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5-1

新章開始です。

俺は森山実留。

牛だ!

もーもー言って草を食う牛だ!

でもあれだ!体は人間なんだぜ!

手もあれば足もあるんだぜ!


・・・・・・・何で牛なんだよぉぉぉぉぉぉ!!

後は顔だけだろうがぁぁぁぁ!








余りの衝撃に生後間もない俺の意識は飛び

そのまま寝てしまったらしい。

次に目が覚めると部屋の中で寝ていた。

どれ位、寝ていたのだろうか。

改めて周囲を見ると質素で大きくも無いが

暖かみを感じる落ち着いた部屋だ。

薄暗いがハッキリと見えるのはスキルのお陰だろうか?

それとも種族的な特性なのだろうか?


落ち着いてゆっくりと体を動かしてみる。

なんとか手は少しだけ持ち上げられたが

やはり人族に見える。

うむ・・・・これは鏡を見るのが怖いな。

嫌だなぁ・・・牛なんだろうなぁ・・・・・。

鼻に輪っかとか付けなきゃいけないのかなぁ。


もの凄く確認したくなかったが

俺はステータスを開く。


=========================

名前:森山実留

性別:オス

種族:ミノタウロス



≪ミノタウロス≫


牛と人族が合わさった外見を持つ。

部族によって各種組合せが確認され

顔が牛で有る事がミノタウロスの条件とされる。

顔が人族の場合は他に特性が強く出ても

ミノタウロスとはされない。


体は大きく強靭で言語を理解する程度の

知性はあるが余り高いとは言えないが

個体差が大きい種族でもある。

亜人族とされるが粗暴の者も多いので

人族の中では疎外される傾向が強い。

=========================


牛の外見・・・・・牛ねぇ・・・・。

種族にそう表示されるって事は

俺の顔は・・・・牛なんだろうなぁ。

感覚的に違和感がないのはスキルの影響だろうし。

はぁ・・・・顔が牛って犬より酷くねーか?


なんかこう毎度の事ながら

現実を確認すると疲れるな。

骨の時の方が気楽で良かったよな。

次はアンデット拒否を外してみっかね。

でもゾンビは嫌だなぁ。

そんな考えを巡らせているとまたもや睡魔が襲ってきた。


赤ちゃんって良く寝るって本当だなぁ・・・・。







3日も経つと随分と体に力が入る様になってきた。

まだ立てはしないが手足はかなり動く。

手足は人族で体もそのようだ。

顔を触ると首下辺りから毛が生え牛のようだ。

頭には角が2本生えている。

うん・・・・・牛だ・・・牛だぁ・・・。


食事は母牛の乳だ。

乳房は人族と同じなのだが

これは牛乳なのだろうか?

味は牛乳に近いがもっと濃い。

母乳と言えば母乳だが・・・・深く考えるのはやめよう。

精神衛生的に良くない気がするしな。





5日目には何とか立ち上がる事が出来た。

そこで鏡を見ると・・・・やっぱり牛だった。

体の大きさに比例して小ぶりな顔だが

つぶらな瞳にそそり立つ角。

そしてだらしない口。

うん、ちょっとクラっとするのは

スキルを越えた衝撃があったからだろうか。

今迄で一番の衝撃な気がするぜ。


母牛はこれまた立派な体をしている。

筋肉がモリモリとしたゴリマッチョだ。

手は人族だが足は牛だった。

蹄と逆関節が威圧感バリバリで怖いが

俺にはとても優しく接してくれる。


「モーモー・・・ブモ?・・・・モモーウ」


「ブモブモ・・・・モモゥ」


「モモモ?モーウモーウ」


相変わらず言葉は何を言っているか理解できませんけど

何となく俺を見る目は優しい。

まぁ牛の表情なんて詳しくわかりませんがね。


ジミーは以前に比べて少し歳をとった気もするが

余り変わってなかった。

気さくで豪快で良く動く。

そして奥様(母牛)をとても愛しているようだ。


なぜ牛と子作りしているのかについて

聞きたい事は沢山あるが気にしないでおこう。

精神衛生的に(略)


食事は母乳と柔らかい葉っぱのような物が

半々となった。


言葉も拙いながらも話す事が出来た。


「おかーさん、おとーさん」


と呼んでみたら


「うおぉぉぉぉぉぉーーーー

 よよよよよんだ?俺を呼んだのか?」


「ブモーーーーモモモモモモー!」


って喜んでいた。

なんだか恥ずかしいような嬉しいような

くすぐったい感じだな。




1週間が経った頃に体は普通に動くようになった。

すげぇなヨタヨタじゃなくてビシバシ動けるぞ。

ミノタウロスすげぇよ。

発声も普通に出来るようになった。

ミノタウロスすげぇよ。


食事は完全にサラダのような物に切り替わった。

美味しいんだけど物足りなさを感じる。

まさか・・・・草食って事は・・・・ないよな・・・・?!


歩けるようになり初めて家を出た。

そこは大きめな街だった。

少し高台に位置しているので周囲が良く見える。

おおーうデカいな。

今回のスタート位置は良いじゃねーか。

文化圏に生まれるのがこれほど嬉しいとは

俺も相当な体験してるよな。


キョロキョロしていると後ろからジミーが教えてくれる。


「どうだここがミノルの生まれた場所だ

 名前をポーラスって言うんだ

 世間では迷宮都市ポーラスって呼ばれている」


ほほー、今回の俺はやはり相当ラッキーだな。

フィラルドの近くから開始出来るなんてな。

実里が居てくれると嬉しいんだけど

多分、それは無いんだろうけどさ。




・・・・ちなみにジミーが俺の事をミノルと呼ぶのは

生まれてから2日目の事だった。


「なぁ、この子の名前は何にする?

 俺は強い男の子になって欲しいから

 "シュバイツバイサー"とか良いと思うんだ」


「モモウ・・・・モウ・・・ブモモ」


「そうかい?

 良いと思うんだけどな

 じゃぁ君は何か


「ブモ・・・モモモ・・・モウモー」


「え?ミノル?

 何処かで聞いた様な・・・・・

 それはどんな想いなんだい?」


「モモウモモウ・・・・モーモー」


「神に愛される子?

 なんだか凄い名前だね

 君が考えたのかい?」


「モーモウ・・・モモー」


「想いを踏まえて考えてたら

 急に湧いてきた?

 そうかそれなら本当に神様のプレゼントかもね

 うん!良いじゃないか!」


そんな感じで決まった。

隣で聞いてて汗びっちょりだったぜ。

何だよ"シュバイツバイサー"って。


それにまたもやミノルって名前が当たり前に決まる。

確実に神の介入がありやがったな。

こっちとしては助けるけどさ・・・・こう・・なんかね。

まぁ良いか。

そんな一幕があり俺の名前はミノルとなった。



この1週間で集めた情報によると

ジミーは迷宮ギルドで変わらずに働いているみたい。

少しは偉くなったんだろうか?

相変わらずのムキムキっぷりだ。


まぁそんなムキムキの野郎の事は放っておいて

母牛の事でわかった事をまとめてみよう。

いや・・・・まぁ、ジミー悪い奴じゃないし

俺の父親だから別に嫌いじゃないよ・・・本当だよ。


母牛の名前はヴィクトリアと言うそうだ。

元々は奴隷で一目惚れしたジミーが

頼み込んで貯金を全てブっこんで譲って貰ったらしい。


これらの事は俺が生まれて嬉しかったのか

ジミーが酒を飲みながら語ってくれた。

まだ生後数日でアウアウしか喋れない俺にだぜ。

余程嬉しかったんだろうな。

最後にはベロベロになってたし。


ジミー曰く、凛とした姿がとても輝いていた。

奴隷で荷物持ちにしておくのには

勿体無いと想い後は全力で走り続けたそうだ。


うんうん!熱いぞジミー!


元の主人は商人で護衛兼荷物持ちとして

使っていたので生娘だったそうだ。


「でな・・・・父さんはな・・・・

 ヴィクトリアのな・・・・最初を・・・えへへ・・・」


等と酔った勢いで話し出した。

正直、両親のそう言った事を聞きたくない!って思いよりも

"まぁミノタウロスと致そうって奴も居ないよな"

って思いの方が強かったのは内緒だ。


うんうん!気持ち悪いぞジミー。


その後、ヴィクトリア(母牛)は

奴隷を解放されてジミーと正式に結婚し

ちゃんと住民として認められているようだ。


酒も入っていたので

正確な情報かどうかはわからないが

まぁ概ね正しいかなとは思う。

違ってたところでこの2人が両親なのは変わらない。

俺が転生者だと言うのが申し訳ない位に

可愛がってくれる。


うんこれはあれだ正体をバラすのは不味いな。

流石にこの幸せを壊す訳にはいかないだろう。

2人の子供として生まれた事は本当なんだし。



俺は両親のステータスを見る。


=========================

名前:ジミー・ジェイク

性別:男

職業:迷宮管理官

種族:カーファス



≪カーファス≫


犬族と猫族の獣人族のハーフとされる。

外見は人族で獣耳と尻尾が生えている。

耳は犬科で目が猫科という特徴がある。

繁栄力の弱い部族同士で繋がりを強くすることで

栄えてきたのがルーツではないかと言われている。

=========================


ふむふむ、ジミーは"迷宮管理官"って職業なのか。

そういや酔いながらそんな事を言っていたけど

どんな仕事なんだ?



次は母牛だ。


=========================

名前:母牛ヴィクトリア

性別:メス

職業:迷宮冒険者

種族:ミノタウロス

=========================


母牛は冒険者か。

それも迷宮冒険者。

多分、迷宮をメインにしている冒険者の事なんだろう。

種族特性を生かすにはそれが一番だろうけどな。

それでも知性はそんなに高くないんだろ?

文化圏に住んでジミーと夫婦生活を送れる位だから

そんなに悪くもなさそうなんだが。




ところで母牛の言葉はいつ理解できるように

なるのだろうか?




1週間の成長で動けるようになった俺は家の

周囲だけだが行動を許された。

家の裏手が開けていたので

母牛の見守る中で思いっきり体を動かしてみる。


今回は基礎能力も加算されてるからなのか

思ってたよりも相当動く。

コボルドの比じゃないほどだ。

スキル効果もあるだろうが手先も器用に動く。

流石にポイントを突っ込んだだけあって

体のポテンシャルは高そうだ。


初めての外出で気分が高揚し

体を思う存分動かした夜は腹も減り

モリモリと野菜を食べていた。

ジミーは肉を食べているので肉が無いわけじゃない。

母牛は・・・・野菜だ。


まっ・・・まさか・・・・本当に・・・・草食なのか?

ミノタウロスって人襲って肉を食うんじゃないのか・・・?

俺がそんな事を悩んでいると

何時もは和気藹々と楽しそうに会話している両親が

今日は真剣な顔をして話していた。


相変わらず母牛の方が何を話しているかわからないので

ジミーの方を拾うが今一つピンとこない。

どうにも俺の事を話しているようだ。


山ほどあった野菜も食べ終わり

意外と満足した俺がそろそろ寝ようかとした時に

両親に話があると言われた。


テーブルにちゃんと座りなおして両親と向き合う。

2人はお互いに話しづらいのか

お前が話せよ、ウモーウモーとか押し付けあっていた。

良いからさっさと話せやと思いつつ


「なにー?何のはなしー?」


と普段から演じている子供っぽさを

アピールしつつ催促する。


少しの間の後にジミーが意を決して話し出した。



「ん・・・、ミノル・・・お前は大きくなったな

 まさか1週間でそんなに動けるようになるとは

 思ってもみなかったぞ」


「そうなの?

 僕は良くわからないけど・・・」


「あぁ、別に怒ってるわけじゃないんだぞ

 父さんはミノルが元気でとても嬉しい

 それにミノタウロスとしては当然の事らしい」


「モーモモー」


「うん、僕も動けるようになって嬉しい」


「そうだな

 お父さんもミノルと外で遊べるようになったのは

 凄く嬉しいと思ってる」


「お父さんと遊べる~」


我ながら凄く上手く演じれてると思う。

何で俺がジミーと遊ばなきゃいけないんだって思いは

心の奥底に封印する。

頑張れ!俺!


「おう、一緒に遊ぼうな!

 それでな・・・ミノル・・・・」


「何?お父さん?」


「その・・・な・・・・ミノルはお母さん好きか?」


「うん!好きだよ」


「そうか・・・・お母さんを信じてるか?」


「うん!信じてるよ」


「そうか・・・・ミノルな・・・・

 明日からお母さんと迷宮に入って貰う事になった」


「はぁっ?マジで?!」



おっとヤバイ。

素が出ちゃった。


え?本当に?

生後1週間とかで迷宮入りするの?

相変わらずのアリスさんの出れなさw

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