第33章:第三の道
塔の中心に現れた空間は、まるで鏡の中の世界のように静かだった。
光と影、始まりと終わり、生と死――すべての概念が渦巻きながら、そこに在った。
リオンは黒き鍵を掲げる。
「終わらせるだけじゃない。繰り返すだけでもない。
俺たちは“変える”ためにここまで来た」
終端の設計者はわずかに眉を動かした。
「第三の道――予測されぬ変数。
それは“予定されざる世界”。君がそれを望むのか?」
フィアがリオンの隣に立ち、頷いた。
「確かに、未来は予測できない。不確かで、怖くて、でも……希望もある」
ユノも銃を下ろし、静かに言葉を紡ぐ。
「この世界を、誰かの思い通りにはさせない。
自分たちで選ぶ。そういう時代を、ここから始めるんだ」
リオンは鍵を空間の中心に差し込んだ。
すると、光が爆発的に広がり、設計図がほどけ、書き換わる音が空間を満たした。
設計者は黙して見届けていた。
そして最後に、ひとつだけ言葉を残した。
「ならば見届けよう。君たちが築く“運命の再設計”を」
空間が崩れ、塔の内部が消え――新たな空が広がっていく。
彼らの選んだ「第三の道」。
それは誰も見たことのない、可能性の海だった。