激 -War- 1
そして……
それは始まった……
「ごめんね、朱雀。でも、もうすぐ真の誕生日だし…。
買い物終わったら、すぐ帰るから。」
あたしはその日、誰にも内緒で家を出た。
「やっぱ、コレだね。」
プレゼントは決まってた。
丸い一粒デザインのシンプルなピアスを片耳分だけ。
ゴールドとシルバーで一対になるようして、
ペアリングならぬペアピアス。
「プレゼントになさいますか?」
「はぃッ!!」
店員さんが綺麗にラッピングしてくれる。
「あっ!シルバーのはいいですッ!!……あたしのですから…///」
何で照れてんだろ…あたし…。
「真、ビックリするだろうなぁ。」
浮かれてた…。
あの時の私は…
単純で…
軽率で…
愚かで…
腹の立つ程…
無邪気だった……。
「神宮 奏楽さんですね?」
「え?」
家に帰る途中で、呼び止められた。
振り返ると背広姿の男が四人。
一瞬で周りを囲まれ、あたしは咄嗟に身構えた。
「抵抗はムダだ。殺さない程度なら、痛め付けることも許されている。」
言いながら、一人の男が銃を向ける。
一族の動きに、何かあるのは察していた。
だが、その矛先が自分に向くなど思いもせず…他人事のように忠告など聞き流していた。
これは…私の失態。
「うちの者ではないようですね…どちら様でしょう?
私を神宮の人間と知っての行動とは思えませんが?」
相手の出方がわからない以上、迂闊に手を出すとこっちが不利だ……。
(どうしよ……ここは大人しく捕まるか…。
でも、あたしの力を人間に使うには制御が難しい…。)
あたしが次の行動を考えていた その時。
ビューッ!!!
突風が吹き、砂埃で視界を遮られた。
(何!?)
ドンッ!
ドンツ!
ドンツ!
次の瞬間、銃声が鳴り響く。
「うわぁッ!燃えてる!!」
「こっちもだッ!クソッ…どこだッ!!」
背広姿の男達が燃えていく。
あたしは、その様子を見つめていた。
目が離せなかった…。
人間の焼ける臭い……
苦しむ悲鳴……
苦痛と恐怖、憎しみに歪む表情……
焦点の定まらない目で、目の前の光景をただ見つめていた。
「奏楽様!!!」
(!)
名前を呼ばれ我に返る。
声のした方へ振り向くと、そこには真・戒・朱雀の姿。
真が駆け寄って来る。
「奏楽ッ!!よかった……。よかった…無事で……!!!」
気が付くと、あたしは真の腕の中にいた。
(暖かい…。)
こんな時に、何を感じているのか自分でも不思議だった。
でもその時のあたしは、包まれた腕のぬくもりと感じる優しさに安堵していた。
少しずつ意識が戻ってくる。
「……ゴメン……。」
呟いたあたしを見て、3人は顔を見合わせて笑った。
その時、その温もりをかき消すかのような殺気があたりを包む。
「!!」
「真!!とりあえず、そらちゃん連れてけ!!
あっちも隠れてたのが 居たみたい。」
戒と朱雀は、あたし達を庇うように前に立つ。
砂埃が収まり、地面には黒く焼けた人間の形が2つ。
そして…少し離れた所に残った二人を両脇に抱えた男が立っている。
「「「「!!!」」」」
あたし達は、全員が驚いた…。
「黒い…影……!!」
あたしの呟きに応じたのは、戒だった。
「どーなってんのよ……。」
「私は……存じ上げない方ですが……。」
朱雀が真に視線を向ける。
「……俺も……。」
「ねぇ……あれ……死……神……?」
あたしの疑問に答える声はなく、
全員が、黙ったまま目の前にいる男を見つめていた。