激 -War- 3
「フフッ…フフフ……。あぁーっはっはっは…。」
悪魔と名乗った男…キースは、高だかと声を上げて笑う。
悪魔の存在こそ名を知っているだけで、あたしは悪魔が何かなんて考えてもみなかった…。
「…悪魔…だと!?」
あたしに触れる真の腕に、更に力が入った。
「真…?」
「…朱雀。ヤツら、悪魔と契約したのか?」
戒がキースから目を離さないまま、朱雀に尋ねる。
「契約までは……ただ、この辺りにはあいつ以外に同じような気配は感じない。」
「どっちにしても、そらちゃんを先に帰そう。
場所も変えないと………このままじゃ目立ちすぎるし、被害も大きい。」
どういうこと?
みんなは…悪魔を知っているの!?
「その女をここから遠ざける判断は正解だと思うよ。
でも………郷に帰れば安全だとでも思ってるの?」
言いながら、キースは背負っていた剣を抜き正面へ構えた。
「今頃、向こうもお祭りだよ。」
「「「!!!」」」
キースの言葉が頭の中で何度も繰り返される。
父様と母様の所へも、コイツ達が来ている!
キースは再びニヤリと笑い、あたしを見つめる。
その瞳。
あたしを見たキースの瞳にゾクリとしたものが背筋に走る。
やっぱ、コイツはダメだ!
あれが、悪魔…。
「来るぞ!」
「真!そらちゃん連れて行け!!」
朱雀と戒が叫んだ瞬間---!!!
キーンッ!!!!
辺りに、響く剣の交わる音。
「へぇ~。やるね。それともマグレ?」
「クッ!!てめぇ……クッ!!…祭ってのは…どういう意味だよ……ツ!!」
あたしの目の前には、キースの剣を受け止める真の姿が写る…。
何がどうなってるのか、わからない……。
さっきまで、キースとの距離は30メートルは離れていたはず……。
それが…今……目の前で、真と競り合ってる…。
見えなかった………!!!
「真!!」
「真様!!」
戒と朱雀の間をすり抜け、キースは真の懐へと飛び込んできていた。
「お嬢さん抱えてじゃツライでしょ?こっちへ渡しな・よッ!!」
キンッ!!
キースが更に力を入れると、真の剣は弾かれた。
「クウッ!!!」
弾かれた剣ごと、真も吹き飛ぶ。
「真!!!」
「おっと、お嬢さんはこっちだよぉ~。」
あたしは、真の傍へ駆け出した…はずだった…。
ふわっ………。
「なっ!!!」
あたしはキースの脇に抱えられていた。
「ちょ………ヤダ!!!降ろしてッ!!!」
「何度も言わせないでよぉ。僕の目的は、君を連れて帰ることなんだ。『生きたまま』……ね。」
笑いながら話すキースの言葉は、その表情とは裏腹に別のモノが込められている……そんな気がした………。
「ナメんなょ!はあぁぁぁッ!!!」
気付くと、キースの後ろから戒が切り掛かる。
「おっと……。」
キースはあたしを抱いたまま、ひょいと後ろへ軽く交わしかすりもしない。
「はぁ……。僕が用のあるのは、お嬢さんだけなのに…。
そんなに邪魔されちゃあ、困るんだよねぇ…。」
そのまま、また少し戒達と距離を取るとあたしを降ろす。
「一応、お嬢さんは殺さない約束だからね。
抱えたままだと、間違って盾にしちゃいそらだし。」
笑ってるけど、きっと本気だ…。
「そのかわり、終わるまでココから一歩も動かないでね。少しでも動いたら……。」
キースの顔が近付き、あたしの耳元で囁く……
"アイツら全員。殺すよ。"
動けない………。
何かされた訳じゃないのに…指一つ……動かない……。
やっぱりコイツ…マズイッ!!何か違う!!ぶっ飛んでるッ!!!
キースは、3人の方へ向き直る。
「仕方ないなぁ。相手したげるから……」
ニヤリッと笑う。
「死にたいヤツから来いょ。」
---戦闘開始---