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4-34

鍋が美味しい季節ですね。

こんにちわ森山実留です。

この世界には神様集団の謎のTOPに加護を受けた者が

自分以外に3人居ます。

1人は妹で聖女です。

1人は魔王で国王です。

1人は勇者で国王です。

俺は犬種で最低ランクの冒険者です。

扱い酷く無いっすか?






俺はギルド長に国王に会わないかと言われた。


「どういう事です?」


「領主について個人的に調べた資料がある

 それを届けて貰いたいんだ

 そこで君の問題を提訴すれば何とかなるかもしれないじゃろ」


「提訴した所で如何にかなりますか?」


「元々この国は種族による差別を認めていないんじゃ

 それでも亜人種を迫害する輩は何処にでも居る

 ここの領主もその傾向が強くてな

 迫害までは行かないが同じ存在とは視ておらんのじゃ

 懸賞金も其処から来るもんじゃろ」


「なるほど」


「だからのやってみて貰えんか?」


俺は悩む。

確かに領主がクズだとすれば上役、つまり国王に

改善要求するのは効果的だろう。

更に言えばこの国の理念とはグレーゾーンギリギリだろう。

ギルド長が調べてくれた資料もあるから

少なくとも今から悪くなる事もない。


まだ着いたばかりで領主に届く伝手が無いのも確かだしな。

それに冒険者ギルドが支援してくれるのも心強い!


俺は意を決しカーラスさんに告げる。


「それは遠慮します」


「はっ?なぜじゃ?」


まさか断られるとは思ってなかったんだろう。

カーラスさんがアングリと口を開けて呆ける。


「いやまぁ個人的な感情ですが

 まだ死にたくないかなと」


「死ぬ?何を言っておるんじゃ?

 ギルド公認の使者として送り出すから

 安全は保障されるぞ」


「う~ん、とにかく国王には今の段階では会いたくないんです」


「う・・・うむ、無理にとは言わんが・・・

 問題は何とかなる方法は考えているのか?

 何の手段も無く会いに行っても会ってすら貰えんじゃろ」


「とりあえず情報収集からですね

 最悪、何も手段が思いつかなければ

 頼っても良いでしょうか?」


「うむ、こちらも事を焦っては良くないので

 余裕はあるが・・・・本当に良いんじゃな?」


「はい、まずは自分で考えてみます

 解決した後も目的がありますから

 あまり寄り道は出来ませんので」


俺はそう告げて話を終了した。

受付でラースが遺品を預かったが少ない物だった。

指輪が2個と短剣が1本が目ぼしくて後は素材や日用品だ。

手持ちでカバー出来る日用品は荷物になるので

ギルドに返却し有効活用して貰うよう頼んだ。

指輪は大きかったので鎖に通して首から下げ

短剣は腰に据え付ける事とした。

その他の物は俺が預かり金はギルドに預けた。


母親の形見か・・・・大事にしてあげて欲しいな。

預けた金もそんなに多くは無いが困ったときの

生活資金としては十分な額だ。



両ギルドからの話が終わると結構な時間が経っていたので

遅い昼飯と取りながら今後の事を考える。

まずは情報取集だな。

領主の人となりや関係が判れば突破口が見えるはずだ。


街の内情も知りたかったので表通りから目につく店に

買い物がてらに入っては世間話をする。

内容としてはこの街にきたばっかりでどうですか?位だけどな。


それでも色々とわかった事がある。

領主の評判は良く言う側と悪く言う側がある。

良く言う側の殆どが人族であり

悪く言う側は殆どが亜人種だ。


悪い意見でも極端な動きや迫害ではなく

取引に多少の差があったり

警備兵の扱いが厳しかったりと言った

軽い嫌がらせ程度らしい。


一応は亜人種も認めているという事なんだろう

それでも表通りは人族が多く亜人種は少ないように感じる。

多少はこの街の影を感じたかな。




それから2週間は情報収集と街の調査に当てた。

早朝は市場に顔を出しそのまま午前は各出店と

店を練り歩き午後は冒険者ギルドで情報収集。

レイニーの伝手で色々な冒険者と知り合えたので都合が良かった。


狩りやクエスト受注は時間的に余り出来なかったが

レイニーや他の冒険者とギルド内の修練所で

模擬戦や訓練を行って鍛える事は忘れない。

それに少しだが他のレイニーの紹介で他の冒険者と

組んで狩りをする事が出来たので資金の足しには出来た。


ラースは色々な人に気に入られたので

魔法技術と魔法使いとしての戦闘術を教えて貰っていた。

結構なスパルタだったが挫けないで頑張っているので

ラースなりに心に決めた事があるんだろう。


俺は亜人種と言えども中身は人間だ。

話し方や受け答えも普通だし威圧的な所も無い。

それみコミュ力も高い方だとは思うし

スキルも発動すれば親しくなるのは

冒険者や一般商人や住民相手なら比較的簡単だった。


俺が手に入る情報程度でも読める流れがあった。

それは商人ギルドと一部商人の繋がりだ。

繋がりは更に領主に伸びていると思う。


領主自体も大きく店を構える豪商の家系でもあるので

大がかりにはやるのは問題があると考えたのだろう。

詳細は不明だが細かく各所から金を

集まる仕組みを作ったと推測される。


少ない額なら不満の声は大きくならないし

集まれば大きな金額になる。

よくもまぁそこまで頭が回るもんだよ。

もちろんスレスレではあるが合法なんだろう。

ここらへんは愚痴と言う形で

亜人系の商人さん達が教えてくれた。

俺自身も大筋は当たっていると思う。


現場での情報収集はあらかた出来たかな。

これ以上は普通にやったんじゃ掴めないだろう。


さて?

どうするか?


領主への直接交渉は無理だろう。

門前払いになるだろうし

向こうはそもそも表だって法は犯していない。

ギリギリではあるけどね。


俺が出来る事はなんだ?と考えて

商人ギルドの事を思いついた。

あそこが繋がっているのは確実だろう。

そこにジャブを撃つか・・・・。




数日後に俺は商人ギルドに用があると言って

レイニーにラースを預けて出かけた。

お礼は晩御飯を作る事を条件にしたら喜んで引き受けてた。


今日はラースと訓練がてら狩りに行くそうだ。

レイニーの戦闘技術は高水準の上に

教え方も抜群に上手いので助かる上に安心だ。

2人でハラペコで帰って来るから

楽しみだなと言って出掛けて行った。

食材は任しておけだそうだ。


アリスと2人で商人ギルドに向かう。

もう顔を覚えられた商人もいるので挨拶しながらだ。


『それでどうするんです?

 何か手は有るんですか?』


『いや、コレと言って具体案は無いな』


『それで大丈夫なんですか?』


『ん~、何となくだけどさ

 俺の預けてある金ってさここのギルド長が使ってたじゃん

 あれの流れって領主に繋がってると思うんだよね』


『証拠とかはあるんですか?』


『うんにゃ、ただの直感

 だから別に責めに行くわけじゃなくて

 全額引き降ろしをお願いするだけ』


『なるほど

 商人ギルド自体が保障するから問題ないとしても

 使用してる部分は借用者がギルドに返さないとですしね』


『そそ

 その方向で突いてみようかなと』


移動しながら知合いに挨拶をし商人ギルドに向かう。

アリスには中に入って貰っておいた。

受付には例の感じの悪いオッサンしか居なかったが

まぁコイツでも良いか。


「すいません

 預けていた金を引き出しに来たんですけど」


「はぁ?またアンタか

 うちのギルドカードも持ってないのに

 そんな事が出来る訳もないだろ」


俺は無言で商人ギルドのカードを取り出し

受付に提出する。

あくまでも冷静にだ。

クレバーに行こうぜ。


「何時の間に作ったんだよ・・・・

 どうせそんなに入ってないだろうにさ・・・・」


とかブツブツ言いながらカードを持って

手続きをしに奥に入って行った。


彼奴は全然態度が変わらないけど大丈夫なのか?

この前のギルド長とのやり取りを知らんのか?


しばらく待つと息を切らせて受付が走ってきた。


「ハァハァ・・・なんだ?この金額は?

 何時の間に・・・・」


「そんな事は貴方には関係が無いでしょう

 良いから引き出してよ」


「い・・・・幾らですか?」


金額を見て少しビビったのか

口調が丁寧になる。


「全額」


「い・・・・いや・・・それはしかし・・・」


「全額」


「あ・・・あの・・・額が・・・」


「ギルド長呼んで」


「え・・・は、はい?」


「聞こえなかった?

 ギルド長呼んで」


「・・・・・」


「聞こえなかった?」


「いや・・・その・・・・」


「良いから呼んで来いっ!!」


ビクっと体を震わせ急いで走って行った。

適当な椅子に座って待つと受付がギルド長と共に戻ってくる。

そしてそのまま小部屋に連れて行かれる。

今回は受付も一緒だ。


「それで今日はどういったご用件でしょうか?」


ギルド長のエランスが俺にビクビクしながら話しかけてくる。


「ふ~・・・・、あのさ前にも言ったけど

 そこの受付に要件は話しているんだけど」


「おい!用件はなんだ!」


行き成りギルド長に怒鳴られてビビる受付。


「はっはい!あの預けている金を

 全額引き降ろしたいとの事で・・・」


「なぜそのような大事な事を事前に言わないんだっ!」


怒鳴られていつ受付は言い訳のように

「だって用件を言っても聞いてくれなかったじゃないか・・・」

とブツブツ言っていたが俺もギルド長も気にとめない。


「まぁそう言う事で全額お願いします」


「あ・・・あの・・・急に言われましても・・・」


「商人ギルド自体がで保障してくれてるんだから

 貴方もこの支部も実質的な損害は無いでしょ?」


「いや・・・あの・・・ですね・・・・

 額が額なので急に言われても・・・・」


「いやいや、個人で持つには多いですけど

 ギルドや貴族と比べたら大した額じゃないでしょう

 用意出来ないと?」


「急な用件なのですぐにはご用意出来ません・・・」


「ではどれ位までに用意出来ると?」


「はい・・・あの・・・・いや・・・・」


どうもハッキリとしないな。

こいつはプンプン臭うぜ。


「前回見せて頂いた現状が分る資料の

 新しい奴を見せて貰えますか?」


「いや・・・あの・・・・」


これはどうも当たりっぽいな。

言い淀むギルド長を無視して受付に持って来いと伝える。

こちらも愚図っていたが≪大声≫を軽く発動し無理矢理行かせた。

ギルド長が馬鹿め・・・とか小声で漏らしていたので確信する。

つうか俺の聴力舐めんなよ!


息を切らせて戻って来た受付が持って来た資料には

思った通りの内容だった。

停止させたはずの運用が続いているし返金もされていない。

同じ資料を見ているんだろうギルド長が物凄い形相で受付を見てる。


あぁ、こいつ態度も悪いけど仕事も出来ないんだろうな。

普通はちょいと資料に小細工してから出すだろうに。

思わず苦笑してしまう。


「で?どういう事ですかね?」


「はい・・・あの・・・・」


「前回に運用停止をお願いしたはずなのに

 更に引き出されてますよね?

 以前の分の返金もされていませんし」


「あ・・・・あの・・・・」


既にギルド長は口パク状態で瀕死だ。

こいつ本当に偉いのか?有能なのか?

これ以上は何もわかりそうもないので切り上げる事にする。


「金額は商人ギルドで保障してくれるんですよね

 何時までに出来るかだけ確認して貰えませんか?」


「わ・・・分った」


ギルド長は受付にゴニョゴニョと話しをし出て行かせた。

少しして戻って来て小さなメモのような物を渡す。


「用意は早急に致しますがやはり数日は頂く事になります」


「わかりました

 それで良いの用意出来たら連絡してください

 言伝は冒険者ギルドにお願いします」


「はい、わかりました

 おいっ!客人のお帰りだ」


話しが終わって解放されたのか声が大きくなるギルド長。

ビクビクしながら扉を開けて帰るよう催促する受付。


扉を抜けて帰る際に追撃にもう一声掛けておこうと思い

振返りギルド長を睨みつける。


「ギルド長、金額につい "ガッ!!"」


鈍い音と共に後頭部に重い衝撃が走る。

ふらつく体に追撃で腹部にも衝撃が走る。


「ガハァ」


口から涎と吐瀉物が零れ落ちる。

意識が飛びそうになりながら体が崩れ落ちる。


視界に入るギルド長はニヤリとした笑みを浮かべていた。


「亜人風情が偉そうに・・・・・ハハ」





俺の意識はそこまでだった。



実留くんがぁ!

それにしても商人ギルド長の小物臭が半端ないな。

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