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10.根掘り葉掘り聞かれる



「ネモ、あの後どうなったの?もしかして告白された!?」

「そんなまさか。」



珍しくまともな時間に談話室に来てみたら、案の定、放課後のエンデ先輩からの呼び出しが噂になってしまったらしい。着席するやいなや寮生複数人に取り囲まれた。


「契約獣の注意事項を教えてくれて、それから課題を手伝ってくれたの。それだけ。」

「それだけ?何それ、それだけのためにわざわざ教室まで来て呼び出したの?」

「炎の申し子直々に課題手伝って貰うとか、ネモってば贅沢過ぎない?」


そう言ったのは、魔術学科の第三学年の先輩たち。

他学科の他学年にまで知られてるって、みんなどれだけ話題がなくて暇なんだ。


「たぶん、私の契約獣の様子が気になったんだと思います。本人もそう言ってました。」

「いまの新第五学年の魔法科と魔法騎士科は復学直後だから相当忙しいはずよ。忙しい合間を縫ってまで普通そんなことするかしら。」


次は第五学年の魔法薬科の先輩が訝しむ。

先輩も第五学年だから忙しいだろうに何故こんなとこで油を売ってるんだ。


「ネモ〜、これは、きてる可能性あるよ。」

「きてるって何が」

「ウフフ」


カタリナまで茶化さないでよ。


「確かにきてるね。」

「いいな〜」

「くー、エンデ先輩はネモ狙いか。」

「私も青春したいわー」


「いや、本当に違うから…」

周りが盛り上がれば上がるほど、自分の気持ちは凪いでいく。


こうして、私はエンデ先輩が派手に(?)呼び出してくれたおかげで、しばらくの間からかわれることとなった。





「で、実際どう?課題手伝ってもらったんでしょ〜?」


部屋に戻った後、カタリナはまだ先ほどの続きをしたいらしい、エンデ先輩のことについて聞いてきた。


「うん、丁寧ってわけでは無かったんだけど、的確に教えてくれて完成に付き合ってくれて…一瞬、昔のエンデ先輩がチラついた。」


思い出の彼のように、優しく笑いかけるとかそういうわけじゃ無かったけれど、面倒見がよく頼れる兄貴ってかんじではあった。


「変わってしまったって言ってたけど、やっぱり人間本質は変わらないものなんだよ〜。」

「そうかな。」

「そうだよ〜うまくいくといいね。」


カタリナはそう言うが、私が彼に抱いていた感情は恋愛のそれではないと思う。本当にただの憧れなのだ。


そして憧れの彼はすっかり変わってしまったと思っていたが、確かに本質は変わらないのかもしれない。


「クロ、おいで」


なんだか無性にクロを撫でたくなって、呼び出してみる。

すると瞬時にベッドの上に、真っ黒な可愛い子犬姿のクロが現れた。


「あら、クロちゃん朝ぶり。」

カタリナが放課後からずっと引っ込めていたクロを見て言った。


「魔力消費が激しいから、ずっと出しっぱなしはオススメしないんだって。あと、先輩はたまにクロを撫でたいって言ってきた。」

「犬好きなの?」

「ううん、どうだろ?元々は先輩のクラスメートのアンドリュー・ブラックさんの契約獣だったみたい。だから思い入れがあるんじゃないかな。」


エンデ先輩は犬好きというより、友達の形見を慈しみたいという感じがした。


「アンドリュー・ブラックさんって、遠征で亡くなられたあの人?」

「そう。私、クロは彼の形見を引き継いだんだ。」

「わお。」


カタリナはクロに近づいて、お腹を撫ではじめる。


「私、今回の遠征でどんな人が、どんな風に亡くなったか調べたんだよ〜。ブラックさんは、魔法科でもエンデ先輩やラース先輩って人と並ぶくらい実力があった人だったらしいよ。彼の契約獣が防衛で活躍したみたいなんだけど、それがクロちゃんだったのね〜。」


「ええっ、そうなんだ。」


クロってば今はこんなただ撫でられ愛でられるだけの子犬なのに、戦地ではちゃんと活躍してたのね。

いや、成体は凶暴と言ってたな。暴れてたのかな。


「ガラルの敵軍の奇襲に遭って、それが魔法使いたちを狙ったものだったらしくて。ブラックさんは巻き込まれてしまったみたい。」

「そっか…」


クロ、私ブラックさんからこんな形で引き継いだけど、ちゃんとあなたのご主人になれるかな?

仮契約だったエンデ先輩のほうがよかった?


頭を撫でながら、そう心の中で呟く。


〈今の主人は貴方だ。何も気負うことはない。〉


「え」


クロがこちらを見ている。

確かに頭の中で声がした。


クロは撫でられるのを止め、私の頬をペロペロと舐めだした。


「私、あなたを大切にするね。」



そう言って、その日はクロを抱き締めて寝た。




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