5-7
ラーメン食べてないなぁ・・・・。
たまにはシンプルな醤油ラーメンでも食べたい。
大魔法使い改め拳銃使いとなった森山実留です。
まぁ銃と言いましてもそれっぽい弾を魔法で
撃ちだしているだけなんですけどね。
・・・・・あれ?拳銃じゃなくね?
そもそも銃じゃなくね?
あっ、やっぱり大魔法使いでお願いします。
俺は今、地下26階に居る。
リビングアーマーが雑魚に思える程の強さの魔物が徘徊している階だ。
まぁ光弾を編み出した俺にすれば正しく雑魚なんだけどね。
それにしても特に25階を越えてからは魔物が一気に強くなった気がする。
「炎弾っ!」
ドバンと鈍い音と着弾し魔物の内側を炎が焼いていく。
更に追い打ちで3発程ぶち込むと崩れ落ちた。
「ふぅ、流石に1発では仕留められないな」
「内部からの攻撃もレジストされているようですしね」
「弾との魔力回路をもう少し改良すれば
内部破壊の威力も上げれると思うけどな」
「弾の形状も相手のタイプによって使い分けないといけないですね」
「魔力も少しづつ増えてるから地道にやっていくしかないな」
最近は如何に効率よく相手を倒すかを考えている。
俺は生き残る為に強くならなければいけない。
弾も複数用意した。
無機質や硬い外皮を持つ相手には円錐状のタイプで貫通力を。
その他生物には台形のタイプを使いダメージを。
他にも試行錯誤で色々と作っては試している。
地下に潜っていかなくても生存は可能だが
どうせ何時かは強者に出会う事になるんだろうから
強くなれる時に強さを求めて損はない。
能力値を上げておけば次回転生時に有利だしな。
迷宮に閉じ込められてから2週間が経った。
様々な魔物と戦い倒し喰らった。
未だに満足するには足りない身体能力と魔力だが
頑張った甲斐もあり能力値は上がった。
懸念点の魔力も通常戦闘がギリギリ可能なまでには増えた。
弾系は有効で省エネで使い勝手も良いが直線的な動きだ。
その為に動きが素早い相手には当てるのが難しいし
植物系の相手なんかにも効果も薄い。
≪軌道予測≫も併用しているが外す事も多い。
その為、様々な攻撃方法を考えた。
弾系魔法では散弾と呼んでいる魔法を作った。
細かい屑鉄を一気に拡散射撃する魔法で素早い動きの相手に有効だ。
1発の威力が弱いが手数を稼げるので当てやすい。
使えない鉄屑なんかを利用するので無駄が無いのも良い。
他にも通常の魔法の改良や新しい発想での魔法等を試し
攻撃魔法に関しては相当に使えるカードが増えただろう。
もちろん通常の魔法攻撃も磨きを掛けているし
最近は結界や防御系の魔法も色々と考えた。
≪創造魔法≫は魔力と発想さえあれば色々と出来るのが強みだな。
武器も様々な物が手に入った。
剣、斧、槍等々だ。
良いランクの物は僅かで大半がクズだ。
だがここは使い捨てにする為に敢えてボロい方を使う。
≪投擲≫しても良いし足止めに使っても良い。
魔法の材料として組み込むのも有だ。
そもそもまだ俺の能力値じゃ良い物を使っても
与えるダメージに大きな差は出ない。
深層階に向かってはいるが能力値だけで見たら
まだこんな階層に来れるレベルじゃないんだろうしな。
それでも自分の強化の為に
新しい魔物を探し喰らう為に先に進む。
更に1週間が経過し俺は29階層に辿り着いた。
敵は更に強くなり簡単には倒せなくなった。
防具もボロボロになったので補強を続けたら
すでに接続部分以外は全て素材が変わり金属鎧となった。
小手もブーツも補修と補強を繰り返したので別物だ。
盾も奪った物を同様に加工している。
武器は流石に頑丈であれば良いと言うレベルではないので
ある程度の補修で追い付かなくなったら使い捨てる。
各種製作系のスキルの熟練度も上がった。
かなりの量を作ったので明確にイメージを掴み
弾自体も無から作る事に成功している。
まだまだ生成速度も遅く魔力消費も大きいが
自由度は圧倒的に魔法生成の方が上だ。
その技術を流用し鎧鉄加工で作る弾も精度や加工技術が向上中だ。
何れは完全に魔法生成で出来るようになれば
今よりも更に強くなるだろう。
魔王をぶち抜く事も可能だろうな・・・・フフフ。
「流石にこの階は簡単に突破出来そうもないですね」
「あぁ、あの岩男が邪魔だな
防御力が高すぎる個体が居るのが面倒だ」
「随分と個体差がある相手ですね
凄い硬かったりそうでもなかったり」
「それだけなら良いけどあの巨体で動きが速いのも居たよな」
「居ましたね!柔らかかったから何とかなりましたけど」
俺達はこの階の"ボウボラ"と言う魔物に苦労していた。
見た目は岩で出来た大男と言った外見だ。
皮膚は岩の様なデコボコで厚い。
一番の問題は個体差が大きいと言う点だろう。
見た目とは裏腹に柔らかい奴も居れば硬い奴も居る。
中には魔法をレジストするのも居るので物理攻撃を仕掛けるしかない。
幾つもの武器を≪投擲≫して何とか倒した。
更には動きが素早いのも居るので対処に困る。
ボウボラを何とかしないと下の階に行くのは厳しそうだ。
転送陣の部屋から出撃し数体を倒して戻るを
繰り返し情報を集める。
どうやらコイツは目だと思われる部位の色で傾向が変わるようだ。
赤:パワータイプ
力が強いが硬さは普通
青:スピードタイプ
力は普通だが少し柔らかい
黄:ディフェンスタイプ
赤程ではないが力が強くやたら硬い
速度は少し遅い
白:魔法タイプ
黄色程に硬くはないが硬め
魔法が一切効かない
この4種類に分類出来るようだ。
赤は問題なく対処出来る。
硬くはあるが近接でもダメージを与えられる位の硬さだ。
倒し切るまでは持ち込めないけどね。
青も動きさえ止めてしまえば良い。
粘液で転ばしても良いし足を引っかけるように
岩でも生成すればこっちのものだ。
柔らかめなので近接でも倒し切れる。
黄色はやっかいだが外皮を貫通出来れば中を直接攻撃が有効だ。
1発に掛ける威力を上げるので魔力消費が多いが
そこまで気に掛けなくても大丈夫だ。
動きも少し遅めなので近寄らずに攻撃だで何とかなる。
問題は白だ。
黄色程硬くは無いのに魔法が一切効かないので
完全に物理攻撃のみだ。
物量作戦で≪投擲≫等の質量で攻めるか大質量の弾をぶち込むしかない。
時間も掛るし消費量もデカい。
俺はコイツが居る場合はなるべく逃げるようにした。
29階層での戦いも対処法さえ分れば
段々と効率を上げる事が出来たので突破は時間の問題だな。
次の日に29階層を突破した。
白から逃げながらの為、70%程度しか調査していないが
次階層への階段を見つけたので先に進む事にする。
白を残して他を倒したので
白の割合が多くなってきたからだというのもある。
面倒なのでとっとと次に進もう。
30階層は降りても転送陣の部屋では無かった。
通路が続いている。
これは少し先の小部屋に設置されているパターンだな。
だが前方からやけに多数の反応がある。
今迄よりもグッと強い反応は
この階から更に相手が強くなった証だろう。
通路には入ってこれないハズだが
20階層の事もあり緊張する。
次の角を曲がれば反応がある部分だ。
念の為、こっそりと見てみると
魔物が数匹集まっていた。
数は6匹。
どうも部屋に向かって威嚇しているようだ。
あの部屋が転送陣なのかな?
魔物が威嚇してるとなると誰かが居るのか?
『アリス!誰か居るかもだ!
これで帰れるかもしれないぞ』
『ですね
でもあの魔物を突破出来るんですか?』
『とりあえず魔力を限界まで使って
デカいのを1発ぶち込むか
魔法弾を連射すりゃ何とかなるんじゃねーか
最悪の場合、こっちには入ってこれないみたいだから
殲滅に時間が掛っても良いしな』
『うぉう、なんと卑怯な・・・・』
実際問題、安全圏からの遠距離攻撃は周囲に人が居た場合等は
影響が大きいので推奨されていない。
獲物の横取りや更なる援軍を呼ぶ可能性もあるからだ。
それに魔物避けの結界があるので転送陣近くには
獲物が居ない事が多く効率が悪すぎるので
あえてそんな事をやる奴が居ないという事もある。
例外として誰かが引き連れてきてしまい
入口付近に魔物が集まってしまう事があるので
対処法としての1つとしては有効とされている。
今回の状況を考えるに緊急っぽいから平気だろう。
相手は大きい犬型の魔物で毛がべったりとした印象を受ける。
シルエットは犬だが目が飛出して赤くギラついており
非常に嫌悪感を覚える顔だ。
防御力は高いかもしれないし密集しているので
貫通力を重視した弾が良いだろう。
最近は内部に液体等も仕込む事が出来るようになった。
これは魔法発動で弾けた時に直接体内に影響を与えられる。
今回は麻痺性の粘液を仕込んだ物を用意する。
属性は雷を選択。
とりあえず10発ほど手に取り射撃準備に入る。
意識を戦闘に切り替え魔力を最大限に高める。
身体能力には回さずに攻撃と観測に全てを注ぐ。
角から飛び出して照準を合せる。
これは≪視力≫と≪感覚強化≫で底上げした内容に
≪視界情報補正≫で擬似的に照準としてる。
強化された視力で相手の気持ち悪い顔が明確に見える。
詳細に狙うと外す事があるので大きい胴体等を捉える。
「よっしゃ!食らえ!」
雷麻痺弾を発射しようと思った瞬間に
魔物の1匹が吹き飛んだ。
「は?あれっ?」
部屋から何か黒い物が飛び出してきたと同時に
魔物を攻撃し吹き飛ばしたようだ
強化された視力でも薄っすらとしか確認できない。
とても大きな物を振り回してなぎ倒していく。
1撃毎に魔物が切断され壁に叩きつけられる。
身体能力も凄まじいのだろう動きが追いきれない。
僅かな時間で魔物を殲滅した物は
返り血を大量に帯びて顔が良く見えないが
獣人の男のようだ。
目の前で行われた戦いで
この獣人が俺なんかじゃ太刀打ち出来るような
戦闘力を持っていると理解している。
獣人がこちらに振り返る。
今更ながらに俺に気が付いたようだ。
質量を持ったかの殺意や敵意と言った
邪魔者を排除しようとする意志を感じ
危機感が一気に急上昇する。
全身から冷や汗が吹き出し足から力を奪い
無意識に少しづつ後退してしまう。
獣人がこちらに歩み寄ってくる。
手にしていたのは大きな剣だ。
俺では扱えそうもない大剣を手に1歩1歩近寄ってくる。
"俺はここで死ぬ"
そうハッキリとイメージ出来てしまう程に
絶望的な状況だ。
距離にして数メートル。
お互いに1歩で相手に飛び込める距離だ。
俺は持っている剣を強く握りしめ
身体能力を限界まで上げる。
魔力も限界まで注ぎ込み
貫通力を重視した弾を生成する。
寄ってくる獣人と目が合う。
その瞬間に空気が一気に緩む。
「は?」
余りの急激な変化に意識がついて行けずに
気の抜けた声が出てしまう。
「あれ?魔物じゃなくてミノタウロス種の冒険者か?
よぉ、悪いんだけど食い物持ってないか?
腹減って倒れそうなんだよ」
明らかに場違いで陽気な声が聞こえてきた。
早くも出てきた豪の者。
実留君の命運やいかに?!




