6.客観的な意見を聞いてみる
◇
今日はいつもより早めに課題を終わらせることができた。課題が風の属性に関するレポートのみと比較的軽い内容だったこともある。
ちなみに早いと言っても、友人たちはとっくに夕食を食べ終わってる時間だったので、一人で食堂に行って黙々と食べ進める。すると、隣のテーブルに座っていた先輩方の話が耳に入ってきた。
「ねぇねぇ、第五学年の魔法科の面々見た?」
「見た見た!やっぱりあの学年の人たちってレベル高いよね。これから毎日学校に行くのが楽しみになりそうだわ。」
「「「ね~!」」」
第五学年の面々について話を咲かせている。前に友人たちから聞いてたとおり、やはりあの学年は人気なのか。
「そう言えば、なんかエンデ先輩の髪短くなってたよね。」
エンデ先輩の名前が出て、思わず身を固くした。
「見た見た!短い方が似合ってるよね、ワイルドな感じがして。」
「わかる。実習で何かあったのかな?」
「そりゃあるでしょ。一年も戦地にいたんだよ?」
「「「確かに~!」」」
いや、髪じゃないでしょ。雰囲気とか言動とか色々あるでしょ。
そう心の中でツッこむも、後は違う話題に流れてしまったので、私が感じたようなエンデ先輩が変わってしまったなんていう話は聞けなかった。
◇
「カタリナ。聞いて。私、今日のお昼にエンデ先輩に会ったの。」
「えぇ、早い~!どうだった?久々の再開は。なにか喋ったりしたの~?」
夕食後、部屋に戻るとカタリナが帰宅していたので早速お昼に演習室であったことを詳しく話す。
「わぉ。先輩の契約獣を横取り・・・」
「うん、あってるけど、そこじゃないよ。あんなに優しかった人が、とんでもなく尖った人になってたんだけど、二年でこれほど人って変わる?表情も含めて別の人みたいだよ・・・」
「二年って、人を変えるのに十分だと思うよ~。だって、ネモだって、二年前に魔法科を目指すまでは、今みたいに根性論を貫くような子じゃなかったんでしょ?」
「私の場合は根性でどうこうしたいと思えるようなことに出会えてなかったのもあるんだけど。でもそうか、二年は長いね。」
そう言いながら、クロの背を撫でる。
私とのあの思い出も忘れちゃうには充分な時間だったということか。
なんだかせつない。彼と異学年交流の実習をするのが、魔法科に入ったらやりたいことのトップ3だったが、その願望は急速に萎んでいった。
・・・ああ、あの優しい笑顔とキレイな魔法にまた会いたい。