表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の残響  作者: マンガン&ChatGPT
第2部:記憶の書架と設計者たち
7/36

第七章:始原の図書館

 《始原の図書館》――それは、世界の“設計図”そのものが眠るとされる幻の場所。

 伝説によれば、世界が形づくられる前に、その構造と秩序を記した書が存在し、

 それを記した場所が“この世界の原初の核”となった。


 ノエルによれば、図書館はただの建物ではなく、

 **「記憶と記録を喰う迷宮」**として、訪れる者の“過去そのもの”を材料に扉を開くという。


◉道程:南の果て、砂の帳


 一行はミル=カンラを後にし、さらに南――世界の果てに近い《砂の帳》へと向かう。

 そこは昼夜の境が崩れ、時間すらも揺らぐ大地。

 空に太陽と月が同時に浮かび、砂嵐が風ではなく“記憶”によって動いている。


 ノエルが言う。


 「図書館へ至る道は、“個々の記憶”の中にある。

 ここで私たちはそれぞれの“原初の記憶”に向き合わされるだろう」


 「原初の……?」リオンが尋ねる。


 「“この世界が最初に与えた名前”。

 それが思い出せた者だけが、図書館の扉を開けられる」


☁ 試練:砂の夢路


 砂嵐の中、一行は次々に“記憶の迷路”へと引き込まれていく。

 それぞれが、自分自身の原初――“存在の始まり”を試される。


◎ ユノの記憶:黒鍵の少女

 ユノが目を覚ますと、そこは無数の墓標が立ち並ぶ夜の平原。

 誰のものかもわからぬ墓には、すべて「ユノ」の名が彫られていた。


 「これは……私?」


 そこに、かつての彼女の“原型”――つまり、鍵を持たない少女の姿が現れる。


 「鍵を持たなければ、私はただの普通の人間だったのに。

 なぜ“選ばれた”のか、私にはわからない」


 幻影のユノは問いかける。

 「“選ばれた理由”を知らなくても、戦えるの?」


 ユノは静かに答える。

 「理由がないからこそ……選ばれた意味を“自分で作る”の。

 それが“継承者”の覚悟よ」


 すると、すべての墓標が崩れ、一冊の黒い書が残される。

 それは図書館への鍵のひとつ、《影の索引》。


◎ カレドの記憶:忘却の門

 カレドは、かつての“弟”と再会する。

 それはすでに失われた記憶で、彼はずっと“弟がいた”ことさえ忘れていた。


 「兄さん……どうして俺を置いていったの?」

 少年は泣いている。


 カレドは剣を置き、ただその子を抱きしめる。

 「すまない。忘れたんじゃない。

 ……忘れるしか、なかったんだ」


 少年は微笑むと、砂の中に沈み、代わりに銀色の扉が開かれる。

 そこには《記録の剣》――図書館の守護具のひとつがあった。


◎ リオンの記憶:名前の起点

 リオンの前には、幼い自分が座っていた。

 そして、灰の霧の中に、母が立っていた。


 「リオン。お前は……“まだ名前を持っていない”」

 「え……?」


 「この世界は、“名付け”によって形作られる。

 だけど、世界の真ん中にいる者には、誰も名を与えられない。

 なぜなら、お前が――この世界に“最初の名前”を与えるから」


 母の言葉が、ゆっくりと霧の奥へ消える。


 リオンは、自らに問う。

 「俺の最初の名……それは……」


 思い出す。


 あの夜。星の下で、母が言っていた。


 「お前は《ラフレイル》――“始まりの記録”だよ」


◉ 開かれる扉:始原の図書館


 三人の原初の記憶が重なったとき、空間が裂けるようにして“扉”が現れた。

 それは石でも木でもなく、“文字そのもの”でできた構造物だった。

 書架が空に向かって伸び、階段が無限に交差し、空気には“言葉”が浮かんでいる。


 ノエルが呟く。

 「ここが、世界の核。《始原の図書館》……」


 だが、図書館の前に立つその瞬間、気配が変わった。


◉現れる者:第三の継承者


 突如として風が裂けるような音が響き、ひとりの人物が現れた。

 全身を黒い外套で覆い、顔は仮面に隠されている。


 その人物は、リオンの姿を見るなり、静かにこう言った。


 「ようやく出会えたな、“始まりの鍵”」


 ノエルが驚きの声を漏らす。

 「……まさか、お前は……!」


 「そう。私は“もうひとりの継承者”。

 そして、この図書館の“破壊者”だ」


 その声には、怒りでも憎しみでもなく――

 ただ冷ややかな、静かな決意が込められていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ