第31章:始まりの残響
平原を抜けた先に広がっていたのは、灰白の荒野だった。
空は灰色に沈み、風には焦げた石の匂いが混ざっている。
この場所には、かつて神々が戦い、そして沈黙した痕跡が今も残っていた。
「ここが……“原初の戦場”」フィアが目を細めて呟いた。
この地こそ、遥か昔に世界を創り、そして破壊しようとした神々が最後に剣を交わした場所。
そして――その中心に、かつてアセルムを封じた**“始まりの塔”**がそびえていた。
塔は崩れかけながらも、重々しい威容を保っていた。
近づくにつれ、周囲の空気が震え、足元の大地が低く唸る。
ユノが立ち止まり、慎重に周囲を観察する。
「これは……ただの遺跡じゃない。まだ“生きて”いる」
塔の中心から、わずかに金色の光が漏れていた。
リオンは黒き鍵を取り出し、塔の扉へと向かう。
「ここに何かがある。最後の鍵か、それとも――最後の問いか」
扉に触れた瞬間、鍵は微かに震え、かつてないほど眩く光った。
そのとき、塔の中から声がした。
「ようやく来たか。
お前たちは、本当に世界の行く末を選ぶ覚悟があるのか?」
現れたのは、フードを纏った人物。
その存在は人とも神ともつかず、ただ強烈な意志だけが空気を支配していた。
リオンは一歩前に出る。
「お前は……誰だ?」
フードの男は答えた。
「私は、“終端の設計者”。
世界の始まりと終わりを記すためにここにいる」
塔の奥、決断の場へと、物語は静かに向かっていく。




