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28.私のお友達の恋愛模様(カタリナ視点)


私の名前はカタリナ・カーター。

ローズシティナ魔法学園の魔法薬科の第一学年の生徒です。


最近、私は同室のルームメイト、ネモ・フィリアスの恋愛模様が気になって仕方ありません。



ネモは魔法学科の第一学年の生徒で、私とは入寮早々打ち解けました。彼女はとっても努力家な子で、憧れの先輩のように魔法を扱えるようになりたいという一心で、超厳しいと有名な魔法学科を受験したと聞いています。


ここだけの話、私はたとえ憧れの先輩がいたとしても、魔法学科だけは絶対に選ばなかったと思います。


そもそも私は魔力値がそこまで高くないので、受験資格すらなかったと思いますが、魔法学科はとにかく超が付くほどそのカリキュラムがスパルタ。実技に次ぐ実技で、みんな一日が終わる頃には魔力はカラカラになっています。それにも関わらず、毎日容赦なく課題が出るので、その厳しさについていけず、途中離脱者が断トツで多い学科なのです。


私を含め、第一学年の他の学科の子は、まだ勉強よりも青春の一部として学校を楽しむという考えが大半です。

そのような中で、魔法学科のネモは毎日課題を遅くまでやって、休みの日も予習、復習をしています。私生活においても魔法を真剣に学ぼうとする姿勢は尊敬しかありません。根性が無いとできないことだと思います。



そんな私たちが入学して一か月ほど経ったある日、昨年長期遠征に行って不在のままだった魔法学科の新第五学年の先輩方が復学するという知らせが入りました。


魔法学科の第五学年といえば、ネモが魔法学科を志すきっかけとなったダリオ・エンデ先輩が在籍する学年です。エンデ先輩と言えば、魔法学科のちょっとした有名人です。第一学年の他学科の私ですらその名前を知っていました。


彼の復学の知らせに、さぞ喜んでいるに違いないと彼女の様子を伺ってみると、こちらの予想通り彼女は目をキラキラさせて、二年ぶりに会えるかもしれないことを楽しみにしていました。



けれども、その日の午後、ネモは何故かモフモフの真っ黒な子犬を連れて、どこか沈んだ様子で寮に帰って来ました。その表情は暗いです。どんなに疲れていても明るい彼女に、学校で何かあったのか心配になりました。


理由を聞くと、学校でエンデ先輩に会えたのはいいけど、全く自分のことを覚えてなかったらしいのです。しかも契約更新の儀を邪魔してしまい、誤って彼の契約獣と彼女が契約をしてしまったとか。さらに、当時優しかった彼が別人のように変わってしまっていたとか。


真っ黒な子犬の姿をした契約獣は、ネモに非常に懐いているようで、彼女を慰めるかのように彼女が私と話をしている間、じっと傍に寄り添っていました。


確かにあんなに会いたいと願っていた先輩に覚えられていなかったのはショックだと思います。しかし、たかが二年、されど二年です。エンデ先輩は遠征で戦場も経験し、しかも同じクラスの生徒が遠征中に命を落としています。人を変えるには十分な時間があったことを伝え、彼女を慰めました。彼女の中で、憧れの先輩は理想化され過ぎていたのかもしれません。



しかし、その翌日。

エンデ先輩自ら、わざわざネモのいる第一学年の教室まで彼女を呼び出しにきたというではありませんか!

浮いた噂が全く無かったと言われているエンデ先輩のその行動は、第一学年の魔法学科の生徒から、他学科へ、他学科から他学年へ、瞬く間に情報が広がりました。


ネモが寮に帰宅するや、みんなで尋問開始です。彼女はエンデ先輩の呼び出しは契約獣についての注意だったと言っていましたが、課題も手伝ってもらったようでした。


これは彼女が思ってる以上に脈があるのでは?と、私は直感しました。

元々面倒見はいい人ということは他の先輩からも聞いていたのですが、それにしても契約獣を横取りしてきた彼女に契約獣の助言をし、しかも課題まで見てあげるなんて、過保護にも程があります。


その後も、契約獣のクロちゃんを愛でるという理由に(かこつ)けて、エンデ先輩はネモを呼び出します。

手を繋いで昼寝してたという噂を聞いたときは、もういいじゃん、付き合っちゃえばいいじゃん、という感じでした。けれども彼女曰くそんな関係ではないらしいのです。


終いには二人仲良く手を繋いで先輩に女子寮の前まで送って貰い、互いに名前呼びに変わっていたのですが、それでも仲の良い先輩と後輩であると頑なに言い張っていました。彼女たちは変に感情を拗らせているようにも思います。


しかし、そんな二人に少し転機が訪れます。

魔法騎士科の第一学年の生徒であるジョシュア・ヒルデンが、ネモに告白したのです。

しかも面白いことに、ヒルデン君と週末にお出かけした現場に、女性連れのエンデ先輩とばったり遭遇したとか。


これにはさすがのネモも、モヤモヤする、と相手の女性に嫉妬をちらつかせていました。しかし、想像するにエンデ先輩もヒルデン君に確実に嫉妬しているはずです。そのため、エンデ先輩から明日すぐにでも呼び出しがあるだろうとネモに告げます。が、それはないと言い張るので、もし私の予想通り、エンデ先輩から明日呼び出しがあったら、週末のお出かけの際、ごはんをおごってもらうという賭けをしました。


賭けはもちろん私の勝ち。週末のタダ飯はとても美味しかったです。


そして今週末、学校紹介のお手伝いのお礼として、なんとネモはエンデ先輩と二人で舞台を観に行くそうです。今人気の演目でチケットも取り辛いとの噂でしたが、先輩はその辺り抜かりなく準備をしていたようでした。


ネモとエンデ先輩の初デートです。ヒルデン君には悪いけど、お友達とのランチはデートと呼べません。こちらは一日コースの恋人デートです。


この日、ネモが先輩から告白されなければ、私はエンデ先輩のことをヘタレ先輩と呼ぶことに決めています。



こんな感じで、私は本人たち以上に、今週末の二人の行方が気になっているのでした。




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