4-9
喉と鼻の奥が痛くてヒリヒリします。
乾燥の時期になってきましたね。
全く強くなれない森山実留です。
何故か武器や防具や薬を作っています。
あと変な神に好かれます。
若干、親(世界神)の七光りっぽく感じます。
むむ?俺って転生する意味あるの?
新たに神の加護を受けた俺の生活は更に変わった。
・・・・わけでも無く。
何時ものように訓練、狩り、調合、整備、作成の繰り返しだ。
≪捕食者≫により食べれば食べる程に基礎能力は向上し
スキルもGET出来るだろう。
だがやはり強い獲物や未知の魔物の方が上昇率は高いし
同じ獲物が続くと上昇率も鈍るようだ。
ゲームのように上限値が決まってたりするんだろうか?
それにスキルも特徴のある相手からの方が得やすい傾向がある。
現状を打破するには活動範囲を広げる必要がある。
だが手が足りていないのも事実だ。
今ここで整備や調剤を放棄すれば信用も無くし
各種素材も手に入らなくなってしまうだろう。
それでも依頼での交換だと大量に手には入らない問題もあるけどな。
ボロボロ君と大怪我君も頑張っているが
大人達と同等の獲物を大量に狩る位に成長するのは
まだまだ時間が掛るだろう。
さて・・・・どうしたものか・・・・。
う~ん・・・・どうにも出来ない。
手を考えながらこのまま地道に上げていくしかないか。
予想していたより早めに変化は訪れた。
数日後に単独で鎧リザードを狩っている際に声が聞こえた。
「実留さん何か聞こえませんでしたか?」
「あぁ、聞こえたな
何か叫び声みたいのが」
「それに怒声のようなのも」
「こんな時って大抵は嫌な事しかないよな」
「じゃぁ、気にしないでおきましょう!」
「う~ん・・・・でもなぁ・・・・・
何か見捨てるっぽい気がして嫌だよなぁ・・・・」
「だと思いました」
「うっせー」
そんな軽い会話をしつつ現場に向かう。
もちろん急に現れるなんて愚を犯す訳でもなく
コッソリと隠れながら状況を伺う。
そこに居たのはAグループだ。
おうおう、ついに鎧リザードまで手を出せるようになったのか。
あの偉そうな2人が鎧リザードと向き合っている。
こちらからは正面が見え、蜥蜴は背中が見えている。
パッと見で随分と大きい個体だな。
Aグループの2人・・・・う~ん。
前の高笑いしてたのをAボス、隣で笑ってたのをAサブにしよう。
Aボスは明らかに体が大きい。
既に大人達と同じぐらいだ。
腕も太く全体的に逞しい体をしている。
武器は棍棒のような太い木だ。
あれで殴られたら相当痛いな。
Aサブも大きいがこちらは横よりも縦に長い。
手も足も長めで動きが速そうと予想される。
こちらも投石なんだろうか?
腰に下げた小さな袋から石を取り出している。
流石に狩りを初めて結構経つので
自分なりに武器を考えたようだな。
だがその武器じゃ鎧リザードの甲羅は
突破出来そうもないのだが・・・・。
それに1人は何処だ?3人組だろ。
「あれ?3人居たはずだぞ」
「ん?・・・・ん~・・・・・・っ!
実留さん居ます!もう1人居ます」
「え?どこどこ?」
「あそこです
鎧リザードに思いっきり圧し掛かられてます」
居た・・・・確かに居た。
肩に噛付かれて上に乗られていて見えなかった。
これって物凄いピンチなんじゃね?!
でもAボスとサブが攻撃を仕掛けるようだ。
・・・・・やっぱ駄目だよな。
鎧リザードは噛付き中で身動きが取れないから
攻撃してこないがそもそも通じてない。
甲羅で全て弾かれてしまってる。
投石なんて甲羅意外に当たってもダメージがあるかも不明だし。
そもそもが甲羅に引っこみもしてないので
鎧リザード自体も大した脅威を感じて無いって事だろう。
ガンガン攻撃してるけど悲しいほどに通じていない。
噛付いたまま首を振り回しているので
偶に仲間に当たってたりする。
命を掛けた死闘にハズなのに滑稽さすらあるぞ。
何だか悲しくなってきた。
しばらくボスとサブの攻撃が続くも膠着状態になった。
鎧リザードも獲物を噛んだままだと上手く動けないから
逃げる訳にはいかないようで双方共に打つ手が無いようだ。
っと他人事のように思っていたら
ボスとサブが身を翻して逃走しだした。
「あっ、逃げやがった」
「うわー、最悪ですね
お仲間さんはまだ生きてるみたいなのに」
「ひでーな
っちゅうわけでちょいと助けますかね
アリスさんや」
「そうですね
ここはサクッと倒して恩を売っときましょう」
その後は物陰から一気に距離を詰めサクッと貫手を食らわせ
内部に捻じ込みつつ水魔法で臓器を破壊した。
連発しなければ水魔法で倒せる程度には魔力は増えている。
俺も成長してるんだぞ。
残された者はボロボロで全身傷だらけだ。
左足と左肩が特に酷い。
大怪我もボロボロも使ってるしな・・・・よし。
生贄君だ!
仲間に見捨てられて犠牲されたわけだしな。
生贄君に回復薬を飲ませる&怪我に振り掛けつつ
回復魔法も併用して傷を治す。
何とか命に影響はない位に回復させた後は
生贄君を背負って住処に帰った。
夜になっても生贄君の意識は戻らなかった。
肩と足には魔力が回復する度に治療をしているので
見た目には治ってきているが相当深かったので何とも言えないな。
以前にように魔力が十分にあれば一気に治療も出来たんだけどね。
可哀想だと思うが仕方が無い。
翌朝に訓練していると左足を引きづって
ヒョコヒョコと生贄君が歩いて来た。
もう動けるのか。
流石はファンタジー。
具合を見るに案の定、元通りにはならなかったようだ。
命があるだけ幸運と思って貰おう。
ボロボロ君と大怪我君に訓練を続けるよう伝えて
生贄君と話をする。
「体の調子はどうだ?」
「ああ、痛みはない
肩と足が壊れたようだが・・・・」
「そうか・・・・肩と足は済まなかったな」
「命があるだけ有り難い・・・・助かった」
「あそこで何があったんだ?
お前を置いて2人は逃げたが・・・・
その後は何かあったか?」
「いや、まだ会っていない
会った所で何もないだろう」
生贄君から聞いた話は概ね予想の範囲を出ない内容だった。
ボスとサブがメインアタッカーで生贄君が囮役だ。
防具も何も無いので直感と器用さだけで
何とかしてきたが遂に限界に来たってとこだ。
そして仲間だと思ってた2人には見捨てられると。
うん、分かり易いぞ。
なんてテンプレ的な展開なんだ。
「そもそも何であの2人と組んでたんだ?」
「声を掛けられてからだ
それに食べ物にも困らなかったしな」
まぁそんなもんなんだろうな。
それにしても生贄君は真面目君なんだろうか
人を疑わないような感じを受ける。
どうせ食べ物もボスとサブの残りとかそんな所だろうさ。
「これからどうするんだ?」
「この体じゃ満足な狩りは難しい
族長に言って狩り以外の事を与えて貰おうと思っている」
よしっ!この物件は俺が買った!
「今後は俺の為に働かないか?」
「どういう意味だ?」
「そのまんまだ
俺が今、大人達の武具の手入れをしているのは知っているな?」
「あぁ、それは知っている
狩りも出来ないでコソコソと食事を手に入れている
臆病者だと・・・・・」
うぉい!声に出ちゃってるぞ。
こいつは裏も表も何もないやつかよ。
無意識の悪意は心が傷つくんだぞ。
「・・・・あぁ、まぁいいさ
俺のその作業を受け持って貰いたい
報酬は技術を教える事と日々の食事だ」
「自分に出来るのか?」
「やって駄目なら諦めれば良いし
やりたくないならそれでいい
別に強制するわけじゃない」
正直な気持ちで言えば生贄君にも死んでほしくないが
全てを背負ってやる義理もない。
機会があれば手を伸ばしてもあげるが掴むかは自由だ。
「わかった・・・・有りがたく受けさせて頂こう」
こうして俺は弟子を持つ事になり
基本的なルールを作った。
1:馴れるまでは俺のサポートの元で作業を行う
2:自分で判断出来ない事は俺の判断を待て
3:相手で待遇を変えるな、全て同じ扱いをしろ
4:自分の作業で手に入れた食料の1/4は俺に差し出す事
5:素材については全て俺に渡す事
食料をGET出来ない時や余りにも少ない場合は
俺が保障してやるので安心しろと伝える。
生贄君が馴れるまでは狩りの時間を
短くして帰る事にした。
大人達が帰ってくるまでに技術を仕込む。
作業に必要な道具もボロボロなのを族長と教官に言って
譲り受ける事が出来た。
その手入れももちろん自分でやる事にさせる。
最初は俺がやるのを横で見る。
大体の流れがわかったら自分でやらす。
最初は全然ダメだったが元々が器用なので
少しづつだが上達していった。
そして徐々に俺から生贄君にシフトさせていった。
もちろん大人達も俺と同じ料金では納得しないので
生贄君の場合は提供物を少な目にして了承を得た。
生後から2ヶ月が経った。
狩り組の2人と弟子の1人は結構成長した。
ボロボロ君と大怪我君は以前の俺と同等位には
狩れるようになった。
装備品も少しづつ改良していったのも効果があっただろう。
成長するにつれて2人も特色が出てきたんだ。
ボロボロ君は周囲を探るのが上手く偵察や探索等が向いている。
素早い動きで技巧派だ。
武器は相変わらずの槍だが本当なら短剣系が
向いているんじゃないかと思う。
大怪我君はパワータイプだ。
そんなに大きくはないんだが
ボロボロ君に比べて力が強い。
強力なダッシュで距離を詰めて重い1撃を放つ。
動きが単調になりがちと思いきや
相手をよく見て効果的な攻撃タイミングを計る事が出来る。
この辺は考えて動くように指示した効果が出ているんだろう。
武器は槍をやめて大型の棍棒にしている。
これもホーンラビットの角を贅沢に使った1品だ。
力が強すぎて頻繁に壊れるけどな。
生贄君は補修や素材加工等は十分なレベルに達した。
それでもコボルドではって頭に付くけどね。
今の低品質な装備品レベルでは問題ないだろう。
今後にまともな剣や鎧等が手に入ったら更なる努力が必要だけどね。
大人達の武具補修や素材加工、簡単な調合は任せる事が
出来るようになったので俺の負担も軽くなった。
いやぁ、教えて成長するってのは嬉しいね。
そして俺にも変化があった。
まず称号が変化した。
≪白帯指導者≫ → ≪茶帯指導者≫
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≪茶帯指導者≫
説明:指導者の道は果てしない!
効果:物事を教える際にプラス補正(中)
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これは順当な結果だと思う。
それにしても称号なんて忘れてたぜ。
更に職業もGETした。
≪修理屋≫と≪アイテム販売≫だ。
相変わらず戦闘系が変化無しなのは変わらずだ。
そして配下の3人のステータスが見れる様になった。
どうせ見れないと思い放置しておたが
ふと確認すると表示された。
ふむ・・・・何んで見れるんだ?
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名前:ボロボロ君
性別:メス
種族:コボルド
年齢:生後2ヶ月
≪職業≫
森山実留の親衛隊
≪スキル≫
周囲探索
生物感知
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名前:大怪我君
性別:メス
種族:コボルド
年齢:生後2ヶ月
≪職業≫
森山実留の親衛隊
≪スキル≫
重撃
身体能力強化
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名前:生贄君
性別:オス
種族:コボルド
年齢:生後2ヶ月
≪職業≫
森山実留の弟子
≪スキル≫
調合
補修
加工
精密作業
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≪加護≫等は何もないので非表示だ。
≪職業≫はなんだこれ?
凄く恥ずかしいんだけど・・・・。
どうやら俺とのルールが職業とみなされたのか?
それに狩り組のスキルも初めての物ばかりだ。
羨ましいなぁ。
今度、教えて貰おう。
俺は頭が下げれる人間だしな・・・・犬だけど。
・・・・・えぇ、言いたい事はわかりますよ。
そりゃそうですよね。
自分でもそう思いますよ。
でもね仕方が無いじゃないですか!
成長してないコボルドの事なんてわかるかぁぁぁ!
ボロボロ君と大怪我君はメスでした、はい。
名前・・・・君じゃまずいよなぁ・・・・。
犬ですが親衛隊と弟子が出来ました。
まぁ犬ですけどね。




