4-36
バイクに乗っていると手が痛いです。
こんにちわリーフォームの達人 森山物留です。
あの寒くて臭くてジメジメヌルヌルした部屋でした。
それがまぁ・・・なんと言う事でしょう。
石造りの構造はそのままに
獣皮での寝台から石で出来た竈。
それにシャワー室にトイレまで。
これで今後の生活も快適になるでしょう。
そして今回のお値段は・・・・なんとプライレスです!
階段を登り扉を押し上げると小さいとは言わないが
大きくもない部屋だった。
そこは隠し部屋と言うべき場所なのだろう。
埃っぽく掃除もされていないような感じだ。
そこに俺の装備や道具はあったがギルドカードは無かった。
何処にあるのかは興味がないが多分、ギルドにありそうな気がする。
俺が手放している時間が記録されている事だろう。
それが監禁されていた証拠になるんじゃないのか?
ちなみに2人に対しては直接に暴力等は振るっていないので
記録はされていないと思う。
確かカードとの有効距離があったはずだし
ここに無いって事は大丈夫じゃないかな・・・・多分。
準備を整えて部屋の外に出る。
細い通路を何回か曲がると
扉が2個あり片方が裏口で片方は
倉庫へ続く通路の途中に出れるとの事。
装備を再確認し館への出入り口をそっと開けてアリスに先行してもらう。
ギルド長と受付は上半身をギチギチに締め上げて
猿轡もしてあるので大きな声すらも出せない状態だ。
館に入ると時間帯は早朝だったようだ
窓の外には朝靄が掛っていた。
周囲に人の気配は無い。
ギルド長に領主の部屋まで案内をさせる。
居れば良し居なくても何か書類でも出てくんだろって考えだ。
不法侵入ウンヌンはあると思うが
元々が館の敷地内に居たんだから違うよね?
音を立てないようにゆっくりと慎重に向かう。
館は2階建てで寝室は2階にある。
1階の奥には何人かが行動しているようだが
多分、食事の用意やそんなとこだろう。
寝室前に来ると中には1人の気配しかしない。
それが領主だろう。
隣の部屋にも反応があるが・・・・まぁ問題ないか。
妙に何処かで感じたような気もするが何だろ。
反応の強さから護衛だとは思うんだけど
妙にハッキリしない。
反応も強くなったり弱くなったり消えたりだ。
寝室にそっと侵入する。
念の為、部屋の扉に細工をして開けれない様にしておいた。
まぁ隙間を石でびっちり埋めただけだけど。
ここに来てから俺の魔法技術も相当に向上したなぁ。
さて部屋に佇む俺はどうしようかと考える。
勢いで来たもののまさか本人が居るとはなって感じだ。
もうノープランにも程があるよな。
よし!とりあえず起こして話をしよう。
起きて貰わないと仕方が無いしな。
俺は2人をアリスに任せて寝台に近づく。
「爆音」
やはり目覚めには目覚ましだろう。
威力をかなり抑えで発動する。
音は伝わって来ないが体が跳ね口と鼻から血が出る。
さて目が覚めたかな?
近づいて確認すると領主は痙攣していた。
今迄聞いていた内容で想像してていたのは
醜く太ったような中年だが
実際には若くは無いが整った顔をしたスラっとした人だった。
鼻と耳からは血を流しつつも目が・・・・あれ?目が覚めない?
・・・・・やべぇ!やり過ぎた!
慌てて回復し蘇生させました。
あぶねぇ・・・・心臓が止まりかけてたぜ。
やれやれ俺のあわてんぼうさんめ。
テヘっとアリスを見ると冷たい目をしていた。
ギルド長と受付は顔を真っ青にしてガクガクと震えていた。
回復させるとうっすらと目を開きむせ返る領主。
「ゴホッ・・・ゴホッ・・・・
なんだ・・・これは・・・・」
「こんにちは領主様
違うな、おはようございます領主様
になるのかな?」
「お、お前は誰だ?
それに・・・ゴホッ・・・・なんだこの血は?」
「領主様が死にそうになっていたので
助けてさしあげました
通りすがりのコボルドですよ」
「は?お前は何を言っている?
ここは私の館だ・・・
それに後ろに居るのはエランスか?
もう1人は・・・・知らんな?」
「えぇ、こんな早朝から何ですが
不法侵入はしてませんよ
自分も連れて来られましたので」
「お前は何を言っている?
おい!エランス!説明しろ!」
口を塞がれたままフガフガと何を言っているか
わからないけど埒が明かないので
わざと火魔法で猿轡を遠くから切ってやる。
それもギルド長への脅しの1つだ。
もう倒れるんじゃないかと思う位に
ガタガタと震えるギルド長。
こんなに苛められて可哀想にな・・・うんうん。
シドロモドロになりながらもギルド長が事情を説明する。
俺も領主も怖いので内容は滅茶苦茶で説明になってない。
「エランス!何が言いたいんだ!
全然説明になってないじゃないか!
こいつ等は何だ!」
領主は興奮し唾を飛ばしながら怒鳴り散らす。
ちなみに未だに寝台の上でシーツで包まれており
威厳もへったくれもない。
俺が不気味で怖いのか近寄ろうともしてこない。
「じゃぁ通りすがりの親切な自分から
話をしてあげましょう
まず貴方が以前からギルド長に融通されていた金の
一部は俺の金なんで返却してください
でもギルド長から返って来れば別に良いです」
そうギルド長は俺の金を運用と偽り
領主への袖の下として使っていた。
だからと言って領主に渡したのはギルド長なので
返却義務はないのだけどね。
何を言われていたのかわからなかったんだろう。
領主が睨むとギルド長がフゴフゴと説明する。
「なに?じゃぁコイツが前に言ってた
金を持ってる亜人種と言うのは?
死んだんじゃないのか?」
「いや・・・・こちらも・・・・・
あの・・その・・・手違いと言いますか・・・」
おおう、本当にこいつら馬鹿なんだな。
つうか領主ってキレ者じゃなかったのかよ。
「あのさぁ本人居る前でさ死んだとか
手違いだったとかって話をするのはどうなの?
俺が然るべき場所に駆け込むとかは考えないの?」
自分の館の地下で殺そうとした者の事すら知らないって
どんだけクズなんだって話だ。
それを聞いた領主がクククっと笑いだす。
まるで何も問題も無いようだ。
「アハハハハ
そうかそうかコイツが例の亜人か!
たかが亜人種が持つには大きすぎる金額だから
私とエランスで使ってやったと言うのになぁ」
「ギルド長も使ってるのか?」
一睨みするとギルド長は青を通り越して
真っ白になった顔で俯いていた。
こりゃ完全に黒だな。
「で、どうするの?
お金は返して貰えなそうだし
俺を生きて帰すつもりもなさそうだね」
「アハハハ
話が早くて助かるな
物分りが良い奴は好きだぞ
亜人は糞だがね
来いっ!アバロスっ!」
そう領主が叫ぶと扉が盛大な音と共に内側に吹き飛んだ。
そこから入ってきたのは・・・・オーガだ。
だが何かおかしい・・・・首輪を巻いており
そこから全身に入れ墨のようなモノが伸びており薄く発光している。
今生はやたらとこいつ等に縁があるな。
あ、関係ないけど受付は吹き飛んできた扉が
バウンドし巻き添えになり一緒に壁に激突してた。
死んでなければ後で助けてあげよう。
低く唸ってるオーガは何も行動しない。
涎を垂らしながら領主を見ているだけだ。
「コイツはな私が飼ってる1匹でな
私の言う事しか聞かない有能な奴だよ」
既に勝ち誇ったかのような顔で
ニヤニヤする領主をぶっ飛ばしたいが
それは駄目だろう。
それは最後の手段だ。
「飼ってる・・・・か・・・・まぁオーガは
亜人種と言うよりは魔物に近いから・・・まぁ良いか
他にも囲っているのは居るのか?」
「あぁ・・・もちろんだとも!
他にも色々と居るさ!
亜人種は良いよ・・・・・あははレア物なんて
堪らないよ」
亜人種を嫌悪しているのに
コレクターとしては愛しているのか?
どんな嗜好なんだそれは。
「ど変態め!
俺の母親もその中に加える気か?」
「母親?何を言っている?」
「お前が懸賞金を掛けているコボルド種の事だ」
「あぁ・・・・あぁ!アレか!
あのコボルド種は欲しいな!
金は幾らでも払うさ!」
領主はオーガが居るのか強気と言うか
自分は安全だと思っているのだろう
ベラベラと喋ってくれる。
「でだ・・・・俺の金を使い込んだのと
俺を拉致監禁して殺そうとしたのは見逃すから
母親の懸賞金を解除してくれない?」
「アハハハハハハハハアーッハハハハ
お前は何を言っているんだ?
亜人風情が見逃す?だと
誰にモノを言っているかわかっているのか?
お前如きアバロスに掛れば簡単なものだ
こいつを叩きのめせ!」
オーガが唸りながら突撃してくる。
ドゴンッ!
コイツを黙らすには先手必勝だなと思い。
可哀想だとは思うがオーガに先手を打った。
全身強化し更に闘気を纏った上で俺から一気に踏み込んで
腹部に重い一撃を打ち込んだんだ。
強烈な一撃は鎧と皮膚を突き破り臓物が出てきた。
オーガは血反吐を吐きながら壁に激突し
そのまま突き破り外に落ちて行った。
俺はゆっくりと振り返り微笑んだ。
「アバロスがどうしたって?」
領主がアワアワと目に見えて動揺し
ギルド長が泡泡と口から吹いて気絶した。
「おまおまおおおおおおお前ははははなんんあなんなn」
動揺しすぎて既に言葉になってない。
「母親が最上位種なのに俺が普通のコボルド種だと思ったのか?」
そう告げると何を思ったのか顔がパーッと明るくなる。
「何?お前もレア物なのか?
そう言えば通常のコボルド種とは違うな?
何だ?何なんだ?」
あぁ・・・こいつは駄目な奴だ。
自分が壊れてないと思ってて壊れてる奴だ。
狂人ってやつだろうな。
さて、どうしようかと思っていたら
壊れた壁の方から雄叫びがあがった。
振返るとオーガが壁を登ってきたらしい。
俺に向かって再び突撃してきた。
あの一撃でオーガに致命傷を与えられたとは思えないが
即座に反撃出来る程のダメージでもないハズ。
一瞬の時間を高速化された思考で引き伸ばして観察する。
腹部から臓物が垂れていたはずなのに
皮膚と筋肉がモゴモゴと再生していく。
出鱈目な回復速度だな。
それにさっきよりも体が少し大きいような気もする。
突っ込んでくるオーガの顔面に向けて速度重視で
炎の槍を打ち出すと同時に俺も踏み込む。
魔法が直撃したにも関わらず少し怯んだだけだ。
その一瞬の隙を突いて懐に再度潜り込み腹部にお見舞いする。
治りかけの部分に拳がめり込んだ所で中で炎球を放つ。
俺は闘気を纏ってダメージを軽減したが
向こうは腹部がから千切れた臓物が零れ落ちる大ダメージだ。
それもみるみる皮膚と筋肉が盛り上がって行き修復してるようで
吹き飛んで壁にめり込みながらも生きている。
「これさ絶対に何かしてるだろ?」
「アハハハ
私のコレクションはね!
凄いんだよ!
レアな奴をもっともっと凄くしたんだよ!
強い物はより強く!
美しい物はより美しく!
お前如きが勝てる訳ないじゃないか!」
「まぁ・・・・あれだろ?
オーガに着けてる首輪だろどうせ
俺にも似たの着いてるけどな」
「そそそそそそうだ!
お前は何で魔法を使えるんだ!
それは魔法を封じるんだぞ!」
「さっきから色々と言ってるけどさ
俺に答える義務はあるの?
アンタさ街では切れ者とか言われてるけど
ただの変態の馬鹿なんじゃね?」
「貴様ぁぁぁぁぁ!
亜人種如きが私に暴言を吐くなんて許されると思っているのか!」
「いやいや許すも何も誰に許可貰うんだって話だ
え?自分がそんなに偉いと思ってるの?
馬鹿にしてる亜人種に勝てもしない癖に」
馬鹿にされたと思ったのか領主は顔を真っ赤にして
唾を泡にして怒声を飛ばしている。
切れすぎて正直何を言っているかもわからん。
それでもオーガに殺せ!だの叩き潰せ!だの
俺には聞き取れないが命令はしていたのだろう。
まだ復旧しないと思って意識して無かったオーガが
唐突に俺に襲い掛って来る。
咄嗟にアリスが"深海龍の斬撃"を放つも止まらない。
俺も反応が遅れたので対処が間に合わない。
闘気を身に纏い防御姿勢を取る。
くそっ!一瞬の発動でも少しづつ心が荒れてくるのが判る。
一気に片付けたほうが良いな。
覚悟を決めて迎え撃つ。
そこにオーガが突っ込んでくる・・・・・来なかった。
ゴトン。
重い物が落ちる音がしオーガの魔道具の首輪が床に落ちる。
もちろん首ごとだ。
「ミノル君、こんな所で何をしているんだい?」
オーガの向こう側には
レイニーが爽やかな顔で立っていた。
アリスの魔法が炸裂しても倒れないとは・・・・
アバロス・・・・・強敵だぜ。




