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16.彼が豹変したわけ


今日も今日とて森の中。


クロとじゃれるエンデ先輩と、本日の課題に取り組む私。


「炎と風の合成魔法なんて危険だと思いませんか。」

「魔法なんてどれも危険だろ。つべこべ言わずに展開してみろよ。」


お題に文句をつける私に正論を言う先輩。ぐぬぬ。


渋々炎属性と風属性の合成魔法を練り上げる。が、風属性の比率が高くなってしまったのか、炎が暴れだす。


「ぎゃーあつい!解除!」


慌てて魔法を解除する。


「合成魔法の解除は上手くなったのな。」

「シャノン先輩にしごかれましたからね…」


異学年交流の授業の時間内に合成魔法の解除が習得出来ず、結局放課後までシャノン先輩に付き合って貰ってなんとかできるようになったのだ。


「今のは途中までは良かった。けど、炎の威力が弱まった結果暴れた感じだな。」

「風属性の威力が強まってしまった訳ではなく?」

「それだともっと暴風になってたはずだ。前にも言ったと思うが、炎を扱うときは恐れるな。ガツンと行け、ガツンと。」


炎の申し子が言ってるのだからその通りなのだろう。けれども、気合いではどうにもならないときもあるのだ。




「すいません、高等部の方でしょうか?」


急に声をかけられ、二人して背後を振り返る。


すると、そこには背の低い可愛いらしい制服姿の少女が立っていた。どうやら中等部の生徒のようである。


「うん、そうだよ。()たちは高等部の魔法科の生徒だ。」


エンデ先輩が、人の良さげな笑顔で、やや屈みながら返事をした。


びっくりして隣を仰ぎ見る。

ん?幻聴?


「魔法科!いまの魔法、どういった属性を使っていのでしょうか?」

「炎と風の合成魔法だよ。興味あるの?」

「はい!とても!これって今の私でも出来ると思いますか?中等部で習う初等魔法なら使うことができます。」

「合成に使うものは高等部でしか学ぶことが出来ないから、今はちょっと厳しいかな。」


なんだなんだ。何が起こっているんだ。

めちゃくちゃ優しい先輩ヅラしたエンデ先輩がいる。


この感じは私が二年前に出会った彼そのまんまではないか。


「そうですか…あの、あなたも魔法科の方なんですよね。魔法科は女性には厳しいと聞くのですが、先輩はどう思いますか?」


「え、あ、私?」

衝撃が強過ぎてぼうっとしてしまっていたので、急に話を振られて我に返る。


「厳しいとは思うけど、その分、自分で使うことが出来る魔法が日に日に増えて楽しいよ。私は魔法科に入って良かったと心から思ってるよ。」


入りたての頃は、授業も難しいし、課題に躓きまくって心が折れそうだったけど、魔法科に入る前より出来ることが格段に増え、ワクワクすることもそれ以上に増えた。

それは間違いない。


「そうなんですね、私、魔法科か幻術科のどちらに進学するか迷ってて。実際どんな人がどんな授業を受けてるのか知りたくて、高等部まで来てしまいました。」


ああ、昔の私みたいだな〜

いや、あの時の私はこの子みたいに明確な目的なく校舎を崇めに行くだけであったが。



「高等部の正門エントランスの受付にいってごらん。学舎内の見学に来たといったら、快く中に入れてくれるよ。」


優しいお兄さんモードの先輩が、女の子に見学の案内をする。

「ありがとうございます!今から早速行ってみます!」


そうして、彼女は高等部校舎に向かって去って行った。





「エンデ先輩…今の何なんですか。」

「んあ?何ってなんだよ。」

先輩があくびをしながら返事する。


「優しいお兄さんモード」

「ああ、あれか。」


そう言って、首に手をやって真面目な顔で答え出した。


「俺は年下には優しくする主義だ。」

「私も年下なんですが…」

「高等部はもう大人だろうが。」


どうやら彼の優しい対応は中等部以下の年齢限定のものだったらしい。


あれ、ということは、私が昔あったエンデ先輩はお兄さんモードだっただけで、今の彼が素ということか。


「詐欺だ…」

「なんか言ったか?」

「なんでもないですごめんなさい。」



優しいお兄さんモードでなくても、態度が荒々しいだけで、先輩はいつだって優しい。それはわかってる。

わかってるんだけど、


「詐欺だ…」

「おい、文句あるなら直接言えよ。」

「なんでもないですごめんなさい」



この日、私はこのなんとも言えない虚無感を魔法にぶつけ、炎と風の合成魔法の課題を成功させた。






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