激 -War- 5
「それが、お嬢さんの『力』なんだ。そりゃ欲しがる訳だよね。」
クスクスと笑いながらも、やはりキースの視線は痛いほど刺さる。
「行くなら、行きなよ。後で追っかけるから。」
先ほどまで、その場を動くなと言っていたはずなのに…。
笑いながら剣を構えるキースの姿は、あたしたちをからかっているようにしか感じられない。
「聞いたか?朱雀。俺達相手に、余裕だぜ?」
「それは、先程……戒が遊びすぎたからじゃなぃのか?」
朱雀と戒がキースの前に立つ。
しかし、先ほどまでの張りつめた空気とは少し異なる。
「戒、朱雀。後は頼んだぞ。」
そう言い残した真は、あたしの肩に手を添え歩き出す。
二人に背を向けたあたしたちに、戒が冗談っぽく笑う。
「そういや、真ちゃん怒んなぃね?」
戒は、さっきあたしを抱きしめた話しをしているのだろう。
「そのコトなら、帰ってからのお楽しみだ。ゆっくり相手してやるょ。」
真はふっと笑うと、行くぞと走り出す。
あたしは背中に絡みつくキースの視線を感じながら、真と共にその場を後にした。
「案外あっさり行かせるんだな?」
戒は剣を構えなおすと、少し前に出る。
「ん~…こういう………。」
キースは少し考えたあと、
「ゲームだから……?」
と、不適な笑みを返した。
「悪魔も堕ちたものですね。神に仕えし者が、人間のゲームの駒とは…。」
「………。」
朱雀も銃を構えながら静かに話す。
その様子を黙って見つめるキース。
「あなた達にどんな考えがあって、人間の味方をしているのかはわかりませんが。
奏楽様を傷付ける者は、たとえ神であったとしても許しません。」
朱雀は、両手に握った銃に力を込める。
「ここからは本気です…。
『烈火の朱雀』お相手いたします。」
「同じく。
『風剣の戒』参る。」
戒も、握った剣に力を込める。
キースも剣を構えると、
「熱くなっちゃって、やだねぇ。」
馬鹿にしたような言葉とは反対に、その眼光は目の前の獲物を狙う。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
緊張の張り詰める中……動いたのは、キースだった。
「ハァーッ!!」
朱雀に向けて剣を振り下ろそうとした瞬間---
ガキィーンッ!!!!!
「!!……クッ……!!」
キースの剣は、横から飛んできた戒の剣によって止められた。
(何だ!?コイツ………。さっきより早い………ッ!!!)
「何考えてんの?こっからホンキって言ったっしょ?」
ニヤリッと笑いながら、戒は自身の剣に力を込める。
「はぁッ!!!」
その瞬間---
「なっ!?」
竜巻がキースを包み、キースは物凄い勢いで、後方へ吹き飛ばされる。
「ぐわぁーッ!!!」
飛んでいくキースを、戒がすぐに追いかける。
「な……に………!!!」
飛んでいるキースの速さより、戒がキースに追いつく方が早い。
「僕は、《風》だからね。」
言うなり、キースに向けて剣を振るう。
「さっきのお返しだよ。ハァッ!!」
キンッ!!!
「クソッ!!!」
キースは、ギリギリでかわし地面に着地しようとした所で…
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
「は……ッ!!!」
今度は朱雀がキースに向けて銃を撃つ。
放たれた弾丸は先ほどまでとは大きさも異なり、炎を纏いキースを狙う。
弾はキースの右足と左腕。
そして、左頬をかすめた。
「グァーッ!!!」
避けきれなかった銃弾は、キースの予想に反し激痛を招く。
「どうです?貫かれた痛みと同時に、焼かれる感覚は……。
どちらの痛みが強いでしょうね?」
抉れた右足に力が入らず、体制を崩すキース。
「烈火………!!!」
ギロリと朱雀を睨みつける。
「えぇ。私は、《火》ですから。」
「さっきまでの元気はどうしたよ?」
キースに向かい、戒が叫ぶ。
「はぁ…はぁはぁはぁ…はぁ……」
息を荒げるキースが、剣を地面に刺し立ち上がる。
「………るなょ。」
大地が揺れ、キースの周囲に気の流れが集まる。
息を荒げながら戒と朱雀を睨み付け、キースの周囲を大量の気が包む。
「「!!!」」
すると、見る見るうちにキースの傷が癒えていく。
同時に、金色だった髪は黒く染まり
黄金色の瞳が右目だけ、赤く染まる。
耳の先も尖り、口元には牙が見える。
「どぅなってんだ!! 朱雀!!!」
「まさか………!!《抑制解除》……!!?」
「抑制解除?」
戒が朱雀へ聞き返した、その時!
『ナメるなぁぁあぁぁぁーッ!!!!!』
「うわっ!!!」
「くうっ!!!」
キースの圧気が、朱雀と戒を襲う。
「戒!!!気迫に充てられるな!!!」
「グッ…!! わかってるょ!!!」
辺り一帯は、キースの放つ圧気に包まれた。
揺れが治まり、キースを包んでいた砂埃が消えていく。
『へぇ。まだ立ってられたんだ。』
靄がかかったようなキースの声。
肌の色も黒みを帯び、笑う口元は大きく裂けている。
地面に刺した剣を抜き取る手には長く鋭い爪が光り、手にした剣も先程の物より長く伸びている。
ベロッと長い舌で口元を舐めると、戒と朱雀へ視線を送る。
その姿は、もはや………
《悪魔》
『失礼を詫びよう。僕は君達を甘くみていた。』
キースは、抜いた剣を一降りした。
ドガガガガガガガガ---ン!!!
「何てことしやがるッ!!!」
「………。」
キースから放たれた剣圧は、遥か先まで民家や地面ごとなぎ倒した。
『お詫びと言っては何だが…。風剣はあまり知らないようだから、僕達の事を少し話してあげるよ。』
「何だと……」
戒は目の前にいるキースの変貌に戸惑っている。
朱雀は先程から黙ったままただキースを見つめていた。




