4-14
あれ?消えてる?!
ごめんなさいごめんなさい。
こんにちわ、アリスです。
今回の転生では何と魔法が使えるようになりました。
実留さんが使える魔法は全て使えるようです。
フフフ・・・・つまりは回復魔法も使えるんですよ!
妖精と言えば回復!回復と言えば妖精ですよねっ。
さぁ、回復しなさい私の魔法でぇぇぇぇぇぇ。
「ありがとうアリス、ミミズ腫れが痒くなくなったよ」
フフ・・・ミミズ腫れすら治しきれないとは・・・・グスン。
「グオォォォォ」
屈んだ頭の上を剣が通り過ぎ木に当たるも
爆砕音を立てながら細めの木はなぎ倒される。
その一瞬の隙を突き毒粘液を纏わりつかせた貫手を
喉にお見舞いするも微妙に体重移動で躱され
肩を掠る程度になってしまう。
クリムゾンとの攻防は分が悪い。
素早さと技術面ではこちらが上で
その他は圧倒的に向こうが上だ。
魔法が使えるので手持ちのカードは多いが決め手に欠ける。
完全に回避出来ないのでHITはするが直撃は
無いような状況が続く。
毒を纏わり付かせているが効果が出てるようには見えない。
ひょっとして毒が効かないのか?
浅い傷は幾つも与えているが致命的にはなっていなく
行動に支障も出ていない。
それどころか少しづつ凶暴性が増しているようにも思える。
攻撃力も攻撃速度も上昇してきている。
さっきの木なんて最初は刃が止まってたぞ?!
これがバーサーカーたる所以なのだろうか。
体力切れが無いとすると更に不利になるぞ。
魔力を温存して戦ってきたが
そうも言ってられなくなってきたようだ。
幾度目かの攻撃を避けた際に炎の槍を近距離から射撃。
胴に直撃しクリムゾンが吹き飛ぶ。
「これで倒せたとは思えないがダメージは通っただろ」
距離を取り息を落ち着かせる。
魔法の余波で負傷した右手に回復魔法を掛ける。
これで魔力は2割程消費したがどうだ?
「ガアァァァァァァァァァァッ!」
クリムゾンの大声が響き渡り
空気がビリビリと震える。
くそっ、やっぱり駄目か。
ムクリと起き上がると鎧には穴が空いていた。
周囲は焼け焦げていて貫通しているようだ。
「グガガガガッ」
クリムゾンはもう無駄だ邪魔だと言わんばかりに
力任せに鎧を引きちぎる。
ブチブチガチャガチャと音共に鎧は引きはがされ
そこに現れたのは紅色の肌。
多少のダメージがあるようだが貫通はしていない。
「おいおい・・・・なんつう防御力だよ
元々、鎧なんて必要ねーだろうが」
「グギギギギ」
口からは涎をダラダラ出し目はギラギラとしてる。
体中に漲った力で筋肉が盛り上がって見える。
目の前の敵を殺す。
それだけしか頭に無いような気迫だ。
貫通力のある魔法でも貫けないとなると
良く使う矢や刃だと属性を変えても効果は低そうだ。
もっと魔力を練れる時間があれば威力を上げれるが
今の熟練度だとそれも難しい。
これはうん、正攻法は無理だ。
自分の実力を試すつもりでやってみたが
相当落ち込んでるな。
転生前なら魔力砲で1発。
その前なら炎の槍で軽く貫通出来てたはずだ。
まぁ犬まで行くと無理だろうけど。
「俺の実力が相当下がってるのは理解できた
これでも生まれた時よりは強くなったんだぜ
まぁ、お前に言っても"仕方が無いけどなっ!!"」
最後に≪大声≫を発動し相手を一瞬だけ怯ませる。
『アリス、援護カモン』
『了解です』
アリスが魔法で砂風をクリムゾンに吹きかける。
大声で怯んだ隙に定番の目潰しだ。
このコンボは効果があった。
目を押え大声で喚き散らし剣を手当たり次第に振り回す。
それを見定めて再度を距離を取る。
俺とクリムゾンの間に粘液をまき散らす。
まずは強酸性で粘着性の高いのを撒きその上にヌルヌル粘液を被せる。
これで罠は整った。
事前に準備しておいた木で作った槍と言うか銛を
連続で≪投擲≫する。
砂の目潰しから回復したクリムゾンに連続着弾するも
ダメージが通る訳もない。
激昂し此方に飛びかかってくるも其処は粘液の罠。
案の定スっ転んだ上に粘液まみれになった。
立ち上がろうとするもヌルヌルで立てない上に
酸の粘液も絡みつきシュワシュワとダメージを与える。
「止めだ!"爆音"」
衝撃と共に粘液まみれのクリムゾンが跳ねる。
「爆音」
空気の層で音は伝わってこないが
雄叫びをあげているのが良くわかる。
「爆音」
口から涎を出しピクピクしているが
まだ意識は失っていないようでこちらを睨みつけてくる。
やはり効果的な魔法だな。
音の発生に大半の魔力を使っているが
ある程度の衝撃波も伴っているし。
もう一発撃ちたい所だが魔力が底を尽きかけている。
何とか粘液の罠から這い出てきたクリムゾンは
とても悲惨な状態だった。
目と耳からは血が垂れ口からは涎と共に舌まで出ている。
全身は酸に侵されて掠り傷程度だった場所が焼けただれてしまい
炎の槍が直撃した部分なんてグズグズになっている。
おおう、酸粘液でここまで被害が広がるとは・・・恐るべし。
「グウゥゥゥルルルゥゥゥ」
声にも迫力が無くなってきたが目からは闘志は消えてない。
逃げる事もせずに戦いに挑んでくるとはな。
これも狂戦士って奴なのかね。
まっ、そんなのも嫌いじゃないぜ。
何でもありのファンタジー世界だ。
魔王や勇者だと色々と私利私欲や考えがまざっちまう。
生きるか死ぬかの闘争本能だけってのもな。
俺は残る魔力をかき集めクリムゾンに飛びかかる。
以前ほどの鋭さはないが驚異的な速度で剣を振るってくる。
俺は軌道を予測し先程入手した槍を≪投擲≫する。
槍は剣により槍は砕け散るもほんの少しだけ
軌道をズラす事に成功した。
そんな僅かな隙間に俺は潜り込むと同時に貫手を繰り出す。
いや貫手と言っても指は2本。
それをクリムゾンの左目に向かってだ。
俺の攻撃じゃ肌は貫けないし腹部じゃ1撃で決めれない可能性がある。
指が鈍い音と共に折れるのを感じるが
気にせずに奥まで突き刺す。
「これで終わりだなっ!」
指先から最後の魔力で炎を吹き出す。
何の形も持たせないただの炎だ。
「ガアァァァァァァァアアアァァァァ」
クリムゾンは最後の抵抗とばかりに
剣を捨て突き刺さった俺の右手と左足を掴んでくる。
あまりの握力にミチミチと筋肉が千切れ骨が軋むのがわかる。
「クソッたれぇぇぇ」
ギリギリまで温存しておいた魔力を残らず吐き出す。
指先が焼かれる感覚から炎が増えた事を感じるが
それ以上に右腕と左足へのダメージが尋常じゃない。
そして・・・・ゴキン・・・・・骨が砕け散り激痛に襲われ
力が緩んでしまう。
それが分ったのかクリムゾンは膝蹴りをして俺を引き離す。
「ぐぼぉ」
胃の中の物を吐き出しながら地面に落ちると
更に蹴りをお見舞いされた。
数メートルを吹き飛ばされ大木に激突し止まる。
腕も足も関係なく全身が激痛をあげ力が入らない。
僅かに首だけを動かしクリムゾンを見る。
左目から煙を吐き出しながらも両足で立っている。
「あぁ・・・・こりゃ死んだかな
ここで転生かよ・・・・ガフガフ」
声を出すと喉の奥から血が大量に吐き出される。
「実留さんっ!」
アリスが俺とクリムゾンの間に浮かぶ。
はは、お前の魔法じゃ何も出来ないだろ。
「アリ・・・・ゴフッ」
名前を呼ぼうと思っても血が出てしまい声が出ない。
≪自動回復≫があるから何とか死にはしないだろうけど
動くには暫く時間がかかる。
「にげ・・・ゴフッ」
アリスに逃げろと言いたいが無理だ。
どうせ俺が死ねば転生で次がある。
無理して死ぬ苦しみを体験しなくても良い。
「実留さんはやらせませんよっ!
食らいなさい!私の魔法をっ!
"吹き荒れる龍の息吹"」
アリスが高らかに魔法の名前を世界に告げる。
バッと前に突き出した両腕から魔法が発動する。
ぶわーーーーーーっとまでは行かないが
ふわーーーーーーっとレベルでの風は起きた。
今のがアリスの全魔力なんだろう。
もう腕を上げるのも辛そうな状態だ。
意識もギリギリである感じだ。
それであの風量・・・悲しすぎる。
イカン!違う!
アリスの魔法でほのぼのしてる場合じゃない。
クリムゾンはどうなった?
どすーん。
クリムゾンは・・・・・風を受け。
後ろに倒れ込んだ。
あれ?
どうやら立ちながら事切れていたようです。
「あはははは、やりましたよ実留さん」
「おう!やったなアリス!」
2人で笑い声をあげて勝利を喜ぶ。
ん?
倒したのは俺か?アリスか?どっちだ?
まぁそんな事はどうでも良いか。
今は・・・・ただ・・・・眠い。
俺とアリスは一緒に意識を手放した。
実留君、ボス撃破です。




