表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミの隣が好き  作者: 遊井そわ香
第一章 絶交中の幼馴染
9/56

親友に打ち明けました

 昼休み。お弁当を持って、魅音と一緒に中庭に来た。空いているベンチに座り、お弁当を広げる。

 私のお弁当は実にシンプル。具入りのおむすびが二つ。朝は妹弟にご飯を食べさせ、父のお弁当を作り、皿を洗い、洗濯物を干して……と忙しいため、おむすびが一番手っ取り早い。

 中に入っている具は、唐揚げだったりウインナーだったり炒り卵だったり焼き鮭だったりと、その日の朝食に出たものが入っている。

 今日のおむすびの具は、一つが目玉焼きの黄身の部分、もう一つはきのこのバター炒め。

 

 塩気の薄いおむすびを食べながら、魅音のお弁当に羨望の眼差しを送る。

 魅音の母親は、料理教室を開いている。そのため、魅音のお弁当は栄養バランスがいいし、彩りも美しい。

 

(アスパラの肉巻き、いいなぁ。手作りっぽいコロッケもある。しかも別な容器には、キウイフルーツ。贅沢すぎるっ!!)


 チラ見していることに、魅音は気づいたらしい。


「羨ましいって顔してる。お弁当を交換してもいいよ」

「交換⁉︎ 本当に⁉︎」

「ゆらり特製おにぎりを食べてみたいって、前から思っていたんだ。具が変わっているよね。交換する?」

「わーっ、嬉しい!!」

「ただし、条件がある」

「なに?」

「ゆらりと水都くんってさ、微妙な空気をだしているよね。わざと目を合わせていないって、うちにはバレている。小学校、同じじゃなかったっけ? 喧嘩でもした?」


 水都と絶交したことは、当時の先生にも言っていないし、父にも妹弟にも話していない。

 いじめられたことが言いにくいのもあるし、水都にひどいことをしてしまった負い目もある。


「暗い話だから、話したくないんだけど……」

「そっか。話したくないのを、無理に聞く気はない。じゃ、お弁当交換はなし。いただきまーす。肉巻きから食べよう」

「わーっ!! 待って待って! アスパラの肉巻き食べたーい!!」


 アスパラは、節約家族の味方ではない。スーパーで売っているアスパラは、ひと束が大体、三本か四本。我が家は四人家族。一人一本では、寂しいものがある。それにアスパラは、欠かすことのできない食材ではない。アスパラを買うんだったら、じゃがいもやにんじん、玉ねぎを買ったほうがいい。

 そういうわけで、アスパラに飢えていた私は、禁断の箱を開けることにした。


「わかった、話す! お弁当を交換しよう!」

「よしよし」


 こうして私は、アスパラの肉巻きを食べた。美味しすぎて、頬がじーんと震える。

 

「美味しすぎるっ! ほっぺが落ちそう。ひよりとくるりにも食べさせてあげたい!」

「大袈裟すぎ」


 私は魅音の母親が作ったお弁当を食べながら、水都のことを話した。

 幼稚園での出会い。それから、小学校で起こったいじめと絶交。

 魅音は黙って聞いていたが、話が終わると、開口一番に文句を言った。


「米に塩がついていないし、具は薄味。まずくはないけど、美味しくもない」

「米に塩をつけるなんて、贅沢だよ! お米そのものを味わえば良し!」

「貧乏、いと哀れなり。いたはしく涙いづ」

「それよりも、その……私、ひどいよね?」

「なんで? ひどいのは、川瀬杏樹でしょ? 三組のあの女だよね? 髪はサラサラで綺麗だけどさ、心は腐っている。絶交するよう強要するなんて、クズな女」

「さすがにそれは言い過ぎじゃ……」

「なんで? 本当のことじゃん。ゆらりも水都くんも被害者だよ」


 魅音の胃は、おむすび二つでは満たされなかったらしい。宇宙人のお弁当ピックが刺さっているキウイフルーツに、手を伸ばしてきた。


「二人の仲を引き裂くなんて許せない。うち、姑息な女って嫌いなんだよね。川瀬杏樹に嫌がらせして、ぎゃふんと言わせてやる!」

「ぎゃふんって、なに? どういう意味?」

「ぎゃふんの発祥は江戸時代。由来は諸説ありますが、ぎゃーという驚きの言葉と、ふむふむという納得の言葉を組み合わせた……」

「由来を聞きたいわけじゃないから!」


 魅音は雑学好きなので、話がずれることが多い。けれど、話をもとに戻す役目をするのも魅音。


「で、ゆらりは水都くんのこと、今でも好きなわけ?」

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ