クロの秘密
夜の闇が部屋を満たし、ソラの静かな寝息だけが響いていた。
布団の隅で丸くなった黒い身体は、もはや“悪魔”の威容など欠片もない。
しかし、その金色の瞳の奥には、????年を超えて積み重ねた憎悪の影が潜んでいた。
クロはそっと瞳を閉じた。
低く、静かに脈打つ記憶の奥。
そこは、わたし――“本来のわたし”が存在していた世界。
◆
――いつからだろう。
わたしが“異端”と呼ばれ始めたのは。
天使にも悪魔にも分類できぬ力。
祝福という形でしか表現できない、世界の法則そのものに触れる力。
わたしはただ世界を知りたかっただけ。
ただ、世界の可能性を見たかっただけ。
それなのに。
『おまえは危険すぎたのだ、???。』
あの9人は、同時に攻撃を放った。
9つの神性が空間を裂き、わたしの存在を削り取り、名前を奪い、魂を縛りつけた。
光と闇が混じり合い、世界の根が唸りを上げ、
わたしは砕け散る意識の中で、ただ一つだけ理解した。
“これは処刑ではない。恐怖による封印だ。”
――あの9人。
世界を守ると称し、わたしの力を恐れた臆病者たち。
わたしを封じれば、すべては終わると思ったのだろう。
だが違う。
わたしは消えない。
たとえ名前を奪い、力を削られ、姿を変えさせられてこのような猫の殻に押し込められようと――
復讐は、必ず果たす。
◆
クロは目を開けた。
細い尻尾が、ゆっくりと左右に揺れた。
「……ソラ」
寝息を立てる少年の顔を見つめる。
わたしには、契約者が必要だった。
誰でもよかった。
ソラである必然性など、本来はどこにもない。
だが――
なぜ、この人間を選んだのだろう。
あの雨の日、泥まみれのわたしを抱え上げた時。
この弱くて、折れそうで、誰にも認められない人間の中に、
ひどく懐かしい、壊れない光が見えた。
……皮肉なものだ。
復讐のためだけに選んだはずの契約者に、
わたしの心がわずかに揺れている。
「わたしは話せない。
封印がそうさせているからだ。
だが……おまえが強くなれば、封印は少しずつ解ける」
囁いても届かない。
ソラは何も知らず、静かに眠っている。
その無防備な呼吸を確認し、クロはそっと目を閉じた。
(必ず取り戻す……わたしの力も、誇りも……そして復讐も)
それは決意というより、祈りに近かった。
だが黒猫の祈りは、天にも悪魔にも届くことはない。
わたしの復讐は、わたし自身の手で成し遂げる。
――???の名にかけて。
静かな夜に、クロの金色の瞳だけが、獰猛に光った
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