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18.絡まれました



「第一学年のネモ・フィリアスさんだよね?」


私の目の前には見覚えのない女子が三人。ローブの線が三本なのでおそらく第三学年と思われる。

寮までの帰り道、一人ぼやぼや歩いていたところ捕まってしまった。


「はい、そうですが。」


この子が、などとコソコソ喋る声がする。なんだろ、感じよくないなぁ。見たことがない人たちだから、寮生ではなく通いの生徒かな。


「今から帰るところ?少しだけ時間ある?」


あるにはあるが、手短にお願いしたい。こちとら放課後は課題、課題で時間が惜しいのだ。オヤツだって食べたい。


「少しだけなら…あの、あなたたちは?」


名を名乗らんかい、と暗に示す。


「私たちは魔術学科の第三学年よ。よかった、じゃあ手短に言うね。」


私に声をかけた代表格っぽい人が続きを話すのかと思いきや、後ろにいた大人しそうな人が前に出てきて口を開いた。


「フィリアスさんってエンデ先輩と付き合ってるの?」

「またか。」

「え?」

「いえ、なんでもありません。」


この質問するの、今日であなたで三人目です。


「付き合っていません。」

「そうなの?」


彼女は私の返事を疑いつつも、どこか嬉しそうな顔を滲ませている。


「はい。ただの先輩と後輩です。」

「本当に?人には言えないけど、内密で付き合ってるとかじゃなくて?」


もう一人の先輩が念押しで確認してきた。内密で付き合ってたら、ここで聞かれても答えないと思うのだが。


「そんなことはないです。」

「でも、昨日校舎はずれの森の中で、二人が抱き締め合ってたとか聞いたのだけど。」

「誰ですかその情報流したの…そんなことしてません。」


昨日は手は繋いだが、抱き締めても抱き締められてもいない、残念ながらそこにラブはない。仲良くお昼寝してただけである。そして誰が目撃していたというのか…

道外れの場所だったので、人目にはつかないと思っていたが。


「ええと、あの人は私の契約獣に会いに来てるだけで、私と付き合ってるわけじゃないです。」

「え、あなた契約獣持ってるの?」

「はい。」

「どんな幻獣?」

「子犬みたいなカワイイモフモフです。」

「やだー何それ!触りたーい!フィリアスさん、良かったら見せてくれない?!」

「私も!」

「フィリアスさんお願いします!」


エンデ先輩そっちのけで、御三方はすっかり契約獣に興味が移ってしまったようだ。

モフモフは偉大だ。


「クロ、おいで。」


本日初めて姿を現すクロ。

真っ黒な尻尾をブンブン振って、三人組の女子たちの匂いを嗅いでいる。

その様子はただの犬。

実は子狼であるとは誰も気付かないだろう。


「きゃーモフモフ!やだくすぐったい!」

「私のほうにも来てー!ああカワイイ!」

「私にも撫でさせて!」


女子三人がキャッキャと子犬を愛でている。

私はその様子にデジャヴを感じている。


このやりとり、今日であなたたちで三回目です。


エンデ先輩との仲を聞かれ、最終的にクロを愛でて帰っていくという流れ。

クロがいてくれて本当に良かった。でもクロがいなければエンデ先輩との仲を疑われることも無かったか。むむむ。


「時間取らせちゃってごめんね。癒されたわ。」

「クロちゃん可愛かったわ、ありがとう。」

「また良かったら触らせてねー!」


三人ともクロへの感想を述べて、寮とは別の道へと去っていく。エンデ先輩と私の仲を疑っていた件は全てクロの記憶に塗り替えられたようだった。


彼女たちを見送った後、足元のクロにお礼を告げる。


「クロ、今日一日ありがとうね。」


<問題ない。撫でられるのは好きだ。>


クロが真面目なトーンで言うその様子が面白可愛くて、そのまま頭をいっぱい撫でてあげた。




寮に着くなり、先に帰っていたカタリナに今日のことを愚痴る。


「朝から三組の女子に絡まれたんだけど。」

「ネモってば一躍有名人だね~。」

カタリナは面白そうな様子でこちらを見てくる。


「というか、エンデ先輩がこんなに女子に人気なの知らなかった。隠れファンはいるって聞いたことあったけどさ。それに、誰が噂流したんだろ。なんか抱き合ってたとか話が変わってたんだけど。」

「噂話は尾ひれはひれ付くからね~明日になったら、二人はチューしてたとか、もっと話が大きくなってたりして~。」

「ひっ、恐ろしい!」

「怖いんだ。」

「きっと先輩のほうが私との仲をいじられたと思うよ。どうかその怒りの矛先が私に向きませんように…」




だが、そんな心配をよそに、その後一週間、エンデ先輩からの呼び出しは無く、学校内で彼の姿を見かけることも無かった。






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