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5-11

桜が咲き始めましたね。

観に行きたいけど週末は雨っぽい。

現在、迷宮の奥底を這いずり回ってる森山実留です。

上位陣の中で地味に頑張るより

下位陣の中で無双する方が気持ちいいですよね。

部活の先輩とかOBとか仕事の上司にそんなタイプの人が1人は居たなぁ。

でも総じて仕事とか出来ないですよね。

ぶっちゃけ生活する為にはそっちの方が安定すると思うんですよ。

良いなぁ憧れるなぁ・・・・安定した生活。







ロッドロドリス。

それは20階層という早い段階で現れた

鈍重そうな外見からは想像も出来ないような力と俊敏さを持ち

更には魔力の扱いにも長けたボスクラスの魔物だ。


それが今俺達の目の前まで迫ってきている。

以前に見た時よりも体が大きく見え凶悪さをより感じる。

多分それは間違っていないだろう。

20階層よりも45階層の方が漂う魔力の密度は濃い。

寧ろ今が本来の姿と言える。


「ゼノ!コイツが20階層に現れた奴で

 魔力の扱いに長けたボスクラスだ!

 見た目に騙されるな」


「わかった!

 このままじゃ無理だ

 一旦引くぞ!

 猿は何とかするからソイツの注意を

 一瞬で良い逸らしてくれ」


ゼノは猿相手に何とか健闘している。

赤猿が防御を担当し青猿が攻撃担当のようだ。

攻めるのも守るのも苦労しているので

ロッドロドリスまで参戦したら全滅も有り得る。


俺は1人でロッドロドリスに向き猿用に出した弓を

連射するが厚い外皮に防がれて刺さりもしない。

弓を諦めて収納し武器を取り出す。

だが接近戦なんて自殺行為にも程がある。

これっぽっちも考えない。


俺は使い道のない低品質の武器を≪投擲≫する。

他スキルとの併用で威力が上がっているのにも関わらず

掠り傷程度しか与えられない。

逆に言えば掠り傷を与えられるのが凄いのか?

それでも威力不足なのは明確だ。


それでも意識をこちらに向ける事には成功した。

後はゼノが猿を何とかして階段へのルートを作れるか

他のルートに逃げ込めるかだ。

現状のままだと他ルートに逃げても追撃されて御仕舞だろう。

少しで良いから時間を稼げれば何とかなる。


こちらの攻撃が大した事ないと思っているんのか

奴は俺を値踏みしているのか威圧しながらゆっくりと這ってくる。

恐怖が心を蝕んで行くが1人で逃げる訳にはいかない。


心と体に活を入れ残り少ない魔力をかき集める。

外魔力も吸収し魔弾に回す分を確保。

狙うは眉間と思われる場所だ。

外皮さえ突破出来れ通じるハズだ!

最大速度で射出する。

ロッドロドリスは油断していたのだろう魔弾は狙い通り着弾した。


着弾・・・・したのだが派手な火花と金属音をまき散らしただけで

外皮を貫通する事は出来なかった。


角度が浅かったか?!

魔力を再度集めるが残りも僅かだ。

これ以上は拙いかもしれないが後はない。


再度、意識を集中しだすとロッドロドリスにも変化があった。

急激な魔力の高まりを感じた。


「ゼノ、魔法が来るぞ!」


「こっちも手一杯だ!

 なんとか阻止し出来ないか?」


ゼノも必死な表情で猿を抑え込んでいる。

俺が何とかするしかないか・・・・。


「何とかしてみるが最悪の場合は

 ゼノだけでも逃げてくれ!

 俺は俺で何とかするから」


そう言って返事も待たずに最後の魔力をかき集める。

これでもう本当に後が無い。


「アリス、すまん

 一瞬で良いからアイツの意識を逸らしてくれ

 タイミングは俺が出す」


「わかりましたっ」


アリスに僅かな時間稼ぎと攻撃の隙作りを頼み

残りカスのような魔力を注ぎ込み準備する。


ロッドロドリスも準備が終わったようで

魔力の高まりが変質したのがわかる。

これは20階層の時に感じたのと同じだ。

反応から見て威力は随分と違うはずだけどな。

発動の先を読みタイミングを出す。


『アリス!今だっ!』


『食らいなさい!

 "聖竜の光咆ッ!"』


天井近くから一気に急降下し至近距離で魔法を発動するアリス。

強烈な光での目潰しだが少しは効いたようだ。

ひょっとしたら何かの特殊効果が付加されているのかもしれない。


大きく顎をあげて咆哮をあげる。

体がビリビリと震える。

だがこれはチャンス!

最後の魔力を注ぎ込み魔弾を放つ。


口の中に直接撃ち込めば流石に防げないだろ。

狙い通りに咆哮をあげる口の中に弾は飛び込み内部で爆発した。

使用したのは炎弾で極限まで毒性を高めた液体が入っている。

驚きの咆哮が苦悶の咆哮に変わる。

内部には相当のダメージが通ったな。


これで少しは時間が稼げる。

ゼノの支援をして突破するなら今しかない。

と、振り向きざまに足がもつれて転んだ。


あれ?

体が動きずらい。

思うように力が入らないが何とか立ち上がる。

予定していたよりも魔弾に魔力を持っていかれたようだ。

体を動かす最低限は残したのにな。

≪創造魔法≫の欠点だなこれはギリギリの魔力制御が難しい。


重い体を無理矢理動かしゼノに近づこうとした。


『ミノルさん!』


遠くなりそうな意識でアリスの方を見ると

口からダバダバと液体をまき散らしながら怒りでギラギラした目を

向けてくるロッドロドリスが居た。

魔弾を撃ち込んだ口からは液体以外にも魔力の塊を感じる事が出来る。


随分とタフな奴だ。

内蔵に相当なダメージがあるだろうに。

最悪、俺は死んでも転生出来るが

ゼノだけは何とかしないと。

最後の力を振り絞りゼノとの間に立ち

アイテムボックスから収納しておいた壁を取り出して防御壁として設置する。



ロッドロドリスの魔法が発動し視界内を

全て埋め尽くしそうな白い炎が吐き出される。


「はは、先程のお返しって訳か・・・・

 ゼノ、すまん!逃げてくれ!」


「ミノルを置いて行けるか!」


「もう時間がない!」


「だから置いていけるかっての!」


そう叫ぶゼノ。

が、そんな動作を猿共が見逃すハズがない。

青猿が腕を振りかぶりゼノを吹き飛ばす。

俺達は図らずしも合流する形となる。

ゼノは咽ながらも大きな怪我はないようだ。


壁は僅かな時間で既に融解し始めている。

猿共は巻き込まれたら自分達も死ぬ事が分かっているのだろう

距離を取って逃げているが警戒を解く気配はない。

多分、あそこが有効範囲外なんだろう。

今なら階段まで邪魔は居ないのに・・・。


白熱の照射が終わったが再度の魔力の高まりを感じる。

逃がすつもりはないってか・・・。

つかその規模を連射できるのかよ。


俺が出した壁は半分以上が融解した。

ゼノも壁を取出して俺の前に展開する。


「ゼノ・・・・とりあえず逃げてくれ

 今なら猿も階段から離れているから

 1人なら間に合う」


「だから置いて行けるかよ」


「この状況を突破出来る案はあるの?」


「いや・・・・無いな

 俺だけならレジストすれば致命傷には

 ならないと思うけど」


「それもすげーな!」


あの威力を食らって致命傷にならないとはどんだけだよ。

危険な状況にも関わらず思わず突っ込んでしまう。

残された時間は少なく2人が同時に助かる術も無い。

ゼノだけなら階段に逃げ込む事も可能だ。

今なら多少の被害だけでも行けるだろう。

アリスと俺は転生すれば良いだけだ。


「ゼノ、やっぱ」


俺の言葉は途中で遮られた。

肩に乗せられるようにゼノに担がれたからだ。


「ちょ、ゼノ!」


「俺だけじゃ逃げない

 ミノルも一緒だ

 もちろんアリスもな」


そう言って階段に向けて駆け出す。

それと同時に再度の白熱が射出される。

先程よりも威力は高い。

一瞬で俺の壁は融解し追加の壁も赤くなる。


やはり先程の青猿の攻撃が効いていたんだろうか

ゼノの足は遅く階段までの距離は短くいのに遠い。

あと数歩の所で壁が融解する。


身を焼き尽くさんとばかりに白い光りが視界を埋めてきて

研ぎ澄まされた感覚が時間を引き延ばしたように感じる。


進まないゼノの足。


白に塗りつぶされていく世界。


膨大な熱量が肌を焼いていく感覚。


「あぁ・・・・・ここで今回は終わりかな・・・・」


魔力枯渇によって遠くなりかけていた意識を無理矢理引き留めていたが

どうやら限界が来たようで俺の意識は白い世界から闇に落ちた。







「・・・・・ル・・・・ル・・・・・・ミノ・・・・」


遠くから聞こえる俺を呼ぶ声に意識が浮上してくる。

体全体が揺れている。


うーん・・・・まだ眠いのになぁ。


「ミノ・・・・ル・・・・・ノル・・・・」


何やら顔に激しい衝撃が伴ってきた。

もう・・・・眠いのに・・・・。


「ミノ・・・・ル・・・・ミ・・・・ノル・・・・ミノルッ!」


ズドンと強烈な衝撃がきて一気に覚醒する。


「ぶはぁっ!!

 なんだ?どうした?」


心拍数が急上昇し呼吸が荒くなり

体が空気を求めて喉がニューヒューする。


「ミノル!寝てる場合じゃないぞ」


「俺は・・・何時間位飛んでた?」


「そんなに経ってたら死んでるっての

 まだ数十秒ってトコだ」


あれ?そんなもん?

死んでないのか?


と、気が付くと世界は白く覆われていた。


違う・・・・・・俺は・・・魔法の中に居るんだ。

ロッドロドリスの魔法に晒されている最中だ。


その割には何もない。

痛みも。

熱さも。


良く見ると白い世界でも所処が歪んで見える事がある。

そして数メートル程前方から床が見える。


「これは結界の中なのか?」


「そうですよ

 体に問題はありませんか?」


凛とした耳に馴染む気持ちの良い声がすぐ後ろから聞こえた。

驚いて振り返ると見知らぬ女性が居た。


「怪我は治しましたが動けそうですか?

 大丈夫そうなら移動しましょう

 私の結界も長くは持ちませんから」


余りの状況に全くついて行けずに言葉が出て来ない。

ゼノは分かってるのか?


「説明は後でしてくれよな?」


うん、分かっていなかった。


「えぇ、状況の説明位しか出来ませんが」


「・・・・とりあえずありがとうで良いのかな?

 ゼノ、肩を貸してくれるか?

 体は大丈夫だけどまだ動けそうもない」


俺はゼノに肩を借り何とか歩き

ゆっくりと階段まで移動する。

女性は何かを唱えつつだ。

ロッドロドリスは俺達が生きている事が悔しいのか

魔法を狂ったように連続で放ってくるが全て防がれる。

初回よりも1発の威力が落ちてるとは言え

完全に防ぎきる女性も相当なモノだ。


女性に守られつつ俺らは46階層に辿り着く事が出来た。






46階層も転送陣が無かったが

女性が魔除けの結界を張ってくれたので

余程の事が無い限りは安全だと保障してくれた。


落ち着いてから改めて女性をよく見ると年齢は若い。

女性と言うよりは少女と言った方が良いだろう。

身長はそれほど高く無いが低くも無い。

伸ばした黒髪が綺麗だ。

顔は10人に聞けば5人は可愛いと言うだろう。

例えが微妙だが普通に可愛らしい顔だが

そこまで超絶に美しいとかいう感じでも無い。


それよりも気になる点がある。

先程から少女は目を開いて居ない。

見えないのか・・・・?

助けて貰ったのに余計な事を聞くのもなんだよなぁ。


服装は何と言うか・・・・独特だ。

パっと見は物語で神官が着るようなデザインだが

所処にプロテクターのような外装が付いて居るので

どうにも近未来的な戦闘系のロングコートのような印象だ。

なんか違和感がバリバリだ。


「先程は慌ただしい中で挨拶も出来ずに

 申し訳ありませんでした」


「いや、こちらも助かったよ

 助けてくれなければ俺もミノルも死んでたさ」


「いえ、それも説明しますが

 御2人が襲われたのも私が原因なのです」


「そうなの?

 でも近くには居なかったよね?

 俺の感知範囲には居なかったでしょ?」


「はい、それも含めて説明させて頂きます

 自己紹介をさせて頂きますね

 私の名前はリノン

 神官をしています」


リノンと名乗る謎の少女は説明を始めた。

神官という自己紹介だったので着てる服は神官衣なのだろう。

外出用とか戦闘用とかだったりするんだろうけど。


普通は神官衣で良いのだろうか?は白が基本なんじゃないだろうか?

又は崇める神の色を使うのだろうが

間違っても目の前にあるような原色を所々に使う

ラスタカラーやトリコロールもビックリな

陽気な色使いの服では無いと思う。


色使いが独得すぎて話しに集中出来ず

俺はリノンの説明を幾つか聞きなおす事となった。


新キャラ登場です。

やはりヒロインは必要ですよね。

まぁヒロインカどうかは不明ですが・・・・。

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