第34章:再構築の光
塔が崩れた瞬間、世界は“停止”した。
空も大地も、風さえも凍ったように沈黙する。
だが次の瞬間、黒き鍵が放った光が、時間そのものに裂け目を作った。
そこから流れ込むのは、かつて存在しなかったはずの“可能性”。
「見ろ……世界が、生まれ変わっていく」ユノが息を呑む。
崩れた大地は再び形を持ち、空は深く澄み、森は芽吹き、海は波を立てた。
失われた街や人々の記憶までも、断片的に戻ってくるようだった。
だが同時に、かつての世界と決定的に異なることも分かる。
未来は、誰の意志にも“定まっていない”。
フィアは再生の中で、微かな涙を拭った。
「これが……“第三の道”」
「終わらせるのではなく、奪うのでもない。
自分たちの手で、世界をもう一度形作る……それが俺たちの選んだ道だ」リオンは静かに言う。
しかし、その“創造”の裏側で、黒き鍵に溶け込んでいた最後の力――
「灰の王」の記憶が、リオンの中で疼き始めていた。
その声はかすかに囁く。
「まだ終わりではない。お前が“選ぶ者”である限り、
始まりは永遠に繰り返される……」
リオンは額を押さえ、ふらつく。
フィアが支える。
「リオン?」
「……大丈夫だ。ただ、全部が終わるには、もう一つだけ――必要なことがある」
彼は視線を空に向けた。
最後の“扉”が、まだ開いていなかった。