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11.契約届を出す



今日は花の曜日。

第一学年は一限が無いという、私にとって週で一番のハッピーデーである。


この時間を利用して、私は学園の学生課にクロの契約届を出しに来ていた。

ちなみに今クロにはお還り頂いている。昨晩から朝まで出しっぱなしで一緒に寝てしまったので、魔力を温存するためである。


「すいません、契約届を出しに来たのですが。」

「契約届ですね。どうぞそちらにお掛けください。」


受付に行くと、私の母親世代の事務員の女性が出てきた。彼女は私の書類を受け取り内容を確認する。


ちなみに契約届の記入内容はというと、契約主、幻獣名、契約開始日、契約期間などである。


「契約主は魔法科の第一学年のネモ・フィリアスさんですね…あれ、幻獣名の記載が漏れていますが。」

「はい、調べてもわからなくて、空欄にしてしまいました。」


昨日調べようと思ってすっかり忘れていたので、咄嗟に嘘をついてしまった。

でも、犬の幻獣種って一体なんだろう?


「ではこちらで確認しますので、申し訳ないですが、契約獣を見せて貰っても宜しいでしょうか?」

「はい、わかりました。」


クロおいで、と心の中で念じる。

すると、足元にモフモフの感触が現れた。


「これは…フェンリルですね。」

「は?フェンリル?」


犬じゃない、だと?


フェンリルと言えば狼の幻獣種である。

クロってば言ってよ。こちとらずっと、あなたのことを犬だと勘違いしてたよ。


「アンドリューくんのものを引き継がれたんですね…」


どうやら彼女はクロがアンドリュー・ブラックさんの契約獣だったことを知っていたようだった。


「はい、ちょっとした成り行きで私が契約者となりました。」

「成り行きということは契約獣について、初心者でしょうか?そういった方向けに、契約獣についてのレクチャーをすることができますが。」

「ぜひお願いします。」


契約獣についての知識なんて、中等部の基礎学習でさらっとやった位でほぼ無知に等しい。


「はい、ではまず契約獣は幻獣界に住んでいる生き物です。召喚士は幻獣を召喚術で都度契約で呼び出すことができますが、契約獣の場合、召喚術無しに契約主の好きなタイミングで呼び出すことができます。また、契約は相性の問題があるため、誰でもどんな種類でも契約できるわけではありません。この子は、あなたと相性が良かったんですね。」


「実は私、第五学年のダリオ・エンデ先輩が契約更新をしている所で、間違えてこの子の名を呼んでしまったんです。」


「あら、そうなのですか。でも、名を呼んだからと言って、普通は契約を横取りすることは出来ません。それに、契約期間が無期限で契約できているのもかなり珍しいケースです。余程あなたとの相性が良かったのだと思いますよ。」


そうだったの?クロってば、エンデ先輩より私が良かったの?


「彼らとの契約で必要なのは、魔力、信頼、この二点のみです。特にこの子は上位種なので、魔力の消費に注意してください。出しっぱなしは禁物ですよ。」

「わかりました。」


エンデ先輩の言ってたとおりだ。疑ってた訳ではないが、クロは本当に魔力消費が激しいらしい。


「無期限契約の場合、契約主が死ぬまで従属は続きます。互いに信頼関係が結べ無かった場合、契約獣に食い殺されることも有り得るので、そちらもご注意ください。」


こっわー!

クロ、私あなたに食べられないように、ちゃんといいご主人になるからね。だから食べないでお願い。


「他に何か確認したいことはございますか?」


「例えば、私の魔力が枯渇してしまった場合、契約獣はどうなるのですか?」


「それは契約獣の種類によって異なります。下位種であれば、契約獣も主の魔力枯渇に合わせて衰弱してしまいますが、上位種になればなるほど、暴走する可能性が高くなります。周りに甚大な被害を及ぼすこともあるので、魔力不足には本当に気をつけるようにしてください。」

「なるほど、わかりました。」


危なかった、エンデ先輩が昨日気付いて注意してくれなかったら、私は魔力枯渇でクロを暴走させてしまうところだったかもしれない。


こうして契約届を出すことで、私はクロへの理解を深めることが出来たのだった。



クロは犬じゃない、犬じゃない…



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