7.呼び出しをくらう
次の日の昼休みのこと。
食堂で日替わりランチの列に並んでいたところに、第五学年の魔法科の面々が現れた。
「ネモ、あれ第五学年の。」
キアラが彼らのほうを見て目で合図する。
キアラの視線の先を見ると、その面々の中に昨日会ったラース先輩がいたので軽く会釈をする。
あ、手で挨拶返してくれた。
「ねえ、エンデ先輩って、どれ?」
キアラがこっそりと聞いてくる。
キアラは外部進学組のため、エンデ先輩については私からの情報以外何もしらない。
「えーと、あの短い黒髪で、制服を着崩してる人。」
「へえ、イケメンじゃない。」
あ、彼と目が合ってしまった。
「なんか彼めっちゃこっち見てない?」
目が合ったエンデ先輩と私だが、互いに視線を逸らすことができず、距離があるのに謎に見つめ合う。
しかし、彼はラース先輩に引っ張られて奥のテーブルに行ってしまった。
なんだったんだ今の。
◇
そしてその日の放課後、彼は第一学年の教室に突如現れた。
「おい、ネモ!先輩がおまえのこと呼んでるぞ!」
帰り支度をしているところで、クラスメートが呼びかけてきた。
まだ教室にはほぼ全員が残っているため、いきなりの呼び出しに皆の視線が私に注目する。
おいおい誰が何の用なんだと思いつつ、荷物を持って慌てて廊下に出ると、そこには昼休みに見たばかりのエンデ先輩がいた。
「…今日この後時間あるか?」
彼は開口一番にツラを貸せと言ってきた。
謝ってくれてたのに、昨日のお礼参りでもするつもりだろうか。
「ええと、課題をしなくてはならないので…」
望んでボコられる気はないので、予定は無かったが課題を盾にやんわりお断りをする。
「手伝ってやるから、一緒に来てくれ。」
そう言って私の手首を掴んでずんずんと歩き出した。
教室からは私たちが会話を終えた途端、お祭り騒ぎのように囃子立てる声がする。
いや、全然そういうワクワクするようなものじゃないんだけどな…
どちらかというと、今から何をされるんだとゾクゾクしながら、黙って彼に付いていった。