表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の残響  作者: マンガン&ChatGPT
第2部:記憶の書架と設計者たち
11/36

第十一章:創造の遺言

 《記述階層適応》の光に導かれ、リオンたちは書架の最深部――「無綴むてつの間」へと足を踏み入れた。


 そこには、本も巻物も碑文もなかった。ただ、無音の空間に浮かぶ六つの光球。

 それがこの世界の“設計者たち”の残した意志だった。


◉問いかけ:誰のための世界か


「来たか、継承者たちよ」

 六つの光が、異なる声で語りかけてきた。男の声、女の声、老いた声、幼い声――だがそのどれもが、人格とは断絶された意志だけの存在だった。


 「お前たちは問う。“この世界は誰が創ったのか”と。

 だが正しくは、“この世界は誰のために再び創られるのか”だ」


 リオンが問い返す。「……どういう意味だ? 俺たちは、ただ壊れかけた世界を――」


「その“壊れかけた”という定義すら、設計されたものだ」


 六つの光のうち一つが淡く震えた。


「この世界には“継承者”と呼ばれる者が周期的に現れる。

 鍵を与えられ、選択を強いられ、“理想の再構築”という名のもとに世界を塗り替える」


 ユノの眉がひそめられる。「じゃあ、私たちは……利用されてるってこと?」


「否、意志を試されているだけだ。

 ただしその“意志”すら、純粋なものかどうかは――まだ、見極めの途中だ」


◉暴かれる“最初の継承”


 光は一つの幻影を投影した。

 そこには、かつてリオンたちが存在する遥か昔、“最初に鍵を与えられた者”が映っていた。


 彼はこう叫んでいた。


 「これは救済じゃない! 選ばれた者の“偏った理想”だ! こんな世界、認められるか!」


 結果、彼の選択は否定され、鍵は剥奪され、記録から抹消された。

 ゼル=ヴァリエと同様、記憶から消された“継承失敗者”だった。


 セレナの言葉が蘇る。

 「記録は残酷です。意志が弱ければ、容赦なく“世界ごと塗り潰される”」


◉リオンの選択


 リオンはゆっくりと前に進み、六つの光の中央に立った。


 「俺はもう、何が正しいかなんてわからない。

 でも、それでも選ぶことはできる。自分自身の意志で、誰かのために」


 鍵が青白く輝き、六つの光が一斉に振動する。


 「その言葉が真実ならば――お前たちに、最後の階層の門を開けよう」

 「次に待つは、最後の継承。世界の命運をかけた“再記述の間”だ」


◉終わらない選択


 扉が開いた。その先には、完全に空白な空間が広がっていた。


 何も描かれていない世界の原稿。

 そこに、リオンたちは一行ずつ、自分の意志で書いていくことになる。


 選び取った過去。守りたい今。築きたい未来。

 その全てが、この空白に刻まれる――“創造の遺言”として。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ