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5-9

風が強いです。

春一番ですかね。

こんにちわ森山実留です。

迷宮の奥で出会った人物も非正規の方でした。

最近はその傾向が強いのでしょうか?

そもそも迷宮30階層に居る2名が非正規ってどうなんでしょうか?

特にゼノ!どうやって帰るつもりなんだ?


すいません!

何か考えがあるなら教えてください。






5階層毎に相手がグンっと強くなるこの迷宮では

35階それはと言うのは意味がある。

ここから更に強さのレベルが1段上がるってわけだ。


「オゥラアァ!」


しかしそんな事をモノともせずにガンガンとゼノは突き進んだ。

階層が深くなれば相手も強くなる。

それは力だけでは無く魔法も技術も比例する。

つまりは力強くなり魔法も使ってきて戦闘技術も巧みになる。

更には特殊技能だとかスキルを使ってくるようなのも居る。


それらも全て圧倒的な力で倒し切っていくゼノ。

俺は頼もしさと共に危なさを感じ出した。

ゼノに比類する力や頭抜けた技術を持った魔物が出た場合に

対処が出来なくなるのでは無いかとね。

そんな危機感を感じるが俺が教えれるようなレベルじゃない。

あんな嵐のような力を持つ体の使い方なんて教えれる訳ねーよな。

せめて俺の連携や補助が上達すれば対処は可能なんじゃないかと

考え集中してゼノの隙を埋めるような戦い方を試行錯誤する事となった。



主戦闘をゼノに任せ俺が補助に周り戦い続け

38階層まで到達した。

一緒に戦い始めてからどれ位が経っただろうか。

相変わらず転送陣は動かない。

動いた所でカードがないので意味はない。

ゼノ以外の冒険者にも遭遇しないが

転送陣の部屋等に痕跡があるので戻った後なんだろう。

最近では馴れてきたのか戻りたい気持ちよりも

何処までいけるか?強くなれるか?という思いが

大きくなってきてるのを感じる。


そんな気持ちを裏付けるかのように

スキルも幾つか手に入った。


=========================

≪罠感知≫


説明:お前がそこに設置されているのは

   ガリっとブルっとヌメっとお見通しだ


効果:罠を感知しやすくなる

   設置・解除への補正は発生しない

=========================


=========================

≪罠解除≫


説明:委ねなさい!全てを私に委ねなさい!


効果:罠の解除成功率にプラス補正

   感知・設置への補正は発生しない

=========================


=========================

≪射撃≫


説明:狙い打つぜぇぇぇぇ!


効果:射撃時に精度と威力にプラス補正

   補正対象は全遠距離攻撃に適用されるが

   物理攻撃限定

=========================


罠系は説明の必要はないだろう。

迷宮では必須の技能だし寧ろやっとかよ感がある。

まぁ確かに罠が増えてきたのは30階層以降だったから

時期的には遅くないのかもしれないけどね。


≪射撃≫は魔弾を使いまくった結果だろう。

あぁ、魔弾って言うのは弾魔法の呼び名だ。

言いにくいとアリスに指摘されてしまった。

実弾を作ってるから魔弾ってのも違和感があるんだけどなぁ。

そてに魔弾ってねぇ・・・・ホラ・・・・アリスっぽいし。


≪射撃≫を覚えてから狙いが正確になり威力も上がり

視界内に照準が表示されるようになった。

他のスキルをオフにしても表示されるので

≪射撃≫での補正機能とみて良いだろう。

擬似的に他スキルで表示させていた照準よりも使いやすく精度が高い。

あくまでも表示されるだけなので調整は自分で行うのだが

狙いやすくなったのは有り難い。

オート照準とかのスキルもあるんだろうか?

追尾機能付きで捉え続けてくれるような。


このスキルは≪投擲≫や弓にもも効果あったので

益々遠距離攻撃が強化される事になった。

ムキムキの牛なのになぁ・・・・。


順調に迷宮を踏破し強さ、食料、素材、財宝等を

手に入れながら地下に潜り続けた。






変化が起きたのは40階層からだった。

今思えばこの階から魔物が変わったように思う。


敵は更に強くなりゼノの剣を盾や腕で逸らして

威力を殺す事や距離を測り回避したりする。

以前からそのような傾向はあったが

影響が出るレベルになってきたのは確かだ。

能力値も上がっているだろうが技術的な面がグッと強化された気がする。

それでもゼノの戦闘力と俺のサポートで突破出来たが

問題は戦闘に時間が掛る様になってきたという事。

時間が掛るという事はそれだけ危険に晒されてるんだしな。



この頃には俺の戦闘スタイルは完全に遠距離攻撃になった。

能力も大幅に伸びたので全力を出せば20階層レベルの相手なら

近接でも倒せるだろう。

総合能力では母牛を超えたかもしれないと思う。

それでも今の階層で近接をやるには厳しすぎる。

まぁゼノが居るから俺が前に出ても邪魔になるだけだけど。


武器は剣と弓を装備し左腕には邪魔にならない大きさの盾だ。

剣は特殊能力は無いが頑丈で切れ味も良い。

そこまで矢も弓も質は良く無いが

矢筒から無制限に矢が供給できるので使い勝手が良い。

ハイエルフの弓の方が何段も上の性能だったな。

盾は小型だが軽くて扱いやすい。

全て途中の中ボスっぽい奴から入手した悪くない物だ。

悪くないと言っても外で売ればちょっとした財産になりそうなレベル。


両親に買って貰った防具は頑張って使ったが32階層で壊れた。

鎧、小手、ブーツは良いのが手に入らなかったので

ソコソコ質の良い奴を改良して使っている。

ちゃんと最初の防具の素材も使っているので後継と言えなくもないよね。

うん、両親に買って貰った防具を改良しているだけだ。

・・・・全体の1割にも満たないけどね。

まぁ、こういうのは想いが大事だよ。


ゼノの武装はシンプルだ。

武装は身の丈に迫る大きな剣で盾は装備していない。

後は左腕に小手を着けて右腕は何もない。

鎧も動きやすさを重視した軽鎧それにブーツだけだ。


そのどれもが日常では御目に掛れないような高品質だ。

しかも入手方法が全て偶然とか偶々って感じで本人は特に気にしてない。

俺からすると絶対に神の介入があるよなって感じだけどな。





45階層にくると戦闘に労するようになった。

ゼノの攻撃は防がれる事が多くなり単純な攻撃では通じなくなってきたからだ。

相手も強くなっているので力任せに突破が難しくなってきた。

俺の攻撃が威力に欠ける事も原因の一つだ。

そして驚く事に転送陣が設置されていなかった。

階段の下の部屋はあるので設置してないだけなのか

何か理由があるのかは不明だ・・・・。

迷宮のセオリーとしてはこの部屋は安全のハズだが

転送陣が無いのが気になって仕方が無い。

かと言って完全に安全場所は44階層の転送陣部屋。

さてどうするか?


とりあえず45階層の部屋の出口を岩で塞いだ。

かなり厚くしてあるので突破されたとしても

逃げる時間位は稼げるはずだ。

魔力は結構増えたのでこれ位は問題ない。


今は蜥蜴肉をオレンジ色の香草と一緒に

ナメクジのような奴から取れた油で炒めている。

全て迷宮産なので味も栄養も抜群だが見た目が良くない。

蜥蜴肉は鮮やかな緑色だし油は真っ赤だしな。


「相変わらずミノルの料理は美味しいな

 この迷宮で出会えて本当に俺は幸運だ」


「料理位で大げさだよ

 それに俺もゼノが居たからここまで来れたんだし」


「料理位って・・・・凄い重要なんだぜ

 この緑色の肉を生で食いたいか?」


「まぁそれは嫌だけどさ

 ゼノが火加減の調整を出来るようになれば良いんじゃん」


「以前よりは出来るようになってきたけどな

 細かい事は苦手なのは変わんないさ」


「それだよそれ!

 そろそろ力任せじゃ無理があるぞ

 俺の攻撃だと威力が足りないしさ」


「本当に細かい制御は苦手なんだよ

 魔力や力を絞ろうにも上手く行かないんだ」


「それは理解してるよ

 多分、内包している力が大きすぎるんだ」


「そりゃまぁ神の加護を貰った時には

 体が焼けて死ぬって位に急激な変化だったしな」


「そんなに急だったんだ

 そういえば今迄聞いてなかったけど

 ゼノは何で加護を貰ったの

 それまでに何かしてたとか?」


「うんにゃ何もしてないぞ

 村が魔物に襲われて無くなっちまったんだ

 それで仕方なく冒険者として行動してただけで

 特には何もしてない・・・・と思うんだけどな」


「じゃぁ心当たりはないんだ

 そんな高位の神が加護をくれるなんて

 理由があると思ったんだけどなぁ」


「あぁ、すまん

 理由と言うか目的はあるんだ

 加護を貰うときに言われたからな」


「へ?そうなの?

 それって聞いても平気なもの?」


「どうだろうな

 でも何も言われて無いしなぁ

 別に良いんじゃね」


「相変わらずな軽さだなね

 じゃぁ目的ってのを教えてよ

 何か手伝えるかもしれないし」


此処までゼノとは濃密な時間を過ごしてきた。

ゼノは俺に恩義を感じているのは本当のようだ。

細かい事を気にしない豪快(大雑把)な性格は

面倒な事も無くて付き合いやすい。

一緒に居ても飾らずに気さくな性格は楽だ。

行動を見ていても信用できる人物だと思う。

俺は出来る事ならゼノの目的を手助けしてあげたいと思うようになった。


「目的って言ってもさ詳しくは何も聞いてないんだ

 勇者と魔王を殺せって言われただけでさ」


は?


何言ってんの?


勇者?


魔王?


殺す?


ゼノの目的は俺の意識を一瞬真っ白に変えたのも

仕方がない事だと思う。

何せ俺はその目標の2人に殺されてるんだ。

背中を尋常じゃない量の汗が伝う。


「あ・・・・・そ・・・・・・は・・・・?」


声が震えて言葉が紡げない。

衝撃を受けたがショックな訳でもない。

俺の頭の中にグルグルと焦りが生まれる。


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。

やばい。


勇者と魔王。

魔王と勇者。

共通点は幾つもあるが最大の特徴は1つ。


それは


世界神の加護を受けている事。

最高神の加護を受けている事。


恐怖を押し殺し声を絞り出す。


「目標は・・・・魔王と・・・勇者・・・・だけか?」


「ん?あぁそうだな

 それ以外は言われていないな」


「なぜ・・・その2人なんだ?」


「風の神が言うには

 "世界の加護を受けた勇者と魔王を滅ぼせば世界は動く"

 らしいんだけどね

 詳しくは俺もわかんないんだ」


「ゼノは・・・ゼノはそれで良いの?

 それが目的なの?」


俺の問いかけにゼノは遠い目をした。

何かを思い出しているかのように。


「俺は・・・・強くなりたい

 誰にも負けない様に・・・

 誰にも奪われない様に・・・」


そう呟いた。

その目には薄暗い闇のようなモノもが見えた気がしたが

次の瞬間には何時ものゼノだった。


「折角、加護を貰って強くなったんだ

 誰にも負けたくないし強い奴と戦いたいしな

 勇者だって魔王だって倒してやるさ!」


どうやら本当に勇者と魔王を倒せとしか言われてないようだ。

それでも俺は聞かなくてはいけない。

例えゼノが敵になるとしてもだ。


「世界の加護を受けたと言うのは

 世界神グラバスの加護を受けたと言う意味かい?」


「ん~、どうなんだろうな

 でも世界の加護って言われ方からするとそうだよな」


「そうなるともう1人・・・・いるよね?」


「あぁ、近年出てきた聖女って言われてる

 フィラルドの王女だろ」


「その聖女は・・・対象じゃないの?」


「ん?あぁ?

 聖女はね手を出すなって火の神が言ってたな」


「それはどうして?」


「それも理由は教えてくれなかったな

 聖女は様々な人を救う者と聞くし

 悪い話も流れて来ないしね

 それ以前に余り情報は出回ってないけどさ

 出来れば戦いたくはないから丁度良いさ」


それを聞いて安心する。

少なくとも現時点でゼノと敵対する必要はないようだ。


「俺は少なくとも両名に勝てる気はしない

 でもゼノなら大丈夫かもしれない

 その手助け位は出来るかもしれないけど

 正直、会いたいとは思わない」


「それでいいさ

 それに他の誰にも出来るような事じゃないのも理解してる

 なんてったって勇者に魔王だもんな

 ミノルの都合が良い時まで一緒にいてくれるだけで

 俺には有り難い」


「あぁ、とりあえずはこの迷宮では一緒だね

 今更戻るのも面倒だし

 どうするかは外に出てから考えるよ」


「頼むぜ料理担当」


「宜しくな戦闘担当」


笑いながら俺達は迷宮の最後まで

潜る事を決めた。

完全に遠距離タイプになった牛って需要はあるんでしょうか?

ギルドで加入申請したら募集あるのかなぁ・・・・。

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