5-16
ユニークが15万PV超えてました。
有り難い事です。
皆さん裏ワザって知っていますか?
ゲームのストーリー、システム、仕様の隙間を狙って起こる現象の事を言います。
それはアイテムの数を増やす事だったり簡単に強くなったりと色々だけど
現実でも実は出来ちゃうんです。
まずポーラスの迷宮の最下層に行きます。
次に魔法を使わずに遠距離に操作出来る物体を出現させます。
後ろから出現させると必ずバックアタックの状態になります。
最後に迷宮ボスを1撃で倒してください。
ほら?簡単でしょっ!
扉を開けて魔法陣が活性化したのを確認する。
もう馴れた物だ。
リノンの射撃準備が整えば俺がアリスを反対側に出現させ感知させる。
魔法陣が反応し光り輝く。
そこには既に見慣れたヴァルモーブのお尻部分が・・・・無かった。
魔法陣が光り輝いたのに召喚されない。
「あれ?まだ召喚時間には早かったかな?」
「でも魔法陣は反応したぞ?」
俺とゼノがヴァルモーブを探してキョロキョロしていると
リノンが申し訳なさそうに呟く。
「あの・・・・・もっと下です
召喚はされているようです」
言われてみると魔法陣の中央に何かがポツンと立っている。
ホールは広いので中央までは距離があるせいか良く見えない。
「何か動いてるな・・・・・
人族っぽいが・・・・なんだ?」
「何だろうねぇ・・・・・召喚対象が変わったのかな?
レアキャラとか?
そんな機能あるのかな?」
「どうでしょうか・・・・
御2人方は何か感じますか?
魔力や気配の様なモノは?
存在しているのは分かるんですが
私には何も感じられないのです」
「そう言えばそうだな
居るって認識出来るのに気配は感じない
ミノルはどうだ?」
「こっちの感知にも何も引っかからないね
黒い恰好をしている人族に見えるけどんだけど
理由はわからないけどハッキリと見えないんだよね」
「やっぱりそうか?
ボヤけると言うか何と言うか」
「存在は分かるのに魔力も気配も絶つ上に
視覚情報にまで影響を及ぼすとなると
何かしらの阻害魔法を使っているのかもしれません
・・・・もしかしたら実体ですらないのかも」
「かなり厄介な相手には違いないな
今は動かないようだがどうする?」
存在は認識出来るのに何も感知出来ない。
姿は視えているのにハッキリとは視えない。
ピントが合わないと言うか脳が認識を拒否している。
そんな感じを受ける。
現在は動かないようだが確実にヤバイ相手だろう。
リノンの実体ではなく現実世界に投影した精神体という
可能性も捨てきれないし・・・・。
となると悪魔系とかになるのかな?
戦った事ないぞ。
「よし!とりあえず撃っちゃおう!」
「え?良いんですか?」
「良いんじゃない?
召喚されたって事は敵だろうしさ
撃ってみて倒せればいいし駄目なら普通に戦うしかないよ」
「それもそうだな
今迄が楽だった訳だし
相手が動かないなら最初に1撃入るなら御の字だ」
「上手く行けばラッキー位でね
ここで召喚されたって事は迷宮ボスには違いないだろうし」
天照は溜めた魔力を使うので使用しても通常戦闘には支障はない。
多少の心残りがあるものの結局リノンはヒャッハーした。
リノン自体が成長している為、出力が増した天照からは
苛烈な破壊の光が照射され目標物を確実に捉えた。
ゼノと俺は天照に巻き込まれない様に射線から大きく迂回し
中央部に駆け込み追撃体勢に移行する。
ヴァルモーブなら天照で終了だが念には念をだ。
近づいても各種反応は感知出来ないがそこにまだ居るのは感じる。
スキルじゃなく俺の直感が天照の照射に晒されても
健在していると伝えてくる。
次の瞬間、天照の光線が弾かれた。
と言うよりも発動自体をキャンセルされた。
そんな感じだろうか。
急に視界が暗くなったので慌ててリノンを振り返ってみると天照の照射続いている。
どうやら魔法陣の淵を超えられないようで弾かれていた。
相手の有効範囲は魔法陣内って事か・・・。
天照をシャットアウト出来るとなると魔法や物理も遮断されると思った方が良い。
魔法陣は大きいが戦闘するには手狭だ。
接近戦を余儀なくされるだろう。
ゼノと視線で会話しこのまま突入する。
魔法陣内に踏み込むと今迄感じなかった気配を掴みとる。
そしてそこに居たのは・・・・・・おっさん・・・・・が居た。
魔法陣の中央部に居たのは・・・・・おっさんだ。
くたびれたスーツを着た・・・・おっさん。
背は高くも低くもなく腹は少し出てる・・・・おっさん。
頭部の攻防線は前線が相当押されている様子で
防衛密度も薄く全体的にテカテカしてる。
顔には汗が出てハンカチで拭きながらこちらに文句を言ってくる。
「うっとおしぃ!!
熱いし息苦しいし
急に攻撃を仕掛けるとか失礼だろ!
何なんだね君達はっ!」
「つうか!お前が誰なんだっ!!」
ゼノの叫びにも似た声が部屋中に響いたのは仕方がない事だと思う。
うんうん、ゼノよ。
これは疲れた中年のおっさんリーマンと言う存在だよ。
緊張からの差があり過ぎる脱力で思わずそんな突っ込みが脳内に走った。
実は魔法陣内に踏込みんだ瞬間から体が
自由に動かない。
粘度の高い水の中に居るような感じだ。
話す事は普通に出来るのに体が思うように動かない。
ここは危険だ!
リノンが外に居るが近寄らせるのは拙い。
「リノン!こっちに来ちゃだ「はーい、そこの女性も此方に来てもらえますか?」
おっさんが俺に被せてくる。
尚も拒否する旨を伝えようとするがおっさんは
とんでもない事を言い放つ。
「あー、こう見えて私は神なんで
逃げたり倒そうと思わない方が良いですよ
少し話を聞きたいだけですから
それに既にこちらの方々は固定してますから逃げれませんよ」
そう・・・・薄々気が付いて居たが
おっさんは神様だった。
結局、半強制的にリノンも踏み入る事となった。
体の拘束は解いて貰ったが魔法陣内からは出れなくされた。
試しに出ようと思っても見えない壁があるようだ。
ゼノが全力で殴ってたけど何の反応も無く
手が痛くもならないようで不思議そうな顔をしていた。
「とりあえず話しを聞きたいので此方に座って貰って良いですか?」
おっさんリーマン神が机と椅子を出してきた。
それは折り畳み式の長机とパイプ椅子。
あぁ、何処かの高みから見学してるだろうあの神様とはえらい違いだ。
片や最高神で片やおっさん神だけどさ。
ゼノ、俺、リノンの並びで座り
おっさん神は中央、つまり俺の前だ。
長机は2個出されているので距離はあるのだが・・・・なんだこれ?
まるで面接か会議かそんな感じを受ける。
迷宮の最下層でのリーマンとの面接。
この異様な光景に誰も口を開く事が出来ずにいた。
「まずは自己紹介をしておきましょう
私はここを管理しているファーバンという者(神)です
現在、この迷宮に異常が起きてまして
調査に伺いました」
何となく座る位置的に俺が会話するような雰囲気を感じる。
ゼノは黙ったままだしリノンも静かに微笑んでるだけだ。
「えーとそのファーバン様は迷宮神で?
ここの迷宮に調査に来たと」
「そうなりますね
理解が速やくて助かります
それにしても驚かれませんね?
普通は神と名乗ったら大抵は驚かれるのですが」
会社での会話を思い出すなぁ。
相手はおっさん神で俺は牛だけどさ。
この腹の探り合いのような雰囲気とかね。
「いえ・・・俺達は神の加護持ちでして
一応は他の神と面識があるので・・・ん?
そういやリノンは何かの加護受けてたっけ?」
なんでこんな需要な事を聞いてなかったんだろう?
今更疑問に思いリノンに振る。
「いえ私は神の加護は受けては居ませんが
遣える神は居ますので御気になさらずに」
サラッと流すリノン。
おっさん神が微妙な顔をするが華麗にスルーする。
「それで調査とは何でしょう?
自分らに分かる事なんですか?」
「あ・・・・あぁ・・・それがですね・・・・
最近、この迷宮の魔力量の変動が激しくてですね
どうもボスクラスの魔物が立て続けに倒されてる様でして」
ちょいと背中に汗が流れる。
多分・・・・だけど・・・・俺達だよな。
正確に言えばロッドロドリスとヴァルモーブを倒しまくったからだろう。
ファーバンは何処からか取り出した資料を
パラパラと捲りながら確認しつつ話してくる。
「え~とですね・・・・・
最近の出来事では徘徊型のボスが複数回撃破されていますが
こちらは戦闘による還付があるので問題ないでしょう」
「還付?」
「えぇ、還付です」
「意味を聞いても?」
「え~と、"もとの持ち主に返すこと"だったと思いますが?」
うん、こいつ駄目だ。
駄目なリーマンだ。
「いや・・・言葉の意味位知ってます
"戦闘による還付"ってとこです」
「あぁ・・・そうでしたか・・・
えっとですね・・・」
またも資料を読みながら説明する。
やっぱり駄目だ窓際確定だ。
長ったらしくも纏まりのない説明を聞くと
どうやら戦闘時に発生する余波なんかを迷宮は吸収しているらしい。
壁に当たった魔法や踏み込んだ足の衝撃なんかもそうだし
飛び散った血であるとか長らく放置された武具や死体なんかもそうだ。
迷宮の壁が強固なのもそれらの機能が組み込まれているのも理由の一つ。
まぁ何が良いたいかと言うとロッドロドリス戦は
通常戦闘で倒したので回収出来るエネルギーがあったので
損失はそこまで大きくは無かったが
迷宮ボスであるヴァルモーブはそうではなかった。
どうにも一方的に短時間で倒されたようで
しかもそれが何回も続いている。
これはちょっと無視できるレベルの損失では無いので調査に来た。
とまぁそんな感じだ。
これはどうするか?
素直に話して良いかが悩む内容だ。
「ちなみに該当者とかはわからないんですか?」
「えぇ・・・はい・・・・そうなんですよ
迷宮側の記録はあるのですが
個人単位の記録までは出来ないんです」
「そうなんですか・・・・・
ところで自分達がですよ・・・もし・・・もしですが
原因となりそうな事を知っていたとして
話すメリットってなんですか?
まさか神の威光で話をして貰えるとでも?」
「え・・・はいっ?いや・・・その・・・」
「こちらは命を掛けて迷宮を攻略していくんです
もし・・・・ボスを簡単に倒せる方法があった場合
それを手放すと思いますか?」
神相手になんて交渉だよ!と自分でも思わないでもないが
何となくおっさんリーマン神であるファーバンから
何かを引き出せる気がする。
俺の感が叫ぶ!ここは押し通せと!
「その・・・・弊社としても・・・・迷宮の管理をする上で・・・
ユーザーからの情報をですね・・・その・・・あの・・・」
「弊社?え?何?会社なの?」
ハっとした顔をしたおっさんはくたびれたスーツの内ポケから
何かを取り出して出してくる。
それは名刺だった。
"迷宮管理トットムタン"。
それがおっさんの所属してる会社というか組織らしい。
「え?迷宮神って組織行動なの?
つうか神ってそんな感じなの?
ラバリオは普通に個人で行動してる感じだったのに?!」
思わず声が出てしまう。
そしてそれを聞いたファーバンの態度が一変する。
そのまま机を吹き飛ばし俺に掴み掛ってきた。
「貴様ぁ!牛の分際で俺とあんな奴とを比べるかぁっ!」
口から唾とまき散らしながら怒鳴りだす。
興奮しているのか何を言っているかが分らないが
フリーランスだとか立場がとか言っているので
なにやら軽くない想いがあるようだ。
ただ下級神と言えども神だ・・・・・力が物凄い。
スキルを全開にしても絞められている首が容赦なくギリギリと閉まってくる。
あ、これ駄目だ。
そう思った瞬間にファーバンの顔に何かがめり込み
鼻から血・・・なのかな?
まぁ何かわからない液体を撒き散らした。
多分、血なんだろうけど。
「おい・・・・神だか何だか知らないが・・・・・
俺の連れに手を出すとは・・・死ぬか・・・?」
どうやらゼノがファーバンを殴って引き剥がしてくれたようだ。
ゼノの右腕が赤い焔を帯びている。
なんだあれ?あんな能力あったのか?
それよりも今の攻撃でファーバンが激昂し
何か良く分らない言葉で叫びだし体が光り出した。
・・・・やべぇ・・・・加護持ちなら何とかなるけど
神って倒せるモノなのか?
天照だって通じなかったのに・・・って、なんでゼノの攻撃は通じたんだろうか?
「ミノルさん顔が・・・・」
リノンが心配するのでグイって手で拭うと予想以上にベットリだ。
その際に僅かだが口に入ってしまう。
「あ・・・・・・・口に入っちゃったじゃねーかっ!!」
ピローン
> 成長限界を迎えました。
> 神界種(幻影神素)の因子を取得しました。
> 種族進化が可能です
> 実行しますか YES / No
> 進化神スイリーヤにより
> 強制的にYESが選択されました
え?今のなに?
因子って?
・・・・・・まさか今の液体で?鼻血で?
えええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええ?!
俺の意識は闇に沈んで行った。
実留君が遂に禁断の力(鼻血)を!




