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3.再会したら伝えたいこと



その後、私はその人と二人、面談時間ギリギリまで話をした。


彼はダリオ・エンデという魔法科の第三学年の生徒であった。魔法科ではどんなことをするのかと尋ねたら、彼は快く、そして優しく丁寧に教えてくれた。

例えば実技が授業の大半を占め、それから長期遠征の実習があること、異学年交流授業という異なる学年で同じ授業を受ける機会があることなど、私の質問に答えつつ、それらの詳細について話してくれた。


私は先ほど見た魔法のこともあり、彼の話を聞いて魔法科にも興味が湧いた。そして必ずこの先輩と同じ学科に進学して、異学年交流の実習を彼と受けると心に決めた。

彼も「ネモと一緒の実習を受けるのを楽しみにしているね。」と言ってくれて、私は何としてでも魔法科に進学せねばと強く決心した。


そうして私は興奮冷めやらぬまま進路面談に挑み、面談開始早々「魔法学科一本です」と、おそらく先生も予想だにしなかった希望を伝えた。


魔法学科と召喚科は本人の生まれ持った才能に左右されやすいため、高等部の進学前に適性検査と実技試験がある。


適正値が怪しい私の進路希望を先生は心配したが、私は自分を貫き、中等部の最終学年は必死に勉強し、なんとか検査と試験をボーダーラインすれすれで突破することができた。まさに執念。

合格後、「ギリギリ合格だから、留年しないようにね。」と先生方からは釘をさされたが。


ちなみに、彼、エンデ先輩は自分が知らなかっただけで割と有名人であったことを後から知った。

当時、第三学年でありながら実技のレベル、特に炎の扱いに関しては学園トップレベルと言われており、それに加えて精悍なルックスをしていることから隠れファンも多いという。


ゆえに、私と同じく"先輩に憧れて"魔法学科を志望する生徒も毎年多数いたようだが、不埒な理由で進学した生徒は漏れなく留年または転科していったとか。


このままでは私もその一人になりかねないと思い、毎日必死こいて課題に取り組んでいるのである。



長期遠征授業から帰ってくるエンデ先輩に興奮していた私に対して、カタリナが暗い口調で言った。


「第四学年…復学したら第五学年か。あの学年ってレベルが高いって言われてたけど、今回の遠征で魔法科の生徒が一人亡くなったみたいだね。今まで緘口令が引かれてたみたいだけど、凱旋と同時に発表されたよね。」


「聞いたことない名前の人だったけど、やっぱり自分たちの学校から死者が出るって悲しいね…」



この学園の魔法学科と魔法騎士科の第四学年には長期遠征の実地学習がある。期間は長いものだと約丸一年。その年によって実施内容は異なる。


内容によっては危険を伴うことも多々あるため、この実習の参加は本来任意とされていた。しかし参加者はその後の就職にかなり有利に働くため、毎年全員が参加していた。


エンデ先輩たちが第四学年になったとき、タイミング悪くローズ王国と国境を隔てた先の蛮国と言われているガラナ国とが戦争状態に陥ったため、実地学習には戦地が選ばれてしまった。これまでも学生でありながら、幾度となくローズシティナ魔法学園の第四学年の生徒は期間限定で戦争に駆り出されてきたので、今回が初めてという訳ではない。


なぜ学生を戦地に送るのかというと、この世界では魔法使いの数は圧倒的に少ないということが関係する。

戦争において、どれだけ魔法使いが部隊にいるかが勝利の鍵となることが多い。少しでも数を集めたいという軍部から、学園に度々話が持ち掛けられるのだ。


もちろん、学生たちは前線に行くわけではなく、あくまでサポートである。


今回も例によって第四学年の魔法科と魔法騎士科の生徒は王国軍と共に戦地に赴くこととなった。

しかし、当初すぐに終結すると思われていた小競り合いが、ガラナ国の粘りにより予想外に長引いた。


半年の期間で駆り出されていた学生たちは、気づけば停戦協定が結ばれるまで丸一年、戦地で過ごすこととなってしまっていた。


その停戦協定が結ばれたのがひと月前のこと。


学生たちは部隊の解散とともに、ひと月の休暇が与えられた。そして明日ついに第五学年として学園に復帰するのだ。


私が高等部の第一学年になったとき、彼らはまだ実地実習が始まったばかりだったため、高等部の校舎でエンデ先輩の姿を見たことは無い。


彼が私のことを覚えてくれてるかわからないが、再会したら、魔法科の後輩として挨拶に行くのだ。


あの時、あなたのキレイな魔法を見て魔法学科に入りました、と。





けれども



「ああん?誰だてめえ。」


「え」



久々に会ったあなたは、一体どうしてしまったのでしょうか?




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