1.魔法学科のネモ
一人称&学園ものに初挑戦です。1話〜8話は続きで書いてたのですが、各話さくっと読める長さにしてみました。
ほぼ書き終わってるので、連続して投稿予定。
インクを水に溶かしたときのように、赤、青、黄色に緑と色とりどりに交じり合う炎。
日が沈みかけた空は、青、オレンジ、そして赤のグラデーションとなっている。
それらを背景にして魔法を操るその人を隠すローブが風と共にはためく。
今までにない全ての芸術を見せつけられたような情景に、思わず動きを止める。
私はその日、世界で一番キレイな魔法を見た。
◇
「ネモ、もう今回は良いんじゃない?できませんでした、で諦めたら~?帰ってからずっとやってるじゃん。」
「うーん、あとちょっとでうまくいきそうな感じがするの。それにこんな初歩の課題で諦めてたら、留年か転科を勧められちゃうよ。」
私は今、基礎魔法の宿題に絶賛大苦戦中である。
生徒一人一人に配布された小さなビー玉に炎の魔法を定着させ、その温度をほどよい暖かさ、例えるなら紅茶の入ったカップを手に持てるくらいの温度に保つようにする。ここまでが今回出された課題の内容だった。
この魔法の温度調整を学ぶのが課題の本来の目的である。しかし、私はその前段となる炎の魔法の定着に躓いていた。テキスト通りの手順で呪文もあってるはずなのに、まったくもってうまくいかない。なぜだ。
(ああ、寮食食べそびれちゃったな…)
「ほんと、魔法科は大変だね~。魔法薬科の私の課題なんて、時間かければ誰でもできるって言うのに。」
そう話すルームメイトのカタリナは、私と同学年の魔法薬科の生徒である。魔法薬科は一学年の間しばらくは座学がメインらしい。
私が通っているローズ王国のローズシティナ魔法学園は、一般的な内容を広く浅く学ぶ中等部に対し、高等部になると各々が専門科に進む。
私は実技をメインとした魔法学科に所属しており、カタリナは魔法薬科に、その他、学問としての魔法を学ぶ魔術学科、魔法騎士科、召喚科、幻術科などがある。
魔力はそこそこあるが、元々そこまで実技に興味が無かった私は、進路を選ぶ際に魔法薬科か魔術学科を考えていた。けれどもあることがきっかけで、いろんな意味で厳しいと言われる魔法学科を志望して無事進学、今に至る。
自分が選んだ進路に関して全く後悔はしていないのだけど、毎日課題に苦戦してしまうので、最近はやや自信喪失気味となっていた。
「…いや、努力は必ず報われる!私はあの憧れの人に近付くために頑張るんだ!」
そう言って折れそうな心をなんとか奮い立たせる。
根性論を語る私に慣れっこのカタリナは、綺麗にそれを流し、そういえば、と切り出した。
「前第四学年の先輩方って明日には学園に戻って来るんだっけ?」
「そうなの!ついにって感じ!やっとエンデ先輩を拝める日がやって来るの!私、楽しみで仕方ない!」
私が無理して魔法学科を希望した理由のすべては、ダリオ・エンデ先輩とその魔法にあった。