?」
「ん?あぁそういやそうだな
広さも良いし・・・・よし、何か手伝うか?」
「ん~、いや良いよ
2人は先に戻っててよ
自分でも良く分らないし時間も掛るかもしれないからさ」
手伝って貰うのは有り難いが色々と問題もありそうだしな。
ロズの召喚とかもしたいしね。
リノンも心配していたが何とか誤魔化して
2人を送り出す事に成功する。
表に出ても色々とあるだろうから2日後に
迷宮ギルド前の食事処で待ち合わせとした。
広い場所に久しぶりにアリスと2人だけだ。
さて、俺の体よっ!
どんな性能なんじゃい!
おっさん・・・何か寂しい背中をしてそうですなぁ。




