第一章:霧の中の村
そもそもこの作品はChatGPTになにか小説作ってと頼んでみたというシリーズです。
その村には、地図がなかった。
いかなる書にも載っておらず、旅人が辿り着くには、**“霧の許し”**を得なければならないと言われていた。霧とは、村を包む常時漂う白き帳。昼も夜も、風が吹いても、消えることはない。
リオンがその村に暮らして十六年、生まれてこの方、村の外を見たことはなかった。
見たくもなかった。
見たら、戻れない気がしたからだ。
「……また来てる」
丘の上の古井戸のそばにしゃがみこんで、リオンは霧の向こうに揺れる影を見た。
人影? いや、あれは――獣か?
だが、何日も前から、あの影は村の外れに現れては消える。誰に危害を加えるでもなく、ただそこに、**“いる”**のだ。
「リオン!」
急な呼び声に振り返ると、妹のエナが裸足で駆けてきた。白いワンピースに泥が跳ねている。
「お母さん、また倒れたの!」
リオンはすぐに立ち上がり、妹の手を引いて駆け出した。
村の人々は、誰もが静かに暮らしていた。
笑うことも泣くことも少なく、感情が霧に吸われているようだった。
リオンの母――ミュリナもまた、その例外ではなかった。
病弱で、日増しに体は細くなり、時折「灰の王が来る」とうわごとのように繰り返すのだった。
部屋に駆け込むと、母は床に倒れていた。口元には血。
「おい、母さん! しっかりして!」
しかしミュリナは目を開けると、まっすぐにリオンを見た。
いや、“彼の背後”を見ていた。
「……リオン。黒の鍵を……あの井戸に……」
「……鍵?」
ミュリナは震える手で、枕の下から黒く鈍い光を放つ鍵を取り出した。
まるで金属でも石でもない、不思議な質感。冷たくも温かくもない。
「それは……霧の外の……」
母の声はそこまでだった。
その夜、リオンはひとり丘の上に立っていた。
母の遺言に従い、井戸の中へ黒の鍵を投げ入れる――はずだった。
だが、なぜだろう。
鍵を手にすると、まるで胸の奥がざわめくように、何かが**“目を覚ます”**感覚に襲われた。
(本当にこれを井戸に入れていいのか?)
悩んでいると、また霧の向こうに“影”が現れた。
いや、今回は……歩いてくる?
リオンは身をかがめ、手にした鍵を強く握った。
そしてその瞬間、鍵が青白い光を放ち、霧の一部が裂けた。
霧の裂け目の向こうに、ひとつのシルエットが立っていた。
それは――人だった。
全身黒衣の旅人。顔は見えない。だが、はっきりと声がした。
「……ようやく、目覚めたな。“継承者”よ。」
「……な、にを……?」
「お前がその鍵を持つ限り、世界の終わりは始まる。これは、お前の物語だ――名もなき継承者、リオン。」
そう言って、旅人は背を向けた。
そして霧の裂け目へと、ゆっくりと歩き出す。
リオンの足が、自然と動いていた。
村の外へ。
霧の向こうへ。




