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4-23

もう12月ですね。

急に寒くなり冬らしさがグッと増しました。

母を訪ねて3転生の森山実留です。

まぁ母と言っても犬ですけどね。

数年振りに会った母は二足歩行になっていました。

兄妹も二足歩行になっていました。

僕も二足歩行になっていました。

何なんですかね?この再会は。






元々、領主への挨拶自体が手続きと言う程の事も無く

集落内の序列が変わった旨と経過を報告するだけだ。

そこらへんは教官がやってくれたので

つつがなく領主への挨拶は終了した。


教官は通常種のコボルドなんだけど

なんでこんなに物知りで色々と出来るかと思ってたら

元々はここの出身だったそうだ。

俺は凄く助けて貰ってるのでありがたい。

でも≪領主の祈り≫は持って居なかったな・・・・。

適用範囲とかがあるんだろう多分。



警備の方は持ち場に戻り、教官は宿の方に移動した。

俺は家族水入らずになるんだろうか?

改めてアリスを紹介し

母犬、オス君、メス子と一緒に過す事になった。


俺は犬時の事を所々端折りながら話をし

最後は首都まで行った所で抗争に巻き込まれて

魔族に殺された事にした。

それで気が付いたら生まれ変わっていたと。

3人は何も疑問を持たずに俺を信じてくれた。


・・・・・いや、普通は信じないよね?

俺を信じきっているのかスキルが凄いのかは不明だ。


母犬はもっぱら静かに俺ら兄妹の話を聞いているだけだ。

寡黙な所は変わらないらしい。


母犬のスキル≪転生者の聖母≫を確認してみた。


=========================

≪転生者の聖母≫


説明:神に愛されし幾代の生を旅する者に

   血を分け与え育みし者


効果:全ての能力値及び成長値に大幅なプラス補正

   他の血を分けし者の成長力もプラス補正   

=========================


なるほど・・・・。

俺を生み育ててくれた事による報酬のようなスキルだね。

そりゃ生まれ変わったら無事に成長して欲しいし

保護者である親は強ければ有利だしな。

くぅ~神様も良い事するじゃん。

またもや俺がGET出来なそうなスキルだけどね。


母犬と兄弟が同じ種になったのは

自前スキルとこのスキルの重複効果だな。

俺も成長力が伸びるスキルが欲しい。

"他の血を分けし者"とあるから俺には適用されないんだろうし。


成長力を司る神様~。

加護をください!

そんな神様が居るかは不明だけどね。

何となくだけど居るような気はしてるけど。




「兄上も凄いですな

 ダンジョンに魔族との戦いですか

 それに魔法も使えるとは・・・・」


「そうですわ

 魔法なんて私達も使えるようになったのは

 最近なのですわ」


「そうなの?」


「ええ、今も使えるのですが難しいのですわ

 兄様なんて私よりももっと酷いんですわ」


「メス子よ、そう言うな

 俺は体を使う方が得意なんだ」


「へぇ、ちょっと使ってみせてよ」


「兄上の頼みとあれば仕方ありませんな」


「そうだ!大兄様と兄様はどっちが強いのかしら?」


「おおおおおおおおお前はなナナな何を言っているんだ?

 しょしょしょしょウう勝負になんてなる訳ないじゃないか」


「そうだぞ何言ってるんだメス子よ

 兄上と自分じゃ勝負にならない

 もちろん兄上の勝さ」


「じゃぁ、大兄様の胸を借りるなら良いの?」


「おぉ!それは良いな

 兄上、一勝負お願いします」


「待て!ちょっと待て!

 絶対に無理だ!無理だって!」


「なら私も大兄様と勝負してみたい!」


「ほう、兄妹で戦うか?

 ならば私が仕切ってやろう」


薄っすらと笑いながら母犬すらも乗ってきやがった。


「だから無理だってーーーーーーっ!」


俺の叫びは無視され修練場に強制的に連行された。


「実留さん頑張って~~~」


アリスの声援が心から悲しかった。




修練場は屋敷の裏に辺り兄妹はここで体を動かしているらしい。

結構広めで周囲には何も無く地面は固く踏み固められている。


「さぁ、兄上やりましょう

 まずは自分からです」


そういってオス君は構える。

今回は武器は無しで防具は革製の簡易鎧だけだ。

一応は怪我を注意しての事で防具だけは付けたが

きっと気休めにしか過ぎないんだとは思う。


「お・・・おう・・・・

 いつでも・・・いいぞ・・・・」


「では行きます」


そう言ってオス君が一歩を踏み出すと。


うぉぉぉぉぉはえぇぇぇ。


一瞬で目の前に現れ拳を振ってくる。

スキルで予測し高速化した思考で何とか捉え。

ギリギリで避ける。


「はは、今のを避けますか

 最初の1撃で終わる事も多いんですよ」


そう言うオス君の顔は笑ってはいるが

避けられて残念だという思いも含まれていた。

ただの踏込みからの右ストレート。

それだけなのに驚異的な速度だ。


その後も連続で繰り出される攻撃を

何とか躱し逸らす。

掠るだけでも皮膚が裂ける勢いだ。

実際に幾つかの細かい裂傷は出来ている。

≪自動回復≫で問題は無いんだが

1発でも受けたら肉体が吹き飛びそうだ。



一瞬の隙をついて≪カウンター≫で腹に拳を打ち込む。

何か重くて硬い物を殴ったような感覚だ。

少し後ずさるだけで耐えられた。


「おいおい、今のでノーダメージって

 どんだけだよ」


「はは、兄上は流石ですな」


オス君の攻撃を貰わずに

何回か攻撃を当てたが

ちっともダメージを与えられない。

こりゃスキルか魔法を使わないと駄目だな。

防御系はスキルを使っても問題ないが

攻撃系はなぁ・・・最悪の場合があるし。

そう悩んでいると。


「やりますね兄上

 でわ、約束通り自分の魔法を見てもらいましょう」


そう言って魔法を放つ・・・・がっ。


「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇっ!」


繰り出してきたのは通称、ファイヤーボールとか言われる奴だ。

呼び方は何でも良いが炎を玉状にした魔法。

ただ規模が半端ない。

俺が使う場合は精度、威力、コストを考えると

通常はハンドボール程度だ。

明らかに俺よりも大きい。

余計に魔力を込めたからそうなっているんだと

言って欲しいレベルだ。


「そ・・・・それって頑張り過ぎじゃね?」


「兄上、申し訳ない

 まだ魔法はこれしか使えません

 それに抑えに抑えてこれが限界です

 未熟さが恥ずかしいです」


「お前、バケモンか?」


「はは、何言ってるんですか

 兄上ならこれ位は簡単でしょうに」


もうお前の中で俺はどんだけなんだよっ!

そう思うも攻撃は止まってくれない。

オス君は容赦なく魔法を撃ってくる。

ドコンバコンと炸裂音が響く中を必死に避ける。

爆風と爆音は風魔法で何とか耐える。

狙いが甘いのが救いだな。


本気の攻撃は出来ずに1発でも貰ったら

致命傷になりかねない。

そんな戦いをしばらく続け引き分けた。

オス君はとても満足そうだ。


「流石は兄上ですね

 自分がこうもあしらわれるとは思いませんでした

 次は武器を持って戦いたいですね」


「あぁ・・・こんどな・・・こんど・・・」


「じゃぁ、次は私ねっ!」


メス子が嬉しそうに告げてオス君と交代する。

アリスがとても残念そうな顔で俺を見つめる。

良いんだ・・・・うん、俺頑張るよ。



メス子も強烈な攻撃を繰り出してくるが

オス君とは違い精度が高い。

その分、威力も低いが今の俺よりも全然上だ。

どちらも俺にとっては驚異的な威力なので

現状で戦い辛いのはメス子だ。

魔法の狙いや使い方もオス君よりも良い。

それでも甘い部分は多々あるんだけどね。


オス君は攻撃重視のパワータイプ。

メス子は防御重視のテクニックタイプ。

犬の時と同じ方向で成長したようだ。


それにしても2足歩行になってまだ数年だろ?

なんでこんなに強いのさ?

これに経験が詰まれたら今のままじゃ引き分けにも出来ないぞ。


2人が満足したようで良かったが

俺は物凄く疲れた・・・精神的にも体力的にも。

部屋を借りて速攻寝た。


魔法とか使ってないで

犬らしく噛んだり爪で攻撃してこいよぉぉぉ・・・・グスン。


兄妹の成長が嬉しくもありちょっぴり悲しくもある。

そんな少しだけ切ない夜だった。





『実留さんより上位種なのが悲しかったんですよね?』


『ちげーよっ!』


少しだけ心が抉られた夜だった。







翌日に正式に母犬に集落毎、こちらに移住したい旨を伝えた。

もちろん全員を強制的にってわけじゃなく

希望者だけにする予定ではあるが。


「それは構わん

 此処にもまだまだ戦力は必要だからな

 住む場所は用意しておこう」


ふぅ、こんなに上手く事が運ぶとはね。

大人達は移動するだろうか?

幾人かの候補は出るが全員じゃないだろうな。

族長とかリーダーは来ない気がする。

教官は・・・・来るかな?

同期は全員来るとは思う。


そんな計算をしていると兄妹が嬉しそうに告げる。


「兄上が一緒に住んで貰えるのであれば心強いです」


「大兄様なら大歓迎」


昨日の最初とは変わってウエルカムな雰囲気は嬉しいが

こんなに簡単に許して良い物なのだろうか?


「大兄様が居れば私達も安心ですね」


「あぁ、そうだな

 俺達が出ていく頻度も減るだろうさ」


「大抵は他愛ない者達と言えど

 私達が個別に動くのは問題がありますわ」


「他にもやる事は沢山ある

 やはり兄上が来てくれるのは助かるな」


「えぇ、本当に嬉しいですわ」



ん?何か違和感を感じるぞ。


「むむ?何か話が見えないんだけど

 移住したら俺は何かやるの?」


「もちろん兄上には頼みたい仕事があります」


「今は私達で対応しているんですわ

 それがちょっと手間がかかるの」


「大丈夫です!

 兄上であれば問題ない内容でしょう」


「そうですわ

 大兄様になら安心して任せられます」


「いや、なんて言うかさ

 信頼してくれるのは有り難いんだけど

 何をやれば良いのかな?」


「あっはっはっはっ

 そんなに心配される事はないです

 な~に簡単です

 偶に訪れる襲撃者を蹴散らして欲しいのです」


「はい?

 魔物とか?」


「それもありますわ

 でも一番の問題は冒険者ですわ」


「はい?

 どういうこと?」


「兄上、この集落は冒険者に襲われる事があるんですよ

 それを兄上に対処して貰いたいのです」


「はいいいいいいいい???」



何故か冒険者と戦う事になりました。

 

素の身体能力だけで言えば兄妹の方が圧倒的に上で

それを技術だけで凌いだって感じですね。

流石に兄弟に魔法を直撃させるとか

酸や毒を使うまでは非道じゃないようです。

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