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40.そしてそれから。


「…うん、ありがとう。」



私の告白に、ダリオ先輩が固まること数秒。

絞り出された声が、「ありがとう」というシンプルなお返事。


えっと、これはどっち?どういう意味のありがとう?

OK?ごめんなさい?どっち!?


「おまえが俺の魔法を好きって言ってくれて、うん、嬉しいよ。」

「え、ええと、はい。こちらこそ素敵な魔法を見せて頂いてありがとうございました。」


なんか違う。魔法がメインではなく、あなたのことが好きだと伝えたはずなんだが。


「俺も、おまえの“今の気分”で出す花の魔法、あれ、すんげー好き。」


「へ、あの魔法、初級魔法の詰め合わせですよ?あんなのがいいんですか?」


他に褒めるところが無かっただけなのかもしれないけど。


「あんなのって言うな。あの魔法はおまえが思ってるより想像力がいるんだよ。それをさらってやってのけるのは、他より優れてるってことだろ。自信持てよ。」


そうかな。じゃあ今度誰かに私の得意魔法を聞かれたら、あの魔法を答えることにしよう。

何にせよ、先輩が私の魔法を好きって言ってくれたことは嬉しい。


「ありがとうございます、そう言って貰えて嬉しいです。」

「うん。」

「…」

「…」


恐ろしいほどの沈黙。


いつもは癒しでしかないこの場所が、死ぬほど気まずい空間に成り果てている。


だよね、こうなるよね?

私の渾身の告白、無かったことにされてない?


うやむやにされるのだけは何がなんでも避けたい。

きっと今を逃したら、一生ただの先輩後輩のままな気がする。

なんとか話の方向性を軌道修正しなければ。


「…あの、並行世界のお話なんですが、」

「あ、うん。」

「向こうの世界の私は、先輩の綺麗な魔法を見ることなく、あなたに惹かれてました。」

「え」

「私…色々と考えたんですが、もちろん、先輩は憧れの存在のままです。魔法使いの中でぶっちぎりナンバー1で素敵だと思ってます。でも、それを抜きにしても、ダリオ・エンデさんという不器用で優しい先輩が好きなんです。」


言った。


ついに言ってやった。


心臓がいつもよりばくばくいってるのがわかる。

私の言葉への返答で、先輩が口を開くのが怖い。でも、自分の気持ちが伝わってないまま振られるより、気持ち全てを伝えた上で振られたほうが、自分としては昇華できそうな気がした。


「ええと…」

「はい」

「念のため確認していいか?」

「はい、もちろん」

「今のって、魔法科の先輩として?」

「違います。先輩としてというより、なんて言えばいいか…男性として?」


普通ここまで言わせるか?まだ伝わらないの?

もう、恥ずかしさを通り越して虚しくなってきた。察しが悪すぎるにも程がある。


ダリオ先輩の方を見ると、顔に手をやり、何か真剣に考える素振りをしている。「いや、でも、まさかの場合もありうる」とか色々小さく呟いてるのが聞こえてくる。


なんていうか、往生際が悪い。これだけは聞きたくなかったけど、予想以上に察しの悪い先輩にはなりふり構わず直球でいくことにする。


「先輩は、私のことをどう思っていますか?」

「え」


まさか私からそんなセリフが出るとは思ってなかったのだろう、先輩はまたも驚きで固まった。


「どうって…、もちろん好きだよ。」

「え」


今度は私が動揺する番だった。

そんな風に返してくるとは思ってなかった。今の好きはどういう意味の好きなんだ?


「確認ですが、今のは、一後輩として?」

「んなわけないだろ。」


そう言って先輩は私を引き寄せる。

私はあっという間に彼の腕の中に閉じ込められてしまった。


なんだ、この状態。

これじゃあまるで


「先輩が、私のことを好きみたい。」

「みたいじゃねぇよ。好きなんだよ。いま伝えたところだろうが。」


んんん?思ってもない言葉が振ってきた。


「勘違いしちゃいますが。」

「勘違いじゃないってば。」


先輩は、はあ、と言いながら私の顔の横に頭を埋める。


「なんで先に言うんだよ…おまえ、本当、予想外のことするよな…」

「いや、今のこの抱きしめられてる状態が、私にとっては一番予想外なんですが…」


一度だけ、私が泣いてしまったときに軽く抱きしめてくれたことはあった。けれどもあのときと今とでは状況が違う。気持ちを落ち着かせようとするために触れているのではなく、触れたいから抱きしめられている。


「俺はおまえが好きだ。おまえは俺が好き。だからこうして抱き締めても問題ない。」


「何その自分に言い聞かせるような三段論法。」


失恋九割と、それくらいの心積もりで告白したので、まさか先輩から好きという気持ちを返されるとは思っていなかった。


そのため、はっきりいって、この先の展開をどうすればいいか全くわからない。

わからないが、私も先輩の身体を抱き締め返す。



難しいことは考えなくていい。

今はただ、ダリオ先輩と気持ちを通じ合えたことに浸ろうと思う。


その後ゆっくりと近付いてきた先輩の顔に驚き、クロを呼び出して見事に雰囲気をぶち壊したのは言うまでもない。




(おわり)


当初は少女漫画風&厨二病感のあるものを書いてみたい!という気持ちで、書き始めました。

前編後編だったはずが、気づけばアレもコレも追加したい、と話数が増え、、、ようやく完結できました。

そのうちその後のお話を追加します。

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